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小泉進次郎氏が叫ぶ「空気を変える」はズレている 男性育休が増えない真因/ビジネスONLiNE・msnニュース
2020/01/24 08:00
http://www.msn.com/ja-jp/news/politics/%e5%b0%8f%e6%b3%89%e9%80%b2%e6%ac%a1%e9%83%8e%e6%b0%8f%e3%81%8c%e5%8f%ab%e3%81%b6%e3%80%8c%e7%a9%ba%e6%b0%97%e3%82%92%e5%a4%89%e3%81%88%e3%82%8b%e3%80%8d%e3%81%af%e3%82%ba%e3%83%ac%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b-%e7%94%b7%e6%80%a7%e8%82%b2%e4%bc%91%e3%81%8c%e5%a2%97%e3%81%88%e3%81%aa%e3%81%84%e7%9c%9f%e5%9b%a0/ar-BBZgQxb?ocid=iehp
「なんか、オレ頑張ってます!って感じがイヤ」
「たった2週間でしょ? 空気なんか変わらないよ」
「国会議員に育休とかないでしょ」
「金持ちでシッターとか雇える人が取ってもなぁ……」
「いいじゃない。どんどん取って前例をつくるべき」
「そうだよ。イクメンが当たり前になってほしい。空気変えてほしい」
などなど、賛否両論で盛り上がった小泉進次郎環境相の「育休宣言」。
個人的には賛成でも反対でもない、というのが素直なところです。が、小泉氏のブログを読んだところ、「なるほどね」と納得する一方で、「えっ……そんなことも知らなかったんだ。政治家さんなのに……」とかなり困惑しました。
そして、私が今まで考えていたことが確信に変わった。なるほど、これじゃあどんなに小泉氏が頑張ったところで、男性の育休が当たり前になるわけないな、と。
小泉氏は「制度だけではなく空気も変えていかなければ、育休取得は広がっていかない」「想像以上に多くの方々から、『育休を取れない社会の空気を変えてほしい。そのためにも小泉大臣に育休を取ってほしい』と声をもらった」「環境省内からも『職員が育休を取りやすいように、イクボス宣言してほしい』と言われた」と、やたらと「空気」にこだわっていますが、イクメン、イクボス、おとう飯、プレミアムフライデーなど、政府が進めてきた“キャンペーン”と、今回の育休宣伝はなんら変わりはないのではないか。
そうです。私は政治家さんが空気空気と連呼することへの違和感に食傷気味なのです。
というわけで、今回は「空気と男性の家事・育児参加」について考えてみようと思います。
●そもそも「空気」とは何なのか
早速ですが、そもそも「空気」とは何なのでしょうか?
山本七平氏の名著『「空気」の研究』は、私も随分と学ばせていただきましたが、そこには次のような説明があります。
「それは(空気とは)非常に強固でほぼ絶対的な支配力をもつ『判断の基準』であり、それに抵抗する者を異端として『抗空気罪』で社会的に葬るほどの力をもつ超能力である」
なるほど。子どもがいない25〜44歳の既婚者・未婚者のうち、子どもが欲しい気持ちがある・あった男性に「今後、子どもが生まれた場合に、育児休業を取得したいですか?」と聞いたところ、「ぜひ育児休業を取得したい」と「できれば育児休業を取得したい」を合わせると、実に7〜8割が育休を希望しています(明治安田生活福祉研究所「2018年 25〜44歳の子育てと仕事の両立」より)。
こんなにも多くの人たちが育休を取りたいと考えているのに、育休取得率が6.16%と絶望的に少ないのは、「空気=社会のまなざし」が影響していることを、私は否定しません。
実際に、私がインタビューした人たちの中にも、
「育休? まさか遊びたいだけじゃないよな?」
「戻ってきたときには席はないと思っていたほうがいいぞ」
「女性社員が増えて、育休だ、時短だって現場はてんやわんやなのに、育休取るって? どういう神経してるんだよ」
「あそこのダンナさん、育休だって。結構なご身分ね〜」
など、社内だけでなく、ご近所さんからも、白い目で見られた経験を話してくれた人たちは少なくありませんでした。
が、問題はここからです。
●「どうしてその空気があるのか」は説明できない
山本氏は「空気に影響された意思決定の論理は、事後になっても合理的に説明できない」と説きます。つまり、空気は目に見えないので、暗黙の了解です。「みんなそう考えている」ということを前提に成り立っているので、その空気に「あの空気、やだね」とか「ああいう空気は変えたいよね」といった異論・反論を唱えることはできるけど、「何を根拠に、どうしてその空気があるのか」を論証するのは極めて難しいというのです。
著書では、戦艦大和を出撃させるという意思決定を下した旧日本軍の例をもとに説明しています。当時の連合艦隊司令長官はこの意思決定について、「私は当時ああせざるを得なかったと答えうる以上に弁そ(言い訳)しようと思わない」と発言。3000人もの命が失われるリスクを分かっていながら、論理的思考に基づくものでも、科学的根拠を参考にしたわけでもない。ただただ「そうするしかなかった」と、極めて感覚的な決定だったことを認めているのです。
山本氏はこのような感覚を「臨在的把握」と呼び、「目には見えない何かが、あたかも実際に存在しているかのように感じること」としています。そして、空気の「内の人」はどんなにそれが非合理でばかげたものでも、その空気に流されるというわけです。
「空気」の研究は、40年以上前に書かれた一冊です。しかしながら、上記の説明を読めば分かる通り、いまだに日本社会のあちこちに「空気に影響された意思決定」がはびこっている。現代の日本社会を説明しているように感じるのは、空気がその土地の文化に深く深く根付いていて、よほどの荒療治を施さない限り根が絶えることはない、実に厄介な代物であることが分かると思います。
さて、育児休暇の問題に戻りましょう。念のため繰り返しますが、私は「空気を変えようとする人」を否定する気は毛頭ありません。しかし、本当に空気だけなのか? と問いたいのです。
●家事・育児に必要なのは「時間的余裕」
興味深い調査結果があります。
・配偶者の労働時間が長くなると、本人の労働時間も長くなる
・夫の家事時間は、妻の労働時間が自分より長いときに増える
・夫と妻の家事時間は、一方が増えれば他方が減るといったトレードオフは認められない。家事は妻が主導的に行い、それを夫がサポートするという姿が浮き彫りになった
・夫の育児参加は、妻の夫婦満足度を高める効果あり。一方、夫の家事参加は、妻の夫婦満足度に影響なし
・妻の夫婦満足度には「夫への心の支え信頼度」「夫への経済的信頼度」が関連するものの、「心の支え信頼度」の影響力は、経済的信頼度の3倍もある
・夫の家事参加と夫の情緒的サポートでは、妻の夫婦満足度には情緒的サポートが影響
・上記のことから、夫の家事参加には、意識変革を目指す啓蒙活動より、職場環境を改善することによる「時間的余裕」が必要である
これらは内閣府のWebサイトで「男性家事」で検索をしたところヒットした資料に書かれていた内容です。男性の家事育児参加や、家事育児と仕事のストレス(男女)、夫の家事参加と夫婦満足度・妻のストレスに関する国内外の文献をレビュー。30件超の短報や原著論文の、「研究の概要・対象と、方法・結果・インプリケーション」が、この資料に一覧にしてまとめられていました。
もっとも、これは「育児」ではなく「家事」に関するものですが、育児にも同様のことがいえるのではないでしょうか。
例えば、男性の週実労働時間と、子ども(末子)と平日過ごす時間の関係を見ると、労働時間が週50時間を超えると、「3時間以上」子どもと過ごす割合が約2割に減り、週60時間を超えると「0〜30分未満」が4割以上に増えるなど、子どもと過ごす時間があまり取れない状況になるといった調査結果が出ている。
育児休暇は「子どものいる人だけ」の権利になりますが、「時間的余裕」は全ての人が享受できる。時間的余裕を増やすことで、男性が育児することへの偏見の解消にもつながると期待できるのではないでしょうか。
●男性にもケア労働をする“権利”を
実際に、日本同様「男は仕事、女は家庭」という文化が根強かったドイツは、育児や家事などのケア労働への男性参加を進めるために、徹底的に「時間管理」にこだわった政策を進めてきました。
ドイツは今でこそ「共働き先進国」に分類されますが、元来、女性の母親としての役割を強調する組合主義的福祉国家を代表する国でした。そこで、短い労働時間を徹底的に厳守する政策を進め、男性でもケア労働にアクセスする権利を保護。
生きていくためには「お金」が必要なので、私たちは「市場労働」をする。生きていくためにご飯を作って食べ、部屋を掃除する。子どもや高齢者にはその力がないので、他者(親や子など)がご飯を作ったり、掃除をしたりといった「ケア労働」をする。
こう考えると、労働市場における市場労働(有償の労働)は男性が、家庭におけるケア労働(無償の労働)は女性が、という前提で考える必要はなくなります。というか、そう考えたらおかしい。男であれ女であれ、市場労働とケア労働にアクセスする権利があり、前者は「労働権」、後者には「父母権」「保育権」があって当然です。
つまり、ドイツは家事や育児のための時間を確保することを、「ケア労働の権利の保護」と考え、労働時間の徹底した管理、育児休暇取得時の賃金などを議論、検証し、制度変更を進め、男性の育児休暇取得率を高めてきました。
その結果として、「会社で仕事ばっかりやってないで、さっさと家帰って家事とか育児しないと一人前じゃないぞ!」という空気が熟成されたのです。
政治家がやるべきことは、「空気」を変えることではなく、働く時間を徹底的に管理すること。子どもがいようといまいと関係なく「定時退社」を当たり前にすること。議論、検証、制度変更し、その結果として空気が変わればいいのです。
つまるところ「空気を変えま〜す」だけで終わらせるな、と。政治家としてやるべきことも、きちんとやってほしいと心から願います。
(河合薫)
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