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映画『007』とは違う!英国「MI6」の世界
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投稿者 中川隆 日時 2021 年 7 月 19 日 22:40:33: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: イギリスの歴史と現代史 投稿者 中川隆 日時 2021 年 1 月 04 日 14:18:44)

映画『007』とは違う!英国「MI6」の世界
インテリジェンス・マインド
小谷 賢 (日本大学危機管理学部教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23084

 今号から世界各国のインテリジェンス機関について解説していこう。最初に英国を2回に分けて扱う。


「サーカス」「レゴランド」等ユニークな通称で知られる「MI6」。100年の歴史を持つが政府が正式に存在を認めたのは1994年のこと (VICTORHUANG/GETTYIMAGES)
 英国のインテリジェンスというと、まず映画『007』でダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドが思い浮かぶほど、秘密情報部(MI6またはSIS)の存在感は大きい。実際のインテリジェンス・コミュニティーにおいてもMI6は中心的な役割を果たしているが、その他にも保安部(MI5)、軍事情報部(DIS)、政府通信本部(GCHQ)などが英国のために日々、情報収集活動を行っている。今回は「MI6」とはどのような組織なのか見ていきたい。

 英国のインテリジェンスの歴史は古く、その源流は16世紀のエリザベス朝時代に、宰相フランシス・ウォルシンガムが設置した組織にあると言われる。ただMI5やMI6が設置されたのは1909年のこと。そのきっかけとなったのは意外にもある小説だった。

 それは06年にジャーナリストのウィリアム・ルクーが発表した『1910年の侵攻』という本で、今風に言えば架空戦記である。近い将来にドイツ軍が英国に侵攻してくるというもので、当時英国で大ヒットした。同時に、英国の世論はドイツの脅威を過度に恐れるようになり、ドイツのスパイや協力者が国内に跋扈(ばっこ)しているのではと疑い始めた。

 これを受けて当時のアスキス政権は、09年7月に秘密情報部(SIS)と保安部(SS)を設置してドイツの脅威に対処しようとしたが、実際にはドイツのスパイなどほとんど存在していなかった。そのため両組織が活躍するのはもう少し後の、二つの世界大戦の時期であった。

 第二次世界大戦において、両組織は秘匿のため陸軍情報部(MI)の肩書を与えられることになる。当時、英陸軍情報部内には第1課(MI1)から19課(MI19)まで存在しており、空室となっていた5課が保安部、6課が秘密情報部に与えられたことで、現在にまで続く呼び名が定着したのである。

通称「サーカス」
リクルートも秘密裡に
 MI6の方はその後も存在を秘匿するために様々な通称が与えられた。「サーカス(本部がロンドン中心部のケンブリッジ・サーカスにあったという噂から)」、「レゴランド(本部の建物の外見から)」、「河向こうの友人(ロンドンの政官庁街から見るとテムズ河の対岸に本部があるため)」などのユニークな呼び名が乱立し、もはや正式名称の「SIS」で呼ばれなくなって久しい。今や議会の公式資料でさえ「MI6」表記なのだ。

 こうした秘密保全が徹底された結果、国民がMI6の存在を知ったのは、1962年に『007』シリーズが映画化されてからのことだという。しかもその後もMI6の根拠法が制定されなかったため、法的には存在しない状況が続き、「MI6の情報部員には殺しのライセンスが与えられている」といった都市伝説まで流れた。最終的に94年にようやく関連法が整備され、政府はMI6の存在を認めるに至った。

 この秘匿性ゆえにリクルートも秘密裡に行われてきた。オックスフォードやケンブリッジといった名門大学において、MI6とのパイプを持つ教授が仲介して、優秀な学生に声をかけるというものである。ただこれだと、毎年決まった学部・学科の学生から採用することになり、学生の質や専門に偏りが生じる。特に英国のエリートは哲学や文学といった人文科学を好む傾向があり、MI6の情報部員は理系の知識に乏しいとされる。

 この弱点は、2003年にイラクの大量破壊兵器調査の際に露呈した。当時MI6の本部にも理系の素養のあった分析官は少なく、イラクから報告される化学兵器に関する断片的な情報を上手く分析できなかった。その結果、本来ありもしない大量破壊兵器がイラクに存在する旨の情報を当時のブレア政権に上げたとされる。

 もう一つの問題は、MI6が外に閉じた組織であるがゆえに、内部の結束は固いが、一旦内側にスパイが入り込むと、浸食されやすい点である。その代表格が、長年MI6と同時にソ連のダブルスパイであったキム・フィルビーである。彼はケンブリッジ大学在学中の1929年にソ連側にリクルートされ、その後、MI6に採用されたまま63年の発覚まで部内情報をソ連側に提供していた。その他にも当時のケンブリッジ卒の4人の学生がソ連にリクルートされたまま、MI5やMI6などにも採用され、多くの機密情報が流出している。

 これらの問題を受け、MI6は人材の多様性確保の観点からようやく2005年10月になって初めて公式ウェブサイトを開設し、オープンな人材募集を始めた。応募条件は本人、および両親のどちらかが英国籍であること、18歳以上で過去10年間に5年以上英国に住んでいることなどで、初任給は年収440万円程度だという。10年には初となる公式史を発表し、国民への説明責任を果たそうとしている。

 実際のMI6の仕事は映画のような潜入・破壊工作などではなく、基本的には海外に出向いて、パーティーや国際会議の場などで海外の要人と接触し、人脈を広げながら情報を得ることである。

潜入技術ではなく
社交術を身につける
 そのためMI6の情報部員にとっては射撃術や格闘技などよりも、外国語の素養やコミュニケーション能力が求められ、初対面の相手と話し続けられるよう、研修によって幅広い教養(社交術)が仕込まれるという。私も立ち話程度の印象だが、彼らは非常に物腰が柔らかく、私が日本人と知ると、すぐに日本の政治経済に関する話を振れるぐらい、幅広い知識を持っていることに驚かされた。

 さらにMI6の情報部員は優れた情報アナリストでもある。収集と分析を両方こなせる人材は流石に少ないと聞くが、MI6では情報分析の素養も重視されており、そうした人材は内閣府の合同情報委員会(JIC)に出向し、時の政権の外交・安全保障政策のための情報ペーパーを日々作成している。

 このように実際のMI6は映画ほど派手な活動はしないが、それでも英国の国益を守るという使命感は情報部員の間でしっかりと共有されている。かつてMI6で長官を務めたサー・ジョン・サワーズは、あるインタビューでこう語っている。

 「私たちに殺しのライセンスはないし、欲しくもない。MI6の任務は指導者に情報を提供することで、軍事工作はしない。それでも私は007の大ファンだがね。ダニエル・クレイグは最高だ!」

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23084  

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コメント
1. 中川隆[-16144] koaQ7Jey 2021年7月19日 22:42:20 : a9KMys6j82 : RE9WUkNHM2x0dGs=[24] 報告

2021年7月17日
世界に築かれた大英帝国の諜報網
インテリジェンス・マインド
小谷 賢 (日本大学危機管理学部教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23405


 前回に引き続き、今回も英国のインテリジェンス組織について話を進めていきたい。


英国ブレッチリー・パークにあった第二次世界大戦中の諜報機関内部 (BLETCHLEY PARK TRUST/GETTYIMAGES)

 保安部(MI5)は前回扱った秘密情報部(MI6)と同じく、「英陸軍情報部第5課」を表す言葉にすぎないが、今やその名称は公式のウェブサイトでも使われており、正式名の防諜部(Security Service)はあまり使われなくなってきている。これは「SS」と書くと多くの人がナチス・ドイツの親衛隊のことを思い浮かべるからかもしれない。

 よくMI5が国内の防諜・情報保全を担当し、MI6が海外での情報収集活動を行うと理解されているが、厳密に言えばMI5は大英帝国内における防諜活動であるため、その活動はカナダや香港にまで及んでいた。

独スパイを寝返らせ
大作戦成功の要因に
 戦前、日本海軍のスパイとして働いていた元英空軍のフレデリック・ラットランドは、米国のロサンゼルスに拠点を置きながら、メキシコや日本、中国などを行き来していたが、MI5はラットランドのそうした活動を詳細に記録しており、日本との戦争が近づいた1941年10月には米国内でラットランドの身柄を拘束して英国に送還している。本来、米国内は米連邦捜査局(FBI)の管轄であるが、MI5は大英帝国の外となる米国においても優れた調査能力を持っていたといえよう。

 そして第二次世界大戦中には徹底して国内におけるドイツのスパイを監視し、そのほとんどを逮捕して逆に英国側に寝返らせる工作まで行っていた。ドイツ側では自分たちの送り込んだスパイが英国側についているとは夢にも思わず、二重スパイの偽情報に騙されることもあった。44年のノルマンディー上陸作戦において、ドイツ側が連合軍の上陸地点を絞り込めなかったのは、この工作によるところが大きいだろう。

 戦後、大英帝国から多くの国々が独立し、表面上、英国は植民地経営から手を引くことになるが、裏では各地にMI5の拠点を残し、ソ連との情報戦に備えたのである。当時のMI5の拠点は、北中米ではジャマイカ、アフリカではカイロ、ナイロビ、中東ではエルサレム、アジアではニューデリー、シンガポール、香港、オセアニアではキャンベラなどにあった。冷戦期においてもMI5は世界的に活動し、その情報収集能力はMI6に引けを取らない。

 ただMI5にも全く問題がなかったわけではない。恐らく最も大きなスキャンダルは、元MI5職員のピーター・ライトが87年に出版した『スパイ・キャッチャー』という著作にまつわる一件だろう。その中でライトは、60年代にMI5長官を務めたサー・ロジャー・ホリスがソ連側のスパイであったと主張している。この著作は英国では発禁となり裁判にもなったが、豪州をはじめ米国や日本でも出版されている。

 英国政府はこのスパイ騒動の火消しに追われ、その結果、89年になってようやく保安部根拠法を制定して公式にMI5の存在を認めるに至った。ホリスのスパイ疑惑についてはその後も尾を引くことになったが、MI5は現在でもなお、公式ウェブサイト上で疑惑を否定している。

 MI5の主敵は長らくロシアの情報機関と英国内でテロを起こすアイルランド共和軍(IRA)であったが、21世紀に入ると米国の同時多発テロを受けて、国際テロ情報収集が重要視されるようになった。さらに最近のMI5はロシアよりも中国の経済スパイ活動の方を深刻視しているようだ。

英コンピューター業が
低迷する意外な理由
 MI5やMI6よりもさらに秘匿度の高い組織が政府通信本部(GCHQ)である。こちらは戦前の政府暗号学校(GC&CS)としても知られており、通信傍受と暗号解読に特化した組織である。GC&CSは日独の暗号を解読し、第二次世界大戦の終結を数年早めたともいわれているが、当時の世界で最も高い暗号解読能力を有した組織であったことは間違いない。

 特に数学者、アラン・チューリング率いるチームが世界で最初のコンピューター「ボンブ」を駆使してドイツのエニグマ暗号を解読したことは、多くの映画や小説で描かれている通りである。戦後はGCHQと名前を変え、米国の国家安全保障局(NSA)と手を結ぶことで、現在のファイブ・アイズの原型を作った。

 当初は「弟」的存在であったNSAは、あっという間に能力や規模でGCHQを追い越すことになる。暗号解読においては大量の計算や解析が必要であり、この分野はコンピューター産業と密接に関わりを持っている。優秀なコンピューター技術があれば、この分野では圧倒的に有利ということだ。

 米国では一貫してIBM社がその役割を担っている。ちなみに英ウォーリック大学のリチャード・オルドリッチ教授によれば、世界初のスーパーコンピューターとなる同社の「Cray-1」がNSAに納入されたが、NSAはその納入履歴を削除し、公式には認めていないという。英国も当初は国産のICL社のコンピューターを利用していたが、信頼性が低く、最終的にはIBM社製のものに乗り換えたため、英国のコンピューター産業は低迷することになったのである。

 GCHQの秘匿性は徹底しており、ジャーナリストが記事や書籍を出版しようとすると、出版社に圧力をかけてGCHQに関する記述を削除させるほどであった。しかし72年に米国の『ランパーツ』誌上で、「GCHQ」という単語が初めて公の場に登場することになる。これはGCHQの前身が設置されてから63年目のことであった。しかし、英政府が公式に組織の存在を認めるのは、MI6と同様、根拠法が制定される94年のことである。

 冷戦終結後、GCHQのターゲットは日本や欧州の民間企業の情報となり、特にフランスの企業が被害を被ったため、欧州連合(EU)は特別調査委員会を設置し、調査を進めた。そこで初めてアングロサクソン諸国が運用する通信傍受システム「エシュロン」の存在が明記されたため、2000年前後にこの言葉が世界的に普及することになった。21世紀に入ると、GCHQはファイブ・アイズ諸国とともに、サイバー空間上の情報収集を積極的に行い、13年のエドワード・スノーデン氏のリークによって、再び世界中の注目を集めた。

 前回から見てきたように、英国はMI6だけでなく、MI5やGCHQといった幾つもの優れたインテリジェンス機関を抱えており、これによって英国は国際社会において国力以上の影響力を維持し、また米国との対等な関係を築いている。この世界ではより多く質の高い情報を持つことがすべてであり、日本もファイブ・アイズに参画するためにまずは自らの情報収集能力を向上させる必要があろう。

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23405

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