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(回答先: 人手不足の実態 投稿者 中川隆 日時 2020 年 10 月 30 日 15:39:25)
正社員の個人事業主化は従業員にメリット皆無
電通「正社員の個人事業主化」は完全なリストラ、従業員にメリット皆無=今市太郎
2020年11月17日
https://www.mag2.com/p/money/986482
電通は2021年1月から正社員の一部を「個人事業主」として雇い直す制度を始めると発表、物議を醸している。この制度の問題点と、従業員には1ミリのメリットもないことを解説したい。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)
従業員にはメリット無し?
東京五輪でも持続化給付金の事業委託の件でもまったく社会の役に立たなくなりつつある電通が打ち出した、従業員個人事業主化の制度導入。これがまたまた物議を醸しだし始めています。
大手広告代理店の業務実態を熟知し、ビジネスコンサルファームにおけるクライアントとの業務委託の実態をも克明に知る私の目からしますと、足元の電通の業務の中で個人事業主として働くことなど、極端にいえば1ミリもメリットがないことは一目瞭然の状況です。
今回はそんな従業員個人事業主化のどこに問題があるのか、また従業員にとってなんらプラスに働かないことについて解説したいと思います。
関係者には申し訳ありませんが、容赦なしのぶっ叩きの内容になっておりますので、不愉快であると思われる方は最初から読まれないことをお勧めします。
有名クリエーター対策かと思いきや、一定年齢以上の全職員対象
電通などの大手総合広告代理店には総合職でも、デザイナーやコピーライター、CMプランナーなど、一般の企業には存在しない特殊な才能を発揮するクリエーターが存在します。
こうした人材は社内で一定の売れっ子になると当然、独立すれば給料以上の稼ぎになりますし、より仕事を選択することもできることになりますから、才能あるクリエーターはほとんど独立することが多くなるのが実情です。
こうした人材をつなぎとめ、通常の給与よりも高い単価で業務委託を行うことで、新たなキャリアパスを形成するというのであれば、今回の個人事業主化もある程度はうなづけるといえます。
しかし、今回電通が打ち出したのはそうしたものではなく、40歳以上の社員を対象にした広範な個人事業主化であり、非常に会社都合にマッチしたろくでもないキャリアパス、いやキャリアダウンの選択肢であることが見えてきます。
業務委託は正社員口減らしの体のいいコスト削減?
もともと欧米系の広告代理店は、クライアントと個別に取扱い商品についての広告マーケティング活動の業務委託契約を行っており、年間どれだけの人材が労働力を提供するか、またデリバラブル(成果物)やKPI(パフォーマンスの目標)などを相互に設定したうえで業務を行うのが通例になっています。
いわゆるレイバーベースドフィーに基づく業務委託の引き受けになるわけですが、電通はイージスの買収で受け継いだ海外事業を別にしますと、国内でこうした契約をクライアントと結んでいるのは本当にひと握りに過ぎず、業務委託の主契約が存在しないわけですから、その不明確な得意先業務をベースとしたサブコントラクターがいくらの金額で業務委託を受けるかという仕組みが確立していません。
コンサルティングファームでも一部の業務は個人事業主をサブコントラクターとして利用しますが、クライアントとの主契約があるからこそ、いくらの単価でどれだけの仕事をするかという業務要件決定をするわけです。
したがって、単純にバックオフィスにおける業務委託ということが主たる業務ということになると、間接人件費の中の話であることから、ベンチマークになる労働単価はかなりあやふやで、個人事業主などというのは名ばかりの話。正社員から単純に非正規にグレードダウンして、固定給でいいようにこき使われるだけになることが容易に想像できる状況です。
もともと大手の広告代理店の場合はほとんどが総合職として採用されているわけですから、バックオフィスでも給与体系はかなり高く、それも会社が抱える大きな問題となってきたのは間違いないでしょう。今回、正社員を個人事業主化することで一気に調整する装置として利用することになれば、業務委託を引き受ける従業員にとっては非常に不利な契約になることは間違いありません。
結局のところ膨れ上がった人件費と正社員減らしのための、非常に引き受け手に不利になる愚策にしか見えないと誹謗されても仕方ない状況です。
労働時間に対する歯止めは一切なくなる
コンサルティングファームにおけるクライアントとの業務委託は、関与するコンサルのパートナー、マネージャーコンス、アナリストなどレベルによる月次の労働提供人月をあらかじめクライアントと合意したうえで業務を行います。
それでも引き受けた時間内に仕事が終わらなければ、結局、それ以上の残業をして間に合わせているのが実情。高い労働単価であればあるほど、よほどのことがないかぎり追加の支払いをクライアントから受けることはできないのが現状です。
まして電通のような業態の社内業務の委託ということになれば、より曖昧な状況になるのは間違いないでしょう。
そもそも正社員でさえ残業の上限を抑止できないマネジメントであるのが実情ですから、そんな会社と支払い金額上限を固定した業務委託契約を結べば、ある意味正社員の残業にかかる責任を一切回避して雇用者をこき使うことができるようになり、非常に大きな問題を巻き起こすことも予想されます。
そして、実は同様の懸念の声は労働問題を扱う弁護士からも多く聞かれる状況になっています。労働の現場に詳しい人間であればあるほど、新たな労働搾取の仕組みを導入しようとしているのではないかと疑われるのは当たり前です。
社会保険、交通費等の自己負担率は大きく増加
正社員で働いていますととかく意識するのは「給料の額目」ですが、実は大手企業の正社員の場合、厚生年金・健康保険の掛け金負担についても、かなりの部分を個人のみならず企業側が負担してくれているので、一般の個人事業主よりは相当に優遇された状況が維持されています。
もちろん、「この先、年金なんてまともに払われないからそんなの関係ない」と割り切るのも、ひとつの手です。
しかし、個人事業主になることを決意するなら、本当に精密な健康診断を受け、歯科検診も実施して、正社員ではなくなることでの社会保険費用負担の増加を最大限回避する必要がありそうです。
実際に個人事業主になってみればわかりますが、猛烈な負担を余儀なくされ、ここだけとってみてもよほど収入が増えないかぎり、まったく間尺に合わない状況に陥ります。
交通費もしかりで、別途請求できるやさしい仕組みがあるならばいいですが、通常はすべて一括込々で業務委託を受けるのが世間の常識です。
金融機関からの与信評価は大きく下落
もうひとつ考えなくてはならないのが「与信」の問題です。
たとえばマンションなどの自宅購入、無担保ローンなどを借りる場合、電通の正社員であれば勤続年数と前年年収をベースにして、低金利時代もあっていとも簡単にローンを組むことができたはずです。
ところが、電通から仕事を受ける個人事業者となると、生活は変わらなくても社会的信用度は激しく下がります。
マンションを買う予定があるならとにかく、正社員のうちに買っておかなくてはとりかえしのつかないことにもなりかねません。クレジッドカードの発行もしかりで、電通という勤務先の二文字を失った途端に、社会が大きく変わることはしっかり認識しなくてはならないでしょう。
ひとたび病気やケガに見舞われれば、瞬時にお仕舞
最近、フジテレビのアナウンサーからフリーになったばかりの人物が重病にかかり、大変な状況に陥っているという報道がありました。
この個人事業主というのはまさにそれに象徴されるように、健康で多少無理しても問題なく働けるからこそ成立する労働形態です。
事故に遭遇してリハビリに大量の時間がかかるとか、不慮の病で闘病生活を送るはめになったとたんに、すべての構造は木っ端みじんに破綻することになります。
国内企業にはシックリーブ(有給病気休暇)などという病欠はあまり認められてはいませんが、それでも有給休暇を使い果たすまでは一応給料も支給されますし、それを超えた病気の状況でも、減給処分になったとしてもすぐにクビを切られることにはなりません。
しかし、業務委託契約では当初の契約内容が履行されなければ即契約解除になりますし、その後の業務委託もされないという、かなりドラスティックな状況に陥ることは間違いありません。
業務で発生した利益に応じたインセンティブなど期待できるわけもない
国内大手の代理店は依然としてメディアバイイング、媒体への広告出稿に対する媒体社からの取引手数料の付与が大きな収益減となっています。
会社は異なりますが、11月12日に電通の同業者である博報堂DYホールディングスが発表した2021年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益は前年同期比82.8%減の37.1億円に落ち込んでおり、中身をみますと軒並み媒体出稿が大きく減少していることが即経常利益にネガティブな影響を与えています。
電通の場合、収益に対する媒体売買依存度は博報堂DYホールディングス以上ですから、さらに収益は深刻なはず。個人事業主として電通から業務委託を受けても、よほど業務収益にプラスの影響を与えるようなポジションでない限り、収益に貢献してインセンティブが与えられるなどということはあり得ないことは明白で、心地よい言葉が並んでいるだけにしか見えない状況です。
次なる仕事を見つける期間の収入補填が狙い?
このスキームの実現に関しては嘘か本当か確認のしようがありませんが、電通側の説明によると、既存の従業員の有志が提案して2年あまりで実現したものだと聞きます。
しかし、新たなフレキシブルなキャリアパスを考えるという視点でいえば、まったく会社側にとって都合のいいスキームになっており、かろうじて従業員を忖度して評価するなら、若干の金額を退職金に上乗せされてリストラになるよりも、現行給与の7割でも5割でも確保しつつ次の仕事なりほかの仕事が見つかるまで雇用の一部を維持してもらうための救済策に見えて仕方ありません。
たしかに広告代理店というと華やかで話題になる職種であり、実際問題、上位の2割はかなり優秀で、ほかの業種でも十分に食べていけるでしょう。また前述の通り、業界で独立することでさらに収入が増えるタイプもいるのは事実です。
しかし、それ以外の8割の層は、リアルなマーケティングに責任を持ったこともないでしょうし、国内の広告ビジネスでは、とにかく得意先に媒体出稿させるためにいびつな過剰サービスを行ってきているだけですから、いざ転職となっても同業者以外にはほとんどニーズがない状況です。
しかも、国内の代理店同士ではほとんどそうした転職需要がないことから、仕方なくこのようなスキームを会社に認めさせることになった、つまり相当に悲観的なプランではないかと推測させられます。
収入が大きく増えない限り、個人事業主にメリットはない
一般的に、会社員がフリーランスになって正社員当初の給与を維持するためには、テレビ局のアナウンサーならざっと3倍の金を稼がないと同じレベルを保てないといいます。
普通のサラリーマンであればそこまで極端な収入の増加は必要ありませんが、それでも最低1.5倍から1.8倍程度に収入が増えない限りは、個人事業主として同じ会社に働くなどというのは相当な収入ダウンを余儀なくされてしまいます。
それでもこうした仕組みに応募する従業員がいるというのは、一体どういう意味があるでしょうか?かしげたクビがまったくもとに戻りません。
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