山本太郎、東京都知事選に出馬 コロナ禍経たやまれぬ決断 首都決戦に正面から挑む 2020年6月17日 れいわ新選組の山本太郎代表が15日、東京都内で会見を開き、7月5日におこなわれる東京都知事選に、れいわ新選組公認候補として出馬することを表明した。18日に告示日を迎える都知事選には16日までに自民・公明が実質支援する現職の小池百合子、立憲民主・社民・共産が野党統一候補として擁立した宇都宮健児(元日弁連会長)、日本維新の会の推薦を受ける小野泰輔(前熊本県副知事)、N国公認の立花孝志(同党党首)など四氏をはじめ17人が立候補を表明している。新型コロナ・パンデミックと未曾有の経済的困窮が進行するなかで迎える都知事選は、今後の国政の行方を左右するものとして新・旧の勢力がぶつかり合う首都決戦の様相を帯びている。
会見を開いた山本氏は冒頭から「東京都知事選に立候補する」と宣言し、前置きとして立候補に至るまでの二点の経緯について説明した。 一点目は、すでに5月25日に立候補表明し、野党統一候補者として出馬予定の宇都宮健児氏との関係について−−。山本氏は宇都宮氏とは二度面識があり、最初の3月1日には、山本氏が都知事選に立候補する可能性があることを伝え、宇都宮氏は「野党統一候補者に納得がいかなければ自分が出ることになるだろう」との意向をのべたという。5月25日に再び面会したときには、宇都宮氏は「誰が出ても自分は必ず(都知事選に)出る」と決意をのべ、山本氏もみずから立候補の意向を伝えると「出ればいい。それぞれの政策を選挙で有権者に主張していくことは重要なこと」「勝ち負けではなく、政策提案という意味でも私は選挙に出る」という趣旨の返答を得たことを明かした。 二点目は、野党統一候補の調整について。当初、野党側から出馬の打診を受けた山本氏は、れいわ新選組公認での立候補を望んだが、無所属での立候補を求められたため一旦破談になり、その後に「もう一度考えられないか」と野党側から打診があったと明かした。そのさい山本氏は、野党統一候補になる条件として、無所属候補であれば選挙の確認団体の名称を「れいわ東京」にすること、次期衆院選で「消費税5%」を野党の統一政策とすることを都知事選開始までに書面で約束することの二つを提案。その後、野党側からはいずれの提案も拒否されたことを明かし、最終的な焦点となった消費税5%合意については「党内手続きが間に合わない」が拒否の理由であったとのべた。山本氏は「5月末に話をしてから告示まで20日間以上あった。それでも党内手続きが終わらないのであれば、消費税五%減税についてはもう党内では決められないという宣言であると私は受け止めている」と説明した。 その後、山本氏はみずからが都知事選に立候補する動機と政策について、概略以下のようにのべた。 都民生活を直接底上げ なぜれいわ新選組・山本太郎が、東京都知事選に出る必要があるのか。総理大臣を目指すことを宣言して自分で旗揚げし、まだ2議席ではあるが国政政党となって、その目的に向かって進むことと、今回の都知事選に出ることは、一部の人たちからは矛盾することのように思われるかもしれない。だが、私の中ではまったく矛盾はない。 このコロナ災害によって、一気にこの国に生きる多くの人々が生活困窮に陥るような状況が確認されている。コロナ災害に入ってから私が日々歩いた路上でも、公園でも、駅でも、行き場を失った人たちを多く見てきた。「補償なき自粛」によって多くの人々の首がしまったことは確実だが、その前に人々への「経済制裁」ともいえる消費税増税などの間違った経済政策のかずかずによって人々の生活は疲弊しており、それにコロナ災害が加わった。それによって一段と厳しい境遇に陥っている人々に出会ってきた。 例えば、東京駅を利用したときに、駅構内で呆然と立ち尽くすようにして改札方向を見ている一人の高齢者がいた。気になったので距離をとって見ていると、誰かを待っているわけでもなさそうなので、「ひょっとしたら…」と思って声を掛けた。そのとき私は帽子に眼鏡、マスクのあやしい格好であったが、「すみません。支援をしている団体のものですが、今日泊まる場所はどこですか?」と聞くと「今日から寝床はここだ」という。年齢は83歳。所持金は3万円程度。コロナで仕事を切られ、お金のあるうちはサウナなどいろんな場所を転々としていたが、残金3万円になって野宿でしのぐしかないという考えになったという。「支援団体に繋がれば一時期はホテルに入り、その後アパートにも入れますよ」と話したが、「大丈夫だ。まだ3万円ある」といって断られた。無理強いはしなかったが、翌日どうしても気になり、もう一度行ってみると、その方はもうおられなかった。 別の日に出会った72歳の方は、コロナで警備の仕事を首になって寮を追い出され、路上に出たという。「2週間後に年金が入るから大丈夫だ」というが所持金はゼロだ。家もなく所持金ゼロで2週間生きられるだろうか。究極は物を盗むか、餓死しかない。リアルに餓死するかもしれないという人たちが、街の至るところで目に付くという異常な事態だ。 高齢者だけではない。私と同じ40代で刑務所を出たばかりの方は、何カ所も転々として結局は路上に出ることになった。新宿駅で声を掛け、「支援に繋がれば一時期はホテルに入り、その後はアパートにも住める」と話をすると「それはありがたい…」といわれたが、「その前になにか食べ物をもっていないか。もう2日食べていない」という。こんな人たちが街に溢れている。これまで政治が貧困や不安定雇用を放置してきたツケが社会的弱者の生活を根こそぎ破壊しているのだ。 なにをダラダラと補正予算をやっているのか?その予算のうち真水は結局いくらだったのか?東京でこんな状況になっているのに小池知事はなにをしたのか? 国に対して「もっと金を引っ張ってこい」といったのか? あれほど連日テレビに出ていて「災害指定すべきだ」と国に要求したのか? せめてコロナを災害指定していれば、家を失った人、家賃を払えなくなった人にも見なし仮設という形で住居を保障できる。このままでは会社が潰れるから従業員を解雇するといって、600人全員解雇するタクシー会社もあった。災害に指定されていれば、全員解雇されなくて済んだ。雇用保険法の特例で、失業していなくても失業手当がもらえる。なのに国はとぼけて金を出し惜しみ、コロナを災害指定しなかった。 リーマン・ショックのときの給付金は一万数千円。今回は10万円だ。このレベルの違いを考えても、間違いなく災害指定すべき案件だったのに国は逃げた。これに対して、東京都として「どうして災害指定しないのか」となぜ(都知事は)連日テレビに出演しながらいわなかったのか? 全国的な声にしていく先頭にどうして立たなかったのか? この間、毎日のように行き場を失った人たちに声を掛けた。でも、多くの方に共通しているのは「全部自分が悪い」と思っている。「自分が頑張ってこなかったから」「自分に貯金がなかったから」「自分が職を失ってしまったからだ」と。それは違う、全然違うと声を大にしていいたい。 働き方が壊され、安い賃金で長時間働かされ、高い家賃と安くない社会保険料や税金などで搾りとられ、それらを簡単に中抜き、横流しされ続けるような間違った施策の連続。そのしわ寄せで、コロナ前からみんな経済的に緊急事態だった。その限界まで頑張り続けているところにコロナが来たのだ。頑張るべきは政治なのだ。誰に聞いても「自己責任」というのなら、何のために政治があるのか。 私が政界に入る理由になった状況は今もまったく変わっていない。目の前で苦しんでいる人たちに手を差しのべる−−自分がバッジを付けて何らかの立場になってそれを実現するために政界に足を踏み入れた。では、そのチャンスはいつくるのか? この秋か、この冬か、来年の衆院選か。そこで私たちが議席を増やせたとしても、今目の前にいる人たちをすぐに救うことは無理だ。それなら、1400万人の東京都民の生活を直接底上げできる、その声を直接聞いて、餓死する寸前の人たちに対してすぐにでも手立てを打てるのなら、目の前の東京都知事選に出るのは当然だ。 ここまでは、私も宇都宮健児さんも同じ考えだろう。宇都宮さんも同じような支援をされてきた方だ。だが、私と宇都宮さんでは財政にかかわる部分の考え方が違う。 地方債で迅速に金出す 東京都は財政的には超優良団体だ。もちろん国に「カネを出せ」と本気で迫っていないので、今後本気で要求すればカネが出る可能性もあるわけだが、現在のところ画餅に過ぎない。それなら東京都として地方債を積極的に発行するしかない。その上限はいくらまで可能か。 地方の財政状況を判断する指標として実質公債費比率がある。1年間の自治体の財政規模に占める公債費(ローン返済額)の割合だ。東京都は平成29年度で1・6%、平成30年度で1・5%だ。全国平均は10・9%であり、10倍以上もの差がある。つまり、東京都独自で資金を調達できる余地がたくさんある。全国の自治体のなかで緊急事態に指定された地域を見てみると、北海道では20・9%、大阪府は16・8%、埼玉県は11・4%程度だ。東京都が総務大臣の許可なく、調達できる資金は20兆円は固い。総務省とやりとりして出した試算だ。だとするならば、いまコロナ災害で苦しんでいる人たちにカネを出す。そして、次にやってくる第二波、三波でおこなわれるであろう「補償なき自粛」に対しても迅速にカネを出す。東京都としてやれる最大限のことをやっていくのが当たり前の話だ。 こっちにある予算をこっちに付け替えるとか、無駄を省いてつくれる予算は果たして何兆円だろうか? これでは間に合わない。この事態を見るならもっと大胆に出さなければならない。それを東京都からやる。それをいえるのは自分しかいない。だから立候補を決めた。そのうえで以下のような政策を掲げた。 コロナ災害打開の政策 @東京オリンピック・パラリンピックは中止 世界各国のコロナ感染状況を鑑みれば、来年の五輪開催は不可能だ。五輪開催にしがみつけば、第二波、三波への正常な判断がおこなえず、コストも余分にかかる。 やれるやれる詐欺だ。ワクチン、特効薬はいつできるのか? 確定していないものに、「もうすぐできる」という空気を振りまきながら、このまま「やれる、やれる」という空気を醸成し続けるわけにはいかない。「五輪を必ずやれる」という空気のなかで起きることは、判断を間違えるということだ。ならば、まずきっぱりとやめるという宣言を開催都市がおこなう。IOCに判断をなるべく急いでもらうというのではなく、ハッキリやめると決めることでコストと人的資源を別のところに回す。 A総額15兆円で、あなたのコロナ損失を徹底的に底上げ 東京都は20兆円の地方債を発行したとしても、地方債を発行する場合に総務大臣の許可が必要な「実質公債費比率18%以上」の団体にはならない。ならば15兆円で、今コロナで被害にあっている方々への支援やその後の備えを徹底的におこなう。 まずは全都民に10万円給付する。高校・大学・大学院・専門学校などの授業料を1年間免除する。先日起きた23歳の男性がボーガンで家族を撃った殺人事件。その原因ははっきりとはわからないが、学業を続けられなくなったことも関係しているのではないかと思う(男性は事件前に学費未納で大学を除籍されていた)。やはり緊急時には若い人たちを支え、しっかり勉強して将来の納税者になってもらうという考え方に立つべきだ。 そして、中小企業・個人事業主(フリーランスを含む)の前年度事業収入と今年度事業収入を比較してマイナス分を補償する。 病院を潰さないため、減収に対し、災害時と同様に前年度診療報酬支払額を補償する。 そして、次のコロナ自粛に備える。第二波、三波で再び「補償なき自粛」がおこなわれる恐れがあり、そのさい全都民に10万円を見舞金として給付する。全事業者に簡単なウェブ申請で受けとれるようにして、まずはサッサと100万円を支給する。事前に膨大な資料を提出して審査待ちというようなことはせず、審査は後回しだ。本人の労働や営業実態が確認できればすぐに配る。都内には約40万事業者があるので、この二つの給付金には5兆円程度プールしておけば可能だ。そして全世帯の水道や光熱費を1年間免除する。これも1兆円少しで可能なことだ。 また、緊急事態時に集中しておこなう施策として、医療従事者や保育、介護、バス・タクシー運転手、駅員、スーパー店員などエッセンシャルワーカーへ危険手当として日額2万4000円を支給する。海外に派遣されて戦闘などに巻き込まれたときに自衛隊員に出る危険手当を基準にした金額だ。目に見えない危険に冒される恐れがあるわけだから、これくらいの危険手当は当然必要になる。 B都の職員3000人増員 ロスジェネ・コロナ失業者に職を 誤った政治の犠牲となったロストジェネレーション世代を中心に、コロナ不況で職を失った人々を対象にして都職員3000人を新規雇用する。月収40万円として、約180億円で実現できる。コロナ後も一般財源の7兆円で予算を再編成すれば継続雇用できる。 C低廉な家賃で利用できる住宅を確保 「住まいは権利!」を東京から 都営住宅の空き部屋4万戸に加え、都内の活用可能な空家69万戸。共用住宅空き部屋41万室の中から都が必要な分を借り上げ、単身、高齢者、シングル家庭などどんな境遇であっても低廉で借りられるようにする。 DPCR検査・隔離・入院体制を拡充 都立病院の独立行政法人化は中止 行政としての医療をしっかりと担保するためには都立病院の独法化は許してはいけない。成功例はどこにもない。採算重視になれば当然人件費は削られ、病院を利用する側の利用料も上がる。そのような医療にしてはならない。 保健所の予算と人員を増やす。医療者、エッセンシャルワーカー、濃厚接触者、コロナウイルス感染の疑いのある者が優先的に検査を受けられる体制を構築する。 E首都圏直下地震・大水害から都民を守る 都として防災庁を設立する。ここに1000人単位での登用が必要になる。消防庁OBや自衛隊OBなど技能者を先生にしながら、全国の被災地に足を運んで活動する若手の人たちでチームをつくり、その1000人が都内各地で防災アドバイザーをしながら地区ごとの繋がりをつくっていく。実際に首都圏直下地震が起き、火災が多発しても救助が遅れる可能性が高い。公助を放棄する意味ではなく、緊急を要する状況下で隣近所で支えあう共助の軸となる人が現実的に必要になってくる。そのために防災庁で人材を育成しながら、都内の町内会などと結びつきながら軸となる人を置いていく。そこで情報を共有しながら実効性のある防災計画をつくる。 F障がい者のことは障がい者で決める東京 都の障がい者政策の責任者には、障がい者の方に就いてもらう。当事者のことは当事者で決める。審議会等の政策決定の場も必ず半数以上は障がい者当事者とし、個々のニーズや障がいに合った十分な介護を保障する。 G保育所・特養の増設 介護・保育職の待遇大幅改善 待機児童・待機高齢者をなくすため、施設建設と人員を増やすことが必要。全産業平均並みの給与を介護・保育職に保障する。 全国と繋がり大運動に 記者との質疑で山本氏は、「最大の焦点は、“国からカネを引っ張れ!”という主張を、全国の自治体トップと繋がって国民的な大運動にすることだ。自分たちの住民を守らせろ、という運動だ。現状は借金であり、それによって国から首輪を付けられる。地方分権といいながら、財政的に国が手当てをする責任を果たさず、自治体に借金をさせてその元利の償還金を交付金によって裏付けするという現行のシステムである限り、国が地方に対してより支配を強めるというものでしかない。私が都知事になるなら“国からカネを引っ張れ”を本気でやっていく。全国の知事や住民の方々と一緒に“国は責任を果たせ”と主張することと、東京都オリジナルで大胆な財政支出をするのがセットだ」と強調した。 さらに「国と争うことになってもコロナウイルスは災害として東京都で指定する。地方財政法五条では地方が起債するときの用途がほとんどハード事業に限定されているが、東京都として災害指定してソフト事業にも使えるようにする。それに国が文句をいうのなら、カネを出さないことを大問題にすべきだ」とのべた。 小池都政4年間の評価については、「小池知事の公約であった“七つのゼロ”も、やれてない意味でのゼロになった。やりますといってやらない“大改革”のバージョン2を誰かお望みだろうか? 日本の貴重な文化である築地を潰し、その後の再活用や、殺処分ゼロもまったく進んでいない。“夜の街クラスター”などといいながら、一番クラスターが起こる満員電車問題は解決されていない。夜の街という周りから叩かれやすい立場に置かれている人たちに、あまりにもコロナ感染の責任を押しつけすぎている。それなら全職種の検査が必要であるはずだ。満員電車の解消、時差出勤など、人を過密に往来させないようにするためには、都財政だけでは無理であり、国に必要な財政出動を求めなければいけない。本当にコロナ感染を抑制する気があるなら国が災害指定するべきだ。私が都知事を目指すのは、東京がたいへんなことになると全国に影響するからだ。東京は全国の人口の1割、GDPでは2割を占めている。全国に困窮が広がらないようにするためには東京でブレーキを掛けるべきであり、東京のリーダーが先頭に立って旗を振る必要がある」とのべた。 また「野党共闘の宇都宮氏と票を割り、結果的に現職を利するのではないか?」との質問に対しては、「自分は小池氏の票を削れる候補者の一人だと思っている。選挙をどうでもいいという人にリーチできるのも自分だと自負している。私を支持してくれてきた方が人情的に宇都宮さんを応援されるケースもあると思うが、それは個人の自由であり、尊重されるべきだ。私が狙うのは、小池氏の票を削りにいくことと、選挙に興味を失って投票の度に捨てている人たちに力を貸してもらいたいという訴えを広げていくことだ」とのべた。 そして「小池氏が圧倒的に優勢であることはわかっている。だからみんな本気になってやらなければならない。当然勝つつもりでやる。それを決めるのはみんなであり、最後までわからない。1400万都民のうち選挙戦で会える人数は限られているかもしれないが、それをいかに広げていくか。相手にとって不足はない。チャレンジャーとして最大限やる」と語気を強めた。 https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/17580
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