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日本が亡国の道を突き進む元凶、「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害
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投稿者 中川隆 日時 2022 年 1 月 11 日 13:28:57: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 知ると脱力 日本の伝統の正体(笑) 投稿者 中川隆 日時 2021 年 4 月 11 日 09:46:15)

日本が亡国の道を突き進む元凶、「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害
上久保誠人 2022/01/11


昨年は、コロナ禍によって「デジタル化の遅れ」をはじめ、日本社会のこれまであまり明らかになっていなかった問題が噴出した年だった。今後さらに新型コロナが感染拡大した場合、今の医療体制ではひとたまりもないことは明らかだが、政府は抜本的な医療改革には手をつけない。この日本の停滞の根源には、子どもの「受験」から始まる古いキャリア形成にあると考える。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

何事も動き出しが遅い日本はキャリアシステムに問題あり?
 日本は政策が「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」だ(本連載第290回・p6)。

「コロナ禍」への対応では、感染拡大期に何度も医療崩壊の危機に陥った(第282回)。ワクチンについても、世界最先端の情報を得られず、諸外国に比べて確保も接種も初動が遅れてしまった(第279回・p3)。

 後に、菅義偉首相(当時)の強い指揮でワクチン接種の遅れを取り戻し、感染者数・重症者数・死亡者数においては、欧米などと比べて低く抑えられている。だが、国民の政府のコロナ対策への評価は高くない。かろうじて医療崩壊を避けられても、今後強毒性の感染症のパンデミックが起こったら、今の医療体制ではひとたまりもないことは明らかだ。

 だが政府は、抜本的な医療体制の改革には手を付けない。一体なぜなのか。

 今回は、日本社会の「受験」「就職活動」から「年功序列」「終身雇用」の「日本型雇用システム」という、日本独特のキャリア形成のシステムに焦点を当てる。

「学校では、塾通いを隠し、やったふりをしろ」が問題の原点
 日本を動かしている政治家、官僚、財界人は、今の日本のキャリアシステムの頂点に君臨している人たちだ。

 例えば、岸田文雄首相は「開成閥」とされている。開成高校の同窓である官僚、財界人が首相の脇を固めているというのだ。また、世襲議員や官界・財界の「麻布閥」が存在するともいわれてきた。

 だが、このキャリアシステムが生み出したものは、「誰も結果を出そうとしない」社会だ。結果には「責任」が伴うが、それを嫌がり、誰も責任を取らない社会となっている。

 まず、「受験」から考えてみたい。中学・高校・大学の「受験」は、学校の外部にある「塾」に通わなければ合格が難しい。学校で学ぶだけでは、難解な入試問題が解けないのだ。

 私は子どもがいるので実際にみたことだが、親が子どもに「塾のことを学校でしゃべるな」という。学校の学びは塾より遅れていることが多く、子どもはすでに塾で学んだことを隠して、学校で勉強を「やったふり」をする。

 運動会、学芸会などの学校行事も、受験勉強の妨げにならないように「やったふり」をする。親が、子どもをビデオ撮影する「思い出作り」の場となる。

「学校では、塾通いを隠し、やったふりをしろ」という親の教えは、子どもに相当な悪影響がある。これが、「出るくいは打たれる」のを避けて、黙って静かに時が過ぎるのを待つ日本社会の風潮の原点になっていると思うのだ(第56回)。

 これは、学校が「次のステップのためにいる場所」でしかないということを意味している。小学校は中学校の、中学校は高校の、高校は大学のためのステップだ。

 大学も、就職のためのステップでしかない。あくまで「文系」の話と断っておくが、大学入学という「学歴」を得たら、1年生から就活(就職活動)の準備をするという学生が少なくない。

 今の学生は、ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる。

 私は大学で教員をしているが、ゼミやサークルでは「副リーダー」になりたがる学生がいる。履歴書に記載でき、実質的には何の責任がない役をやりたがるのだ。サークルは、4年間活動に没頭するよりも、就活に有利なところに籍を置くことを重視する。海外留学も「履歴書」でアピールできるものだ。短期のものが人気だが、それでは語学力がつかず、異文化も理解できない。

無難に就職、無難な配属を選んで無難に「やったふり」
 次に「就職活動」を考える。

 自ら起業する学生が増えているというが、それは一握りにすぎない。結局、大多数の学生が「年功序列」「終身雇用」の会社に入社する。同じ会社に勤め続ければ、同期と横並びで出世していくシステムの中で、ローテーションでさまざまな業務を数年ずつ経験しながら、キャリアアップしていくことになる。

 このシステムの特徴は、少なくとも表面的には、同期入社の出世は横並びということだ。ゆえに、何か問題が起きて、横並びの出世コースから外れると、元に戻るのが難しい。

 だから、自分の担当部署が無難であることが何より重要になる。自分が担当の間、何か問題が起きても、それを解決するより、その問題をできるだけ隠して「先送り」し、別の部署に異動するときに、後任に渡そうとすることになる。

 逆に、問題をわざわざ表沙汰にして、解決しようとしても評価されない。「先送り」をしてきた先人にとって都合が悪い。だから、そういう人は煙たがられる。組織の人事評価は、周囲と調和していく「穏健な人」が高く評価され、出世していく傾向になる。

 要するに、学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ。

海外では「公募」が基本、「やったふり」では生きられない
 ところが、日本以外の社会では、「年功序列」「終身雇用」というシステムは基本的に存在しない。欧米だけではない。私の勤務校の大学院にはアジアの国々の公務員が留学しているが、彼らの国の制度では、公務員資格を持ち、さまざまな役所を渡り歩きながら、出世していくそうだ。

 海外では、組織を移籍する時は、基本的に「公募」を使う。経営者でさえ「公募」で決まる。日本でいう「プロ経営者」だ。部長や課長なども、公募で決まる。内部昇格はあるが、「公募」を必ず行う。外部から応募してきた人材と比べて最適と審査された時のみ、内部昇格できる。要するに、役職に適合する人を組織内外に幅広く募り、最適な「専門家」を採用するのだ。

 そういう社会で出世するには、「やったふり」で静かに待っているだけではいけない。「業績」を出し続けねばならないのだ。それを履歴書に載せて、次のポジションを求めて公募にチャレンジする。その繰り返しでキャリアアップしていくのだ。

 日本と欧米の組織の違いを、官僚組織を事例に具体的に説明してみよう。

 日本では、キャリア官僚は省庁で新卒一括採用される。「年功序列」「終身雇用」で、同じ省庁で退官するまで勤め続ける。その間、さまざまな部署をローテーションで経験し、ジェネラリストになっていく。

「政策」は、省庁内で対応可能な範囲内で立案されることになる。現在ある組織を前提にして、その枠を超える政策は作られない。他の省庁との協力も拒否する。複雑な問題は、「先送り」することになる(第183回)。

 その端的な事例が、待機児童問題の解決策だった「幼保一体化」だ。厚生労働省の管轄する保育園と、文部科学省が管轄する幼稚園を一体化しようとしたが、厚労省と文科省の「縦割り」を打破することができず、待機児童問題の解決は「先送り」され続けている(第128回)。日本の行政では、適切な政策の実現よりも、各省庁の組織防衛が優先されるということだ。

 一方、海外の官僚組織では、組織防衛よりも「政策」が優先される。既存の省庁で対応できない新しい政策課題は、新しい役所を設置し、専門的な人材を集めて政策立案をするのだ(第156回・p3)。

 例えば、英国が2016年に「EU離脱」を決定した時、テリーザ・メイ首相が就任直後に、「EU離脱省」という新たな役所の設置を決断して、EUとの離脱交渉に臨むことにした。EU離脱によって生じる複雑な課題を、既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置し、専門家を新たに雇用して対応したのだ。

コロナ禍で明らかになった日本の遅れ、根本に「先送り」
 現在の、コロナ禍で明らかになった「デジタル化の遅れ」などの問題も、省庁、民間企業、政界で問題に真剣に取り組まず「やったふり」をして、解決を「先送り」し続けた結果ではないだろうか。

「デジタル庁」がようやく発足し、自民党は胸を張っているが、デジタル化は欧米から20年は遅れているのが現実だ(第202回)。

 コロナ対策も問題だらけである。基本的に、コロナ対策を動かしているのは厚労省だ。政府の専門家会議、厚労省のアドバイザリーボードなど「審議会」に招集された御用学者は、省庁が決めた政策に「お墨付き」を与える存在でしかない。

 だから、御用学者とは、現在世界の最先端の研究に取り組む若手ではない。すでに、第一線から引退状態の重鎮だ。彼らが「権威」として審議会に呼ばれ、政策に「お墨付き」を与え、省庁は政策の「正当性」を得る。

 御用学者も、厚労省の官僚も、「学歴社会」「年功序列」「終身雇用」の日本社会の頂点に君臨する存在だ。その結果、コロナ対策は、「やったふり」「先送り」「縦割り」「組織防衛」ばかりの混乱状態となり、国民を不安に陥れた。

 まず、ワクチンの入手・接種の遅れだ。専門家は、世界のワクチン開発の進捗を読み誤り、日本のワクチン入手は諸外国と比べて大幅に遅れた(第277回)。また、国内のワクチン利権を守ることが、ワクチン入手の障害になったという指摘もあった(選択12月号 『<<>)。

 次に、何度も「緊急事態宣言」の発出を繰り返すことになった「医療体制崩壊の危機」だ。病床を確保するための議論は、専門家会議でほとんどなされなかった(第277回・p2)。それは、専門家会議に、感染症の専門家しかいなかったからだ。

 彼らは感染症の予防・治療が専門でも、医療体制の確保は専門ではなかった。病床の確保は、他の疾病、糖尿病、心臓病、がん、脳卒中等の病床を分けてもらうしかない。だが、それらの疾病の専門家は会議にいないのだから、病床の確保の議論ができるわけがなかった。要するに、病床の確保は、医学界全体で取り組むべき課題だったが、医学界の「縦割り」が問題解決を妨げたのだ(第262回)。

 結局、厚労省は「縦割り」「既得権」に手を付けないようにして、ひたすら国民に行動制限を求める対策に終始してしまったのではないだろうか。

 私は、「受験」「就活」「年功序列」「終身雇用」の日本型のキャリアシステムそのものを変えていかなければ、今後も日本が直面するさまざまな課題について、その解決に正面から取り組まず、「やったふり」「先送り」が続くことになると考える。

 日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく。それは「亡国の道」である。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E4%BA%A1%E5%9B%BD%E3%81%AE%E9%81%93%E3%82%92%E7%AA%81%E3%81%8D%E9%80%B2%E3%82%80%E5%85%83%E5%87%B6-%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%B5%E3%82%8A-%E5%85%88%E9%80%81%E3%82%8A-%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E5%BD%A2%E6%88%90%E3%81%AE%E5%BC%8A%E5%AE%B3/ar-AASDqLD  

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