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アメリカの食料戦略
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/140.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 2 月 14 日 20:20:18: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 中川隆投稿集 _ 世界の料理 投稿者 中川隆 日時 2020 年 2 月 14 日 20:15:15)


アメリカの食料戦略

万一、日本がアメリカから独立しようとすれば、アメリカに有る資産は凍結され、食糧も供給されなくなる。 
こうした恫喝で世界を震え上がらせ、屈服させようとしている。
支配できない国は破壊して「石器時代」にするというのがアメリカ支配層の基本スタンスだ。

猿人間のジャップには毒入り牛肉でも食わせておけ
http://www.asyura2.com/09/gaikokujin01/msg/516.html

トヨタの為に毒塗オレンジを食べさせられている日本人 _ 日本を農業の無い国にして良いのか?
http://www.asyura2.com/09/gaikokujin01/msg/518.html

国売り飛ばすTPP参加表明
http://www.asyura2.com/12/lunchbreak52/msg/679.html

亡国最終兵器 TPP の真実
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/429.html

中野剛志 TPP黒い条約
http://www.asyura2.com/12/lunchbreak52/msg/843.html

TPP賛歌 _ TPPに加入するとこんな甘美な世界が待っている。
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/204.html

日本の食料自給率は本当に世界最低なのか
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/677.html

補助金なしの価格では日本の農作物はアメリカや欧州より安く、日本の農業は欧米より効率的
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/528.html

農業補助金が収入の5割 アメリカ農業は競争社会ではない
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/793.html

遺伝子組み換え作物 予測のつかない危険性
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/338.html

モンサント社員が食べない遺伝子組み換え食品
http://www.asyura2.com/12/lunchbreak52/msg/840.html

オーガニック食品と一般食品、どちらを買うべき? 米研究『モンサント社の恐怖』
http://www.asyura2.com/09/health15/msg/564.html

モンサントに約2200億円の賠償命令、除草剤の発がん性めぐり3度目の敗訴 米加
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/490.html

 

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コメント
1. 中川隆[-10709] koaQ7Jey 2024年5月07日 07:01:20 : 3Ku7HP7b3c : MEtkNDZEQXNsc28=[3] 報告
吉野敏明 _ 戦後アメリカに強制された洋風の食事が日本人の病気の原因
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16850855

吉野敏明 _ 日本人が病気になる原因は小麦・砂糖・牛乳と植物油
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14141482

2. 中川隆[-9407] koaQ7Jey 2024年8月17日 11:28:54 : 1HYAZwu5VA : alhralpjbTRsNTY=[4] 報告
ヤバすぎる日本…「農家は自分たちで稼げ!国は何もしません」|室伏謙一
ChGrandStrategy 2024/08/16
https://www.youtube.com/watch?v=l-a81POF44s
3. 中川隆[-9376] koaQ7Jey 2024年8月23日 06:49:47 : zT9dkVUGpA : eUp6T2xTNjBwQmc=[4] 報告
<■82行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
店に行ってもコメが買えない!  日本の食糧危機はすぐそこ 気づいたときには後の祭り
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16865741

米不足の根本原因は猛暑や地震ではない!抜本的に見直すべき日本の農政【朝香豊の日本再興チャンネル】
2024/08/22
https://www.youtube.com/watch?v=pDwVwTr4mE4

【討論】日本人の命と安全 食糧とエネルギー危機[桜R6/7/22]
https://www.youtube.com/watch?v=iEmWgsKL2CY

パネリスト:
 石井孝明(ジャーナリスト)
 柴田明夫(資源・食糧問題研究所 代表) 
 鈴木宣弘(東京大学大学院教授)※スカイプ出演
 竹村公太郎(日本水フォーラム代表理事・事務局長)
 藤和彦(経済産業研究所 上席研究員)
 山田正彦(元農林水産大臣・弁護士)
司会:水島総


農業の余命はあと5年?!トンデモナイ中身!食料・農業・農村基本法の改正法|原口一博
ChGrandStrategy 2024/07/16
https://www.youtube.com/watch?v=6IchwTQKjsc

ヤバすぎる日本…「農家は自分たちで稼げ!国は何もしません」|室伏謙一
ChGrandStrategy 2024/08/16
https://www.youtube.com/watch?v=l-a81POF44s

鈴木宣弘 _ 迫る食料危機! 私たちの食と農を守るためにできること
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14062214

ダボス会議で進む日本の食の危機【東京大学大学院 農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘氏@】
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/04/07
https://www.youtube.com/watch?v=saLZz5Ds1N0

戦後から失われた?日本の食問題【東京大学大学院 農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘氏A】
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/04/11
https://www.youtube.com/watch?v=TjRNK1-rjwM

戦後仕組まれた?日本の食料自給率の低下【東京大学大学院 農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘氏B】
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/04/13
https://www.youtube.com/watch?v=5HgunY1Sv-4

国際基準の食の安全とは?日本の食はおかしい【東京大学大学院 農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘氏C】
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/04/14
https://www.youtube.com/watch?v=FkopkPjowYs

吉野敏明 _ 戦後アメリカに強制された洋風の食事が日本人の病気の原因
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16850855

60歳を過ぎてアレ食べてる人は、確実に病気になって寝たきりの人生を送ります
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16837571

日本人が忘れ去った能力 _ 昔のおばちゃんは、米俵60kg x 5つを持ち上げてた
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16853689

猿人間のジャップには毒入り牛肉でも食わせておけ
http://www.asyura2.com/09/gaikokujin01/msg/516.html

トヨタの為に毒塗オレンジを食べさせられている日本人 _ 日本を農業の無い国にして良いのか?
http://www.asyura2.com/09/gaikokujin01/msg/518.html

終戦後、アメリカは わざと日本人を飢えさせた
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14139458

アメリカの食料戦略
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/140.html

補助金なしの価格では日本の農作物はアメリカや欧州より安く、日本の農業は欧米より効率的
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/528.html

農業補助金が収入の5割 アメリカ農業は競争社会ではない
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/601.html

昭和時代の「食生活」_ 米国の食糧輸出戦略
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14036563

アメリカに逆らうと暗殺される? 農業政策から学ぶアメリカと日本の主従関係
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14091466

4. 中川隆[-9249] koaQ7Jey 2024年8月31日 15:24:53 : ixnXJ8SvUs : Um9YS2ZKMEZya3M=[6] 報告
元金融マンがコメ農家に!/日本のコメ農業はなぜ衰退したか?
もぎせかチャンネル 2024/08/30
https://www.youtube.com/watch?v=LtDWJa96xR8

NPO法人「見沼の里」(埼玉県さいたま市)
https://minumanosato.com
会員になると、有機米作りを応援できます。政府が守らないなら、国民が守りましょう!

【訂正】
23:23 テロップが「見沼の郷」になっていますが、正しくは「見沼の里」です。

5. 中川隆[-8836] koaQ7Jey 2024年10月15日 01:47:14 : BJpFlPD3eo : SmUxeHl5d3g2bVU=[1] 報告
<■194行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
コメの自給を手放してはならない――対米従属の果ての農業と食の危機 食政策センター・ビジョン21代表 安田節子
2024年10月15日
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/32236

 日本の食料自給率は1965年に73%あったものが、現在38%と低迷が続いている。人口1億人以上を擁する国で、これほど自給率の低い国はない。だが、政府にこれを向上させ、食料の国内自給を実現させようという意志はあるのか、強い疑問を持っている。

 今、農業の衰退に拍車がかかっている。農家数も農業人口もこの50年で5分の1に減少した。農地は最大だった1961(昭和36)年の609万fから2019年には439万fへと約169万fも減少した。このうち水田の減少が大きく、1961年から100万fもの減少となっている。農業経営体はすでに100万人を割っている【グラフ@】。

 2050年には、農家戸数は2023年2月比でなんと8割減少すると予測されている。現在、農家の平均年齢は70歳。あと10年で80歳になり、高齢化で廃業していく。それは村落が消滅することを意味する。このような状況を作り出してきた日本政府は衰退に手をこまねいている。意図的に放置していると思わざるを得ない。

 内田樹氏が、過疎地が無住地となることにビジネスチャンスを見出す財界を政府は傍観していると指摘した(農業協同組合新聞8月19日)。だれも住まなくなれば原発を建てようが、放射性廃棄物を持って来ようが、メガソーラーを持って来ようがなんでもできる。そのような見方もあると思う。

 そして、コメに危険信号が灯り始めた。コメ農家はこの20年で急減し、100万戸も廃業した(2003〜21年)。それによりコメの作付け面積はこの50年で半減している【グラフAB】。

 今年、コメの不足が騒がれた。単年度の需給調整によるぎりぎりの生産量のため、なにかのきっかけがあればコメ不足に陥る。そして来年以降、生産量が需要量を下回るようになり、コメ不足は顕在化するといわれている。シンクタンクの三菱総合研究所と農水省は、16年後の2040年には156万dのコメが不足するという試算も出している。コメという基礎的な食料の持続的な生産と安定供給が脅かされている。

米国余剰穀物のはけ口に  自由貿易協定の下で

 日本農業をこのように衰退させた元凶は、アメリカが主導した自由貿易協定にある。ガット・ウルグアイラウンド、WTO、TPPと、強化されてきたアメリカ主導の自由貿易協定のもとで日本は関税撤廃を余儀なくされ、輸入増大によって食料自給率は低下し続けた。

 アメリカは日本を余剰穀物のはけ口にした。日本人の食生活をパンや肉食、すなわちアメリカの小麦に依存させ、家畜飼料のトウモロコシを買わせ、食用油の大豆を買わせる形にした。大豆の生産は激減し、自給率は2%まで落ち込んだ。今、わずかに盛り返して6%になっているが、全国津々浦々でつくられていた大豆がそのような惨状に至った。小麦も生産の減少が加速し、自給率は現在15%。国内で流通しているほとんどが輸入小麦という事態だ。

 そして、ミニマムアクセスが1993年のガット・ウルグアイラウンドで合意された。関税化と合わせて、輸入量が消費量の3%に達していない農産物(日本の場合はコメ)に「低関税での輸入機会を開いておく」というものだ。「コメを死守せよ」「一粒のコメも入れるな」という農協を中心にした大きな運動によってコメだけは守られていたが、それが対象になったのである。だが、あくまでも「輸入機会を開いておく」というものであり、どこにも「輸入義務」と書いていない。

 ところが日本政府は、これは義務であるかのようにいい、マスコミもそのように書いた。現在、日本は77万d(消費量の10%以上)のコメを輸入しており、そのうち半分はアメリカから買うという密約がある。同様に乳製品も「輸入機会を開いておく」というカレントアクセスを義務のように扱い、13・7万d(生乳換算)も輸入し続けている。

 現在、肥料・飼料価格は2倍近く、燃料費は5割高と暴騰する一方で、乳製品は過剰在庫で価格が低迷しているにもかかわらずだ。酪農家の苦境に対して政府が出した政策は「乳牛1頭殺せば15万円払うから、全部で4万頭殺せ」というものだった。現在、酪農家の廃業がコメ農家の廃業を上回る勢いで続出している。

 ミニマムアクセス、カレントアクセスの枠を満たしている国は日本だけだ。WTO加盟国の関税割当枠(MA、CA)品目に対する実際の輸入比率は52~55%であり、おおむね半分だ。だが、日本のコメのミニマムアクセスは100%、乳製品はなんと236%と、倍以上も輸入し続けている(WTO資料2022年9月)。

 自由貿易で「障壁」とされたのが食品安全規制だ。輸出国は輸入国の基準に合ったものを輸出し、輸入国の基準に違反のものは輸入拒否がルールだった。ところがウルグアイラウンドから農産物が自由貿易対象になり、自由貿易を妨げない食品安全規格を標ぼうする国際規格や米国基準に合わせるハーモナイゼーションがルールとなった。それまで厳しい食品安全基準のある日本だったが、貿易障壁とならないよう規制緩和に励むことになったのだ。

 食品添加物の場合、たくさんの食品添加物を認めているアメリカの食品を輸入するため、政府はアメリカとの差1000品目の添加物を次々と許可する作業を進めている。それまでは食品への使用を禁止していた抗生物質(ナイシン、ナタマイシン)を認め、アレルギー懸念のある着色料(コチニール)などもアメリカの要求に負けて認めた。

 食べた人の健康影響が懸念され、ほとんどの国が禁止している肥育ホルモン剤や赤身を増やす飼料添加物(塩酸ラクトパミン)を畜産物輸出国アメリカでは使用している。日本は検疫がモニタリング検査に緩和され、尻抜けのため、輸入肉への懸念がある。

 検疫検査も貿易障壁だ。1985年の中曽根内閣のとき「市場アクセス改善のためのアクション・プログラム」が発表され、検疫を弱体化させ、迅速化、簡略化が図られ、ほとんどがモニタリング検査になった。

 1991年のオレンジ・牛肉の輸入自由化のさいに、米国産柑橘類に日本が禁止するポストハーベスト農薬が使用されていたため、検疫が廃棄したことでアメリカから圧力がかかった。そこで日本政府はポストハーベスト農薬を「食品添加物の保存料」とする方便を使って現在も輸入し続けている。しかも近年ではアメリカから最大残留値が提示されるようになり、日本政府はその最大残留値が収まる値に規制を緩和している。日本はアメリカの植民地といわざるを得ない。


稲刈りをする農家(山口県)

遺伝子組換もゲノムも 日本人はモルモットではない

 もう一つバイオテクノロジー食品の扱いがある。TPP協定に「遺伝子組み換えの新規承認を促進すること」という条項が入った。日本は忠実に、申請を片っ端から認可し、現在、遺伝子組み換えの認可数は世界一となっている。

 そして新しく出てきたのがゲノム編集食品だ。2019年、トランプ元大統領が大統領令で「ゲノム編集食品の障壁をなくすこと」を指示した。日本政府はすぐさま、規制なしの方針を発表した。人類がこれまで食べたことのない新しい食品を規制なしとし、表示も安全性評価も不要とし、任意の届け出のみで流通可能としたのだ。食品安全性評価は動物実験が必要だが、ゲノム編集食品は動物に食べさせての実験はなされておらず、いまだ統一された評価法もない。日本人はこの新規のゲノム編集食品のモルモットなのではないかと思わざるを得ない。

 アメリカがゲノム編集食品に執着するのはグローバル種子農薬企業の利益のためだ。基本特許のクリスパーキャス9は、コルテバ(デュポン/ダウ)やバイエル/モンサントらが握っている。この基本特許を使って商品化した場合、ライセンス料の支払いが発生するため、商品化されればされるほど、永続的にバイテク企業の懐に入るというわけだ。アメリカではゲノム編集の開発に多額の投資がおこなわれており、現在、目白押しで商品化を待っている。だがアメリカの消費者はゲノム編集を嫌っている。売り先はゲノム編集食品が唯一流通する日本だ。

 日本政府が種苗法の改定で農家の自家採種を禁止したのはグローバル種子農薬企業のためだと思う。バイテク企業は「ゲノム編集食品は遺伝子組み換えではない。普通の作物と同じだ」と主張し、規制なしの流通を獲得した。しかし、遺伝子組み換えでないとしたので、農家の自家採種を特許で縛ることができず、タネ取りされてしまう。このジレンマを解決するために農家の自家採種を原則禁止とした「植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)1991年改訂条約」を盾に、日本政府に種苗法を改定させたと思われる。

 安倍元総理が2013年に「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」といった。そのもとで米国隷従と企業資本を優遇する政策の推進がおこなわれているわけだ。今いる農家の退場を促し、グローバル種子農薬企業やIT大手企業が提唱する農業モデルとして、AIとセンサーによる自動制御の農業や、ゲノム編集などのフードテックで企業が儲かる農業へと移行しようとしている。

コメの自給も奪う狙い 農業に関する日米対話

 私は、TPPで設置された規制改革推進会議は米国企業群の要求受け入れ窓口、すなわち売国窓口だと思っている。ここから次々出された提案によって、農協法や農地法が変えられ、種子法が廃止されて全国の農業試験場が持つ公的種子(コメ、麦、大豆)を民間に払い下げることになった。日本農業を衰退させる悪法が成立したわけだ。

 アメリカは1998年から2008年までの14年間、毎年、「年次改革要望書」という広い分野にわたる規制緩和の要求を突きつけてきた。まさに宗主国と植民地の関係をあらわすものだ。民主党の鳩山内閣のときに年次改革要望書の受け入れを廃止したが、それも束の間で、2011年10月に「日米経済調和対話」と看板を付け替えただけで再び規制緩和の要求書が突きつけられるようになった。食品関係では、残留農薬基準の緩和、ポストハーベスト農薬や食品添加物の承認、栄養補助食品の規制緩和などが要求された。

 そして、2023年4月、ビルサック米農務長官が来日し、「持続可能な農業に関する日米対話」が設置された。日本農業をターゲットにしたアメリカの直接要求の場だ。

 今年2月の会合で出されたのが温室効果ガスの削減の「見える化」だ。「見える化」とは、どれだけ温室効果ガスや農薬、化学肥料を削減したか、削減率を作物に星マークで表示することだ。これの本当の狙いは、水田が温室効果ガスのメタンを発生させるので、メタン削減、すなわち水田を減らさせることにあるのではないか。農政では今、水田を潰して畑に転換することや、中干し期間(イネの成育中に水を抜く期間)を長くするといったことが推進されている。私は、アメリカはコメの自給を日本から奪おうとしているのではないかと思う。

 食料・農業・農村基本法と同時に、「農業経営基盤強化促進法」「食料供給困難事態対策法」の二つが国会で成立した。農業経営基盤強化促進法は一八条で、「一〇年先の集落の農地をだれが耕すか決める計画を地域で来年三月までに策定すること」としている。今70歳の人は10年後は80歳だ。つまり、高齢農家に引導を渡し、農地の集約をはかり、大規模企業農業のための地ならしをすることになる。

 そして食料供給困難事態対策法では、有事に農家はコメ、麦、大豆、イモをつくれといい、違反には罰金を科すといっている。政府は農業の劣化で不測の事態が起こることを想定している。その場合は強権発動でしのげばいいと考えているということだ。

 政府の農業衰退の放置はアメリカ戦略の追随ではないだろうか。アメリカは日本を完全隷属させるために食料(コメ)自給ができない国にするという外交戦略を持つ。農業衰退は日本政府がアメリカに売国的隷従をしてきた結果と思う。アメリカ主導の自由貿易というくびきによってアグリビジネスの餌食にされ、農業の衰退を招き、食料や種の自給を奪われ、国民の健康と命を差し出している。日本は盲目的な米国隷従で食料自給の責務を投げ捨てた植民地なのだ。農業衰退の果てに日本人が飢えに直面する可能性が現実味を帯びている。

 食料自給こそが独立国の証であり、安全保障の礎だ。コメの自給を決して手放してはならない。

 種籾は何年も保存することができる。そして水田は、連作ができ、地下水を涵養し、田んぼダムは水害を減じ、空気を冷やし、多数の生物を養うすばらしい装置だ。先祖が営々と水田を築き、四季おりおりの美しい景観は日本の文化、精神を形作ってきた真髄だと思う。

 水田を潰してはならない。コメを守らなければ日本は独立国になることはできない。完全にアメリカに隷属する国になってしまうことを認識していただきたい。

 加えて、有機が重要だと考える。日本は単位面積あたり世界一の農薬使用大国だ。世界中が禁止に向かっている神経毒で問題のネオニコチノイド系農薬を逆に規制をゆるめて使用している。水田でも多量に使用され、秋田県で水道水から検出されて問題になった。食品や飲料水から私たちは農薬を体に取り込み続けている。子どもの発達障害も右肩上がりだ。

 私は有機自給国にしなければ日本は持たないと思っている。まずは水田の有機化をはかることだ。有機水田の広がりは未来を拓く。同時に有機学校給食を軸にして、地域ごとの有機自給圏を創り出す。それが全国にできれば、日本は有機自給国になれる。絵に描いた餅と思う人もいるかと思うが、決して夢物語ではない。世界の潮流は有機へ向かっている。有機自給国となってアメリカから自立し、真の独立を実現する政治へと転換することが急がれる。
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/32236

6. 中川隆[-8551] koaQ7Jey 2024年11月13日 18:48:11 : uRkw72boEI : OVg5OVJsMEdIWXM=[25] 報告
<■94行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
【鈴木宣弘】オレンジ・牛肉騒動の深層(日刊ゲンダイ オンライン講座)
日刊ゲンダイ 2024/11/13
https://www.youtube.com/watch?v=GF6vFZHnEzA

コメ不足が深刻化して、大騒ぎになったが、同じような構造は牛肉やオレンジにもある。天候不順や中国の爆買い、買い負けなど、いろいろ言われるが、根底にあるのは米国からの自由化要求に応えて、輸入量の増加、関税の削減を飲み、結果、国内の農家を苦しめる選択を続けてきた結果である。米国は戦後、日本を食料で独立させないような対日政策を取ってきた。消費者も安いものに流れた。その結果がいまの惨状だ。輸入牛肉は成長ホルモンまみれである。

農業の余命はあと5年?!トンデモナイ中身!食料・農業・農村基本法の改正法|原口一博
ChGrandStrategy 2024/07/16
https://www.youtube.com/watch?v=6IchwTQKjsc


吉野敏明 _ 戦後アメリカに強制された洋風の食事が日本人の病気の原因
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16850855

昭和時代の「食生活」_ 米国の食糧輸出戦略
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14036563

なぜ、我々は小麦・乳製品を食べる様になったのか? 夏休み企画、親子で学ぶ 日本の食の近現代史
https://www.youtube.com/watch?v=bpayMROBuBw
https://www.youtube.com/watch?v=JRZDQM0cwzM

60歳を過ぎてアレ食べてる人は、確実に病気になって寝たきりの人生を送ります
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16837571

今では考えられない!大正時代の日常生活!!
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14035362

日本人が忘れ去った能力 _ 昔のおばちゃんは、米俵60kg x 5つを持ち上げてた
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16853689

猿人間のジャップには毒入り牛肉でも食わせておけ
http://www.asyura2.com/09/gaikokujin01/msg/516.html

トヨタの為に毒塗オレンジを食べさせられている日本人 _ 日本を農業の無い国にして良いのか?
http://www.asyura2.com/09/gaikokujin01/msg/518.html

終戦後、アメリカは わざと日本人を飢えさせた
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14139458

アメリカの食料戦略
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/140.html

補助金なしの価格では日本の農作物はアメリカや欧州より安く、日本の農業は欧米より効率的
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/528.html

農業補助金が収入の5割 アメリカ農業は競争社会ではない
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/601.html

鈴木宣弘 農業消滅!? アメリカの国家戦略に食い荒らされる「日本の食」
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14018404

鈴木宣弘 _ 迫る食料危機! 私たちの食と農を守るためにできること
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14062214

昭和時代の「食生活」_ 米国の食糧輸出戦略
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14036563

アメリカに逆らうと暗殺される? 農業政策から学ぶアメリカと日本の主従関係
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14091466

梅干し、漬物などの生産農家の9割が廃業? 設備投資に高額な費用が… その背景は【大石が深掘り解説】
https://www.youtube.com/watch?v=0lcnqGE1rJU

猛暑で高級「佐藤錦」シワシワに…生産者の悔し涙 シャインマスカットは日焼け、実割れ
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16859712

米と山 日本の根幹である米農業と林業をどうするべきなのか?
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14090380

価値のある野菜を市場に 「スマート」農業、生命線はデータとハチ
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14112516

全国で5万店以上あった「魚屋」=鮮魚専門店が1万店を切った。激変する日本の水産流通
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16855206

酪農家の窮地を国は救え!  放置すれば4割廃業の危機 血の通った財政出動を
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=14066863

牛を殺せば助成金 …酪農家 過去最悪レベルの「牛乳ショック」で毎日生乳廃棄
https://a777777.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=16855435

7. 中川隆[-8309] koaQ7Jey 2024年12月04日 06:41:16 : HME8FBr4AI : dHhEYjVuM3VGY00=[3] 報告
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新米「5キロ4000円」を尻目にカルフォルニア米は「1609円」…コメ高止まりで消費者は苦渋の“外国米シフト”、農家も「全く収入が増えない」負の連鎖
2024年12月03日
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/12031103/?all=1

 農林水産省は「国民の皆様に安全で安心な食料を供給する責任を負っている役所」なのだそうだ。確かに異論のある人は少ないだろう。ならば「コメの価格が急激に上昇し、全く下がりません。だが生産コストの上昇が原因の一つなので、特に何もしないつもりです」という農水省の方針はどうだろうか。

 ***

【画像】コメの“不都合な真実”を明らかにする極秘データ…「若い人がコメを食べなくなった」は大間違い。最もコメ離れが顕著な“意外な年齢層”とは

 今年8月、コメが店頭から消えた。記憶に新しい「令和の米騒動」だ。農水省は「新米が出回れば、コメは再び店頭に並ぶ」と説明した。それは間違ってはいなかったが、消費者は価格の“高止まり”に泣かされることになった。

 Xにも切実な声が投稿されている。一部をご紹介しよう。《米、高い!以前の10キロの値段が5キロの値段》、《新米5キロ4,000円超えで すっかり高級食材と化してるよ》、《なんで主食がこんなに高いのよ》──。担当記者が言う。

「昨年の秋、都内ならコメは5キロ2000円から2500円の間で販売されていました。ところが今年の9月は3500円まで上昇し、その後も全く下がりません。11月7日に実質賃金の9月分速報値が発表されましたが、2カ月連続のマイナスとなり、物価上昇に追いつけていません。特に人気銘柄の新米となると、5キロ4000円というケースさえあります。これを気軽に購入できるほど高収入の家庭は、それほどないでしょう」

 消費者にとって悪いニュースはさらに続く。農水省は11月19日、コメの出荷団体と卸売業者が売買する際の価格を示す「相対取引価格」を発表した。10月の全銘柄平均は玄米60キロあたり2万3820円で、これは近年稀に見る高値なのだという。

「コメは安くなる」と嘘をついた政府
「これまで年平均で最高価格を記録したのは1993年でした。大凶作が原因で、『平成の米騒動』と呼ばれた年です。40代以上の方なら、タイ米が緊急輸入されたことをご記憶でしょう。あの時は物理的にコメが足りなかったわけですから高値は理解できます。ところが今はコメがあるのに高値です。理解できない消費者がいるのは当然です」(同・記者)

 産経新聞は11月20日の朝刊に「コメ取引、10月も高値圏 1993年『米騒動』超え 政府予測外れる」との記事を掲載。「新米が出回れば価格は下がる」という政府の見通しは外れたと伝えた。全国紙のため「外れた」と上品な表現を使っているが、その背景を知れば政府・農水省が国民に嘘をついたと言われても仕方がない。

「廃止されたはずの減反政策は実質的には継続しており、これがコメ価格の高止まりの原因だと専門家も指摘しています。そして価格の高止まりは消費者物価指数にも影響を与えており、まさに全国の家庭の財布を直撃しています。総務省は11月22日に10月の消費者物価指数を発表しました。その中で『米類』は何と58・9%の上昇を示し、比較可能なデータがある1971年以来、過去最大を記録したのです。Xのコメが《高級食材と化している》という投稿は決してオーバーではありません」(同・記者)

 ところが農水省は、まるで他人事なのだ。

何もしない農水省
 江藤拓農水相は11月22日に記者会見を開いた。この日に消費者物価指数が発表されたため、記者は当然、コメの異常な価格上昇を質問した。

「江藤さんは『息子が3人います』と言い、子供が育ち盛りの時は1日に2回、ご飯を炊いたとの思い出話を語りました。さらに『米の値段の上昇を深刻に受け止められている方々がおられると思います』と理解を示すような発言もありました。しかし結局は農家で生産コストが上昇していることを強調し、コメの価格に農水省が一定の責任を負っていることは認めながらも、《民間の取引状況、需給状況、価格動向をこれからもしっかり見ていく必要がある》と述べるに留まりました。要するに何もしないというゼロ回答だったのです」(同・記者)

 庶民が悲鳴を上げても国は何もしない。こうなれば自衛の行動を取るのは当然だろう。これまでにもパスタなど麺類の購入を増やす「コメの買い控え」が指摘されていたが、最近は「外国米へのシフト」も鮮明だ。

「都内のスーパーを見ますと、1993年の『平成の米騒動』で緊急輸入されたタイ米、つまりジャスミンライスは意外に高いことに気づきます。2500円で買える店はほとんどなく、2000円台の後半から3000円というところでしょう。93年に比べると、家庭でエスニック料理を作ることが増えたことも原因の一つなのかもしれません。そのため『令和の米騒動』で注目を集めているのはカルフォルニア米と台湾米になります」(同・記者)

1609円と2797円
 TBS NEWS DIGは6月17日、「アメリカ産の米『カルローズ』日本産との違いは?国産米の価格高騰で「低価格帯のコメは品薄」【Nスタ解説】」との記事を配信した。

「カルフォルニア米の『カルローズ』に注目した記事です。TBS系列で平日の午後4時53分から放送されている『Nスタ』の放送が元ネタで、放送時間から分かる通り、主婦層を意識したニュース番組です。番組では6月16日、都内のスーパーでカルローズが5キロ1609円で販売されていたと報道。食べた出演者は『言われないと気づかない』と感想を述べ、ピラフや炒飯、カレーで食べるのがお勧めと伝えました」(同・記者)

 11月12日に台湾米の販売を発表したのは大手スーパーの西友だ。関東地域の138店舗で台湾産米「むすびの郷」を取り扱うという。

「日本のコメは短粒種で、ジャスミンライスは長粒種です。一方、カルローズは中粒種なので日本のコメとは食感が違うのですが、外食産業では日本米とカルローズを混ぜたブレンド米を使うところもあります。そのためジャスミンライスを食べたことがない人でも、実は知らずにカルローズを口にしている可能性があるのです。一方、西友が輸入した台湾米は日本と同じ短粒種です。西友も『ほぼ国産米に近い』と説明しており、国産米より2割程度、安い価格で店頭に並べるようです。Xには税込みで2797円の値札を撮影した写真が投稿されていました」(同・記者)

何もしない農水省
 江藤拓農水相は11月22日に記者会見を開いた。この日に消費者物価指数が発表されたため、記者は当然、コメの異常な価格上昇を質問した。

「江藤さんは『息子が3人います』と言い、子供が育ち盛りの時は1日に2回、ご飯を炊いたとの思い出話を語りました。さらに『米の値段の上昇を深刻に受け止められている方々がおられると思います』と理解を示すような発言もありました。しかし結局は農家で生産コストが上昇していることを強調し、コメの価格に農水省が一定の責任を負っていることは認めながらも、《民間の取引状況、需給状況、価格動向をこれからもしっかり見ていく必要がある》と述べるに留まりました。要するに何もしないというゼロ回答だったのです」(同・記者)

 庶民が悲鳴を上げても国は何もしない。こうなれば自衛の行動を取るのは当然だろう。これまでにもパスタなど麺類の購入を増やす「コメの買い控え」が指摘されていたが、最近は「外国米へのシフト」も鮮明だ。

「都内のスーパーを見ますと、1993年の『平成の米騒動』で緊急輸入されたタイ米、つまりジャスミンライスは意外に高いことに気づきます。2500円で買える店はほとんどなく、2000円台の後半から3000円というところでしょう。93年に比べると、家庭でエスニック料理を作ることが増えたことも原因の一つなのかもしれません。そのため『令和の米騒動』で注目を集めているのはカルフォルニア米と台湾米になります」(同・記者)

1609円と2797円
 TBS NEWS DIGは6月17日、「アメリカ産の米『カルローズ』日本産との違いは?国産米の価格高騰で「低価格帯のコメは品薄」【Nスタ解説】」との記事を配信した。

「カルフォルニア米の『カルローズ』に注目した記事です。TBS系列で平日の午後4時53分から放送されている『Nスタ』の放送が元ネタで、放送時間から分かる通り、主婦層を意識したニュース番組です。番組では6月16日、都内のスーパーでカルローズが5キロ1609円で販売されていたと報道。食べた出演者は『言われないと気づかない』と感想を述べ、ピラフや炒飯、カレーで食べるのがお勧めと伝えました」(同・記者)

 11月12日に台湾米の販売を発表したのは大手スーパーの西友だ。関東地域の138店舗で台湾産米「むすびの郷」を取り扱うという。

「日本のコメは短粒種で、ジャスミンライスは長粒種です。一方、カルローズは中粒種なので日本のコメとは食感が違うのですが、外食産業では日本米とカルローズを混ぜたブレンド米を使うところもあります。そのためジャスミンライスを食べたことがない人でも、実は知らずにカルローズを口にしている可能性があるのです。一方、西友が輸入した台湾米は日本と同じ短粒種です。西友も『ほぼ国産米に近い』と説明しており、国産米より2割程度、安い価格で店頭に並べるようです。Xには税込みで2797円の値札を撮影した写真が投稿されていました」(同・記者)
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/12031103/?all=1&page=3

8. 中川隆[-8226] koaQ7Jey 2024年12月14日 08:26:15 : CpfVtn4PAo : b0g5S3ZRSEhJY0E=[2] 報告
日本農業・産業を守れ!「安いから」で買うのは農家を潰します 鈴木宣弘氏・吉野敏明 対談
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/12/13
https://www.youtube.com/watch?v=5Lpb8dzg1TA

0:00 はじめに
0:42 「安いから」で買うのは危険
6:16 田んぼが持つ重要性

9. 中川隆[-8203] koaQ7Jey 2024年12月15日 17:33:06 : eaGmlj4cps : UGRBUGNNcmVpUE0=[20] 報告
日本農業・産業を守れ!「安いから」で買うのは農家を潰します 鈴木宣弘氏・吉野敏明 対談
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/12/13
https://www.youtube.com/watch?v=5Lpb8dzg1TA

0:00 はじめに
0:42 「安いから」で買うのは危険
6:16 田んぼが持つ重要性


農家の存在こそ安全保障!稲作は時給10円!?農家が報われる体制を! 鈴木宣弘氏・吉野敏明 対談
【公式】吉野敏明の政経医チャンネル〜日本の病を治す〜 2024/12/15
https://www.youtube.com/watch?v=rWWmJhxkXUA

0:00 はじめに
0:24 農家が報われる体制を
7:22 鈴木氏が考える解決策は?

10. 中川隆[-8181] koaQ7Jey 2024年12月17日 09:15:37 : A85XnA9QFo : QlB2Zk5uMHFTY3M=[5] 報告
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内田樹の研究室
農を語る(前編)2024-12-16 lundi
http://blog.tatsuru.com/2024/12/16_1921.html

食料の自給自足は国の根幹である

藤井聡 今回は、神戸女学院大学名誉教授で武道家でもあられる内田樹先生にお越しいただきました。内田先生は文学や思想、社会科学などいろいろな側面から時勢的な問題について論じられていますが、以前この「農を語る」にもご登壇いただいた堤未果さんと食と農の問題について対談されていましたよね 。それを拝見したこともありまして、今回お越しいただいた次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ですが、内田先生は現在の「農」についてどのようにお考えでしょうか。

内田 僕への講演依頼で一番多いのは教育関係ですが、次に多いのが医療と農業です。JAさんをはじめいろいろな団体から声がかかっていて、あちこちで講演しています。演題として多いのは人口減少についてですね。今農村は急激な人口減少で、もはや過疎地を通り越して無住地化しつつあります。農村の現場の細かいことは研究者じゃないのでよく知らないのですが、大風呂敷を広げるのは得意なので、人口減少の文明史的な意味とは一体どういうものなのかという話をした上で、農業従事者の皆さん方はどう対処すべきかについて意見を申し上げます。僕からの提言は絶対に里山や農業を捨ててはいけないということです。

藤井 愚問かもしれませんが、絶対に捨ててはいけないとご主張される理由はどういったところにあるのでしょうか。

内田 農業は国の基本だからです。エネルギーと食料の自給自足は国の根幹です。これはどちらも足りなくなったからといって、いつでも必要な量だけ、必要な時に市場で調達できるというものではありません。そのことはコロナでよく分かったはずです。サプライチェーンが途絶したら、お金がいくらあったって欲しいものが買えなくなる。アメリカはマスクや防護服のようなものは途上国に作らせて輸入した方が安いという理由でほとんどをアウトソーシングしていたせいで、輸入が途絶えたとたんに医療崩壊が起きて多数の死者が出ました。マスクや防護服や検査キットのような、シンプルで安価な医療資源は、賃金の高いアメリカ国内で作る必要なんかない、在庫も要らない。「要る時に金を出せばいい」という「賢い」経営判断のせいで、たくさんの人が死んだ。「こんなものはいつでも買える」と思っていたものが買えなくなることがある。それについての想像力の不足が一番怖いんです。今の日本だって、いつ南海トラフ巨大地震が来るのか分からない。米中戦争だって起こるかもしれない。何が起きても国民を守ることが国の責務なんですから、エネルギーと食料と医療の自給自足はどんなことがあっても最優先で目指すべき最重要課題だと思います。

藤井 アメリカなどの先進国、G7諸国は食料自給率一〇〇%、二〇〇%を目指して輸出産業としても育てているのが一般的で、そのためにかなりの国費を投入して自給率を上げていますが、日本はそういう雰囲気になっていませんよね。カロリーベースの自給率はたったの三八%しかありませんし。

内田 東京大学の鈴木宣弘先生によると、実際には十%を切るそうです。

日本の食料自給率が下がればアメリカの国益になる

藤井 自給率を高めるには二つの方法があり、一つは補助金をしっかりと出して農業所得を保障してあげることです。いわば「公共事業」として、農家の人たちを公務員のような格好でお雇いするという考え方です。もう一つ、「関税」を高めて農業を保護するという伝統的な方法もあります。
この二つの方法が基本ですが、前者の補助金はどんどん少なくなっていますし、後者の関税もTPPをはじめとする自由化を通じて下げるのが善であるかのような風潮があります。これは本当に由々しき事態ですよね。

内田 日本の国益を考えたら、あらゆる手立てを尽くして農業を守り、自給率を上げるのが最も合理的な解です。でも、そうなっていない。ということは、日本の農業が政府の補助で維持され、日本の食料自給率が上がることを望まない「外圧」が存在するということになる。誰が考えても、それはアメリカ以外にない。アメリカが政官財のさまざまなチャンネルを通じて、今の日本の農業政策をコントロールしている。そう考えるのが合理的だと思います。

藤井 いわゆる「ジャパンハンドラー」と呼ばれる人たちがアメリカにいますよね。CSIS(戦略国際問題研究所)などはジャパンハンドラーたちの巣窟であり、小泉進次郎さんもそこで研究されていましたからね。彼は自民党の農林部会の部会長をやっていた時期があり、農協の株式会社化や農林中金の自由化などを主張されています。しかもそれが「改革」と呼ばれ、何か良いものであるかのように言われていますよね。

内田 自民党の総裁選に出ている政治家たち、立憲民主党の代表選に出ている政治家たちの話を聴いていると、明らかに日本国民ではなく、ホワイトハウスに向けてシグナルを送っているということが分かります。例えば、「在日米軍の既得権には決して手を付けません」というような公約は国内的には支持率の向上にはつながるはずがない。それでも必ず公約するのは、それがアメリカ向けのジェスチャーだからです。「私が日本の首相になっても、アメリカの国益に抵触するようなことは決してしません。だから承認してください」とアピールしている。

藤井 多くの政治家は口には出さないでしょうけれども、アメリカを怒らせたら政治家として続かないという恐怖心があるのでしょうね。

内田 それは遠く田中角栄から、鳩山由紀夫、小沢一郎の前例から明らかですからね。

藤井 総理大臣としての政治生命を絶たれてしまうという、控えめな表現をすれば「都市伝説」があるわけです。事実であればもっと有効性がありますが、仮に都市伝説だったとしてもそれだけで一定の効果がありますよね。

内田 アメリカが実際に手を出して政治生命を奪うということはしていないと思いますが、日本の政治家と官僚とメディアがアメリカの意を「忖度」して、アメリカの国益に資するように動いている。

藤井 現在、自民党の総裁候補として小泉進次郎さんの名前が挙がっていますが、CIAやホワイトハウスが直接彼に電話して指示しているわけではないですからね。もしかしたら電話委しているのかもしれませんが(笑)。

内田 CIAかどこかのアメリカのシンクタンクから派遣された人が政策ブレーンとして政治家たちの周りにいて、アドバイスを求められたときに「こうすればアメリカは喜びますよね」と知恵を付けている可能性はありますね。あくまでそういう間接的なコントロールにとどまっていて、「ホットライン」でアメリカから指示が出ているということはないと思います。

インテリジェンス研究が軽視される日本

藤井 外国ではCIAやKGBなどを研究対象にした「インテリジェンス研究」というのがありますが、日本にはないんですよね。
 KGBの幹部がイギリスに亡命する際に持ち出したスパイ関連の機密文書が「ミトロヒンアーカイブス」という資料として残っているのですが、そこに「Japan」という章があります。でも、誰も訳していなかったので京都大学の僕の研究室で訳して、記事として公表しました。例えば○○新聞の誰がエージェントだとか、○○党のこの人はエージェントだとかいったことが全部書いてあります。エージェントにもいろいろなタイプがいて、事実上エージェントの人とか、単にソ連と仲が良いだけで勝手にソ連のために動いてくれる人とかもいるようです。おそらく、アメリカもそういう誘導の仕方をしているのでしょうね。

内田 そうでしょうね。エージェントも多種多様で、自分で気づかないうちにエージェントの役割を果たしてしまっている人も相当数いると思います。自民党と民社党には結党時点ですでにアメリカの情報機関の金が入り込んでいるし、岸信介も賀屋興宣もCIAのエージェントでした。共産党にはソ連のエージェントが入っていましたし、敗戦後から60年代にかけてはどの政党もそれぞれの「ボス」である外国と何らかのチャンネルを持っていたはずです。自分たちは日本のためだと思って、外国の工作員だという自覚はなかったんでしょうけれど。

藤井 日本テレビもそうやって作られたということもよく知られた事実ですよね。こういうことを言うと陰謀論者だと思われがちなのですが、外国では「インテリジェンス研究」が大学の研究機関に存在していますから、本来は政治学者がやるべき仕事です。ただ、日本の政治学会でそういうことをやると「やばい奴」扱いされてしまうので、なかなかできないですよね。

内田 本来なら歴史学者と政治学者の共同作業でやるべきことですよね。

公文書の隠ぺいが「陰謀論」を強める

内田 アメリカは公文書をどんどん公開しますよね。あの姿勢は素晴らしいと思います。僕は大学卒業後友だちと翻訳会社をやっていた時期があり、当時GHQの資料を大量に訳したことがあります。僕の遠い親戚に平野力三という政治家がいます。片山哲内閣で農林大臣をやっていた右派社会党の活動家でしたが、戦前軍国主義者だったという告発を受けて公職追放されました。それから数十年して、アメリカで公文書が公開されたのを機会に、自分にかかわるすべての公文書のコピーを取り寄せたんです。そしたら、誰が平野力三を「軍国主義者だ」とGHQに告げ口したのかが公文書に書いてあった。西尾末広と曽祢益という民社党の二人でした。彼らが政敵である平野を陥れるために、平野の戦前の経歴について明らかに虚偽の情報をGHQ提供して公職追放をそそのかしたのです。そのことが分かって、のちに平野はカーター大統領から名誉回復を勝ち取りました。

藤井 そうですね。アメリカは公文書に関してはフェアですよね。ちゃんと公開するというノーム(規範)があるのでしょうね。

内田 日本は公文書はすぐに廃棄しますからね。敗戦の時、市谷で陸軍参謀本部が公文書を全部燃やしてからの伝統ですね。東京五輪の財務資料なんかもう燃やしてしまっているんじゃないですか。

藤井 本当だったら捕まる人がたくさん出てくると言われていましたからね。

内田 大阪万博だって、終わった後に住民が監査請求をしても、「帳簿は全部廃棄しました」と言って逃げ出すと思いますよ。

藤井 噂レベルなので固有名詞は出しませんが、今回の総裁選で小泉進次郎さんを推しているある人は、自分の息のかかった人でないと捕まってしまうから実質的に子分である進次郎さんを推薦しているそうです。小泉純一郎さんは「五〇歳になるまでは総裁選に出たら駄目だ」と進次郎さんに言っていたのに、そのお父さんを説得して息子を総裁にさせようとしているとまことしやかに言われています。そういう不正がまかり通るんですよね。

内田 陰謀論が広がるのは、公文書や帳簿などのドキュメントが公開されないからなんです。全部隠すから、「本当は何が起きたのか」が分からなくなってしまう。

「反米世論」が弱まり、コントロールしやすくなった日本

藤井 TPPが典型ですが、アメリカが工作しているというよりも、アメリカが言っていることに日本が明確に従っているというのが実際のところなのでしょうね。
 政府機関が外国の国民世論を操作する「パブリック・ディプロマシー」と呼ばれる外交戦略があり、アメリカは日本の世論に対して散々そういうことをやってきました。内政干渉じゃないかという気もしますが、アメリカからすれば自国の国益の最大化を追求するのが当たり前ですから、彼らを責められないところもあります。そういう現実があるわけですから、それに対するカウンターを作らないといけないですし、我々もそういうことを正々堂々とやることが必要ですよね。
そう考えると日本の農業は本当に悲惨というか、アメリカに食われっぱなしの状況ですよね。

内田 アメリカの対日戦略の一環として「日本の農業を潰す」ことはアメリカにとっては合理的な解ですから、あって当然だと思います。

藤井 それは大航海時代や帝国主義の頃からそうですよね。当時に比べればやり口がソフィスティケート(洗練)されて合法的な見かけにはなってきていますが、基本的には他の国から奪えるものは奪おうとしているわけです。特に一九世紀後半や二〇世紀に入ってからは、需要を奪うのがメインになってきましたよね。最初は資源を奪っていましたが、途中から需要のある喜ばれそうなものを作って買わせるようになっていく。そうして買わせたうえで、さらにプランテーションで働かせたわけです。だから、労働も搾取するし需要も搾取するという二重の搾取を近代の帝国主義国家はやってきたわけです。
第二次世界大戦以降は、軍隊ではなく経済学者を宣教師のように使ってグローバリズムを広げ、マーケットを取るようになっていきます。その際にはその国の産業を潰すのが基本ですよね。自国で作れるものは買ってくれないからです。だから規制緩和で農家を潰して農産物を買わせたり、タクシー産業を潰してウーバーを参入させたりするわけです。アメリカは歴史的に考えれば当たり前のことをやっているわけで、それに対するカウンターを考えないといけないのに、小泉進次郎さんを筆頭に売国政策を嬉々として続けている状況があります。

内田 やっていることは植民地主義の時代と変わらないんですけれど、以前はそれでももう少しソフィスティケートされたやり方だったと思います。最近はそのやり方が露骨になってきた感じがします。たぶん日本側が全く抵抗しなくなったので、ハンドルするのに技巧や隠蔽が不要になったんでしょう。ジャパンハンドラーたちの手口が洗練されたものではなくなって、むしろ野卑で露骨になってきた気がする。

藤井 前はもう少し気をつけていたけれど、意外とアホだったということが分かってきたのでしょうね(笑)。

内田 これまではあまり露骨にハンドルすると、反米世論が高まってかえって日本がハンドルできなくなるかもしれないというリスクがあったので、多少は抑制的だったんですけど、そのリスクがなくなった。

藤井 八〇年代のオレンジと牛肉の自由化のときは大騒ぎでしたよね。

内田 六〇年安保以来、日本の反体制運動を駆動していた基本的な情念は「反米愛国」でしたからね。60年代末からの全国学園紛争も、もとはベトナム戦争に対する反対闘争でした。その頃は市民運動も労働運動も盛んでしたし、革新自治体が全国各地に広がっていました。だから、あの時代には日本国内の反米機運を鎮めることがアメリカにとっては急務だったのだけれど、うっかり露骨に日本の学生運動、労働運動を弾圧しようとするとむしろ日本の反米機運に火がついて、場合によってはソ連や中国の干渉を招く可能性もあった。ですから、対日工作はやるにしても丁寧にやろうという配慮はあったんだと思います。でも、二十一世紀に入ってからは「日本には反米世論を作るような力はもはやないから、何をやっても大丈夫だ」というふうに気が緩んできた感じがします。

藤井 そうですね。本誌の前身である『発言者』『表現者』は西部邁が始めたわけですが、彼はもともと東大で左翼の学生運動をやっていました。そしてその先輩には、森田実というあの砂川闘争を戦い抜いた男もいました。西部邁はその後左翼の運動をやめて経済学を勉強するのですが、二〇世紀の終わりごろから「保守」を名乗るようになります。なぜそうなったかというと、左翼にはいろいろな澱が溜まってきていたので、改めて日本国民のナショナリズムをベースに「反米」を展開しようとして左から右に旋回したわけです。つまり、独立のための「反米」が目的だったのです。

内田 まずは国家主権と国土の回復が基本だったということですよね。

藤井 生まれ落ちた以上奴隷ではないように生きていこうとするのは人として当然ですから、国家として隷属している状況があればそこから脱却するというのはすべてに優先する話です。そうでなかったら生きている意味は何にもないわけで、その意味でこの戦後空間は映画『マトリックス』のようにプログラミングされたまやかしだと言えるのでしょうね。
(『表現者クライテリオン』、10月号)

(2024-12-16 19:21)
http://blog.tatsuru.com/2024/12/16_1921.html


農を語る 中編 2024-12-16 lundi
http://blog.tatsuru.com/2024/12/16_1933.html

「対米自立」という気概の喪失

内田 「対米従属を通じての対米自立」というトリッキーな国家戦略が60年代までの自民党政治にはあったと思います。アメリカからの国家主権の回復、北方領土と南方領土(沖縄)の奪還がわが国の最優先目標であることについては、六〇年代ぐらいまでは左右問わずに国民的な合意がありました。けれども、ある時点から誰も「対米自立」を口にしなくなった。

藤井 それを言うと「アホか」という雰囲気になってきましたよね。特に現政府与党関係者達の中で対米自立を主張すると「藤井さんは青いな。中国や北朝鮮に対抗するためにはアメリカとうまくやらなきゃいけないじゃないか」と言われてしまいますから。中国や北朝鮮に対抗するためにはアメリカの「奴隷」であることが必要であり、「奴隷」と言うのが嫌だから「同盟」と言うんですよね。だから「日米安保」を「日米同盟」と言い始めるわけです。少女バイシュンを「援助交際」や「パパ活」と呼ぶのと同じですよ(笑)。日米同盟でも何でもないものを日米同盟とか言い出したことと、農業を守るという気概がなくなってきたことが完全に一致していますよね。

内田 文脈としては全く同じです。農業は国の基幹産業ですから、農業に手を突っ込んでくると激しい反米世論が巻き起こる可能性があった。だから手を触れなかった。けれども、日本の政治家から対米自立の気概がなくなったのを見てとってから対日戦略が一気に粗雑で、露骨になってきた。そういう感じがします。

藤井 誰か司令官がいて日本の隷属化を進めているというよりも、徐々に空気としてそう変わってきたということでしょうね。

内田 今の日本の総理大臣はもう「属領の代官」でしかありません。政権維持のためには、アメリカに朝貢して、ホワイトハウスから官位を「冊封」されるのが最も手堅いと信じている。

藤井 大岡昇平の『俘虜記』という小説がありますが、それと一緒ですね。この小説ではアメリカ人の若い将校がフィリピンの捕虜収容所を管理しているのですが、その収容所の捕虜達の中から一人日本人のリーダーを選ぶんです。勿論とくに明確な基準も無く適当に選ぶ。とはいえ、何の権限もなくて実際には若いアメリカ人が全部仕切っていて、ここで道徳の退廃がどんどん進んでいくという話です。大岡は最後にこれが日本なのだと書いています。つまりその収容所のリーダーが日本の総理大臣だということを、アメリカと戦った大岡は我々戦後日本人に伝えようとしたのだと思います。でも、そういう気概が本当になくなりましたね。

内田 戦後生まれの僕たちは実は主権国家の国民であった経験がないんです。親たちの世代までは大日本帝国の臣民だった。敗戦で帝国は滅びましたけれど、その国運を決定したのは自分たち自身です。他国に指示されたわけじゃない。でも、敗戦で国家主権を失った。そのことの喪失感の深さは戦後生まれの僕たちにはたぶん想像が及ばないと思うんです。彼らには「戻るべき原状」のイメージがあった。「国家主権の奪還・国土の回復」という言葉にリアリティーを感じることができた。でも、僕たちにとってその文字列はしだいに空語になりつつある。

藤井 サンフランシスコ講和条約で主権を取り戻したことにはなっていますが、「なんちゃって主権」でしかないですからね。沖縄のことも放置していますし。

内田 僕は子供の頃「日本国憲法は我々日本国民が作った」と教えられました。子どもですから、教えられるままそうなのかと思っていましたが、ある時期からそんなわけないということに気がつきました。これはほんとうに罪が深いと思うんです。日本人の自己認識の出発点は「われわれは主権国家の国民ではない」という欠落感でなければならないのに、まるで戦争には負けましたが、すぐに国家主権は回復しましたみたいな作話をした。

藤井 そうですそうです。僕もそうでした。ですが実際には国会の公式文書の中にも憲法がGHQによって押し付けられたという経緯が載っているくらい、明白な事実なわけです。なのにそれを子供の頃は知らなかった。でも、今の子供たちも押し付けられたということを知らないでしょうね。

内田 どういう歴史的経緯で日本国憲法が起草されたのかについての国民的合意がないんです。誰がどの条項をどういう意図で書き込んだのかについては諸説があって、どれも決定的ではない。憲法のある条項がどういう議論の末に決定され、なぜこの文言が採択されたかについては、条項そのものの当否とは別のレベルで「歴史的事実」として確定されていなければならないと思うんです。条項の適否についての議論はその先の話です。どうしてこんな条項が書かれたのかについて決定的なことを誰も知らないというところで憲法を議論できるはずがない。

日本の政治家はアメリカを怖がり過ぎている?

藤井 そうですね。昔の自民党、あるいは昔の社会党とかの政治家はそれなりにこういうことを議論していたと思います。しかし、今の政治家は派閥の論理の中で日和見して、どちらについたら得をするかということばかりに頭を使っていて、基本的な教養がなくなっていますよね。

内田 安倍晋三は原爆を落とされてからポツダム宣言が押し付けられたという程度の歴史認識でしたからね。こういう基礎的な事実を知らない人間が憲法について重要な決定を下すというというようなことはあってはならない。

藤井 今回の総裁選でも小泉進次郎氏が典型ですが、そういうことに関心がある人が少ないですよね。立憲民主党も先日代表選がありましたが、そういう議論をどこまで認識しているのか疑問です。

内田 認識していないと思いますね。立憲民主党も何とかして政権交代を実現したい。でも、政権与党であるためにはホワイトハウスから「属国の代官」として適格であるという許諾状を交付されないといけない。総理大臣としての適格性の最優先の根拠が「ホワイトハウスからの承認」であるというのはまことに悲しい話です。

藤井 実際には都市伝説的な部分もありますよね。要するに怖がり過ぎているということです。アメリカ人は、こちらがフェアであれば"That's make sense"(道理にかなっている)と納得してくれますから。核武装の問題に関しても、ちゃんと筋を通せばこちらの言い分をある程度は聞くはずですよ。なのに、進次郎みたいにポエムを言っていたら絶対に無理ですが(笑)。

内田 僕もそう思います。

藤井 場合によっては暗殺が起こることもあるでしょうし、実際にCIAはこれまで途上国で何度もそういうことをやってきましたが、G7の一角である日本でそう簡単にはできないはずです。だから、アメリカと対抗するために一番大事なのは、右だろうが左だろうが普通にロジックを展開してフェアに"make sense"できるような議論をすることだと思います。

内田 そうですね。アメリカといっても別に一枚岩ではありません。日米同盟に関してもさまざまな意見が併存している。日米安保条約を廃止した方がいいと言う人もいるし、在日米軍基地を撤収すべきだと言う人もいる。「日米同盟基軸」を言い立てている人たちはジャパン・ハンドラーの代理人ですから、彼らと異なるアメリカ国内世論を決して紹介しない。でも、トランプが大統領になったら、日米安保条約廃棄の「ブラフ」は仕掛けてくる可能性がありますよ。

藤井 トランプもホワイトハウスに入ったことで説得されて意見を変えたとは言われていますが、そう言い出す可能性は十分にありますよね。

アメリカの対日世論を変える外交努力をすべし

内田 アメリカの中にだって、今のように日本を収奪し過ぎると、日本そのものの国力が衰微して、結果的にアメリカの西太平洋秩序の維持が難しくなるから、日本を植民地扱いするのは止めて、国家主権を認めた方が長期的にはアメリカの国益にかなうという考え方をする人だって当然いるはずです。そういう人たちときちんとコミュニケーションをとって、アメリカの対日世論を変えていくというのが本来の外交だと思います。「アメリカ」とひとくくりにするのがよくない。

藤井 そうですね。田舎の人間が「東京って」と東京のことをひとくくりにして思っているのと一緒ですね。

内田 アメリカは今シリアスな国民的分断にさらされていて、「内戦の危機」だとまで言われています。だったら、その中で最も日本の国益を利する立場の人たちとコミュニケーションをとって、アメリカの対日国内世論を形成する。いわば「アメリカ・ハンドラー」をこそ育ててゆくべきだと思います。

藤井 もちろんそうですよね。「パブリック・ディプロマシー」によって相手の世論を変えることだってできますし、それが本来の政治主権ですよね。

内田 でも、そういうふうにして、アメリカの政治に日本がコミットしていくという発想は欠片もないですね。

藤井 僕は一時期アメリカの学会にかなり出ていましたし、ヨーロッパの心理学の研究会にも行っていて、英語は下手でも完全に対等に議論していたと思います。そうすることができれば認めてくれるわけですが、日本の先輩や後輩でそんな奴はほとんど見たことありません。"Tempura! Fujiyama!"とか言っているだけの田舎者なんですよ(笑)。アメリカ人やヨーロッパ人に引け目を感じているのだと思います。僕は三十歳ぐらいのときにスウェーデンに留学しましたが、当時は九〇年代だったから日本のほうが文化も上で、日本のIT機器や電気製品も勢いがあったから、ヨーロッパ人に対して「俺が教えたろうか」くらいの気持ちでいました。アメリカに行っても「アホばかりやんけ」という気持ちだったのですが、そう思っている人がほかにいなかったんですよね。
 たぶん、それと同じように誇りも何もない田舎者の外交がいろいろなところで展開されているのだと思います。進次郎なんて国連会議の記者会見で、日常英語を使えるのをみせてちょっとカッコつけたかったのか"gotta be......"みたいな大臣としては著しく相応しくない砕けた英語を使っていましたからね。

日米同盟以外のシナリオを想定しない政治学者や政治家たち

内田 だいぶ前ですけれど、日本のある高名な政治学者と対談したことがあって、「日本の安全保障戦略として日米同盟基軸以外にどういうシナリオがあるとお考えですか?」と聞いたことがあります。別に困らせるつもりじゃなくて、専門家の意見を知りたかったのです。でも、彼は絶句してしまった。日米同盟基軸以外にどんなシナリオがあり得るのか、考えたことがなかったらしい。でも、これはおかしいと思うんです。アメリカの政治学者に「西太平洋の安全保障戦略として、日米安保条約以外にどういうオプションがあり得えますか?」と訊いたら、いくつかのシナリオを答えてくれるはずです。ヨーロッパの学者に「NATO以外にどういうヨーロッパの安全保障の枠組みがあり得るか」訊いても、たぶんいくつかのシナリオを示してくれると思う。ところが、日本人は日米同盟基軸以外のシナリオについてそもそも考えない。でも、思考実験として、中国と同盟する、韓国と同盟する...などなどいろいろなシナリオについて、その現実性と効果について検討することはしてもいいと思うんです。

藤井 日本人は政治家も学者も延髄が切れているのでしょうね(笑)。ただ『俘虜記』の捕虜収容所のようなところに八十年間近くもいるとそうなる人が多数派になってくるのかもしれないですね。

内田 「対米従属を通じての対米自立」という国家戦略はその時点では十分な合理性があったと思います。それ以外に選択肢がなかったのだから仕方がない。でも、「対米自立」という目的を捨てて、「対米従属」が手段から目的になってしまったら、日本はこらから何のために存在するんですか。

藤井 「国が滅びる」という言葉にはいろいろな定義があると思いますが、もう滅んでいると言ってもいいかもしれませんね。

内田 滅びの道に向かってますね。

藤井 五十五年体制ができたときの最初の綱領に「外国駐留軍の撤退に備える」という条項があって、そのために憲法をどうするかとか、国内法をどう整備するかといった議論があったわけですが、二〇〇〇年ぐらいに綱領の見直しがあって、「日米同盟を基軸に」という文言が入ってしまいました。要するに、自民党は党として外国駐留軍の撤退に備える気がなくなってしまったわけです。

内田 在日米軍はもともと政府から派遣されていた単なる現地軍だったはずなのに、八十年も巨大固定基地で暮らしているうちに気が大きくなって、横田や沖縄を「アメリカの海外領土」だと思うようになってしまった。ホワイトハウスが返せと言っても、在日米軍は返す気がないんじゃないですか。

藤井 本来であれば、政治家がきちんと議論をしていけば時間はかかるかもしれないけれど必ず返ってくるはずですよね。

内田 フィリピンは憲法を改正して、国内に外国軍は駐留できないという条項を入れて、スービック基地とクラーク基地から米軍を撤退させました。韓国だって在韓米軍基地を三分の一まで削減しています。地位協定も世界のどの同盟国でも改訂されている。在日米軍の言いなりで、何もしていないのは日本だけです。

壊滅しつつある日本の農業

藤井 今回は「農を語る」というテーマですが、この議論は「農を語る」ための根幹ですよね。

内田 対米従属文脈の中で、日本の農業が破壊され、食糧が自給不能になり、アメリカから農作物を輸入する以外に国民が食えなくなるという依存体質を作り込もうとしている、そういう理解でいいと思いますけど。

藤井 前編で申し上げたように、農業を守るためには公的資金をきちんと入れることと関税を高めることが必要ですが、現実にはTPPだとか自由化だと言って関税を下げていき、農業への補助金に関しても財務省の緊縮財政によって削減されている状況があります。つまり、「公助」が駄目になって農家の所得が下がっているわけです。最後の頼みの綱である農協という「共助」にしても、小泉進次郎が出てきて株式会社化を進めようとしたり、農林中金を自由化したりして解体しようとしています。
 僕はTPPの反対論を展開していたので、「藤井はTPPに入って日本は滅びるとか言っていたが、滅びていないやんけ」とよく言われます。でも、二〇四〇年に日本の農家は三分の一になり、二〇五〇年には五分の一になると言われているんですよ。しかも、今の農家の最新の平均所得(農業の収入と農業を行うのに必要な支出の差額)は一万円にまでなっているんです。ですから、今の農家の方は平均すると貯金を食いつぶしてお米を作ってくださっているわけで、さらに農家の平均年齢は令和五年で六十八・七歳になっています。

内田 皆さん、いずれ鬼籍にお入りになる年齢になっていますよね。

藤井 しかも若い人が入ってきていないですから、これは日本の農業の壊滅を意味しますよ。そのシグナルが今年スーパーで米が消えたことなのだと思います。昔は古米が大量に余っていて、多少高くてもいくらでも買えたはずなのに、それすらできなくなっている。つまり、日本人が米を食えなくなりつつあるわけですよね。だから、すでにこの国は滅びの道に完全に入っているのではないかと思います。

内田 このままだと滅びますよね。滅びる方向にまっすぐ向かっていて、誰も止めていないわけですから。

藤井 しかも、小泉進次郎だとかそのバックにいる菅義偉だとか、自民党のど真ん中にいる政治家連中がそう仕向けているわけですから、ホントに救いようがないですね。

「表現者 クライテリオン」11月号

(2024-12-16 19:33)
http://blog.tatsuru.com/2024/12/16_1933.html


農を語る 後編
2024-12-16 lundi
http://blog.tatsuru.com/2024/12/16_1941.html

地方を見捨てるようになった日本人

内田 かつての自民党の支持基盤は農村部でしたけれども、農村部は衰退しているから政治的な発言力がどんどんなくなっています。そうすると、地方にいい顔をしなくてもいいということになりますよね。能登半島地震にしても、元の姿に復興する気がありませんし。

藤井 農業の議論とも全く同じだと思いますが、二〇一一年の東日本大震災のときにも棄民的な発言が結構ありました。「東北なんて田舎だから放っておけばええやん」と経産省の役人が言っていて、それが大問題になって懲戒処分になりましたよね。当時は復興しないといけないという気持ちがあったわけですが、それから十三年経った今は平然と「あそこは田舎だから復興しなくていい。カネも無尽蔵にあるわけではないのだから復興するところとしないところを分けよう」という議論がなされています。そこで、僕はそんなことを政治家が言っているのはおかしいという記事を書きました。十三年前にも同じようなことを書いて、当時は賛同されていたのですが、今回は炎上したんです。「アホか。そんなところ復興してどうすんねん!カネもないのだから能登なんて放っておけばええやないか!」と批判されて、びっくりしましたね。

内田 この十数年の間にそういう世論形成が着実に進行していて、「人口過疎地に住んでいる人間は健康で文化的な生活をする権利なんかない。だからそこに住んでいるのは自己責任だ」と言われるようになってきていますよね。

藤井 過疎地に住んでいると準反社会的人間のような扱いを受けるということですね(笑)。

内田 そうです。「お前らのために道路やトンネルを通したり橋を架けたりしても、その道の先には人口が数百人しかいないじゃないか。そのために何億円も使うのは税金の無駄遣いだ」というわけです。少なくとも二〇一一年には、そういうことを平然と言う人はそこまでいませんでしたが、今は完全にそうなっています。

藤井 僕は能登に今住んでいる人のことも見ていますが、百年前、二百年前、五百年前、千年前の能登の風土も見ているわけです。輪島なんて江戸時代には北前船のおかげで豪商が生まれて、ものすごく栄えた町でしたよね。そこで輪島塗も生まれて、今や世界中の人が使っています。つまり、能登半島という先代から引き継いだ日本の宝を現代の人間はお守りする義務があるというイメージがあるんです。だから高速道路を通さないといけないし、農業も振興しないといけない。食料自給率の面でもそうですし、棚田のような伝統や文化を残す意味でもそうです。それに価値がないと思う奴は馬鹿ですよ。

人口減少よりも東京一極集中が問題

内田 全国津々浦々に固有の文化があって、かつてエネルギーも食料も自給自足していた二七六の藩があって、その全部に固有の文化があって伝統芸能があったわけですが、当時の日本の人口は三千万人ですよ。今は一億二千五百万人もいて、これで人口が少ないというのは違うでしょう。東京に一極集中しているだけであって、地方に人口を戻すのが最優先です。

藤井 昭和の日本まではそういう感覚があったと思いますし、ヨーロッパの国々には明確に残っています。僕はスウェーデンに留学していましたが、あんな広いスカンジナビアの国土に一千万人しか住んでいないんですよ。僕は第二の都市である四十五万人ぐらいのイェテボリに住んでいましたが、いろんなところにちゃんと町や村が残っていて、高速道路も繋がっていました。アウトレットみたいな近代的なものもありますが、地方の田園の風景がずっと広がっていて、それが無駄という議論はなかったですよ。だって、子供が五人生まれて「コイツは小さいから無駄やな」なんて言う親はいないじゃないですか。本来都市を守るというのはそのぐらいの感覚のはずですから、僕は今の日本人は人間ではないと思います。

内田 おかしいと思いますよね。一億二千五百万人で人口が少ないと大騒ぎしていますが、僕らが子供の時代は九千万人でしたからね。明治四十年の日露戦争の頃は五千万人ですよ。
 二十一世紀の終わりに五千万人まで減ると言っているけれど、明治四十年だって全国津々浦々にきちんと生業があって、高等教育機関も医療拠点もあって、文化的な発信をしている人もたくさんいたわけだから、人口が少ないという言い訳は通らないと思います。問題は分布ですよ。そして、人口を首都圏に集めているのは完全にビジネスマインドですよね。つまり金儲けのためです。普通は金儲けより国家の存続を優先するだろうという話です。

藤井 そうですよ。だって、陵辱され侮辱され、馬鹿にされてもお金があるからよろしいですねなんていう人生はあり得ないですからね。人として生きる基本はお金よりも前にあるわけで、それが国土であり田園であり、伝統であり文化であるという主張をしないといけないはずですよね。

内田 「国破れて山河あり」という言葉もありますからね。このままだと次に破れたとき山河はなくなっていますよ。

藤井 そうなりますよね。本誌は政治的には「保守思想誌」という立場ですが、保守もリベラルも関係ないですよね。

内田 共産党の人も今日の議論はほとんど賛成しますよね。

藤井 不思議なもので、自分のことを「保守」だと思っている奴ほどこういう議論に賛成しません。どちらかというと「左翼」と言われる共産党とかの人の方が賛成するんですよね。だから僕は共産党の人とも山本太郎とも喋りますし、左翼も右翼も関係なく話をします。「右」「左」ではなく「真っ当」か「真っ当」でないかという当たり前の話だと思います。

内田 パトリオットかどうかということですよね。僕はナショナリストではないですがパトリオットではあると思っています。「イズム」ではなくて愛郷心や愛国心ですね。ただこの国の山河を守りたいと思っているだけです。日本は山紫水明でご飯も美味しいし、植物相も動物相も豊かな国なのに、それをわざわざ暮らしにくくしているわけです。何を考えているのだろうと思います。

過疎地から人を排除しようとする「ビジネスマインド」

藤井 こういう議論をしていると、農業を守るのは当たり前のことだと誰でも思いますよね。

内田 最優先の政治課題として農業を守らなければいけないわけです。でも、過疎地に人がいるとビジネス的には困るんですよね。行政コストがかかるしあまり使い道がないですから。そこで全部無住地にすることで、一気にビジネスチャンスを広げようとするわけです。ソーラーパネルを敷き詰めたり原発を作ったり風力発電をしたり、あるいは産業廃棄物を捨てたりとか。地域住民がいないので、生態系なんかいくら壊してもいいわけですよね。
 今の日本のビジネスマンは「過疎地は金がかかってしょうがないのだから人口をゼロにしろ。そうすればコストをかけなくて済む」と考えているのでしょうし、僕がもし邪悪な性格のビジネスマンだったら絶対にそう考えます。今だって国土の六二%が無住地ですから、これが七〇%や八〇%になっても誰も気がつかないと思うでしょうね。

藤井 TPPとか自由化とか緊縮をやって、二〇四〇年に農家が三分の一に減ったら無住地だらけになりますよね。

内田 そうです。彼らは明確に全国の無住地化を目指していると思います。生態系を管理するコストは莫大にかかりますよね。川や森や海を管理しなければならないわけですから。そこに人が住んで生き延びるためには絶対必要だから、生態系の維持に膨大なコストをかけるのだけれども、人が住んでいなかったら生態系の維持にコストをかける必要がなくなり、破壊し放題なわけです。発電ビジネスをやっている人たちはそれを絶対に狙っていると思います。それで日本に住めなくなったら、「ハワイにコンドミニアムがあるからそこに移る」となるのでしょうね。

藤井 それこそ、自分の娘がべっぴんだからどこかに売ろうか、みたいな話と変わらないですよね。なぜこういう下品な比喩を申し上げたかというと、国土は有機物だと思うからです。和辻哲郎の風土論もそういうものですが、国土を無住地化するということは無機物化するということであり、それはレイプと一緒ですよね。女性に尊厳があるからレイプが駄目なのに、その尊厳を壊すのがレイプという行為だとすると、ソーラーパネルを山河に敷き詰めているのは国土をレイプしているのと同じですよ。

内田 実際に見るとそう感じますよ。普通の感受性なら、お金が欲しくてこんなことをするはずはなくて、明らかに自然を陵辱していますし、悪意ですよ。

藤井 そう思いますね。でも、そこに田園や畑があれば決してそう思わないですよね。気候と人間とが共存するのが農という営みで、雨が降ってきて水田を作って収穫して、また虫が育っていく。生態系と人間の営みが循環の中で溶け合っていくことが大切ですよね。

内田 それによって新しい価値が生まれてくるんですよね。

藤井 そうですね。太陽光発電もレイプも一回の行為で終わりじゃないですか。そうではなく循環することが大事で、家族で愛し合うだとか、国土と愛し合うとか、そういうものが人間の人間らしさであって、国土を道具として使うというのは友達や女性を道具として使っているのと一緒だと思いますね。

「農」の破壊の背後にある「悪意」

内田 僕の友達に想田和弘という映画監督がいて、彼は岡山県牛窓というところに住んでいます。この前彼の家に遊びに行ったら小高い丘の上に連れて行ってくれて、目の前に瀬戸内海が広がっていました。その北側に錦海湾という湾があるのですが、湾が一面真っ黒になっていました。錦海湾は、かつては浅海で豊かな漁場だったのですが、一九七〇年代に製塩業をやろうと言った奴がいて埋め立てたんです。その後、製塩業が全くビジネスにならなくて廃棄されてしまいました。一度製塩に利用した土地は農業に使えなくなるので、産業廃棄物の処分場や工場を建てたのですが、最終的にソーラーパネルを敷き詰めることになり、湾が真っ黒になってしまったわけです。それを見たときに「何と愚かなことをしたんだ」と思いました。
 短期的な金儲けのために埋め立ててビジネスをやったら大失敗して、その後ソーラーパネルを敷き詰めて、これも何年か経ったら全部産廃にされてしまうわけです。短期的にしかものを考えない人間たちが自然を壊している光景を見て、僕は悪意を感じましたね。

藤井 レイプする人はそこで欲望を満たそうとしているのでしょうが、それと同じような悪意を感じますよね。

内田 人が大事にしているものを破壊することによって全能感を感じるのでしょうね。皆が綺麗だと思っている海に土足で踏み込んで、皆が悲しむのを見て「俺はこれだけの人たちに悲しみを与えられるのだ」と思うのでしょう。イーロン・マスクがTwitterを買収して世界のユーザーがショックを受けましたが、あれもおそらく金儲けのためではなく、世界の何億人ものユーザーが絶望に打ちひしがれている姿を見て、自分の全能感を感じているのでしょう。ああいう人間っているんですよ。

藤井 僕は『エクソシスト』とかの悪魔映画が好きで山ほど観ているのですが、ホラー映画は現実の人々の行動の中にある悪魔を純化して描いているわけです。キリスト教の悪魔や日本の悪霊として出てくるのはそういうものだと思うのですが、日本が悪魔化、悪霊化していくと農は滅び去る運命にあるということですね。

内田 今の日本で農を破壊しているのは、ある種のすごく邪悪な意思だと思います。本人はおそらく気がついていなくて、最新のビジネスモデルに適合しているとか、あるいはアメリカの国家戦略、世界戦略に適合していると思っているのかもしれないけれども、実際に駆動しているのは非常にドロドロした邪悪な意思だと思いますね。

藤井 本誌では文芸批評家の浜崎洋介さんを中心に「文学座談会」をずっとやっていたのですが、そこで「国土の荒廃」というテーマで石牟礼道子さんの『苦海浄土』と富岡多恵子さんの『波うつ土地』を取り上げたことがあります。どちらも国土が陵辱されるというお話を描いている本で、この感覚を我々は忘れているんですよね。「金が儲かったらええやないか」というものではないんです。こういう感覚をちゃんと持っておくことが人として、そして真っ当な国として存在していく必要条件であって、その必要条件が満たされているかどうかというリトマス紙が、その国が農をどれだけ大事にしているかということになのでしょうね。

内田 全くその通りですね。

藤井 今日は内田先生に初めてお目にかかりましたが、非常に面白かったです。内田先生はどちらかというと「左翼」と言われることが多いと思われますし、僕は保守なので「藤井と内田先生は違うんちゃうか?」と思っている人もいるかもしれませんが、ほぼ同じことを考えていると思います。真っ当な保守と「ビジネス保守」がいるように、左翼も真っ当な左翼と「ビジネス左翼」的な人がいるのかもしれませんね。

内田 ビジネス左翼はあまりいないと思いますが、非常に教条主義的でものの見方が固定化している人は多いですね。

藤井 朝日新聞とかはかなりビジネス化しているところもあるでしょうが、教条主義的な人と、そうではなくしっかりと議論できる人がそれぞれにいるということが改めて見えましたし、こういった思想的な問題の果てに農の問題があるということを確認できたと思います。
 内田先生は前からお話ししたいと思っておりまして、お時間がありましたら食事でもご一緒できればと思いますし、これを機にいろいろなところでお話ができればと思います。どうもありがとうございました。

内田 こちらこそありがとうございました。

(2024-12-16 19:41)
http://blog.tatsuru.com/2024/12/16_1941.html


11. 中川隆[-8019] koaQ7Jey 2025年1月05日 07:46:08 : NqzuYHDjXu : d2hPbC9ndFZyZ3M=[6] 報告
鈴木宣弘「食料安全保障」農家の保護こそが国防
【公式】日本誠真会 2024/12/29
https://www.youtube.com/watch?v=Sh3O1yM5dBM&t=30s
12. 中川隆[-7973] koaQ7Jey 2025年1月13日 01:51:29 : EtreNK33Rb : WU0xbGExbW83Lkk=[19] 報告
<■136行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
限界点に来た日本の畜産  食政策センター・ビジョン21代表 安田節子
2025年1月12日
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/33492

 2024年2月時点の畜産統計によれば、酪農家は700戸減、肉用牛では2100戸減、養豚では240戸減と離農、廃業が加速し、畜産・酪農危機が深刻化している。

 なかでも酪農は危機的だ。10月に初めて酪農家戸数は9960戸と1万戸の大台を割り込んだ。9月時点で酪農家の6割が赤字と回答。酪農家の約半数が離農を検討していることも分かった。酪農家の4割以上は1カ月の赤字が100万円以上、86%が借入金を抱え、そのうち6軒に1軒は「1億円以上」という(一般社団法人中央酪農会議「酪農経営に関する実態調査」)。

輸入飼料で成り立つ日本の畜産

 畜産で特に経営を圧迫しているのが生産費の3割から4割を占める飼料の輸入価格の高騰だ。輸入飼料は濃厚飼料(トウモロコシ・大麦・小麦・大豆と油を絞った後の油粕など)で、主に米国から輸入している。濃厚飼料自給率(令和4年度)は13%しかない。濃厚飼料は近代化畜産に不可欠であり、ほぼ自給する粗飼料(青刈りトウモロコシの実と茎葉を発酵させるサイレージや牧草など)では不可能な、短時間での肥育、莫大な産乳・産卵を可能にしてきた。日本の畜産は飼料を米国に依存しなければ成り立たなくなっている【表1】。

 米国は日本に関税撤廃させて飼料穀物の輸出を推し進めた。その後、自由化交渉を通して畜産物も輸入せよと迫った。輸入は増え続け、いまや畜産物のほぼ半分を輸入が占めるようになった。

 牛肉の場合、1991年牛肉オレンジ自由化で数量規制から関税化に移行し牛肉輸入量は増大した。さらに日米貿易協定(2020年1月1日発効)により米国産牛肉に対する関税率がこれまでの38・5%から26・6%に引き下げられた。関税率は2023年度まで下げられ、最終的に9%となる。今後も輸入牛肉の価格は下がり続ける。

 酪農家の経営を圧迫するのが乳製品の低関税輸入枠(カレントアクセス)だ。

 この枠は、農産物の自由貿易を推進するGATTウルグアイ・ラウンド農業交渉の1993年の合意を基に95年度から設けられた。現行(カレント)の輸入実績に基づき、輸入の機会(アクセス)を他国に開き続けるというもの。日本の場合、生乳換算で13万7000dもの輸入枠が設定され、義務ではないのに毎年全量を輸入し続けている。

 コロナ禍による需要減で生乳がだぶつき、ウクライナ戦争や円安を背景とした飼料価格や電気代の高騰で、酪農家の経営が一段と悪化した。生乳の需要減との「ダブルパンチ」で疲弊しているのに、政府はカレントアクセス枠の全量輸入を続ける一方、酪農家には減産を強い、2023年3月から、乳牛を殺処分すれば1頭あたり15万円を交付するとし、4万頭を目標にした。余れば減産、不足には即輸入で酪農家を疲弊させてきた。

 また推進されてきた大規模化によってこの30年強の間で酪農家の戸数は5分の1ぐらいに減り、1戸あたりの頭数は3倍強にまで増加している。しかし、高価格の設備が負債となり、毎日搾乳が必要なのに生乳が売れない事態になれば日持ちできない生乳は廃棄するしかないなど、もろ経営に行き詰る【グラフ1】。

 政府は一貫して米国の工業的畜産に倣い、大規模化や肥育促進を進めてきた。しかし、今や、その弊害が露わになっている。

 品種改良では、「成長率の向上」や「乳量」、「産卵数」の増加、「肉質改良」、より多く産ませる「繁殖能力の向上」といった生産性の向上が追求されてきた。しかし、人為選抜をくりかえした品種改良(改変)によって、家畜や鶏が、本来備わっていた自然免疫力を失い、薬や抗生物質が不可欠となっている。

鶏の品種改良

 「ブロイラー」は鶏種ではなく米国の食鶏規格の用語で、孵化後2カ月半以内の若鶏の呼称だ。品種改良によって高速で成長し、通常、成鶏に達するのに4〜5カ月かかるところを40〜50日で成鶏の大きさに達する。

 【図1】では2005年のブロイラーの場合、44cの雛が56日目には4202cに高速で成長している。

海外依存の改良品種

 日本の養鶏事業は、原種鶏や種鶏をほぼ海外に頼る構造になっている。1963年から欧米の育種大手が開発した採卵鶏やブロイラーの種鶏の雛が大量に輸入されるようになった。たくさんの卵を産むように品種改良された採卵鶏、また短期間で急激に成長するように品種改良された肉用のブロイラー鶏が市場を席巻し、養鶏業は欧米企業依存の構造となった。輸出元の育種企業は種鶏・原種鶏を雄または雌の一方しか販売せず、そのため利用者は再生産を行うことはできない。

品種改良で病気に弱いブロイラー鶏

 肉用のブロイラーは骨格構造が成熟するよりも速い速度で体重が増加するため、脚弱、歩行困難に陥ることも珍しくなく短命だ。病気やウイルスに対する抵抗力も弱い。

鳥インフルエンザの蔓延

 年々、鳥インフルエンザの規模が拡大している。

 2024年11月、高病原性鳥インフルエンザの発生のシーズンとなり、発生が相次いでいる。過去最多だった2022年シーズンに匹敵するペースで発生。2022年は1771万羽という過去最大の殺処分となった。全国の養鶏場が大規模化しているからだ。大量の殺処分で鶏卵がひっ迫する事態となったが、ヒナから育てるわけだからすぐに不足分を補うことはできない。

 無症状の鶏も関係なく全殺処分というやり方に批判がある。分散型鶏舎にすることで全殺処分しない海外の取組もある。

密飼いの大規模工場養鶏が強毒性のウイルス変異を生む

 野鳥や渡り鳥がウイルスの運び屋とされ、農水省主導でウィンドレス(無窓)鶏舎建設が推奨されてきた。ところが、鳥インフルが発生した鶏舎の多くがウィンドレスの鶏舎だった。ウィンドレスで、ウイルスの侵入を100%防げるわけではない。ウイルスやこれを運ぶ小動物からみれば穴だらけなのだ。

 農業情報研究所の記事(2005年11月15日)によると、オタワ大学のウイルス学者アール・ブラウンがカナダの鳥インフルエンザ発生後に「高密度飼育は強毒性鳥インフルエンザ・ウイルスを生み出す完璧な環境である」と指摘。同年10月、国連タスクフォースは、鳥インフルエンザ・パンデミックの根源のひとつとして、“巨大な数の動物を小さな空間に密集させる”農業方法をあげている。

 鳥インフルエンザ・ウイルスが大規模養鶏場に侵入すると、密飼いされ免疫力の低い鶏たちの間で感染が次々と繰り返されていく。そのうちウイルスは高病原性の鳥インフルエンザ・ウイルスに変異してしまうのだ。

ブタの場合

 国の「家畜改良増殖目標」は、「増体性に関する遺伝的能力の向上を図る」ことを掲げてきた。成長の早さ(高増体率)で選抜を重ねた結果、急速成長するブタが肢に骨軟骨症を発症しやすくなっている。また、繁殖率の向上は子豚の死亡と母豚のストレスを増加させる。多くの研究が、産子数の増加は豚の福祉の低下の危険因子であると結論付けている。現在、日本の母豚一腹当たりの産子数は9〜10頭。豚はイノシシが家畜化されたものだが、イノシシは4〜5頭ほどの産子数なのでその倍になっている。政府の家畜改良増殖目標は令和12年度に11・2頭(ランドレース種)とし、さらに上を目指す。

増え続ける乳量

 農水省家畜改良増殖目標(2020年3月)によれば、乳用牛の1頭あたり年間乳量は図のように増加し続けている。2022年は8840`cに達し、1年間に9d近くもの牛乳が搾れる。驚異的な量だ。産まれた子牛が年間に必要な乳量は、1000`cほどだ。肉用牛の年間乳量が1000`cほどで、これが本来の乳量なのだ。

 農水省「家畜改良増殖目標」の2030年目標は9000〜9500`cとしている。「すでに乳量の伸び悩みが見られ、受胎率の低下や供用期間の短縮傾向が続いている」と記述されているが、それは限界点に来ていることを示している。配合飼料を多給する乳量偏重から長命の強健な乳牛への転換が求められる【グラフ2】。

 ホルスタイン種は、乳肉兼用種だったのを、米国やカナダでたくさん乳が出る乳専用種に「品種改良」された。乳専用種といっても人間と同じで出産しないと乳は出ない。人工授精し、出産させ、産まれてすぐに子牛を引き離し、人の消費のために乳を搾る。そうした乳用牛が「乳牛」だ。

 乳量の多い牛ほど病気が多い。原因は、大量の乳を出すことにエネルギーを費やし、代謝機能が阻害されるためだ。

 土着の在来種は経済性が低いとして飼われなくなって消え、人為的に作り出された限られた品種に人類の食料を依存している。

 鳥インフルエンザ、トンコレラ、口蹄疫等感染症の蔓延が家畜を襲っている。在来種が持っていた強靭さを失い免疫力が低下しているうえ、人為的選抜と近親交配によって同じ偏った遺伝子を保有する群れは、壊滅する危険性をはらんでいる。

 食肉検査で、病変のある内臓などを廃棄した一部廃棄率が6割を超えることに驚く。一部廃棄の肉は健康な畜産物とは言い難いが市場流通する【表2】。


 ストレスのある飼育と免疫力低下に対し薬剤が多用され、飼料は輸入の遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシでグリホサートなど農薬も残留、それらが家畜や鶏の健康に悪影響を及ぼしている。

 飼料の輸入依存から脱却し、自給の飼料米や粗飼料に、さらに放牧にすれば、牛も豚も鶏も健康になる。耕作放棄地対策にもなる。欧州ではゆっくり成長する在来の鶏種を採用する動きが広がっている。動物福祉に配慮した幸せな飼育で強健な家畜・鶏を育てることがいま、日本の畜産に求められている。
https://www.chosyu-journal.jp/shakai/33492

13. 中川隆[-7536] koaQ7Jey 2025年2月28日 19:00:57 : yODdL63ZcM : U0NWU1F0YjN1QWs=[17] 報告
2/28(金) 17:00~ ライブ(尾形のDB/金子勝)【 日経平均、今年最大の下げ幅/日本経済5位へ、出生数72万人/日経株価、急落 コメ高騰どうする】
https://www.youtube.com/watch?v=645q6zM6X3c
14. 中川隆[-7480] koaQ7Jey 2025年3月08日 14:50:09 : xAtre4m98M : cTMudUhTVXk3enM=[8] 報告
<■477行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
いよいよ始まる「ごはん会議」 食料危機打開する力束ねるため 鈴木宣弘・東大教授を講師に全国21カ所で れいわ新選組(2025年2月28日付掲載)
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/34237

 「10年後、日本から食べ物がなくなる そんな未来を回避するために」――れいわ新選組(山本太郎代表)は2月末から5月にかけて、鈴木宣弘・東京大学大学院特任教授を講師に全国21カ所で「ごはん会議」と称する勉強会ツアーを開催する【日程表参照】。先立つ2月23日に埼玉県熊谷市で開かれたれいわ新選組の「おしゃべり会」には、山本代表、高井崇志幹事長に加え、鈴木教授も緊急参加し、食と農をめぐる現状と政策課題についてミニ講演と質疑をおこなった。ごはん会議は、全国各地の生産者や消費者を横に結び、食料危機を打開する新しいうねりを作り出す起点となることが期待される。直近の熊谷市でのおしゃべり会での鈴木教授のミニ講演(要旨)と質疑の一部を紹介する。

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おしゃべり会で講演する鈴木宣弘氏(2月23日、埼玉県熊谷市)

私たちに残された時間は多くない――農と食といのちを守るために

   東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘

 日本の食料安全保障が懸念されている。今話題になっている「令和の米騒動」もなかなか収まらない。バター不足、オレンジの供給不足、牛肉高騰による焼肉店倒産に続き、いよいよ「日本の食料は大丈夫か?」という状況になってきた。

 なぜ日本の食料自給率がこんなに下がったのか? 要因として一番大きいのが、やはり戦後のアメリカによる占領政策だ。アメリカの余剰農産物を日本人に食べさせる――それで助けられた面もあるが、コメ以外の穀物等の関税が実質撤廃させられ、安い輸入品に押されて日本の麦、大豆、トウモロコシ生産は一度壊滅した。

 「それでもまだダメだ。日本人がコメを食べているとアメリカの小麦が胃袋に入れられない」ということで、学者の回し者を使って「コメを食べると馬鹿になる」と説いた本(慶應大学医学部教授・林髞著『頭脳』)まで出して大ベストセラーにした。こうしてアメリカは、日本人の食生活をアメリカの農産物でコントロールできるようにした。「食生活改善」という名目で、伝統的な食文化をこれほど短期間に一変させられた民族は他に類がない。

 一方、日本側もアメリカの思惑をうまく活用した。経産省中心の経済政策では、アメリカを喜ばせるために農産物の関税を撤廃して、農業・食料を生け贄に差し出した。その代わりに日本は自動車でもうけ、その利益があれば食料などいつでも安く買える――これが食料安全保障だと考える流れが強まった。それで戦後の日本経済は発展もしたが、今それが立ち行かなくなってきている。

 もう一つの問題が、財務省の財政政策だ。予算配分をみても1970年段階で農水予算は1兆円あったが、それから50年以上経っても2兆円余り。「これ以上出せるか」といわれている。総予算に占める割合は12%あったのが、いまや1%台だ。防衛予算は農水予算の半分だったのが、どんどん膨らんで現在は10兆円規模。どう考えてもバランスがおかしい。

 アメリカでは「軍事」「食料」「エネルギー」を国家存立の三本柱という。安全保障の最大の要は食料であり、それを生み出す農業だ。であれば、なぜ日本ではこんなに食料・農業予算が減らされてきたのかということが問われている。

本当の安全保障とは? 太る軍備、細る農業

 今、世界的な情勢悪化、「クワトロ・ショック(@コロナ禍、A中国の爆買いと日本の買い負け、B異常気象の通常化、C大規模紛争)」で食料争奪戦が広がっている。日本の農業も非常に厳しい状況に追い込まれた。まず穀物が十分手に入らなくなった。酪農ではエサの値段が約2倍に上がり、産地では農家の倒産が止まらない。

 また、日本は化学肥料の原料をほぼ100%輸入に頼っている。一番頼っていた中国がもう売ってくれない。カリウムを依存していたロシア、ベラルーシからも「敵国には売らない」といわれてお手上げとなり、肥料の値段も2倍に上がって高止まりだ。日本の農業は99・4%が化学肥料を普通に使う「慣行農業」なので、このままでは農業そのものが続けられるのかという問題になる。

 さらに中国の動向がある。中国はアメリカとの関係悪化に備えて、14億人の人口が1年半の間食べられるだけの食料を備蓄するため世界中の穀物を買い占めている。こうなると事態改善の見通しは「ほぼない」といわざるを得ない。

 一方、日本の食料備蓄はどれだけあるか? コメ消費量の1・5カ月分だけだ。これで小麦なども入らなくなったとき、私たちはどれだけの期間、子どもたちの命を守れるだろうか?

 本当は日本の農業には潜在生産力がある。米も減反政策(生産調整)で700万dにまで減らしているが、農家の皆さんにフル稼働していただいて全力で生産すれば今でも1300万dはできる。だから今こそ農家と消費者が一緒になって地域が食べる食料は地域みんなで作り、そのためにしっかりと政府は備蓄し、みんなの命をいつでも守れるようにすべきときだといっても、財務省から「馬鹿たれ。そんな金どこにあるんだ」と一蹴されて終わりだ。

 だが、馬鹿たれはどっちなのか? いざというときにみんなの命を守るのが安全保障だというならば、まともに飛びもしないような在庫処分のミサイルなどを買うのに43兆円も使う金があるのなら、食料・農業を守るために財政出動し、必要な備蓄をするのに仮に2兆円使ったとしても、その方がよっぽど有効な安全保障政策だ。こういう議論ができないところに日本の問題がある。

食料自給率は実質9% 種も肥料も輸入依存

 ここ数十年で実質賃金も所得も下がり、「規制撤廃して貿易自由化すれば、みんな幸せになる」という論議がいかにデタラメだったかが明らかになっている。一部の人だけが空前の利益を懐にする一方で、農業に限らずみんなが苦しくなった。

 それでも反省していない。「農家がいくら頑張っても、やっぱり海外に比べたらコストが高いんだから輸入すればいい」という思考が継続している。だが、お金を出せばいつでも輸入できる時代はもう終わった。農家は赤字でバタバタ倒れている。それを放置したまま、海外からの輸入が止まったら、子どもや国民の命を守ることはできない。

 それを考えると、国内の食料生産を維持することは、短期的には輸入農産物より高コストであっても、飢餓を招きかねない不測の事態に命を守るコストを考慮すれば、総合的コストは低いのだ。これこそが安全保障の考え方だ。

 食料自給率を考えるうえで、もう一つ問題がある。コロナ禍で露呈した生産資源の脆弱性、つまり「種」の問題だ。野菜の自給率は80%といわれるが、その種子の九割は海外の畑で採種したものだ。これが止まれば野菜は8%分しか作れない。さらに肥料が止まれば4%にまで落ちる。

 種は食料の源だ。だからこそ大事な種(在来の固定種)をみんなで守って循環させる仕組みを強化しないといけないときに、日本政府は何をしたか? まず種子法を廃止して公共の種事業をやめさせる方向に導き、公で守られてきた優良な種を民間企業に譲渡させ(農業競争力強化支援法八条四項)、さらに農家の自家採種を制限(種苗法改定)することで、日本の種を外資に売り渡すルールを作った。グローバル種子・農薬企業の要求に従ったと思わざるを得ない。

 日本の食料自給率は38%とされるが、種の輸入依存を考慮すると実質22%。さらに肥料の輸入依存、そして野菜だけでなくコメなどの種も海外に9割依存するような事態へと進んでいることを考慮すれば実質9・2%ということになる。これだけの人間しか生きられないのかということだ。

 追い打ちをかけるように、米ラトガース大学が、局地的な核戦争が起きた場合、被爆による直接死よりも物流が止まることによる餓死者が世界で2・5億人出て、そのうち3割(国内人口の6割におよぶ7200万人)が日本に集中するという試算を発表した。信じたくない話だが、上記のような事態を考えれば、これでもまだ過小評価だ。

 だからこそ私たちは、農家さんに頑張ってもらい、地域住民も一緒になって食料を増産し、子どもたちの命を守れるようにしなければならない。

令和のコメ騒動の本質 「余っている」はウソ


コメが消えたスーパーの棚(2024年8月)

 今年、コメの値段が上がって消費者は大変だが、少し前までは「コメは余っている」ということで米価は下がり続け、農家の売値も60`当り9000円にまで暴落していた。一方、農家の米生産コストは60`当り1万5000円はかかる。肥料も2倍になって大赤字となり、もう農業を続けられないところまで追い込まれていた。それが「令和のコメ騒動」の一番の根幹にあることを考えなければいけない。

 猛暑による不作、訪日外国人のインバウンド需要が増えたこともあるが、それはきっかけに過ぎない。それがなぜこれほどの騒ぎに発展してしまうのかといえば、もう生産現場が疲弊しきっているからだ。それでも国は「余っている」といってコメを作らせない。田を潰して畑にすれば1回限りの手切れ金を支給し、コスト高で苦しむ農家の赤字補填すらしない。

 酪農も同じだ。「牛乳は余っている」を理由に、農家に減産を要請し、「牛乳搾るな」「牛は殺せ」で、牛を処分すれば一時金を支給する。北海道では生乳を廃棄する事態にもなった。コスト高の酪農家の赤字補填もなく、逆に脱脂粉乳の在庫減らしのために重い負担金を拠出させ、小売・加工業界も乳価値上げを渋ったため、農家の廃業が急増して生乳生産も落ち込んだ。こんなことをしていたら生産現場は崩壊するしかなく、そういう状態のなかで「何か」が起きたら、大騒動になるのはわかりきっている。

 だからこそ、生産調整(減産)から増産へ切り替えなくてはいけない。だが、今回のコメ供給不足が起きても、政府はまだ「コメは余っている」「悪いのは流通だ」という。「コメはあるのに流通業界が勝手なことをやったから目詰まりが起きたのだ」と。だが、指摘される買いだめも市場関係者が「品薄感」を感じているから起こるわけで、政府が「足りている」と言い張るのは無理がある。このような事態が起きるのは、時給10円しかないような農家の苦境を放置し、国が減産を進めてきたからにほかならない。その責任を隠すために流通に責任転嫁しているわけだ。水田を潰し、農家の疲弊を放置する政策が続く限り、「コメ不足」は続く。

 だから農家を苦しめるような政策をやめ、国内生産基盤を強化するとともに、消費者も助けて出口(需要)を作るべきであり、そのために財政出動をすれば危機に備えられる。米も乳製品も「過剰」なのではなく、買いたくても買えない人が増えているのだから、本当は足りていないのだ。

 子ども食堂やフードバンクを通じたとりくみも、日本では民間ボランティア頼みだが、他国では、小麦や乳製品の生産量がある水準に達したら政府が直接買いとって国内外の援助に使っている。有事に備えた備蓄も安全保障の需要だ。

 小麦が入らなくなっても、コメでパンも麺も作れるし、トウモロコシが入らなければ飼料も保証できる。つまりコメの需要は減っているのではなく膨大にあり、政策でいくらでも拡大することができるのだ。

 生産者、消費者をともに助ける仕組みは世界中にある。なかでもアメリカは、日本にはいろいろ要求してくるが、国内では農業予算の64%を消費者支援に使っている。低所得者向け食料購入支援カードの支給だけで10兆円(日本の農水予算の5倍)だ。このような政策も日本にはない。

 これまで主要7カ国で最も貧困率が高いのはアメリカだったが、いまや日本がそれを抜いて1位になった。そればかりか国連食糧農業機関(FAO)の「飢餓マップ」を見ると、日本はアフリカ諸国と並んで世界でも最も栄養不足人口が多い国の仲間入りを果たしている。もはや「日本が先進国だと思っているのは日本人だけではないか?」といわれるくらい、日本の国民、消費者は苦境に追い込まれている。これを助ける政策が現在の政府にはないのだ。

 では、国は何をやっているのか? 財務省は「とにかく予算を減らせ」といって、とくに減らしやすい食料・農業予算を「切れ、切れ、もっと切れ」という。手切れ金を渡してでも田を潰せば、田を維持する予算を終わらせられる。だが、水田でコメを作ることが安全保障の支えであり、地域コミュニティや伝統文化を育み、そのとてつもない貯水機能によって洪水などの災害を防いでいる。そんなことは考慮もせず、「カネがもったいないからやめる」という論理だけ。国民から金を集めて、国土・国民を守る大局的見地もなく、削減することしか考えないのが財務省だ。

増産への転換こそ急務 立て直すしかない農業

 消費者も、高い生産コストと低い農産物価格のギャップに苦しむ農家を傍目に、「農業ってたいへんだよね…」と他人事のようにいっている場合ではない。農家は激減しており、海外からの物が止まれば、国民みんなが飢える事態がもうそこまで来ている。農業問題は生産者の問題をはるかにこえて、国民一人ひとりの命の問題、消費者自身の問題だ。

 そこで25年ぶりに、農業の憲法たる「食料・農業・農村基本法」(農業基本法)が改定された。予測される危機に備えて農業支援を強化し、自給率を上げていく方向へ転換するのかと思いきや、ふたを開ければ「食料自給率はもう重要な指標ではない」という内容だった。農業・農村をこれ以上支援しても、どうせみんな疲弊してやめていくのだからカネは出さない。既存農家がいなくなることを前提に、巨大企業を参入させて「輸出でバラ色」「スマート農業でバラ色」「それで一部がもうければ、それでいいじゃないか」みたいな話になっている。

 農業基幹従事者が今後20年で、現在の120万人から30万人にまで減る見込みだというが、それはこれまでの政策の延長が作り出す未来だ。だからこそ政策を抜本的に見直し、今を変えることで未来を創らなければいけない。

 そもそもこれでどうやって食料危機に備えるのかといえば、今年4月1日から施行される「有事立法」(食料供給困難事態対策法)があるから大丈夫だという。今苦しんでいる農家の支援はしないが、有事になったら命令する。野菜を育てている農家にも強制的にカロリーが高い穀物(サツマイモなど)を植えさせる。その増産命令に従って供出計画を出さない農家は処罰する。ヘトヘトになっている農家を罰金で脅して作らせればいいという法律だ。こんなことはできるわけもないし、やっていいわけもない。これも財務省の発想だ。

 象徴的に「サツマイモを植えろ」が世論の批判を浴びると、今度は法令の増産要請品目からサツマイモの名前を消してごまかすという姑息ぶりだ。何もわかっていない。

 財務省が最近、農業予算に対する考え方を示した【表参照】。「農業予算はまだ多すぎる」「備蓄米も多すぎるから減らせ」、極めつけは「食料自給率を上げるためにカネを使うのはもったいないからやめて輸入しろ」だ。これが霞ヶ関の危機認識力であることに愕然とするほかない。

 こんなことでは農業・農村の疲弊はさらに進み、地方に人が住めなくなって拠点都市への人口集中がさらに進むことになる。能登半島の地震被災地をみても、一年たっても復旧していない。国は予算を切ってきている。「もう住むのはやめたらいいじゃないか。漁業も農業もやめてどこかに行け」と思わせるような状態だ。また、全国各地で、台風被害を受けた水田の復旧予算を農家が要求してもなかなか出ないという声も聞く。

 もっと驚いたのが「消滅可能性自治体」(人口戦略会議)のレポートだ。よく読んでみると「消滅しろ」という文脈で書かれている。「そんな田舎に無理して住むから、カネを使ってインフラや学校・病院の整備、行政までしなければいけなくなる。もったいないから早くどこかへ行け」という論調だ。「目先の銭金だけの効率性」のためにみんなの暮らしを追いやり、農村・漁村を住めないような状態にしてしまえば、日本の地域の豊かな暮らしや人の命は守れるわけがない。

 この流れを変えていくため、地域で頑張っている農家とも一緒に手を組んで、自分たちの地域、子どもたちの命を守るため、さらに強力に活動を進めてもらわなければ間に合わない。

食料生産は社会の基礎 予算削減の本末転倒

 2022年の稲作経営収支は、1年間コメを作って農家の手元に残るのはわずか1万円。時給にして10円だ。こんな状態でも田を守り、みんなに米を供給したいという思いだけで農家は頑張ってきた。今年、米価が60`2万円をこえたといって騒ぎになっているが、実は米価は長い低迷期をへて、30年前(1990年)の価格に戻っただけなのだ。それが「高すぎる」と感じるほど、みんなの生活が苦しくなっていることに非常に大きな問題がある。

 いずれにしても、生産者にとっての適正な米価と消費者のみなさんが考える適正価格にギャップがある。それを解消する政策がなければ、生産者と消費者の両方を救うことはできない。

 こんな状況でも、政府は安全保障の話になると、アメリカから兵器やミサイルを買って「敵基地攻撃能力強化」といった話ばかりだ。そもそも食料が保証できないのに、中国がシーレーンを封鎖すれば、戦ってはいけないが、戦う前に飢え死にするのがオチだ。在庫処分のトマホークと型落ちオスプレイをかじって何日生き延びられるのか。そんな買い物をするカネがないから農業予算を削減するという本末転倒がおこなわれている。

 ある酪農家さんは、農水省前で「自分たちが潰れたら、従業員さん、獣医さん、エサ屋さん、機械屋さん、関連団体もみんな仕事を失う。皆さんにお詫びする」と訴えていたが、農漁業の消滅は、食料、農漁協、関連産業、そして地域の消滅を招く。私たちはまさに運命共同体だ。そして、第一次産業は小さな産業だという人がいるが、生産高は全国で10兆円規模でも、それを基礎にして成り立っている食料関連産業の規模は110兆円だ。すべての経済社会は第一次産業を基礎にして成り立っているといっても過言ではない。だから皆が支え合ってお互いを守っていくことを今やらなければ、泥船に乗って一緒に沈んで行く運命共同体になりかねない。

 江戸時代は鎖国政策だったので、日本は徹底的に地域の資源を循環させて、循環型農業、循環型社会を作り上げていた。それが世界を驚かせた。その持続的な仕組みをぶち壊したのがアメリカの占領政策であり、日本側もその思惑に乗って「経済発展」を遂げたのも事実だ。

 だが、私たちの試算では一つの大きな自由貿易協定を決めるごとに自動車産業が約3兆円もうける一方、農業はRCEP(地域的な包括的経済連携)ではマイナス5629億円、TPP11(環太平洋経済連携協定)ではマイナス1兆2645億円だ。自動車業界が過去最高益、内部留保をため込んでいるのなら、生け贄にしてきた農業や食料の現状に対しても責任を負うべきではないかという声が出るのも当然だ。

 日本の農業を生贄にしやすくするためにメディアを通じた洗脳もおこなわれてきた。農業過保護論だ。「日本の農業は補助金漬けだ」というが、実際に調べると農業所得における補助金割合はせいぜい3割。スイスやフランスはほぼ100%だ。命を守り、環境を守り、地域コミュニティを守り、国土・国境を守る産業(農漁業)を国民みんなで支えることは世界の常識だ。それを唯一「おかしなこと」と見なしている日本の常識が、世界の非常識といえる。

 手厚い農業政策があるフランスの農家の平均年齢は51歳。一方、ほとんど保護がない日本の農家の平均年齢は69歳だ。10年後どころか、「5年後にはここでコメを作れる人がいなくなって集落そのものが消えてしまう」という地域が山のように出てきている。いかに私たちに残された時間が少ないかということだ。

 輸入が増えて自給率が下がったのは、アメリカから無関税で入ってくる安い農産物に国民が飛びついているからでもある。だが、安い物には必ずワケがある。

 日本は発がん性物質を含むグリホサート(農薬)の基準が世界一緩和され、安全性への懸念が払拭されていない遺伝子組み換え食品の世界最大の消費国だ。またゲノム編集食品も「審査もするな」「表示もするな」の野放し状態で一般流通が始まり、子どもたちが実験台にされている(ゲノム編集トマトの苗は全国の学校に配布された)。その利益は特許を持っているアメリカのグローバル種子・農薬企業に入るという仕組みだ。日本の消費者には、選ぶための情報も提供されていない。

 こんなものを「安い、安い」といって食べ続けて病気になることを考えれば、実はこんなに「高い」ものはないのだ。終戦後、学校給食から「食生活改善」といってアメリカの企業がもうける政策がおこなわれたが、それが今も形を変えて継続しているといわざるを得ない。

地域で循環するしくみを 「飢えるか、植えるか」


農業組合法人の田植え作業(山口県)

 グローバル種子企業のような巨大な力に「種」を握られると、命を握られることになる。地域で育んできた在来の種をみんなで守り、その生産物を活用して、地域の安心・安全な食と食文化を維持することが食料安全保障の基盤となる。地域を食い物にしようとする「今だけ、カネだけ、自分だけ」の人たちを排除し、ローカル自給圏のような形で、種から消費までの地域住民ネットワークを強化し、地域循環型経済を確立するためにそれぞれの立場からリーダーとなって行動を起こしてもらいたい。

 私はこれを「飢えるか、植えるか」運動と呼んでいる。飢えないために、みんなが生産者になって農作物を植えようと。消費者・生産者という区別をなくし、住民が地域の農家と一体化して、市民全体で耕作放棄地も分担して耕す。家庭農園、市民農園を拡大することは、安心・安全な食料の確保、食料危機に耐えられる日本をつくる一つの鍵になり得る。学校給食は、その突破口となる。

 和歌山県では、母親グループを中心にして、学校給食のパンに輸入小麦を使うのではなく、耕作放棄地を活用してみんなで地元産小麦を作ろうという呼びかけが始まり、「給食スマイルプロジェクト〜県産小麦そだて隊!」がスタートした。2年前からは農薬と化学肥料を使わずに小麦を育てている農家と繋がり、種取りから収穫まで親や子どもたちも喜んで参加するようになり、今ではずいぶん生産量が増えてきた。このように生産者と消費者が一体化してみんなで食を守るとりくみを広げ、地域行政もそれに応える――そのうねりが国の政治行政も変えていくことにもなる。

 国の政治行政が変わらなければ、農家は赤字が酷すぎてもう持たなくなっている。今、農産物価格を上げなければ生産コストがまかなえず、上がりすぎると消費者も払えないというギャップを埋めるのが政策の役割だ。

 まず農地を維持するための交付金、それから農家の赤字を補填する。それによって消費者も安く買えるようになるのだから、そのための直接支払いがどうしても必要だ。

 もう一つ大事なのは、他の国のように備蓄や援助のために国が農作物を買い上げることだ。

 この三つをやるのに必要な予算は、私の大雑把な試算で約3兆円だ。現在の農水予算(2兆円)に3兆円を足しても5兆円だ。以前、農水予算は実質5兆円をこえていたのだから、元に戻すだけだ。安全保障の観点からいえば、農水省予算だけではなく、防衛省予算で確保することも視野に入れるべきだ。それほど食料、国民の生存をめぐる状況は切迫している。

 だから現在、地域で生産を支えてくれている農家の皆さんの踏ん張りと、それを支え合う仕組み(輸入に依存せず、地域資源循環型農業・社会)をみんなでつくっていくことが希望の光であり、子どもたちの未来を守る最大の保障だ。そういう思いは全国で高まっている。日本にはその実績があり、今でも世界で一番競争に晒されながらも世界10位の農業生産額を維持している日本の農家はまさに「精鋭」だ。私たちは世界の先駆者としての誇りと自信をもって、その底力を今こそ発揮しよう。地域みんなで作り、食べるという循環を強化し、その力でこの国の流れをまともな方向に持って行くうねりを作っていくために一緒に頑張ろう。

◆生産者を交えて論議――質疑応答より

予算つけぬ財務省の壁 農家支援切実な中

 生産者(男性) 今の話を泣きたいような気持ちで聞いた。私は1f未満の極めて零細の米農家だ。親父から農業を引き継いだ40年前は、コメ一俵が約2万円だった。今よりも楽に農業で食べていけた。でも今は無理だ。

 私は田植えをした後の青々とした水田が好きで農家を続けてきたが、この状態では続けることもできず、子どもに後を継げともいえない。子どもも親の悲惨さを見ているから継ぐ気もない。でも鈴木先生の話を聞いて希望はゼロではないと思った。しっかりしたバックアップの下に、「農業やるよ」という若者が生まれるような農政にぜひ作り替えてもらいたい。

 生産者(男性) 私は無農薬の有機農業をしている。普通の慣行農業とは農法も販売ルートも価格も違うのだが、それでも最近一番心配に思うのは田舎の人手不足問題だ。私の地域でも周りはみんな80歳以上の先輩方で「もう本当にやめる」「今年やめる」と毎年言いながら1年1年農業を続けていらっしゃる。去年は猛暑もあった。私は里山の麓で作業しているが、このまま作業する人がいなくなってしまえば、この田も畑もみんな山に呑み込まれていくのではないか、それはすぐそこまで来ているのではないかと感じる。

 今年の「コメ騒動」もあり、若い人たちが危機感を持ってまた畑に戻ってきてくれるのではないかと期待もしている。田舎に暮らす農家は、日本の景観を守っていることに誇りを持ってやっているのだが、政府がこれから日本をどうしていくつもりなのかがまったく見えない。政治の世界には、本当に日本のことを真剣に考えている方はいるのだろうか? 私には破滅すればいいと思っているようにしか見えない。

 山本太郎 農業を救うためには農家への直接支払いなどの仕組み作りが必要で、それを動かしていくのが政治家の役割だ。「この国が滅べばいい」と思いながら政治にかかわってる者は一人もいない。全員真剣なのだが、その方向性が違う。たとえば自動車でもうけるために農業を切り捨てることも、自動車が日本の一番の力なんだから当然だと真剣に考えているわけだ。だが、結局導いているのは破滅の道だ。

 農水官僚もやられていた鈴木先生は、内側と外側から農政を見てこられて、政治家の姿勢も含めてどう感じておられるか?

 鈴木 私がいたころの農水省は、食料・農業・農村を守るために戦う気概があった。ところが最近はその気概を持とうにも持てない。財政当局の壁だ。財務省の権限があまりにも強すぎて、とにかく農水予算は出さないという方向性が厳しくなって何もできない。

 だから、農水省が作ったはずの農業基本法改定案なのに、農水予算は切って、食料自給率など上げなくてもいいというような財務省と同じことが盛りこまれているわけだ。これでは誰がみんなの命を守るのか。少なくとも気概をとり戻してもらう必要がある。

 たとえば先ほど話したように、農地維持のための交付金を中山間地も含めてもう少し出せないのかという議論を提案したら、江藤農水大臣は「そういう政策が必要だ」ということで直接支払いの仕組みを作るという話が出てきたというので、少しは安心できると思っていた。だが、最低でも10e当り3万円はないとほとんど役に立たないところ、出てきた案は農地10e当り2000円だ。役に立たないどころか、子どもだましだ。

 財務省から「君たち、やる気なのはいいが出すカネはないよ」といわれ、限られた農水予算の中から組み替えて、薄く広くやるしかない。せっかく仕組みを作っても、「財政当局の壁」で予算が付かないため、まったく役に立たないものを平気で出してくるようになっている。諸悪の根源はどこなのかという話だ。

 驚くことに、財務省の方々はOBも含めて、話をすると口を揃えて同じことをいう。日本に必要なことは二つだけ。一つは増税。もう一つは歳出削減だと。税金はとって、使う方は切りまくるのが財務省の使命であると本当にいっている。今すべてがその壁にぶち当たっている。

 山本 結局、財布を握っている者が一番強い。さまざまある省庁の中で、最強なのはやはり財務省になってしまう。だが、30年前の「ノーパンしゃぶしゃぶ(接待汚職)事件」からこっち、大蔵省から財務省に組織が変わってから現在にいたるまで日本経済は悪化しかしていない。逆にいえば、この国を発展させるためのアイデアも才能も持ち合わせていないわけだから、こんなものはさっさと解体する方が話は早い。農地維持の交付金の出し方にしても狂っているというほかない。そういう者たちからこの国をとり戻さなければいけないということだ。

 高井崇志 私は昔、民主党にいたが、2009年当時の民主党のマニフェストには、財務省解体があった。解体とは書いていないが、内閣官房に新しく国家戦略局を作り、そこに官民の優秀な人材、それこそ農水省の若手なども集めて予算編成権を握る構想だった。財務省は予算編成権を奪われたら解体と同じだ。これを約束していたのに民主党政権はやらず、それどころか当時財務副大臣だった野田佳彦代表(現・立憲代表)は消費税増税までやった。

 財務省の発想は緊縮財政だ。これを改めない限り何もできない。国債発行で財政出動する以外にないのに、日本は債務残高が多いという理由で政府もマスコミもそれを叩く。だが日本はそれ以上の対外純資産を持ち、国債暴落の確率もドイツに次ぎ世界で2番目に低い。円建ての国債発行では財政破綻はしないということを国会でも徹底的に議論していきたい。


満席となり立ち見の参加者も多かった埼玉県熊谷市でのれいわ新選組の「おしゃべり会」(2月23日)

生産者も消費者も救え かつてはあった食管制度

 質問(男性) 42年間、弁当屋に勤めている。今、コメの値段が3年前の1・6倍になっている。弁当でいえばコロッケ1個、メンチ1枚買える値上がり幅だ。隣町では3月で配達の弁当屋がなくなる。弁当屋の危機だ。弁当の配達がなくなるとみんなのお昼もきつくなる。コメは3年前は30`で9000円だったのが、今は2万円を超えている。野菜も全部高い。うちの店は農家と提携しているので直接安く買えているが、そうでないところは大変だ。

 鈴木 消費者も業者さんも悲鳴を上げている。逆に農家にすれば、やっと30年前の米価に戻って、それでもまだ赤字だが一息付けるかといった程度だ。それだけ生産者と消費者それぞれの適正価格にギャップがある。

 以前は、国に食糧管理制度(食管制度)があり、たとえば生産者が作ったコメを政府が全量1俵2万円で買い、消費者向けにはそれを1万円で販売するという形で、生産者を助け、消費者も助けるという財政負担をしていた。今は食管制度は廃止されたが、特に主食のコメなどについては、そのような政策を復活させることも一つのアイデアだ。

 それができなくても生産者の赤字を埋めるための直接支払いをして、消費者が買う値段が上がらないようにすることもできる。生産者と消費者が払える価格のギャップを埋める政策はどうしても必要だ。

 質問(女性) ある大企業が太陽光パネルを敷設するために地権者と契約を結び、2年後、3年後に向けてこれからどんどん増やすために田畑を買い上げている。このまま農地がなくなっていくことへの懸念がある。大企業相手ではあるが、このような動きは止められないのだろうか?

 鈴木 農地に関連する部分では、営農型パネル(地面から浮かせる)などを使って、農業をしながら太陽光発電もやって両方の利益が得られるようにして農家を助けようという議論もある。一方、とにかく太陽光パネルを張れるようにして、それを投資目的で転売してもうけるビジネスがはびこっている。農水省は、営農型太陽光発電をやるときには、近隣の農地で単位当り収量が八割維持できることを条件に認めるといっていたが、官邸や経産省から横ヤリが入り、「そんな面倒くさいことはいい」「農業なんかやっている振りでいいから、とにかくそこら中の土地にパネルを張って、みんながもうけられるようにしろ」ということで規制が緩和された。そんな動きのなかで、今でも環境破壊みたいなことをしながら、誰かがもうければいいような動きがまた強まっていることに大きな懸念がある。

 質問(男性) これからの時代、就農する人が増えれば日本は豊かになるのか?

 鈴木 その通りだ。若い人たちに農業に入って来てもらえるようにするには、今一生懸命働いている人が報われる農業を取り戻さないといけない。そのためにしっかりと政策を組み直す必要がある。若い人が希望を持って農業に入り、頑張っている人たちがさらに頑張るぞ! と思える農業にしていくために、みんなで頑張っていかないといけない。

 山本 あまりにも人々の善意に甘えすぎた国になっている。農業も時給10円だという。それでも農業をやっておられるのは、自分たちのために作るということもあるだろうが、食料を供給する非常に重要な使命、地域を守る責任感があるからだ。現状はそれがまったく報われていない。介護にしても、保育にしても所得が低すぎる。それでも「私が抜けたらどうなるか? それを考えると辞められない」という人々の善意につけこんで国はちゃんとした施策を出さない。この舐めすぎた政治をみんなの手で変えるしかない。

 それはこの国の最高権力者にしか変えられない。それは皆さんだ。雇われ店長の総理大臣ではない。皆さんがそれを変える鍵を握る、非常に重要な存在であるということをもう一度みんなで思い出し、一緒にまともな社会を作っていこう。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/34237

15. 中川隆[-7326] koaQ7Jey 2025年3月28日 15:49:14 : ilNTyWUm5I : dmlLejBEaGFOblU=[11] 報告
<■65行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
農業補助金が収入の5割 アメリカ農業は競争社会ではない 
2025.03.28
https://www.thutmosev.com/archives/38917711.html

アメリカの農業は面積が広いだけで効率が悪く補助金で存続している

Wheat_Farm
引用:http://s3.amazonaws.com/fallingrain/uploads/cc3c5a058f9a47b4a48a503c69530c71/large/Wheat_Farm.jpg?1356317678
アメリカの農業補助金

アメリカの農家は収入の半分以上を政府の補助金から受け取っていて、1割台の日本こそ「競争社会」でアメリカ農業に競争などありません

農業自由化交渉や貿易交渉を巡ってアメリカは毎回「日本は農業を保護し不公正貿易をしている」と言っていました

農業だけでなくどんな品目でも必ずアメリカは「日本は保護貿易をしている」と非難しています

しかし実際は不公平なのはアメリカの方であり、補助金と貿易障壁で自国産業を保護しています

今回はアメリカの農業を取り上げて、いかに保護され不公正な貿易をしているかを暴きます

アメリカの農産物(とうもろこし、麦、大豆、米、綿花)の生産コストは、生産コストが販売額を上回っています

少数の例外品目を除いてアメリカの全ての農産物は赤字で生産していると断言して良いと思います

例えばアメリカが日本に輸入するよう迫っている米(占領時に盗んでいった日本米)の生産コストは、販売額の100%以上です

農作物の相場は年によってかなり違うが、生産コストが販売額の200%を超える年もあった

米を1万円で作って5千円を政府が補助し、5千円で販売している事になります

小麦、トウモロコシ、大豆も販売額の100%から200%の生産コストが掛かっていて利益は出ていません

アメリカの農業は世界最強ですが、補助金の金額が世界最強なのでした

農業に出している補助金は製造業とかIT産業とか、国民の税金で支払っています

お金が足りなければ中央銀行のFRBがいくらでも印刷するので、足りなくなる事は起こりません

日本の方が過酷な競争社会だった
一方でアメリカは関税に関しては低く15%前後で、日本は平均50%前後と高くなっている

これを根拠にアメリカは「日本は農業を保護している。アンフェアだ!」というのですが、アメリカは補助金を高くして関税を安くしています

日本の農業の補助金割合は15%といった所で、アメリカの50%以上とは大きな差がある

関税で保護するか補助金で保護するかの違いだけで、補助金のほうが上等という事はありません

むかし国賊団体NHKのテレビ番組でアメリカの米農家の特集をして褒めちぎっていました

彼らはヘリコプターで種を撒いて水を入れたら、収穫までほったらかしみたいなやり方をしていました

それで良い米が取れるなら農家は楽で良いのですが、後で調べたらそれは「工業用のクズ米」でした

テレビではアメリカの農業がいかに近代的で日本が遅れているかを強調していましたが、種証しはそんな物です

アメリカの農業予算は年間10兆円以上で、アメリカの農業生産額は17兆円に過ぎません

対する日本は農業生産額約7兆円で農業予算3兆円です

この数字を並べて分かるのはアメリカの人口は日本約3倍弱なので、日米一人当たりの農業生産額は大差ありません

アメリカの農業は凄く巨大だという印象を受けますが、『国民一人当たり』に直せば同じです

このカラクリはアメリカが大量に作っているのは小麦やトウモロコシなど安いものばかりである事です

反対に日本が作って居るのは生鮮野菜とか高級和牛とか値段が高いものが多い

日本の農家は過当競争によって崩壊しようとしているが、アメリカの農家は補助金で良い生活をしている

アメリカの農家は平均4万ドルの補助金を受け取っているが、日本は1万ドル未満に過ぎませんでした

貿易交渉で「日本はアンフェアだ」とアメリカ代表が発言したら、机を蹴っ飛ばして投げつければ良いのです

以前農林部会長だった小泉進次郎が「日本の農家は甘やかされているので競争原理が必要だ」と言っていました。

このレベルのアホが農政をやっているとしたら、日本の農業は滅びるしかありません

そして農業が滅んだ国はひとつの例外もなく国が滅亡しています
https://www.thutmosev.com/archives/38917711.html

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