真空管アンプ研究 60年代 懐かしの宝箱 http://mtomisan.my.coocan.jp/page199.htmlブログもご覧ください 60年代 懐かしの宝箱 http://mtomisan.cocolog-nifty.com/blog/ オーディオ史を調べてみると実用的なメーカーアンプはWE社の3極管VT-1、VT-2によるもので、1918年のことらしいです。回路的には段間にトランスが入る、トランス結合方式。 その中で特筆すべきなのが直結方式を使ったのが「ロフチン・ホワイトアンプ」1929年。 1930年代に登場した真空管が、2A3、42、6F6、6L6。 戦後著名なアンプ(回路)が出てきます。 1947年 ウィリアムソン・アンプ KT-66の3結PP 全段で20dBのNF。1950年代に製品化。 オルソン博士のすり替え実験。オルソンアンプ 6F6の3結パラPP、全段3極管・3結 で負帰還なし。 1951年 ウルトラリニア・アンプ(SG端子付き出力トランス使用) 6L6 1954年 フッターマン・アンプ OTLで8、16Ωスピーカーを駆動 12B4 リニアスタンダード・アンプ 36dBのNF 5881 1955年 マッキントッシュ MC60 1956年 マランツ モデル2 1957年 マランツ モデル3 1958年 マランツ モデル5 1959年 クォード22 1960年 マッキントッシュ MC240 1961年 マランツ モデル8B マッキントッシュ MC275 1968年 マッキントッシュ MC3500 主に海外製品の発表など。海外製品の影響は国内製品にも大きかったと思われます。日本製品では出力管が国内製の球に置き換えられた上で回路など影響を受けたと言われています。特にウィリアムソン型のアンプはその後多かったらしい。マッキントッシュはトランス巻き線が凝っていたのでアマチュアの製作などにはそのまま落とし込めなかった。またNFを大きくかけるには個人にはそこまで腕のたつものも多くなかったので、ラックスのキットなどは安心して扱えるものだったのかもしれません。出力トランスが音を決めるという時代であったけれど、50年代出力トランスのないOTLアンプも出てきて、60年代後半のスピーカーカタログを見ると200Ω、400Ωなどが残っていた記憶があります。これはOTL用のスピーカーの名残でした。 真空管アンプ時代(1960年代〜1970年代) 自分が研究している1960年代では、オーディオは真空管からトランジスターへ、ソリッドステ ート化の道を歩んだ。 1960年代の半ばにトランジスターアンプの時代がきて、トリオ(現ケンウッド)の石宣言は有名 となっている。 丁度この時期、自分はラジオ少年よりはオーディオ少年であって、トランジスターのアンプ、 真空管のアンプを何も考えず好きに選んで組んでいました。 他でも書いたけれど、1960年代も終わって高校生になって、真空管アンプを組もうとしたと き、WE-300Bというものすごい真空管があること、そしてST管の2A3はもう入手が難しくなって いました。 オーディオ・ブームのピークはいつごろであったのか判りませんが、大学生になって、友人 からコンポを組むので相談に乗って欲しいとか、安く買えるところはないのか?そんな話が親 戚からも持ち上がるようになったのは70年代の半ばであったと思います。 大学にはオーディオ研究会もありましたし、そんな研究会には一般誌の出版社から編集協 力の依頼が来たり、そこで知り合った他大学sんなことを考えると1970年代も半ばにはオーデ ィオはブームになっていたのだと思います。 手元に1974年のオーディオカタログがあります。これは当時オーディオ専門店などには良 く置いてあったものです。 この資料を見る限り、真空管アンプは製品として出されていますが限られたもので、さらに キットとなるとラックス社が出していたくらいだったようです。 プリメイン・アンプ ラックス SQ38FD 「サンパチエフディー」の愛称で今日でも馴染み深いものです。 オーディオメーカーに入って販売実習の時、下取り補修した38FDを売ってしまい、専務の店 長からこんなもの売るか(メーカーのヘルパー実習なので、もちろん他社)と言われたのを思 い出します。 出力管は有名なNECの50CA10。近代管であるので純粋な3極管ではなく、多極管の内部接 続ですが。当然プッシュプルの回路構成で出力は30W×2.トランスは自社のOY−15シリー ズを使っていました。回路構成は当時多かったムラード型。プリ部は2段NFイコライザー、NF 型のトーンコントロール回路。現在も人気で中古が出回っているようですが、出力管は90年代 には中国製が出回っていましたが最近はみません。当時の価格が138000円、もっと高かった 記憶もあるので以後価格改定があったかもしれません。 A-1020 62500円 プリメインアンプのキット。3極出力管6RA8のプッシュプルでOY型のトランスを使っていまし た。出力は10+10W。価格よりは豪華な見かけ、アクセサリー回路も豊富です。たぶん木の ケースは別売りであったような。この6RA8も近代管で純粋な3極管ではありません。 このほかトランジスターを使ったA220というキットも出していました。 プリ・アンプ A-3300 45800円 キットで、すでにプリント基板+ハーネスの構成をとっていたようで、配線箇所を少なく作り易く したことが特長であったようです。 使用真空管は資料には12A×7、12AV7とありますがこれは12AX7、12AU7のことのようで す。 CL35/U いかにもマランツのプリアンプを意識したデザイン、12AX7を6本、12AU7を1本を使用。 当時も38FDを買える138000円の値段には驚いたものです。ヘッドホンアンプはトランジス ター方式でした。 トーンコントール、アクセサリー回路も充実。最近の高級アンプには少なくなった流れです。 MC型のカートリッジには、別売の昇圧トランスが挿入できるソケットがあったようです。 パワーアンプ MQ-36 6336AのOTLアンプ。これは当時のカタログの隅には乗っていた250000円の値段は存在 感がありました。 16Ωで25+25W、8Ω表示はなし、最適負荷は50Ωとなっておりました。 MB-88 モノラルタイプ。12万円。KT-88のプッシュプルで85W。「85Wもの膨大な出力を連続して取 り出せるアンプとすると、これは管球式の領域です。」というキャッチコピーはいかにも当時を 感じさせます。放送室にあっておかしくないデザイン。 A-2500 42100円。6RA8PPでOY14型の出力トランスという構成のキット。出力は10W+10Wと大出力 ではないけれどまとまりは良かったはず。 ボンネットは別売りで4500円していました。 A-3500 6CA7のプッシュプルのキット。ボンネット込みで59500円。こちらも雑誌広告によく乗りまし た。 やはり、プリント基板組み立てで作り易くしています。性能も安定とあります。 出力管を6L6GCなどにも変更できましたが、販売はどうやってやっていたのか。 MQ60 79000円。38FDの出力部をパワーアンプ化したもので30+30Wが得られました。 50CA10の全く同一ではなく工夫改良がしてあったようです。 MQ60 Custom 89000円。こちらは無帰還方式。裸特性がそのまま出る。トランスの良さはラックスとして自慢 なところが出るというもの 看板のOY15シリーズを使っていました。今から考えるとお得な値段設定です。 MQ80 169000円。出力管にはレギュレータで使われる大型双3極管6336Aを使用。MQ36はOTL でしたが、こちらは出力トランス付きでスピーカーは合わせやすかったはず。8Ωで40W出 力。トランス巻き線を利用した回路は複雑でありました。 ダイナコ マークIII モノラルアンプ。当時音楽的視点で作られた・・・とされていました。確かにダイナコはオーディ オ製品でも自分は別枠であまり興味を持ってなかったです。ローコスト組み合わせコンポでは 時折入る製品でした。 ダイナコ ステレオ70 数字が出力になって判り易い。35+35W。EL34のPPなので、比較的無理のない使用法で あったと思います。 外形幅は33cmの中途半端な大きさ、ブロック状のデザインはダイナコお得意のもの。 <60年代から70年代へ>
それでは、このホームページの60年代の変化はどうであったか・・・ですが。 あちこちのコーナー書いていますが、アンプのデバイスが変わったのは60年代。60年代の 初めは真空管、終わりはトランジスタに完全に変わっておりました。70年代はじめほぼ消え た真空管アンプは、マルチアンプ、4chオーディオなど別方向進むオーディオの中で、趣味性 回顧の代表格でもあったと思います。 この時期頑張ったラックスは真空管アンプで別格であったのです。手作りのキットや優秀な 性能、優美なデザインのOYシリーズトランスは無骨なタンゴのトランスに比べてはるか上位に ありました。 そのイメージからか、60年代にトランジスタアンプの道を開いたのがラックスであったのは意 外に知られていません。1962年のプリアンプPZ-11がそれですが、電源は006Pの乾電池で ありました。このあと、SQ-11はやはりラックスからトランジスタ式のプリメインとして、時代は 簡単にトランジスタには変わらず、トリオのTWシリーズ、いろいろあって、オーディオとして真 空管アンプが駆逐されてしまうのは、ソニーのTAシリーズの影響が多大であったと思います。 1965年のTA-1120はマニア羨望のアンプで、1969年のTA-1120Fまで改良されてた頃には完 全にトランジスタの時代に変わっていました。 <ラックスのアンプについて> テレビのそうでありましたが高価な機材は自作があった時代。もちろん誰にでもできることで はないのでキットが生まれます。 ラックスはトランスのパーツメーカーでしたが、キットを出すところが多い中、優良な部品を使 った、ラックスのキットは良心的で良い音がするということで定番でした。1960年代前半、市場 を制覇した6BQ5のアンプキット、SQ5シリーズ。 6GW8を使ったSQ62は62年、そして63年は名器のSQ38が生まれます。初代は6RA8の 出力段でした。それが50CA10に出力管を変えSQ-38FDにまで成長します。
<各社の真空管アンプ> すでに別項目にありますが、異彩をはなったのは松下でしょう。テクニクス10A,20A,30 A,40A、いずれも普通のメーカーでは作らない趣味性の高いアンプたちです。これらが60年 代中かばに出て、一見時代に逆行したかと思われますが、1969年には50Aでは一気にトラ ンジスタもOCLアンプを出した・・・それが松下でした。60年代後半、松下は真空管アンプの会 社であって、超弩級のOTL真空管アンプを製品化するなど、電化製品の会社とは思えないマ ニアックな製品を出していた訳です。 このあたりの理解の難しさ、1つは当時も、現在のように状況が見通せていた訳ではなかっ たことや、トランジスタ化からIC化へ進む中。まさに発展途上であって状況は整理されていな かったということで、はっきり進化、真空管アンプの位置づけが今日に近いものとなったのは 1970年代の半ば、オーディオやコンポが一般化した頃ではなかったかと思います。 そんな60年代最後1969年のオーディオカタログを見てみると・・・ <国内> 総合アンプ サンスイSAX-600、コロムビア MA-30、MA-400 プリメイン サンスイAU-111 コロムビア MAT-3、ラックスPL-45、SQ−38F、SQ-78 メインアンプ サンスイBA303,BA202、松下20A、40A、ラックスMQ36、KMQ7,KMQ8 <海外> プリアンプ ダイナコ PAS-3X マッキントッシュ C-22 メインアンプ ダイナコ ステレオ35 ステレオ70 MARKIII マッキントッシュ MC-225 MC- 240, MC-275
となっており、5年ほどの変化を見てとれますが、海外でダイナコ、国内でラックスのラインナ ップが継続していたことが判る訳です。 プリメインアンプ SQ78 32500円 ボリウムノブが独特の形をしております。当時このアンプを見た記憶は残念ながらありませ ん。 出力管には6RA8のPPが使われていたようです。10W+10W。調べるとSQ77とSQ38(旧製品) の混血的存在とあります。 AU-111 66000円
正直当時はあまり注目していませんでした。山水のトランスには自作小型トランジスタラジオ のイメージ(STシリーズ)が強かったせいでしょうか。 復刻の話が出て、そういえばあったという状況で。ブラックフェース、海外風の対象形のデザ イン。6L6GCPPで40+40W、当時の雑誌にも「プリメインアンプの傑作」(藤岡誠氏)とありま す。 SQ-38F 78000円 この後、38FDになるけれど、Fはファイナルの意味だったらしい。38→38D→38DS→と進化し ました。 こちらはトランスは当然ラックス製、出力は3極管の6RA8からNECの50CA10に変わって唯一 ウィークポイントであった出力も30+30Wとなってさらに高い評価を得ました。 プリ・アンプ
テクニクス 30A 74000円 松下がテクニクスシリーズという名前を使い出したもので、メインアンプ40Aと遂になるデザイ ン。 左側の黒い部分に並ぶのセレクターのプッシュスイッチ。当時はロータリー型のセレクタース イッチが普通なので、珍しかった。 回路は12AX7を使ったマッキントッシュタイプのイコライザーで、当然のことながら耐入力は大 きかった。 当時の評価は海外著名アンプほどは高くなかったと思う。 ラックス PL45 75000円 部品は厳選されていたようで、記憶によれば通信用の12AX7が使われていたりした。回路は マッキントッシュの変形だったらしいが、これも海外製品ほどの評価はなかったようだ。 MCタイプのカートリッジにはヘッドアンプではなく、昇圧トランスで、そのためのソケットが用意 されていた。 マッキントッシュ C-22 194000円 マランツ#7と並んで当時だけでなく、管球プリの代表格。#7が販売をやめても、国内販売 がされていた。もちろんマランツとの音の違いもあったが、概観もまったく違うもので、ブラック で照明されるパネルなどは「高級」の言葉で片付けらるような簡単なものではなかった。 アクセサリー機能も充実しており、当時のトランジスタアンプへの影響も大きかったと思う。 パワー・アンプ テクニクス40A 65000円 前作の20AのOTLがあまりにセンセーショナルで出力管の並ぶすがたのイメージが逆にこの アンプにつまらなさを感じさせてしまった。 30Aに合わせたデザインで、出力管が外から見えないことを指摘した評論家も多かったと思 う。内容的にはDF(ダンピング・ファクター)コントロールがあって、スピーカーとの相性を決め ることができた。回路前作のOTLとは逆行したトランス付。そんな戦略的な流れのなさも、マニ アには覚める部分であったと思う。 マックトーン 63M 65000円 国産OTLアンプ。OTLながら30+30W。もちろん、当時見たことはないが、名前だけは良く出 てきた。 ラックスMQ36 160000円 その名前が暗示するように6336パラppのOTLアンプ。評価は非常に高かった。トランスメーカ ーが作るトランスレスアンプというところに面白みがあった。 クオードII 41000円 モノラル構成であるけれど、モノラル時代から継承された伝統のあるアンプだった。KT-66PP で15+15Wの表示は控えめなもので、システム構成的にはプリアンプの「22」となるけれ ど、60年代末にはすでに管球式ということで発売を中止していた。トランジスタは特有のノイズ があるというところをすでに克服しており、大電力を扱う・・・ということではまだ真空管にまだ 分があるという時期だったのだと思う。 独特の塊のような凝縮した形状とKT-66のスタイルが良くマッチしていた。 ダイナコ ステレオ70 60500円 EL34PPのステレオ構成。35+35Wということで動作的には無理のないものであったようだ。 この真空管の用途の中には最大定格ぎりぎりで、トラブルをおこすものもあった訳で。 価格を考えるとコストパフォーマンスは高かった ダイナコMARK3 48000円 KT-88PPで定格60Wのモノラルアンプ。 フッターマン H-3a 130000円 雑誌などでもOTLアンプ回路で必ず名前が出てきた。欧米でOTLは珍しい存在であったらし い。フッターマンは回路の発明者の名前。 H-3は16Ω負荷で50+50Wであったけれどこの3aでさらに90+90Wにパワーアップしてい る。スピーカーの制動力もDF=200と大きかった。消費電力も大きく通風には苦労したらし い。 マッキントッシュ MC275 308000円 KT-88PPの業務系アンプとして有名だった。モノラル時代のMC75が原型。75+75Wの高 出力。値段も30万円ということで別格であった。系列機種に40+40WのMC240。25+25 WのMC225があった。 マランツ 8B 155000円 6CA7PP。40+40Wで有名なプリアンプ#7とペアになるパワーアンプ。出力は下がるが中 の配線を変えて3結にできる・・・とステレオガイド系の本に書かれていたりする。当時、日本 的なオーディオでは3極管の伝統は絶対であって、トランジスタアンプが発展して、真空管アン プの位置づけが変わるまでは、出力の望めるビーム管や5極管のアンプは拡声用という認識 が強かった。 アンプ値段を見て、こんな名器やこんな構成のアンプがこんなに安い・・・と思えるかもしれま せんが、当時を思うと貨幣価値、生活の程度またオーディオに対する考えなど大きく違う訳で す。ステレオで言えば10万円で買えた・・・ということを考えれば、大変高価なものだったです し、こうした管球アンプはどこのお店でも置かれていたものではなかったのです。 実際自分の海外の真空管を見たのは70年代に入ってからですし。 70年代になると手作りブームに乗ってトリオがアンプキットを出したりしますが、60年代はラ ックスのアンプキットのほか、トランスキットというのもあり、回路は自由でケースとトランスを組 み合わせたものもありました。70年代の中ごろの真空管アンプの復権は、ジャズファンがマ ッキントッシュのアンプを愛用したりで、入手の難しい300BよりはKT-88ということでありまし た。ちなみに一般に300Bの入手ができるようになったのは80年代に入ってからのことです。 70年代では、ラックスはラックスキットとしてトランジスタやICを使いまた違った趣味性の方向 に発展します。スピーカーではパイオニアのPIM16キット、フォステクスのスピーカーキットもあ りました。 自作派にはすでに別項で紹介したように雑誌が指針となっていました。人気の球もありました が、いくつかの定番・著名回路も定着していました。ウィリアムソン型、オルソンアンプはいず れも学者さんの作によるものです。ウィリアムソンはKT-66の3結、オルソンアンプは6F6の3 結。各段も3極管であって、良い音は3極管でなければ良い音はしないような錯覚にもなりま した。 OTLアンプは特にトランジスターでのメーカー製が出てくると管球アンプにもスペックが求めら れるようになり、十分な帰還がかけられものが多くなりました。その分、個性は失われて、個 人的には面白みがなくなっていったと思います。 ステレオガイドなどに乗らない真空管アンプもありました。これは自作系の雑誌などから見つ けたものです。 画像はマックトーンという会社のアンプです。ある意味堅実なデザイン、スペックですが、オー ディオ雑誌系の評論家たちは厳しい評価をしています。実際の音を聞いていないので判りま せんが、スポンサーでないメーカーには好きなことを言えたのかもしれません。またメディアに たいしても十分なプロモーションができていたとも思えません。 雑誌の広告から見つけたものですが。松下はマニアックな広告を作っていました。右は50 HB26を使ったOTLアンプテクニクス20Aです。 廃刊された「電波技術」でみつけたのはクリスキット。金田式DCアンプより前にも、趣味を超え た精神的世界があったことを物語るところと思ってます。右はラックスのキットKMQ8、6 RA8PPです。 そして最後は故長岡鉄男氏の作られたと思われる自作アンプ。これは4万円ステレオ組むと いう特集の中で出てきたもの。自分のシステムということで氏お気に入りのアシダボックスとの 組み合わせで、後日アンプは公開、本を出すという話でしたが、自分は見たこともありませ ん。やはりスピーカー自作だけでよかったのでしょう。画像からは6BQ5あたりのシングル、前 段は12AX7片ユニットづつ、トランスはタンゴ、U-608あたりでしょうか。 <追加情報> 1974年というポイントでの紹介しました。 よく調べてみるとまだまだ、データが出てきます。 ダイナコ マークIII 完成品は68000円でしたが、59800円のキットも出ておりました。回路はアルティックタイ プなので、出力が大きくてもシンプル。 前段は3・5極複合管の6AN8.整流は真空管なので4球で構成され、キットとして作り易いとい うのもあったと思います。 使用トランスはアクロサウンド社開発特注品が使われていた・・あの伏せ型を立てたようなデ ザイン。当然、6550とKT-88の挿し変えは可能でした。 ダイナコ ステレオ70 EL34PPステレオのこのアンプも完成品の68000円とキットの59800円があったようです。 EL34はヨーロッパ管ながらまだ馴染みがある品種で、6CA7が同等管。6CA7であれば松下 の球のイメージが強く残っています。 自分も実際に松下の6CA7でプッシュプルのアンプを組んでいました。ダイナコのキットをダイ ナキットと言っていたことを思い出します。 プリアンプ(PAS3X)用の電源も出ておりまして、B電源、ヒーター電源ををパワーアンプへ供 給するものでした。 ラックスのキットがラックスキット 70年代半ばはカタログは回路集になって有料で販売されていました。これを見るのも楽しか ったですね。 完成品 → キット MQ60 → KMQ60 MQ80 → KMQ80 となっており、組み立てると製品になるところは格好良かった、満足度の高い人気のあるとこ ろでした。 ダイナキットに比べると球の数も部品もけっして少なくなかったです。出来上がりを考えるとA シリーズのキットとは別格なところでした。 KMQ80の回路からは前段がカソードフォロワードライブなどと凝ったものです。 A-3000は出力管8045GとすることもKT-88とすることもできました。79000円定価は真空 管をふくまないもので。 チューブキット(9900円)として8045Gが販売されていました。KT-88はユーザーが自分で 調達する・・・まだ市場にはKT-88が普通にあるという状況ではありまおうせんでした。一般の 販売店ではなく、・・・エンタープライズと言った輸入商社での販売であったと思います。 A2500、A-3500にはプリアンプA-3300に電源を供給する端子が用意されていました。 A-2500は前にもふれたように、6R-A8のPPアンプでしたが、NFBを6dB/14dBと定数を変え て製作できるようになっていました。 A3500の組み方としては3結、UL接続、出力管を6L6にすることもできまして、この3例が雑 誌、広告で紹介されていたと思います。Aシリーズのパワーアンプにはオクタルのソケットでプ リアンプA3300への電源が用意されていました。常時プラグが刺さっているのはショートプラ グで、A3300をつなげばプリアンプから電源のON/OFFができる仕掛けです。 A3300は12AX7を4本、12AU7を2本使ったプリアンプのキットでした。ヘッドフォンアンプも内 蔵していましたが、これはトランジスタ8石でした。電源は内蔵しておらず、パワーアンプから 貰うか、専用電源A33(6800円)を使いました。プリアンプキットはさらに上にA3400があって 108000円でした。 ラックスには真空管のチャンネルデバイダーキットとして2002(2chで59800円)、2003 (3chで68000円)もありました。2chから3chにグレードアップする部品(OP2003、12000 円)も出ていましたが、利用された方もあったのでしょうか。 このほか、キットとしてはKENオーディオ(シャーシが立派)、クリスキット、エルタスのブラン ドがありました。 資料では1975年の製品としてエルタスのHF-300Bを使った、シングルとPPのアンプがライ ンナップされていますが残念ながら市場で実物を見たことがありません。KENオーディオの製 品は製作系雑誌の広告でよくみかけました。クリスキットは「電波技術」記事連載があったと 思います。「電波技術」廃刊後のことは、自分は明確な記憶がありません。キットとしてはこの 頃、トリオがケンクラフトのブランドでやっていましたが、管球アンプはありませんでした。 エルタスですが、マリックス製のトランスを使っていたということで、マリックス製のトランスも 販売されていたようです。ドライバー用があり、シングルとPP兼用で、キットはこれを利用して いたようです。300Bのアンプと言ってもトランス結合というマニアックな構成であった訳です。 品番はKEL-12でシングル構成で11W、価格は88000円。 <自作記事> この時期、製作記事では断然「無線と実験」(MJ誌)で、「金田式DCアンプ」(回路もさること ながら逸話が)に対抗するように管球式アンプの発表がありました。まだWE300Bは一般に は入手が難しく、海外の球もKT-88、KT-66などくらいを知る中、ヨーロッパ管がつぎつぎと変 わった球で紹介されました。さながら真空管の宝箱であった訳です。誌面の魅力的な写真、 特性などにため息をついたものです。何があっても3極出力管という時代から、古典管などに 魅力を持つ時代に入り、それ以前ほど、出力やひずみ率にアイとらわれる傾向は小さくなっ ていったと思います。それだけに近代型の3極管の評価が分かれた時期で、6RA8、50 CA10、8045Gなどビーム管構造の内部3極接続管を好まないという60年代中期〜後期で は考えられなかったであろう現象は、逆に5極管、ビーム管の3極接続、UL接続などで見直 されることになり、2A3のような3極直熱管が脚光をあびることになりました。その流れは、送 信管を含む直熱3極管の製作記事が増える結果となった訳です。一時期あったOTL真空管 アンプには大きな魅力はなく、真空管の良さを生かした、また出力トランスを蔑視するのでは なくそこまでを音質として、より優秀なトランスを求める動きとなりました。 このタイミングをうまくとらえたのがタンゴ(平田製作所)でしょう。負帰還を用いるアンプでは 位相補償が伴う都合上、オシロスコープを持たない読者には、雑誌記事をそのまま作る必要 があり、実際にタンゴのトランスを使う記事に溢れたことは認知購買に大きく貢献していたは ずです。この時期、やはりトランスメーカーでもあった、サンスイやラックスは興味がなかった のか、広告や記事中にはほとんど現れて来ない状況で、秋葉原の店頭からも知らないうちに 消えていったと思います。初歩のラジオなどエントリーと思われる雑誌でさえ、300BやKT-88 と言った名球を使った本格的な管球アンプ製作記事が掲載されて行くようになりました。 60年代から70年代にかけての真空管アンプの製作事情から言うと、明らかに初級、上級と 言ったクラス化は使う部品などであって、たとば初級者で言うと、回路構成ならシングルアン プ、出力管ならMT管、トランスはサンスイHS-5といった具合。 タンゴのトランスの名前すら出ない頃もあった訳です。(当時の各社認知されたトランスが角 が丸められたデザインの中、角ばったねじなどもでた、品種的でCOくらい) 初心者は、6BM8、6AR5と言った出力管。せいぜい6BQ5どまり。サンスイのHS-5あたりの トランスだったと思います。 ラックスは初心者には贅沢で、小型丸みのあるSS-5B,4Bと言ったシリーズ。PP用の三味線 胴のような形状のCSZ、さらにOYと言ったシリーズは最高級品でした。 http://mtomisan.my.coocan.jp/page199.html
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