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(回答先: 覚醒剤中毒者が体験する世界 投稿者 中川隆 日時 2020 年 3 月 01 日 23:53:35)
6人殺害で死刑回避、「心神耗弱者は減刑」の難題 被害者や遺族は苦しみ続ける
青沼 陽一郎 2020/11/08
刑事裁判では心神喪失者の行為は罰せられず、心神耗弱者の行為は減刑される(写真:梅垣勇人)© 東洋経済オンライン
5人殺しても、6人殺しても、死刑にはならない。そんな判決の確定が今年になって続いている。
前者は2015年3月、兵庫県の淡路島でいわゆるひきこもり≠フ男が、近隣の民家に相次いで押し入って住人5人を刺殺した事件。後者は、同年9月に埼玉県熊谷市でペルー人の男が見ず知らずの住宅に次々と押し入り、小学生2人を含む6人を殺害した事件だ。
いずれの事件も一審の裁判員裁判では死刑判決が言い渡されている。ところが、二審の高等裁判所は犯行時の「心神耗弱」を認めて死刑判決を破棄し、無期懲役とした。刑法39条には「心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為は刑を減軽する」とある。
「電磁波兵器で攻撃されていた」と主張
淡路島の事件では、被告人が医療機関への通院歴もあり、「電磁波兵器で攻撃されていた。犯行は、その反撃だった」などと主張していた。ペルー人の男は事件前に「ヤクザに追われている」と語るなど、誰かに追われているという妄想があったとされる。
熊谷の事件は、この9月に最高裁判所で無期懲役が確定。淡路島の事件は、今年2月に弁護側が上告したものの、検察側が上告を断念したことから、無期懲役以下の刑が確定している。裁判員裁判の死刑判決が覆るのは、これで7件となる。
残る5件のうち1件は、2012年6月に2人を刺殺した大阪心斎橋通り魔事件で、こちらも精神障害の影響を考慮して、死刑が回避されている。
人を殺しても、まったく罪に問われないケースがある。
今年8月、函館市のスーパーの駐車場で、面識のない男子大学生を後ろから包丁で刺して殺害しようとした疑いで逮捕、送検された韓国籍の男が、10月26日付で不起訴処分となっている。「心神喪失」のため刑事責任が問えないと判断したものだ。
これが報じられると、たちまちツイッターでは、この話題がトレンド入り。「韓国籍」というところに反応したものも多いようだが、裁かれないことに対する疑問や抵抗を覚えるといったコメントも少なくなかった。
それどころか、こうした場合、むしろ犯罪者は手厚く保護される。「心神喪失者等医療観察法」(医療観察法)に基づき、専門医療施設に措置入院となるからだ。
この法律は、2001年の大阪・池田小学校児童殺害事件をきっかけに施行され、心神喪失または心神耗弱によって重大な他害行為(殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的としている。
検察官は、そのため裁判所に「審判」の手続きをとる。審判では裁判官と精神科医の各1人が措置入院の採否を判断する。措置入院が正式に決定すると、社会復帰を促進すること≠目的に、同法に基づく指定入院医療機関に送られていく。
罪に問われず、苦しむ遺族
この医療観察法によって、2人を殺しながら罪に問われず、それによって苦しむ遺族を過去に取材したことがある。
いまでは遺族も「忘れたい」「触れたくはない」という意向なので特定を避けるが、事件は九州で起きた。2009年5月の大型連休中のことだった。
当時50歳の女性Aさんは、向かいで一人暮らしの当時60歳の女性Bさんの家を訪れていた。そこへこの家の隣に住む男が入ってくると、いきなり刃渡り約19センチの短刀で、Aさんの背中を突き刺した。男はBさんの甥だった。突然のことにAさんは庭に逃げ出す。甥の凶行に驚き、止めに入ったBさんも腹部や胸部を数カ所刺されてしまう。さらに男は、Aさんを追いかけて、背部や左上腕部などを執拗に突き刺し、2人を殺害した。
男は短刀を持ったまま、道路を挟んだAさんの自宅に押し入る。その家族を狙ったようだが、幸い自宅には誰もいなかった。男はこの家を出て路上にいたところを、目撃者によって取り押さえられ、逮捕された。
この男には、精神疾患で入院していた経歴があった。検察による鑑定留置の結果、刑事責任能力が問えないと判断され、不起訴処分となる。
しかし、これに納得のいかなかったAさんの遺族は検察審査会に審査を申し立てる。
というのも、男は医療機関を退院後に実家で家族と同居していたにもかかわらず「借家で一人暮らしをいている」と嘘をついて、生活保護の給付を受けていたことや、襲撃のためのAさんの家への出入りには、怪しまれないように短刀を袖口に隠していたこと、それに何より、犯行時に騒ぎに気付いて止めに入った男の父親が、家から出て両手を広げて男の行く手を阻もうとしたところ、その脇の下をくぐり抜けて被害者を追いかけていった、ということがわかったからだ。
したがって、完全責任能力が欠如していたのではなく、再鑑定を実施して起訴すべきだ、というのが遺族の主張だった。
こうした事情を受けて、一般市民から構成される検察審査会では、「不起訴処分不当」の議決を下している。
ところが、この議決は無視され、医療観察法による措置入院が決まった。しかも、その審判でのことだ。
本来ならば非公開のものを、検察官のはからいで、Aさんの夫と長女だけが、男に気付かれないことを条件に、傍聴することが認められた。男と長女は、小学校から高校までずっと同級生だった。
男は検察官の尋問に、Aさんの家族が憎い、同級生だった長女も憎い、殺したい、とはっきり答えたのだ。その理由は判然としない。
通常であれば、こうして不起訴となり、裁判が開かれなければ、犯行現場で何が起きたのかも不確かなまま、どういう事情で犯行に及んだのか、どうして責任能力が問えないのか、遺族にはまったくわからない。「死刑にしてほしい」という遺族の処罰感情も無視される。
それどころか、不起訴になった時点で捜査資料も開示されることがない。しかも、わずか3年で捜査資料の全てが処分される。犯人が他の関係者を恨んでいたとしても、わからずに終わる。
さらに遺族を恐怖に陥れるのは、措置入院となった相手がいつ医療機関から退院してくるかわからないことだ。
いったい、どこの施設に入れられて、治療の効果や健康状態はどうなのか、そんな情報すら伝わってこない。医療施設を抜け出すことだってあるかもしれない。退院すれば、父親の暮らす向かいの家に帰ってくることだって考えられる。そうでなくても、憎い、殺したい、と語っている相手だ。いつ襲われるともわからない。
「一人で外に出るのも怖い」とAさんの長女は当時、私に語っていた。
裁判員裁判の判決も覆される
調べてみると、この事件の1年後の2010年5月には、医療観察法による入院治療を3カ月前まで受けていた男が、大阪市で男性2人の胸などを刺して殺害するという事件も起きている。
この九州の事件の起きた3週間後の5月21日からは、裁判員制度がスタートしている。仮にこの事件が通常どおりに起訴されていたら、裁判員裁判の第1号になった可能性が高い。だが、現実にはこの年の8月に東京地方裁判所から裁判員裁判は始まっている。
その裁判員裁判で導かれた死刑判決も、冒頭のように、精神状態を理由に覆される。裁判員の負担だけがむなしく残る。本当に5人、6人を殺害して極刑が免れることがあっていいのだろうか。それで遺族が納得するのか。裁判員もそこを悩んだはずだ。まして、不起訴処分となると人を殺しても裁かれることすらないまま、温かいベッドの入院生活が待っている。
「被害者、遺族からすれば、事件の真相もわからず、運が悪かった、ということで済まされてしまう。おかしくないですか」
そう語っていたAさんの夫の言葉が、いまも忘れられない。
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