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黒沢清 The Revenge 復讐 消えない傷痕 (ケイエスエス 1997年)
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1061.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 9 月 29 日 17:09:08: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 黒沢清 The Revenge 復讐 運命の訪問者 (ケイエスエス 1997年) 投稿者 中川隆 日時 2020 年 9 月 28 日 18:17:35)

黒沢清 The Revenge 復讐 消えない傷痕 (ケイエスエス 1997年)



監督 黒沢清 (Kiyoshi Kurosawa)
脚本 黒沢清 (Kiyoshi Kurosawa)
撮影 柴主高秀 (シバヌシタカヒデ)
音楽 吉田光 (ヨシダ)
歌 哀川翔 (Sho Aikawa)
1997年5月31日 より
配給:ケイエスエス


「復讐 運命の訪問者」の続編で、終わらない復讐を虚無的に続けていく男の姿を、破滅へと突き進むひとりのヤクザの姿を伴奏として描いたハードボイルド。


監督は前作と同じ黒沢清で、脚本も黒沢が執筆した。
撮影は「WiLd LIFe」の柴主高秀が担当している。
主演は「極道修行 決着」の哀川翔。16ミリkらのブローアップ。



■ストーリー


妻を殺された元刑事・安城の復讐は終わっていなかった。山本という偽名を使い古紙回収所で働く安城は、妻殺しの背後に潜んでいた何者かを追い続け、今またそのうちの一人、山野辺興業社長を暗殺し終えたところである。そんな安城の正体を知らぬ暴力団吉岡組の吉岡組長は、偶然知り合った彼をまるで親しい兄弟分のように扱っていた。


一方、独自にヤミ資金ルートの捜査を進めていた刑事の西は、山野辺殺人事件の捜査途中で、安城もまたヤミ資金関係者を追っていることに気付く。ヤミ資金に連なる殺人事件に関わり、そして妻を殺された安城は、その黒幕を捜しつつ復讐を続けていた。だが警察もヤミ資金に絡むらしく安城の関係資料は抹消され、西の言葉も聞き入れられない。西は安城と接触し、検察庁の極秘書類を渡す代わりに関係者リストの作成を依頼した。やがて安城は同じアパートの貝原服飾学院生・美津子から、ヤミ資金に関わった学院の資料を譲り受け、次の標的を日本流通企画元会長・小笠原に特定する。


小笠原宅に乱入した安城は、自分が妻殺しの黒幕だと語る病床の老人の首に手をかけたが、余命幾許もない老人を絞め殺すことはできなかった。


その頃、いつも安城を誘っては躁鬱的行動を繰り返していた吉岡の組に、組員の高木が本家・国士会の総長に目をかけられるという出世譚が沸き起こる。だがシャブに体を犯された吉岡は高木を撃ち殺してしまい、その後で安城をドライブに誘った。しかし、ふたりはどこにもたどり着けなかった。やがて吉岡は取り憑かれたように国士会に殴り込んでいく。また小笠原の存在を安城から教えられた西も、のちに川に浮かぶことになった。そして安城は、おそらくすべての罪をひとりで背負うつもりの小笠原を、義務であるかのように撃ち殺す。



■キャスト
俳優名 役名


哀川翔 (Sho Aikawa) 安城伍郎
菅田俊 (Shun Sugata) 吉岡俊
井田國彦 (イダクニヒコ) 西英介
小林千香子 橘美津子
逗子とんぼ (ズシトンボ) 小笠原陶一郎
しみず霧子 (シミズキリコ) 文江
仙波和之 (センバカズユキ) 山野辺信一
芹沢礼多 (セリザワ) 津山
賀川黒之助 (Kuronosuke Kagawa) 卓
根岸大介 (ネギシダイスケ) 高木
大森南朋 (Nao Omori) ヒロ
大杉漣 (Ren Osugi) 刑事課長
下元史朗 (シモモトシロウ) 古紙回収業者
諏訪太朗 (スワタロウ) 片桐
三上剛史 (ミカミ) 久留米
倉田昇一 (クラタショウイチ) 松井
なかはら五月 美津子の母


http://www.entermeitele.net/roadshow/sakuhin/?id=29762



 

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コメント
1. 2020年9月29日 17:11:34 : Flspjk2Nkc : dkJZQlRUUlYvbms=[16] 報告
【第237回】『復讐 消えない傷痕』(黒沢清/1997)
2015/10/04
 この時期の黒沢が熱心に取り組んでいた2本撮りの困難さについて考えてみたい。黒沢は効率を考えて、2本撮りの1本目を外部のライターに依頼し、2本目を自分で書いていた。まずは2本目の脚本作りと絵作りを考えて、その後、1本目の脚本の細かい部分の修正と絵作りを考える。自分の書いた2本目の方は、ロケーションや2週間という納期のサイズから判断し、ある程度逆算した上で脚本を練り上げることが出来るが、1本目にはそこまでの計算はない。だからといって2本両方の脚本と監督を務めるのはあまりにも荷が重い。ゆえに『勝手にしやがれ!!』シリーズでは、信頼の置ける脚本家に3本を任せ、自分はその修正作業に注力した。黒沢が単独で書いたものはわずかに『脱出計画』と『黄金計画』の2本のみであり、ラストの『英雄計画』ではシノプシスだけでまったく脚本には関わっていない。

『復讐』シリーズは暴力に舵を切ったため、最初から脚本家の高橋洋との二人三脚で企画を進めていた。1本目は高橋洋、2本目は黒沢清による脚本であり、当初パート3とパート4として製作されながら、制作会社の事情によりタイトルが変えられた『蛇の道』と『蜘蛛の瞳』も同様に、1本目は高橋洋、2本目は黒沢清による単独の脚本である。あえて共同執筆の脚本にはせずに、単独の脚本にこだわったのはなぜだろうか?1つにはこの効率性の問題が挙げられるのだろうが、もう1つの要素としては、黒沢は自分の中にはない高橋洋の暴力に可能性を見出していたのではないかと推測する。高橋の脚本は敵役の人物造形が用意周到に練られていて、物語は陰惨な展開を極める。そして最終的にはハッピー・エンドには程遠いところへ着地する。それが高橋洋の考えられる「日常の暴力」であり、「復讐」の意味なのだろうが、黒沢はもう少し「日常の暴力」というものに対して、消化不良のまま答えを出そうとはしないのである。

『運命の訪問者』では「復讐」という言葉の意味が二重にかかっていた。それは安城の家族を皆殺しにした男たちへの復讐と、妻を殺した者たちへの復讐である。山本という偽名を使い、古紙回収所で下元史朗の下で働く安城は、妻殺しの背後に潜んでいた何者かを追い続けている。

冒頭、どこかの川辺に建てられたプレハブの前で、4人の男が飯を食っている。そこに左側から突如現れた4人組が拳銃を発砲し、彼らを殺してしまう。1人は地上へ逃げ、ドラム缶の脇に隠れるも、帰り際の犯人たちに躊躇なく撃ち殺される。この一連の動きを黒沢清は、まるで自分の兄弟子であった相米慎二のように長回しで見せる。車でアジトへと戻った男たちの中で哀川翔が諏訪太朗にけしかける。「あいつは賢いから総取りして逃げるかもしれない」と。おそらく3人それぞれが哀川翔に同じことを言われている。疑心暗鬼にかられた彼らはついに仲間割れの銃撃戦を起こし、2人が殺されてしまう。そこに駅に向かって歩いていたはずの哀川翔が飄々と戻って来る。これは安城が用意周到に仕掛けた罠だったのである。

今作において、安城の計画性は前作以上にしたたかでぬかりない。最初の30分間はチンピラたちを利用し、ターゲットでプロの殺し屋であるヤクザを殺す。まるでスパイ映画の主人公のような高いクオリティで次々と計画を実行し、警察を撹乱する。けれどその明瞭に見えた物語の行方が、暴力団吉岡組の組長の吉岡(菅田俊)の出現から少しずつ見えなくなる。安城は山本という偽名を使っているが、吉岡組の軍門に下ったわけではない。その証拠に、安城に対する吉岡の態度は、他の吉岡組の構成員たちとは明らかに違っている。安城はどうして吉岡に可愛がられているのか?安城はどのように吉岡を利用しようとしているのか?それがまったくわからないまま、物語は進んで行く。

ここで唐突に刑事である西の口から聞き慣れない「ヤミ資金」の言葉を聞くことになる。どうやら妻殺しの背景にはこの巨大なヤミ資金の流れが関与しているらしいのだが、黒沢清の脚本にしては珍しく、回収出来ない幾つもの巨大な陰謀が張り巡らされているのである。前作同様に、安城は何の変哲もないアパートの1階の角に身を隠している。おそらく隣に建てられたアパートよりも高さのある建物に据えられたカメラが、ここでの安城の動きを抑えているのだが、ある日、2階に住む貝原服飾学院に在学中の美津子(小林千香子)という学生に、5年前の学院設立当初の資料を取って来て欲しいと頼み込むのだが、美津子はそれを拒む。

この後の安城と美津子の唐突なやりとりに私はさっぱり乗れなかった 笑。黒沢清にとって唯一苦手なのは、銃撃戦でも追いかけっこでも男同士の友情でもなく、男女の恋であろう。カメラの位置はロング・ショットで、表情もわからないくらい距離を取りながら、男女のやりとりを繊細に描写しろという方が土台無理であろう。しかしながら今作には黒沢映画の中で最も印象的な男女のふれあいの場面がある。それは公園で強風が吹く中、安城の体型を採寸する美津子の様子を遠目から据えた素晴らしいショットである。最初は少し高いところから木々の合間を縫うようにフレーミングされたショットが、哀川翔の正面に回り込み、2人の気恥ずかしそうなやりとりを伝える。この一連のショットの素晴らしさは今日まで私を捉えて離さない。黒沢の撮ったロマンポルノよりも遥かに官能的で、その後の『贖罪』で観られた女優演出の素晴らしさの端緒がここにはしっかりと提示されているのである。

しかしながら脚本の弱さというか、あえて核心に触れない演出なのだろうが、肝心の後半部分がいまひとつしっくり来ない。長年探していた黒幕の男にやがて辿り着くも、肝心要の場面で躊躇してしまう。どういうわけか吉岡組長の元に戻るのである。吉岡は吉岡で、組の再興を密かに企んでいたところに、部下の高木の引き抜き工作の報が入る。シャブ中で情緒すらコントロール出来なくなった吉岡は高木を鉄骨で殴り殺し、安城と合流し旅に出るのである。

安城と吉岡はここでも、「ここではないどこか」へと旅に出ようとする。かつて『地獄の警備員』のエントリに書いたように、黒沢清の映画にとって、車に乗ってどこかへ行くということはそれだけには留まらず、逃れられない運命に足を踏み入れることになるのである。最初は行き先を温泉に設定するが、シャブ中の吉岡が運転する車は一向に温泉へと辿り着くことはない。仕方なく森の中に停車し、木めがけて石を投げ合うという遊戯性にかられた2人の運命は、最悪の結末を迎えることになる。

結局、ヤミ資金の問題は棚上げされたままで、安城と美津子のふれあいに何らかの答えが提示されることもない。相変わらずロング・ショットの中で、ドアノブにかかった採寸されたスーツの上着だけが2人の別れを伝えるのだが、あまりにも不明瞭なラスト・シーンである。また今作と前作の2本には、哀川翔作詞・作曲の歌が付けられているのだが、本編の雰囲気とどうしても馴染まない。この後『CURE』を挟み、更にやりたい放題の高橋洋と黒沢清の脚本で、『蛇の道』『蜘蛛の瞳』が出来上がる。『勝手にしやがれ!!』シリーズにより提示された幸福なプログラム・ピクチュアの時代はあっさり終わりを告げ、黒沢は躊躇うことなくジャンルの定型を壊し始めたのである。

https://note.com/compactdisco/n/n7ef4e7dc90cc

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