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(回答先: 信用貨幣論 投稿者 中川隆 日時 2020 年 5 月 05 日 21:21:32)
紙幣の刷り過ぎでドルが暴落する
世界最大のヘッジファンド: 紙幣の刷り過ぎでドルが暴落するとき
2020年9月22日
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11685
世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するファンドマネージャー、レイ・ダリオ氏が引き続き世界経済の歴史について書き続けている。
新型コロナウィルスの世界的流行とそれに伴う激しい景気後退に対抗するために日本や米国の政府はこぞって紙幣を印刷し国民に配っている。ダリオ氏はそれによって国の通貨が暴落する可能性を心配しているのである。
しかし以前からの読者には周知の通り、ドルは過去に何度も暴落しており、長期的に見れば今も暴落し続けている。今回はドル暴落相場の1つであるニクソンショックについてダリオ氏が経済的に解説している部分を取り上げたい。
戦後の世界経済とドル
1945年に日本の降伏によって第2時世界大戦が終わり、米国経済は一人勝ちの状態だった。戦勝国でもイギリスは実質的な破綻状態であり、敗戦国である日本とドイツの経済は壊滅的な状態にあった。本土への攻撃を免れたアメリカだけが経済的に繁栄していた。
しかしそれも1960年代には怪しくなってくる。ダリオ氏は次のように説明している。
1960年代にはアメリカは消費活動に大金を費やしたが、戦争のダメージから回復したドイツと日本は自動車産業などでアメリカの強力な競争相手となっていた。結果としてアメリカの貿易収支は悪化していった。
貿易収支の悪化とは国の収入がなくなるということである。しかし当時の米国政府は今の日本やアメリカと同じように、これを紙幣印刷で乗り切ろうとした。ダリオ氏はこう続けている。
米国政府はベトナム戦争や国内の社会保障などの支出を増やすため、中央銀行にゴールドと交換できる紙幣(訳注:金本位制)を印刷させた。人々がそれをゴールドと交換したため、中央銀行の金保有量は減り続けた。
以前からの読者は覚えているだろうが、これはかつて覇権国だった海洋帝国オランダの通貨についてダリオ氏が説明したことと全く同じである。
世界最大のヘッジファンド: 量的緩和で暴落した世界初の基軸通貨
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10903
愉快な話だが、人類はそれを50年前にも現代にも繰り返し行っているのである。人間は学ばない生き物なのである。
ニクソンショック
そして現代の人々は誰も気付いていないが、紙幣印刷の臨界点は必ずやってくる。アメリカはついにドルと金の兌換を守れなくなり、1971年のニクソンショックにおいてこれを破棄することになる。「ゴールドと交換できる」という理由で人々が保有していた紙幣がゴールドと交換できなくなったのである。
ダリオ氏は当時学生でウォール街でインターンをしており、ダリオ氏の当時の生々しい経験は以下の記事で紹介した通りである。
レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9645
何が起こったかと言えば、金価格と株価が上がったのである。そしてドルは急落した。正確にはこれらは同じことだった。ドルの価値が下がったので、ドル建てで値段がついていたすべての価格が上昇したのである。
株式市場が上がっただけならばまだ良かったが、ドル建てで売買されていたのは株だけではなかった。日用品の価格も跳ね上がった。1970年代、アメリカのインフレ率は次のようになっている。
これが紙幣の刷り過ぎの結果である。ピークとなった1980年にはインフレ率が何と15%に達している。アメリカにおいて1970年代からインフレの収まる1980年代前半までは景気後退が4度も起こった苦痛の多い時代として記憶されている。
株価が上がったとしても日用品の価格が上がっては何の得にもならないということである。だからダリオ氏は繰り返し「現金はゴミ」だと主張し、紙幣を印刷する政府の対応を信じてはならないと言っている。
レイ・ダリオ氏、「現金がゴミ」になったニクソンショックの経験を語る
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/9645
世界最大のヘッジファンド: 政府が金融危機から守ってくれると思うな
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10473
国の経済が窮乏しているにもかかわらず株価が上がっている現在のコロナ相場の状況はニクソンショック直後の現象によく似ている。注意しなければならないのは、金価格は1970年には既に上がり始めていたが、それが日用品に波及し始めたのは上のチャートの通り1972年と2年のタイムラグがあったということである。以下の金価格チャートと比較してみよう。
そしてドル円も暴落した。
ドル円が360円だった時代を覚えている読者はどれだけ居るだろうか。ご存知の通り、その後ドル円は坂道を転がり落ちるように下がり続けている。
株価上昇は経済を救うか
問題は一時は上昇した株式市場だが、それも実際にインフレ率が危機的な上がり方を始めるまで投資家が状況の深刻さに気付いていなかったというだけのことであり、インフレが急激に悪化した1972年にようやく気付いてから半値以下に暴落したのである。
しかしそれは気づけなかったことだろうか。賢明な投資家は事前に気付いていたいものである。紙幣を生み出すことで景気後退を乗り切ろうとする取り組みについてダリオ氏は以下の記事でこう言っている。
世界最大のヘッジファンド: 共産主義の悪夢が資本主義にのしかかる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10831
われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。
紙幣は食べられない。
しかし誰もこの言葉を理解しない。
ダリオ氏は比較的礼儀正しい言葉で人々の無知蒙昧さ加減に警鐘を鳴らし続けている。
世界最大のヘッジファンド: 中国が覇権を握りドルは基軸通貨でなくなる
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10592
世界最大のヘッジファンド: ドルは既に紙くずになっている
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/10645
人々は後になって「あれほどの経済危機は誰も予想していなかった」と言い始めるだろう。しかし事前に言っておこう。あなたがたが現実を見ようとしなかっただけである。現実は見ようと思えばすぐそこにある。ただ、誰もそれを見ないだけなのである。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/11685
- 貨幣数量説 _ 貨幣の総量とその流通速度が物価の水準を決定している 中川隆 2020/9/30 10:42:24 (2)
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