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コロナワクチン、通常なら治験停止レベルの副反応も…接種開始の米英、副反応が多発
https://biz-journal.jp/2020/12/post_198264.html
2020.12.22 20:20 文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員 Business Journal
「Getty Images」より
米製薬大手ファイザーは12月18日、「同社が開発した新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚生労働省に申請した」と発表した。ファイザーは1億2000万回分(6000万人分)を供給することで日本政府と合意している。
ファイザーによれば、これまでに同社のワクチンについての緊急使用許可を出した国は、英国や米国のほか、EU、カナダ、メキシコ、サウジアラビア、シンガポール、バーレーン、クウェート、スイスなどである。
日本でも来年2月に海外での使用実績などが条件となる「特例承認」がなされるとの観測が高まっている。厚生労働省が地方自治体に示した体制整備案によれば、まず2月下旬を目途に新型コロナ患者の治療にあたる医療従事者ら約1万人を対象とする先行接種の体制をつくった上で、3月下旬を目途に高齢者(3000〜4000万人程度)が優先接種を受けられる体制を整備する手順となっている。「他の国で接種を開始したのに、なぜもたもたしているんだ」という批判が高まることを恐れた異例の対応ともいえるが、「急いては事をし損じる」ことにならないだろうか。
■メッセンジャーRNA
世界では史上初の大規模ワクチン接種作戦が開始されているが、懸念されるのは副反応が早くも問題になっていることである。臨床試験の段階で、発熱や頭痛などの副反応が相当数発生しており、医療専門家の間では「通常であればワクチンの治験を停止するぐらいのものも出ている」との指摘があった。戦後最悪のパンデミック下で、「大甘の基準」でワクチン開発が進められたという側面は否定できないが、実際の接種を開始した途端に治験段階では報告されなかった深刻な副反応(アレルギー)が米英両国で多発している。
通常のワクチン接種では、10万人に1人の割合で副反応が起きるとされているが、ファイザーのワクチンの場合は、27万人に投与した段階ですでに6人に副反応が生じている。このような事態を踏まえ、米国疾病対策センター(CDC)は12月19日、新型コロナウイルスのワクチン接種により、急激なアレルギー反応である「アナフィラキシーショック」が報告されているとして、国民に注意を促した。
アナフィラキシーショックとは、何かしらのアレルゲン(蜂の毒や鶏卵・蕎麦などの食物など)によって全身性のアレルギー反応が引き起こされ、血圧の低下や意識状態の低下を招く症状のことで、適切な応急措置が施されないと短時間のうちに死に至ることがある。米食品医薬品局(FDA)は「ワクチンを接種してからすぐにアナフィラキシーショックが起きる時に備え、各医療施設はただちに適切な治療ができるようにすべきだ」と急遽指針を改正する事態に追い込まれている。
それではなぜワクチン接種でアナフィラキシーショックが起きてしまうのだろうか。FDAは、ワクチンに含まれているポリエチレングリコールが原因の可能性があるとの見方を示した。この物質はFDAが12月18日に緊急使用を許可した米製薬大手モデルナのワクチンにも用いられている(モデルナは2000万人分を供給することで日本政府と合意している)。
ファイザーとモデルナのワクチンは、「メッセンジャーRNAを運び屋として利用して、新型コロナウイルスの表面にある突起物(スパイクタンパク質)に関する遺伝子情報を体内に注入する」という最先端の技術を用いて、極めて短期間で製造されたものである。しかしメッセンジャーRNAは構造が不安定なことから、体内に挿入されると分解しやすいという欠点がある。これを防止するためにポリエチレングリコールが用いられているのだが、これが体内で免疫反応を引き起こしてしまうのである。生産効率や有効性に優れたメッセンジャーRNAワクチンは副反応を起こしやすいという問題を抱えているのである。
■アンジェスや塩野義製薬のワクチン開発に期待
新型コロナウイルスのワクチンをめぐるリスクはほかにもある。新型コロナウイルスと遺伝子配列が酷似しているSARSのワクチン開発の際に「ADE」と呼ばれる現象が生じているからである。ADEとは「ワクチンの接種で生み出された抗体がウイルスにくっつくことでかえって感染や症状が促進され病状が悪化する現象」のことだが、新型コロナワクチンについてもADEが生じるという懸念である。
すべての情報を公開するとワクチンを接種する人は大幅に減少するかもしれないが、十分な情報公開がなされない状況で日本でもアナフィラキシーショックの事例が生じてしまうと、ゼロリスク志向が強い社会がパニックを起こして、ワクチン接種全体が止まってしまうのではないだろうか。
日本では2013年、副反応とされる症状が多数報告されたためにわずか2カ月で接種勧奨が取りやめになった子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)という悪しき前例がある。HPVワクチンは優等生ワクチンの代表格であり、欧米では広く接種されているにもかかわらず、日本ではいまだに未接種のままである。
感染爆発が起きている欧米では「ワクチン接種のメリットがリスクよりも大きい」との判断が下しやすいが、皮肉なことに、新型コロナウイルスによる死者数の抑制に成功している日本は、ワクチン接種を慎重にやらなくてはならないという事情もある。
このような状況を踏まえ、「海外での大規模ワクチン接種の成果が出るまでは必要最小限の導入(医療従事者への接種)で済ませて、より安全なワクチンの完成を待つ」というのが日本の望ましい戦略ではないだろうか。この戦略を実効あるものにするためには国内でのワクチン開発は極めて重要であり、大阪大学の製薬ベンチャー、アンジェスや塩野義製薬などのワクチン開発の成果が一刻も早く出ることを期待したい。
(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)
(参考文献)新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実(日経BP日本経済新聞出 版本部)、峰宗太郎他著
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