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コロナ禍「失業率2.9%」の裏に、職を失って救済されない100万人が存在
https://diamond.jp/articles/-/251127
2020.10.15 4:35 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 ダイヤモンド・オンライン
新たな職を得られる見込みがない「非労働人口」の存在とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA
7月の非正規雇用者は、前年同月比で約130万人減少した。
他方、完全失業者は40万人しか増えていない。残りの90万人は「非労働力人口」化したと考えられる。
職探しをしても、職を得られる見込みがないからだ。これらの人たちには、失業手当などの救済もないので、大きな問題だ。
7月の非正規雇用者130万人減
どこに消えた?
新型コロナウイルスの影響で雇用が減った。とくに非正規雇用者の減少が著しい。2020年7月を19年7月と比べると、131万人の減少だ。20年1月と比べても、非正規雇用は106万人減っている。
この事実は、よく知られている。
しかし職を失った非正規雇用者は、どこにいったのだろうか?
常識的に考えれば、失業したと考えられるだろう。
ところが、統計を見ると、7月の完全失業者は、対前年比で41万人しか増えていないのだ。
以下では、簡単化のため、41万人の失業者増はすべて非正規雇用者からのものだとしよう。
すると、残りの90(=131−41)万人はどこにいったのだろうか?
実は、それが統計では直接には分からない。
これを推測する必要がある。
職を失った非正規のうち
90万人は非労働力化した
雇用減少は、非労働力人口か失業者数を増やすはずだから、上のことから、非労働力人口が90万人増えているはずだ。
ところが、統計を見ると、非労働力人口は増えていないのだ(図表2)
一見したところ、大きなミステリーである。
この謎を解く鍵は、「非労働力人口はトレンドとして減る傾向にある」ということだ。図表2に見るように、1年間におよそ70万人ずつ減少している。
これは、就労を希望する高齢者が増えているためだろうと考えられる。定年でリタイアするなどしてこれまで求職活動をしていなかった人々(これらの人々は「非労働人口」としてカウントされる)が、再び働こうとして求職活動をするようになったのだろう。
また、季節変動が大きく、1月に比べて7月頃には100万人程度落ち込む傾向がある。
ところが、今年はこのトレンドからの乖離が見られる。すなわち、2020年7月の非労働力人口は、19年7月より24万人増えている。
つまり、「例年のトレンドに比べて、今年は、非労働力人口が90万人ほど増えている」ということになる。これは、先ほど見た「残りの90万人」に当たると考えられる。
以上をまとめると、7月の対前年増減は、概数でいえば、つぎのように説明されることになる。
非正規減(130万人)=失業増(40万人)+非労働力人口増(90万人)
非労働力人口全体の増(20万人)=非正規からの流入(90万人)+高齢者などの就労による自然減(−70万人)
上記のことから、コロナの影響で、家庭の主婦などが非正規の職を失い、求職活動を行なっていないため、失業者にはならずに非労働力人口になったのだと考えられる。
この人たちは失業者ではないので、失業手当を受けていない。これらの人々に対しては、何の救済策もない。
仮に1人当たりの所得が年間200万円であったとすれば、全体では、200万円×90万人=1.8兆円となる。これは、決して無視できない額だ。
したがって、消費が減少するだろう。
経済のV字回復が見込めないなかで、今後、非正規労働がもっと減り、非労働力人口が増えるだろう。そして消費がさらに落込む危険がある。
アベノミクスの逆回転が起こっているといえる。
失業率2.9%でなく、
未活用労働指標7.7%が実態に近い
失業率2.9%という数字で安心している人が多いかもしれない。
しかし、日本の失業率がこのように低いのは、失業率の定義が狭すぎることによる面が大きいと考えられる。
雇用の実情は、失業率だけでは捉えられない。
実は、政府もより広い定義での数字を算出している。「未活用労働指標」がそれだ。
未活用労働指標2(LU2)を見ると、2020年4〜6月期で7.0%だ。
ここで、未活用労働指標2はつぎのように定義される。
未活用労働指標2=(失業者+追加就労希望就業者)÷労働力人口
この指標が実感に近い。
この指標は昨年までおよそ5%であったものが7%になったので、
(失業者+追加就労希望就業者の増)=労働力人口x2%=6882x0.02=138(万人)
ということになる。
うち失業増は40万人なので、追加就労希望者の増が98万人ということになる。
これは、上で推定した非労働力化した非正規労働者の数字とほぼ一致する。
法人企業統計では
200万人以上の人員削減
問題は以上のことだけではない。
これまで見たのは労働力調査の数字だが、法人企業統計調査は、これとは異なる姿を伝えている。
9月1日に発表された4〜6月期の法人企業統計調査によると、全産業の人員数は、前年同期比で234万人減(6.5%の減)だ。
これは、かなり大きな削減率だ。仮に、法人部門以外でも同じような人員削減が行なわれ、かつ削減された雇用者が失業したとすれば、失業率は6.5%ポイント程度上昇するはずだ。
しかも、労働力調査は個人事業なども含むため、対象が法人企業統計より広い。労働力調査では、2020年5月の雇用者は5920万人だが、法人企業統計の4〜6月期の人員は3389万人だ。
したがって、労働力調査の数字が法人企業統計の数字の1.7倍程度になっていないと、おかしい。それにもかかわらず、労働力調査の失業者増の数字が法人企業統計の人員減よりはるかに少ない。
このような食い違いが起きる原因は、労働力調査が、休業者を「雇用されている」と捉えているからだと考えられる。休業者とは、「雇用されているが働いていない」人々だ。
ところが、休業者の多くは、雇用調整助成金によって支えられている。したがって、企業の立場からは、これらの人々は「賃金を払わなくてもよい人々」と捉えられているのだろう。
法人企業統計では、「昨年は賃金を出していたので人員に含め、今年は雇用調整助成金が賃金を支払っていて、企業が払っていないので、人員にカウントしていない」とされているのだろう。
法人企業統計と労働力統計では、このように、企業の人員削減の様子が食い違っている。
実態からいえば、休業者は失業者の一種と考えるべきではあるまいか?
雇用調整助成金は
いつまでも続けられない
雇用調整助成金の特例措置は12月まで延長されることが決まった。しかし、雇用調整助成金への依存は、いつまでも続けられるものではない。
その最大の理由は財源に限界があることだが、それ以外にも、雇用を停止されれば、雇用調整助成金で救うことはできないなどの事情がある。
また、経済原則からいえば、支えられない雇用を政策の力で無理やり支えることは、緊急事態に対する応急措置としては認められるにしても、いつまでも続けるわけにはいかない。
この機会に、「雇用調整助成金で雇用を支える」という政策の基本について検討することが必要だ。
とくに問題なのは、経済全体を見ると、労働力を必要とする部門があることだ。例えば医療分野だ。
休業者として仕事をしていない人たちを、こうした部門に誘導することが考えられるべきではないだろうか?
(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)
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