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コロナ後はバブル&インフレが来る!「3つの2%」で変化を見極めよ
https://diamond.jp/articles/-/245013
2020.8.5 4:00 山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元のマルチスコープ ダイヤモンド・オンライン
Photo:PIXTA
経済が「ウィズコロナ=コロナとの共生」から「アフターコロナ=コロナ後」に向かったとき、何が起こるか。筆者は、景気回復と共に、資産価格面で「バブル」が形成される可能性が大きいとみる。それに続いて物価面では「インフレ」に振れていくだろう。その理由を解説するとともに、コロナ後の転換点を見極めるために注目すべき、「3つの2%」についてもお伝えしたい。(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
ウイルスが各地に「Go To」
状況は楽観できず
今は、「アフターコロナ」よりも「ウィズコロナ」の状況について考えるべきではないか、と問われたら、「そうですね」と答えるのが正解だろう。
幸い、新型コロナウイルス感染による重症者は4月の流行ピーク時ほど増えていない。ただ、感染者数の増加傾向や、人の移動の活発化がウイルスを各地に「Go To」させることを考えると、今後の状況は楽観できない。
一方、東京都による、酒類を提供する飲食店への午後10時までの時短営業の要請は、業種・業態に対して不公平で、協力金も20万円と金額が小さく、場当たり的で不適切に思える。感染対策の基準だけ明確化して、判断は店と客に任せるといいのではないか。
しかし、人の移動でウイルスの活動地域を広げかねない「Go Toトラベル」キャンペーンはいかにも拙いように思われる。
多くの人にとってコロナは「死に至る病」ではないのかもしれないが、「かかるとやっかいな感染症」であることは間違いない。感染が収束するまでの間は、少なくともコロナと共存する状況について考える必要があるだろう。
経営者も勤労者も、あるいは収入を得る職に就いていない生活者一般も、「コロナが3年続いたらどうしようか?」というくらいの「悪いシナリオ」について一度は考えておくべきだろう。
生活のサイズの見直しと
資産の「流動性」確保が大切
職種・業種にもよるが、生活者一般についていうと、生活の「サイズの見直し」と「資産の流動性の確保」が重要だ。後者については、不動産のような換金しにくいものよりも、換金しやすい金融資産で資産を持ちたい。
しかし、全体の状況は「ウィズコロナ」なのだが、情報テクノロジー関係の業種などでは、「コロナ太り」とはいわないまでも、コロナから大きな打撃を受けずにビジネスを伸ばせる状況にある会社も少なくない。「アフターコロナ」は、われわれの生活や経済に対して、平等かつ同時的にやってくるのではなく、時間差を伴ってやってくる。
自分と周囲は「ウィズコロナ」だと思っていたら、世間の大勢がいつのまにか「アフターコロナ」に変化するような状況が起こり得る。「アフターコロナ」の経済状況について考えておくことも無駄ではないだろう。
「ウィズコロナ」は
デフレ基調になる理由
「ウィズコロナ」の経済は、簡単にまとめると、実体経済の不景気と経済対策の引っ張り合いだ。
コロナは多くの経済活動に対して抑制的に働く。抑制は、工場の操業時間短縮など供給面にも働くが、需要面に対する影響がより大きいので、物価に対してはデフレ的な圧力が働く。
先進国の国内総生産(GDP)でいうと、日本と米国がマイナス5%くらい、欧州がマイナス8%前後といった状況で、実体経済の状況はリーマンショック後よりも悪い。
7月に行われた日本銀行の金融政策決定会合での議事には、再来年度でも以前のピークを回復しないのではないかといった意見が見られる。
一方、こうした実体経済への影響が金融システムに対する不安に至って、追加的にリーマンショックのような事態に見舞われることを防ぐことは重要だ。そうすべく先進各国は、中央銀行の金融緩和に加えて、財政赤字の拡大をミックスした経済対策を大規模に実施している。
株価が一時の急落から大きく回復して、再下落に転じないばかりか、時に騰勢を強めているのは、こうした金融面での後押しがあるからだ。民間の債務を政府の債務に移しながらの信用拡大なので、長期的には楽観できないが、当面の影響力については過小評価しないほうがいい。
「アフターコロナ」で
バブル・インフレが起きる理由
こうした状況下で経済が「アフターコロナ」に向かうと何が起こるだろうか。
経済の「アフターコロナ」とは、「大勢としてコロナが経済活動を抑制しない状況」というくらいの意味だ。前に述べたように、これは、まだらかつ不平等に、徐々にその範囲を広げていくような形で訪れるはずだ。
政策的に金融緩和を行った状態で、活動の制約が徐々に外れると、経済的には投資の機会が増えていく。そのため、景気が上向くのと共に、資産価格面では「バブル」が形成される可能性が大きい。
また、マネーが潤沢に供給された状態で需要が復活し、投資・消費の拡大が起こるなら、物価に対する影響はインフレ的であるはずだ。
それを効果と呼ぶか副作用と呼ぶかは状況次第だが、金融緩和と財政赤字拡張を続けることの帰結は「インフレ」が自然だ。
「アフターコロナ」と呼べる状況になったときに、バブルとインフレがわれわれにとって次の問題となる可能性がある。
アフターコロナ下のインフレは
「必要」であり、ならないと困る
ここで断っておくが、筆者は、現時点で「インフレが心配だから、財政の健全化が大事だ」などと「財政再建マニア」のようなことを言いたいのではない。
財政に後押しされた資金需要で金融緩和を有効にすることは、コロナ前から必要であったし、「ウィズコロナ」の状況下にある現在も適切かつ必要だ。
コロナ対策の財政的な手当などを名目に、消費税率の引き上げといった財政緊縮を行うべきではない、とあらかじめ警告しておこう。「アフターコロナ」下でのインフレは、必要なのであり、そうならなければ困る。
過去の歴史を振り返っても、インフレを制御する方法はあるので、インフレ目標「2%」を十分超えた段階でインフレ抑制に向かえばいい。
「早すぎるインフレ対策」に要注意
セールストークにも気を付けよ
金融業界は長年にわたって、「老後不安」と共に「インフレリスク」(極端なバージョンは財政破綻・預金封鎖など)を強調し、不安を喚起して(マーケティングの情動の一つではある)金融商品を売ってきた。
この刷り込みが強烈であったためか、投資家の中には、将来のインフレの可能性に対して過剰に興奮して反応する方が一定割合いるようだ。
しかし、「インフレのリスクに備えて、今のうちから資産の○割を実物資産で持つ…」といった極端な対策に今乗り出す必要はないし、たぶん、やめたほうがいい。もちろん、その種のセールスにも気を付けたほうがいい。
「アフターコロナ」も、そのあり得る帰結としてのインフレも、いきなりやって来るわけではないのだ。また、何よりも、「ウィズコロナ」が想像以上にしぶといものであったり、勢いを盛り返したりする可能性があるからだ。
こうした場合、空振りに陥ったインフレ対策投資が残念なものになるのは、過去に多くの先人が経験済みだ。
インフレの手前にバブルが来る可能性があることを考えると、ある程度のリスク性を持つ株式などの資産を持っていたら、次のインフレに備えるまでの物価上昇を十分クリアできる収益を得ている可能性が大きいのではないだろうか。
「早すぎるインフレ対策」には注意したい。
「アフターコロナ」の転換点を
見極めるための「3つの2%」
投資家が「アフターコロナ」で「そろそろ投資を見直そうか」と考えるべき目処として、3つの「2%」に注目することをお勧めしたい。
(1)長期金利「2%」、(2)インフレ率「2%」、(3)実質金利「2%」の3つだ。これらのうち2つが「2%」をクリアしたら、「世の中が変わったかもしれない」と思って、投資のポートフォリオを見直すといい。
2%クリアの順番は、おそらく上に挙げた通りではないかと予想するが、中央銀行の根性の入り具合によっては(1)と(2)が入れ替わる可能性はある。
政策目標であるインフレ率2%を十分超えるまで金融緩和を継続するという日銀の約束を信じ、その結果、インフレ率2%が「アフターコロナ」の状況下で達成されるなら、それまでに株価はかなり上昇していてもおかしくない。
もっとも、その後に実質金利2%が達成される場合、これは「ニューノーマル」ならぬ「旧ノーマル」の水準だが、株価的には相当の調整につながる可能性があるだろう。
いずれも、残念ながらかなり先の想像上の展開にすぎない。
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