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国が行政指導、楽天モバイルの化けの皮…違法端末を販売、不当に“子供向け”装う販促
https://biz-journal.jp/2020/07/post_168717.html
2020.07.16 18:00 文=松岡久蔵/ジャーナリスト Business Journal
楽天の三木谷浩史社長(撮影=編集部)
楽天の拙速ぶりが際立っている。総務省は10日、楽天傘下の楽天モバイルが必要な技術認証を受けないまま、自社開発スマホ「Rakuten Mini(楽天ミニ)」を販売したとして、行政指導した。楽天は4月にも新型コロナウイルスPCR検査キットの発売をわずか10日で撤回しており、業界関係者からは「三木谷浩史会長兼社長のワンマンぶりにいよいよ歯止めがかからなくなった」と懸念する声も出ている。
■違法端末を1円で販売していた
「楽天が一時的とはいえ、1円で違法な端末を販売していたのはさすがに看過できなかった」
総務省関係者は今回の行政指導について、こう話す。楽天モバイルは、楽天ミニの5月以降に発売された端末で、認証を受けないで米国など海外で使われる周波数を追加するなどしていた。6月に必要な認証を取得した上、楽天と通信契約を結ぶ分にはサービスに問題はないため、自主回収などは行われなかったが、1カ月ほど違法な商品を販売していたことは間違いない。先の総務省関係者も「認証取得などのルールへの認識が甘いとしか言いようがなく、社内間の連絡やコンプライアンス意識がまったく足りていない」と憤る。
楽天は4月からMNO(携帯キャリア)サービスを始め、楽天ミニは「世界最小」を謳い文句に、持ち運びやすいことなどを売りとする主力モデルとして市場投入された。5月27日から6月17日までは1円で販売するキャンペーンを開始しており、自社回線の契約拡大の切り札だった。その楽天ミニが「違法」な販売だったということは、お粗末きわまりない。
さらに、楽天モバイルは楽天ミニをサイズが小さいという理由だけで子供向けへの販促もしているが、「中身はあくまで大人向けで、子供が使いやすいようにまったく設計されておらず、ただのこじつけ」との批判も出るなど、プロモーション戦略がうまくいっているとは思えない。楽天は契約拡大のため、1年間通信料無料を打ち出しており、「あくまでポケットWi−Fiとして使用したいというニーズが高いが、携帯として単独で持ちたい人はそれほど多くない」(民間調査会社)。無料キャンペーンが切れた来年4月以降に解約減は避けられず、単なる「バラマキ」だけでは苦戦を強いられるのは間違いない。
■学歴詐称疑惑の会社からキット購入
楽天の迷走ぶりを示したのは、携帯だけにとどまらない。三木谷氏は新型コロナ向けのPCR検査キットの企業向けの販売を4月20日表明し、わずか10日後の同月30日に回収した。
楽天がキット販売に踏み切った背景には、三木谷氏の「日本は検査数が少ない」との問題意識がある。楽天関係者によると「コロナ感染者かどうか迷っている人が会社を休む理由を企業側にも従業員側にもつくれるようにしたかった」とのことだが、実際には「医療現場の混乱をもたらす」と日本医師会からも批判されるなど、発売当初からバッシングが高まっていた。
反発をよそに結局発売した楽天だが、キットを開発したジェネシスヘルスケア社が4月28日に「経営体制を変更」し、学歴詐称疑惑が指摘されていた代表が交代したことで、発売中止に追い込まれた。
この代表の佐藤バラン伊里氏は、「週刊文春」(文藝春秋)で2006年に学歴詐称疑惑を報道されたいわく付きの人物。佐藤氏は07年に同社の代表を辞任したが14年に再び就任した後、楽天は17年に出資し、三木谷氏が社外取締役に就任している。佐藤氏と三木谷氏が親しい関係であったとされるが、先の楽天関係者によると「佐藤氏やジェネシス側から学歴詐称疑惑について説明を受けたことはないが、企業としては健全と判断した」ため、出資したという。
楽天は発売中止の理由として「(ジェネシス社の)新体制下におけるコーポレート体制とコンプライアンス体制を再度、精査確認」することを挙げているが、経営トップの学歴詐称問題をはっきりさせぬまま、個人的な人間関係をもとに出資する姿勢は批判されてしかるべきだろう。三木谷氏は今年5月1日付けでジェネシス社の社外取締役を辞任しているが、遅きに失している。
■拙速は持ち味でもあるが…
楽天の拙速さを挙げてきたが、そもそも三木谷氏は「成長スピード」を経営の最重要課題と考えてきた。三木谷氏がリーダーシップをとるワンマン経営で業容を一気に拡大してきたわけだが、規制を守ることに汲々としている日本企業全体を見渡せば頼もしいともいえる半面、危うさも残る。楽天モバイルの幹部が3月末で辞職したことも、ワンマン経営が行き過ぎ、歯止めが掛からなくなっている強い徴候だろう。
先に書いたように、楽天はPR戦略などが得意とはいいがたく、「なんとなく輝けない」「甘さがある」などとの批判がつきまとってきた。三木谷氏に今必要なのは、より有能な人材を獲得すること以外にないのではないかと思われて仕方ない。
(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)
●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
地方紙勤務を経てフリーに。マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka
ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/
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