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「コロナ金融危機」は本当に起こるのか?リスクシナリオを検証する
https://diamond.jp/articles/-/236138
2020.5.1 4:52 塚崎公義:経済評論家 ダイヤモンド・オンライン
Photo:Barcroft Media/gettyimages
新型コロナ不況で金融危機が発生する可能性は否定できない。予測としてではないが、リスクシナリオとして頭の片隅に置いておきたい。(塚崎公義)
新型コロナウイルス感染症のまん延による不況が金融危機をもたらすことを心配する人が増えているので、数回にわたるリスクシナリオのシリーズを記すこととした。第1回は、どのような金融危機が考えられるのかである。
金融危機は繰り返してきた
過去、何回も金融危機は繰り返されてきた。典型的なのはバブルの崩壊による不良債権の増加で銀行経営が傾き、金融仲介機能が毀損された1990年代の日本のケースであろうし、リーマンショックもこれに大変よく似ていたが、原因はバブル崩壊に限らない。
金融危機のきっかけは国内のできごとだけではない。途上国から大量の資金が引き揚げられて途上国通貨が暴落し、通貨危機が発生したこともある。アジアの通貨危機を覚えている読者も多いだろう。
放漫財政で政府債務が膨らんで返済不能となったこともある。これはギリシャの債務危機が記憶に新しい。
これに対し今回は、深刻な実体経済の低迷が原因で金融危機が起きるかもしれないといわれている。そんなことがあるのだろうか。可能性を考えてみよう。
「皆が危ないと思うと危なくなる」が金融危機の本質
金融の世界というのは、言葉は悪いが「共同幻想」で成り立っている。最も典型的なのは、「紙幣はただの紙切れであるが、皆がありがたいと思って欲しがるから価値があるのだ」ということだろうが、それだけではない。
「銀行は安全だ」と皆が思って預金しているから銀行は安全なので、皆が一斉に預金を引き出したら(取り付け騒ぎ)、金庫の現金が底を突き、倒産してしまうかもしれない。銀行の金庫には、取り付け騒ぎが起きないことを前提に少ししか現金が入っていないからだ。
銀行が健全であるか否かは関係なく、潰れる時は潰れるのだ。もっとも、人々が「あの銀行は危ない」と思うから取り付け騒ぎが起きるのであって、健全な銀行の方が取り付け騒ぎは起きにくいということはいえるだろう。
金融危機に似た現象は、マスク不足とトイレットペーパー不足だろう。マスク不足には説得するに足る理由がある。世界中の人が急にマスクをするようになり、需要が供給を上回ったからだ。
しかし、トイレットペーパー不足の方は説得力のある理由がない。「何らかの事情で人々が足りなくなると思って多めに購入したから実際に足りなくなった」ということである。これと同じようなことが金融の世界で起きる可能性は十分にあるのである。
考えられるリスクシナリオは多数
今の局面で考えられるリスクシナリオは多数ある。いずれも予測ではなくリスクシナリオであるから過度な懸念は不要だが、順を追って検証してみよう。
不況で倒産が続発し、銀行の決算が悪化すると、人々が不安に感じるようになるので、取り付け騒ぎが発生するかもしれない。怖いのは零細な預金者たちが引き起こす取り付け騒ぎとは限らない。銀行が大口預金者や他の銀行から資金を借りられなくなることで、銀行自身が大いに困るかもしれないのだ。
あるいは、銀行の自己資本が赤字によって減少すると、銀行が自己資本比率規制によって貸し渋りをするようになるかもしれない。そうなると、銀行に公的資金を注入する(銀行の増資を政府が引き受ける)必要が出てくるが、世論の反対で実現が難しい場合も多いだろう。
貸し渋りを受けた借り手は、他の銀行に融資を依頼するだろうが、それは容易なことではない。銀行は新規取引先への融資に際しては既存顧客の借り換えよりも慎重に対応するからである。
これが本当に痛感されるのは、貸し渋りをしていた銀行が倒産した時だ。たとえば小幅の赤字の企業は、これまでは取引銀行から大目に見てもらえたが、取引銀行が倒産すると他の銀行からは借りられないからである。
銀行が倒産した場合の経済への打撃は、別の経路からも甚大である。それは、銀行相互の資金貸借が止まってしまうからである。「他の銀行に資金を貸すのは危険だ」とすべての銀行が考えると、各銀行は「他行から借りられないなら万が一に備えて金庫に札束を積み上げておこう」と考えるようになるので、貸し出しに慎重になるのである。
銀行の自己資本が十分あったとしても、倒産が増加すると、銀行が与信に慎重になるので、信用力の低い借り手の倒産が増えるかもしれない。米国などでは低格付けローンが証券化されているので、それが暴落して買い手が付かなくなる可能性もあろう。
現金需要の高まりが途上国に影響する
さらに問題なのは、たとえば住宅ローンの焦げ付きが増えると銀行が住宅ローンの貸し出しに慎重になり、住宅価格が下がり、銀行が一層慎重になる、といった悪循環が生じかねない事である。
不安が高まると、人々が多くの現金を持っておきたいと考えるようになるので、現金の需要が高まるかもしれない。紙幣の需要もそうだが、資金という意味でもそうである。各国の中央銀行が潤沢な資金供給をするだろうが、最近も世界中でドルが不足していることは要注意である。
ドルの需要が高まったり米銀が貸し渋りをしたりすると、しわ寄せが途上国に来る可能性が高まる。途上国の通貨を売ってドルを買う動きが広まり、途上国通貨安が途上国経済に打撃を与え、一層の通貨安をもたらす通貨危機である。
不況が長期化すると税収が落ち込み、景気対策の歳出が膨らみ、財政破綻が懸念される国が出てくるかもしれない。途上国でそうしたことが起きる可能性はもちろんあるが、ユーロ圏加盟国で起きる可能性もある。
最悪の場合、不況とインフレが共存するスタグフレーションが発生し、金融政策が極めて難しい舵取りを迫られることになる。舵取りを誤ると、それが金融危機の引き金を引く可能性もあるだろう。
以上、いろいろなシナリオを考えてみたが、いずれも頭の片隅には置いておきたいので、次回以降少し詳しく見ていくことにしよう。
本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織等々とは関係がない。
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