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消費増税、景気への悪影響が鮮明…GDPに表れない“消費引き締め”の実態、五輪効果も終焉
https://biz-journal.jp/2020/01/post_138854.html
2020.01.28 文=松岡久蔵/ジャーナリスト Business Journal
「Getty Images」より
消費増税による景気への悪影響がジワジワと出始めている。内閣府は14日、12月の景気ウォッチャー調査の結果を発表した。この調査はいわゆる「街角景気」を調べるもので、景気に敏感なタクシー運転手や小売店など、全国各地の景気の動きを観察できる職業の約2000人を対象としている。国内総生産(GDP)などのハードデータより信頼性は低くなるが、調査が早くまとまるため、より早く実体経済の様子がつかめるとされている。
今回内閣府が発表した調査結果によると、全国の12月の景気の現状判断DIは消費増税をした昨年10月から3カ月連続で増税前の40を割り込む低水準が続いている。横ばいを示す50を下回っている時点で、肌感覚からみて景気回復には程遠いということを示しているが、地域別にみると関東、近畿、九州以外はすべて40を下回っており、東京や大阪、福岡といった近年人口上昇が続いたり、地域の中核をなす大都市を抱える地方以外は苦戦を強いられていると感じる人が多いということだ。
さらに、調査のためのインタビューの中身を子細に見てみると、興味深い内容が出ている。景気ウォッチャー<全体版>から、いくつかポイントを挙げてみよう。
まず、ホテルの増設ラッシュや東京オリンピックでの建設需要の高まりが、必ずしも地方都市圏での景況感を押し上げているわけではないことがわかる。
「市内を中心に新規ホテルの増設ラッシュとなり、客室が余り始めている。その結果、軒並み客室単価が下がってきている。宴会も忘年会シーズンではあるが、小口の宴会を中心に予約状況が悪い。法人客からは、忘年会への参加を社員に無理強いできなくなったため、不参加者が多く、中止にするといった声も数件ある」(近畿=都市型ホテル)
「東京オリンピック後の新規建設を計画している建築主において、次年度着工の是非を判断する時期にあるが、人手不足などの影響で一向に建設単価が下がらないため、着工を先送 りするケースが目立ち始めた」(北海道=建設業)
「12月の動きだが、例年と比べて、運営する3ホテルは軒並み70%は超える稼働率で、悪いというところはない。ただし、80%を超えても良い月なので、年末に近くなって稼働 が苦戦しているため、若干悪い」(北関東=都市型ホテル)
「ホテルの過当競争が更に激化するとみており、土地があればホテルが建つ状況はホテル バブルを実感する。レストランも消費税の引上げの影響か、来客数、客単価共に減少しており、特に客単価は消費税の引上げ前より低い」(北陸=都市型ホテル)
「宿泊客の人数が前年に比べて減っている。あわせて、客単価も落ちている。他のホテルと情報交換しても同じ回答である。宿泊施設が供給過剰になっている。クルーズ船の寄港数が増えても我々の売上には関係ない」(沖縄=観光型ホテル)
■地方都市圏では不調の声
一方、東京を含む南関東や大阪を含む近畿地方、福岡市を含む九州地方の建築需要に対する肌感覚は悪くない。
「オフィステナントからは景気が悪いという話はほとんど聞かれない。商業テナントから は、人手不足、材料等の高騰により経営が厳しいということを言われ、賃料の値上げ交渉が難航しているが、ゼロ回答はない。客が少ない土日の深夜営業の時間短縮など、経費の削減に向けた工夫をしている」(南関東=不動産業)
「好調な企業は設備投資に積極的で、年度末の完了工事の発注も続いている。官庁関係で は、人手不足の影響で入札に参加できない企業も多い」(近畿=建設業)
「災害復旧工事の指名入札の場合は、約半分の業者が辞退しており、今の時期仕事を選ん でいる状態である。災害復旧工事の金額の大きな工事については、繰越しが考えられる ため参加業者は多い。工期等の延長が可能であれば、入札に参加したい業者は増加し、 地元下請業者も景気は良くなると考えている」(九州=建設業)
また、飲み会などを含めた一般消費については、地方都市圏で不調の声が大勢を占めている。
「消費税の引上げの影響で客の財布のひもが固く、衝動買いは皆無である。また、この冬 場は気温が高く、白菜など鍋材料の動きが悪い」(中国=スーパー)
「消費税の引上げが徐々に効いてきており、予約状況からも徐々に財布のひもが固くなっ ていることがうかがえる。客層の二極化が進んでおり、中間層の客がいなくなっていくことを危惧している」(東北=一般レストラン)
「令和になって初めての12月ということもあり、きっと忘年会などを楽しむのではないかとみていたが、思っていたほどの客足ではなかった。例年と比べても、客の数が若干少ない」(北海道=スナック)
「例年に比べて暖冬の影響を受けたクリスマス商戦、年末商戦の重衣料の動きが鈍い。ま た、消費税増税の影響がいまだにあることが一因として挙げられる」(南関東=衣料品専門店)
「2〜3か月後はいよいよ2020年東京オリンピックということで、その分野に関しては良いと聞いているが、他の教育及び一般団体旅行が伸び悩んでいるようなので、相殺して 変わらない。個人も思わしくないと聞いている」(南関東=旅行代理店)
「法人利用の一般忘年会が、周辺施設も含め、軒並み全て減少している。当ホテルでも、 前年比20%ほど落としてしまっている」(甲信越=都市型ホテル)
「富士五湖周辺では、アジア周辺からの観光客が堅調に推移している。しかし、多くの大手ホテルチェーンの進出により、地元ホテルの宿泊客が大手に流れており、観光客は増加傾向であるものの、景気自体は変わらない」(甲信越=金融業)
「忘年会シーズンは終わったが、今後も、送別会、歓迎会、合格祝い会などの需要がある。 ただ、職場での利用が減少しているため、売上が懸念される。また、アルコールを提供する宴会よりもノンアルコールの食事会が増加する現状があるので、1件当たりの単価が伸びず、前年から売上が変化しない」(中国=一般レストラン)
「消費税増税の影響を明らかに受けた形となっている。住宅展示場の来場者数は減少しており、大手住宅メーカーの契約数が明らかに落ち込んでいる。今後もしばらくはこの傾向は 継続するとみている」(四国=木材木製品製造業)
来年、地方を中心に不景気か
引用が長くなった。もちろん、この調査自体はあくまでアンケートであり、今後集計されるハードデータとは乖離があるかもしれない。ただ、東京オリンピックの年を迎え、従来から国内経済を底上げしてきた建設需要が地方都市圏ではあらかた出尽くした感がある。さらに、消費増税の影響もさることながら、職場などでの飲み会もハラスメントを恐れる風潮などにより敬遠されるようになり飲食店は苦戦しているのは間違いない。
地方の「外貨獲得」の頼みの綱であるインバウンド需要も、昨今の新型肺炎の感染拡大で中国人観光客に対するイメージが悪化すれば、徐々に停滞していく懸念もある。実際、日本観光局によると、2019年の韓国人観光客は今年の日韓関係の悪化により、前年比25.9%減の558万4600人となっており、地方の観光業には少なからぬ打撃を与えたことと推測される。
政府は今年、事業規模26兆円の経済対策を実施する予定だが、「今年はこれだけの規模でやれば経済の急減速は避けられるが、問題は来年。地方を中心に一気に不景気になる恐れがある」(銀行系証券のストラテジスト)との懸念もある。今後の日本経済の動向が注目される。
(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)
●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
地方紙勤務を経てフリーに。マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka
ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/
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