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※紙面抜粋
※2022年4月12日 日刊ゲンダイ2面
【空前の殺戮と破壊になるだろう】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) April 12, 2022
ウクライナは東部を死守できるのか
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/DsBNLwPoHG
※文字起こし
「プーチンの戦争」が終結する日は果たしてくるのだろうか。
ウクライナ猛襲を続けるロシア軍に新たな動きだ。侵攻開始から6週間あまり。プーチン大統領が言う「特別軍事作戦」を統括する司令官に、2014年に併合したクリミア半島などを統括する南部軍管区(司令部ロストフナドヌー)のドボルニコフ司令官が任命されたという。作戦統括の司令官任命は、この戦争が始まって以来初めて。これまでに将官7人が戦死し、指揮系統の欠如が想定外の苦戦につながっているのは明らかだった。新体制で部隊間の連携を強化して態勢を立て直し、親ロ派が一部を支配する東部2州の掌握に向けて攻勢を強めている。都市部への無差別攻撃で民間人の犠牲が拡大。米シンクタンク「戦争研究所」は東部の要衝ドネツィク州マリウポリ市でウクライナ軍が分断され、南西の港湾地区と東部の製鉄所周辺の2カ所に追い詰められたと分析した。
ショイグ国防相らと並ぶ階級である上級大将の地位を占めるドボルニコフは、手段を選ばない男だ。ロシアが軍事介入したシリア内戦をめぐっては、15〜16年にアサド政権軍を支援する作戦を指揮。人口密集地周辺を容赦なく攻撃し、市民の犠牲を顧みない残虐な戦いで形勢を逆転させた。ロシアが南部クリミア半島を併合後の16年から南部軍管区司令官を務めている。ウクライナ軍参謀本部によると、首都キーウを含む北部から撤退したロシア軍の東部軍管区(司令部ハバロフスク)の部隊が立て直しを図り、今月後半から投入される見通しだという。
総司令官任命で「本来の能力発揮」
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう言う。
「総司令官の任命がロシア軍の強化につながるのは間違いない。シリア内戦での作戦を見る限り、ドボルニコフ氏は戦績を上げることに主眼を置き、民間人への配慮は二の次、三の次になるでしょう。そもそも、なぜロシア軍は作戦を統括する司令官を置かなかったのか。プーチン大統領がウクライナ侵攻を開始ギリギリまで秘匿したかったからではないか。電撃戦で首都キーウを制圧し、ゼレンスキー政権を転覆できると見くびっていたものの苦しんだ挙げ句、北部、東部、南部と戦線を広げ過ぎて戦果が危ぶまれている。事態を収拾するため、通常の作戦同様に総司令官を置き、東部への集中攻撃で何としても陥落させるつもりです。部隊の戦力は厚くなり、補給線もしっかり確保されることから、本来のロシア軍の能力を発揮し、作戦を強力に遂行していくことになるでしょう。逆に、ウクライナはこれまでにない危機的状況に陥る懸念が高まっています」
プーチンはロシア国民の愛国心が高まる5.9対独戦勝記念日を戦闘の節目としている。クリミア半島から東部をつなぐ「陸の回廊」の確保を戦果に掲げることを最低条件にしているだろう。ウクライナは東部を死守できるのか。英国防省はロシア軍がドネツィク州で非人道的として批判が強い「白リン弾」をすでに使用し、マリウポリでも使用する可能性が高いとの戦況分析を発表。ロシア軍は爆撃機などに搭載して上空から落とす無誘導爆弾に依存しているため、標的を定めて攻撃する識別能力に欠け、民間人が犠牲になる危険性が大幅に高まっているとも指摘している。
ロシア軍が撤退したキーウ州では11日までに1222人の遺体が見つかり、ロシア軍による無差別大量虐殺は疑う余地がなくなってきた。ゼレンスキー大統領はAP通信の取材に「勝たなければ弱い立場に立たされる」と言い、徹底抗戦の構えだ。停戦交渉を見据え、絶対に負けられないとの覚悟だろう。一層の軍事支援を求められた米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)もCNNの番組で「どの司令官の指名も、ロシアがウクライナで戦略的な失敗に直面しているという事実を消すことはできない。ウクライナは決してロシアに征服されることはない」とあおり、総動員で抵抗するウクライナを熱烈支持した。この先に待ち受けるのは、空前の殺戮と破壊なのか。
20世紀型の地上戦、消耗戦突入で長期化
軍事評論家の田岡俊次氏はこう分析する。
「仮にロシア軍が戦勝記念日前にマリウポリなどを陥落させても、ウクライナ軍は奪回を目指し、戦争は続く。ロシア軍は侵攻初期はウクライナ軍を軽視して全軍の連携ができておらず、航空攻撃が妙に少なかったが、最近は多くなった。侵攻したロシア軍の陸軍兵力は東部の親ロ派民兵4万人を含む19万人。対するウクライナ軍は予備役兵90万人を含むと110万人ですから、ロシア軍の5.7倍の兵力を擁している。定石通り、ロシア軍は猛爆撃で戦局打開を図るのではないか。ウクライナ軍は携帯式地対空ミサイル『スティンガー』を米軍から大量に供与されているものの、射程も高度も約4キロほどのため、高空からの爆撃や空対地ミサイル攻撃に対抗するのは困難です。大型の地対空ミサイルやレーダー通信などの防空網が次々に破壊されると、苦しくなるかもしれない」
大量虐殺の発覚以降、米欧の武器供与は一段と加速している。米欧は東部でロシア軍を撃退し、有利に停戦交渉を進める青写真を描いているが、「プーチン劣勢」報道は戦争プロパガンダのひとつだろう。
「ロシア軍が反転攻勢に出るまで、少なくとも数日は要する。ウクライナ軍は兵力は十分ですが、武器が圧倒的に不足している。特に大型武器です。20世紀型の地上戦、消耗戦に突っ込んでいくのは避けられない。自走砲、歩兵戦闘車、装甲車両、防空ミサイルが必要です。戦闘機も欲しい。ウクライナ国内は鉄道網が健在なので、調達さえできれば前線まで迅速に輸送できる。長期戦は必至ですから、戦闘と並行して訓練も欠かせません。ウクライナ軍が持ちこたえられなければ、NATO(北大西洋条約機構)が介入せざるを得なくなり、NATO対ロシアの戦争に発展してしまう。ですから、なおのことウクライナ軍の強化を急ぐべきなのです。ロシア軍が勝ち進んでいる間は戦争が終結することはない。東部戦線に集中すると言いながら、戦況次第でキーウ再攻撃に打って出る可能性は消えていません」(黒井文太郎氏=前出)
ベトナムもアフガンも停戦協議に5年
コトと次第では戦争長期化どころか、落としどころのない世界大戦化が現実味を帯びている。大量虐殺の露呈によって、ウクライナ側も一歩も引けず、停戦に向けた機運はしぼみつつある。
ウクライナのウニアン通信によると、アレストビッチ大統領府長官顧問はユーチューブのインタビュー動画でロシアとの戦争状態は35年まで続く可能性があると発言。イスラエルとアラブ諸国の間で繰り返される中東戦争に言及し、「われわれのところでもそうなるだろう。2035年までに複数回の軍事衝突が起こることは間違いない」との見通しを示した。米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長も下院軍事委員会の公聴会で、「少なくとも数年単位になる」と言っていた。
「過去の停戦協議を振り返ると、停戦が成立するのはどちらかの敗北が決定的か、双方が極度に疲労した場合です。ロシア軍は苦戦しているが、何の成果もなく撤退すれば敗北が確定し、大国の地位を失ってしまう。一方のウクライナ軍はロシア軍に死傷者2万〜3万人のダメージを与え、首都を守り抜いて士気が高く、領土の一部を譲るのは論外。停戦合意が成立する状況では全くない。ベトナム戦争では米軍介入の4年後に停戦交渉が始まり、その5年後に調印に至った。アフガニスタンでは米軍による攻撃開始から14年後に停戦協議を始め、5年後に和平合意が成立。昨年8月に米軍は撤退した。ウクライナ戦争も同様の長期戦になる公算大です。対ロ制裁はビジネスの観点では打撃でも軍事的には食糧と燃料が決定的要素。ロシアにはそれが余りあるほどあるので、継戦能力にはあまり響きそうにない。プーチン大統領の愚行は多くの国々に長期の災厄をもたらしそうです」(田岡俊次氏=前出)
ロシアと近接する北欧のフィンランドとスウェーデンが早ければ夏にもNATOに加盟申請する準備を進めていると報じられた。ロシアはこの2国の動きに対し、「軍事、政治的に重大な結果を招く」と警告していて、対抗措置を講じるのは確実だ。戦火は欧州全体に飛び火するのか。短期で決着がつかなければ行くところまで行く。戦争の現実がむごいほどあらわになりつつある。
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