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※紙面抜粋
※2022年4月6日 日刊ゲンダイ2面
ロシアはもう国際社会に戻れない 虐殺で世界は大きな転換
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/303538
2022/04/06 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
世界の孤児(C)ロイター/Sputnik/Kremlin
「プーチン包囲網」が一段と狭まった。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から40日が経過し、市民を大量虐殺した疑いが濃厚となる中、ゼレンスキー大統領は5日の国連安全保障理事会でオンライン演説。「ロシア軍はわれわれの国に奉仕した人びとを探し出し、意図的に殺している」「最悪の戦争犯罪を目撃している」とロシア軍による残虐行為を猛烈に非難し、「安保理が保証しなければならない安全保障はどこにあるのか。安保理はあっても、平和はどこにあるのか」と、常任理事国のロシアに振り回される安保理の改革を訴えた。「短い映像を見てほしい」とスピーチを締めくくった後、流された約1分間の映像は衝撃的だった。
議場の大スクリーンに映し出されたのは、各地で撮影された無数の遺体。井戸に投げ込まれた遺体、頭部が吹き飛んだ遺体、四肢を失った遺体、黒こげとなった遺体、手を縛られた裸の子どもの遺体……。道路は埋め尽くされ、無造作に折り重なっているものもあった。最後に「#Stop Russian Aggression(ロシアの侵略を止めろ)」のメッセージ。本当に技術的な問題だったのか、あるいはあまりにむごい映像だったためか、流されるまでおよそ10分間を要した。進行を務めていた英国の議長はしばらく言葉に詰まっていた。無慈悲なサイコキラーと化したロシアのプーチン大統領に対する怒りの炎は燃え盛り、国際社会の連帯はこれまで以上に強まっている。
ゼレンスキー演説に先立ち、米欧は対ロ制裁のギアをさらに上げた。米国のバイデン大統領はプーチンを再び「戦争犯罪者だ」と罵り、ロシアが米金融機関に持つドル資金の利用を制限。ロシア政府の口座のドルを使ってロシア国債の償還や利払いを行うことを不許可とした。デフォルト(債務不履行)に追い込み、プーチンの戦争資金を枯渇させる狙いだ。独仏伊は総勢100人を超えるロシア外交官の追放を決めた。デンマークとスウェーデンも腹を固め、欧州諸国からおよそ300人が追われるという。EUがロシア産石油の禁輸やロシア船舶の入港禁止などを柱にした追加制裁案をまとめ、域内消費の約25%を依存する原油の輸入制限に踏み込む公算も大きくなってきた。
ブチャを上回る虐殺殺害を確認
ロシア国防省は声明で「ロシア軍が犯したという『犯罪』を証言するウクライナ政府の写真と動画は、もう一つの挑発にすぎない」と主張しているが、米紙ニューヨーク・タイムズはそれを真っ向から否定。キーウ州ブチャの衛星写真と動画を分析したところ、多数の民間人の殺害はロシア軍撤退前の同軍管理下で起きたと報じた。ロシア軍は先月30日前後に撤退した一方、多くの殺害行為は3週間以上前に実行されたとみられるという。衛星写真にブチャの大通りの遺体が写り始めたのは先月9日から11日にかけてのことで、横たわっていた少なくとも11遺体については11日から倒れていたことが確認できたという。ロシア側はどう反証するのか。でっち上げだと突っぱね続けるのか。ウィキペディアに「虚偽の情報を掲載している」などと因縁をつけて削除を要求した上、応じない場合は最高400万ルーブル(約570万円)の罰金を科すと警告しているのも、苦し紛れに映る。
ロシア軍が去った首都キーウ近郊の惨状は筆舌に尽くし難い。ブチャでは無残な姿となった民間人410人の遺体が確認されたのに続き、その西側にあるボロディアンカではそれを上回る被害が確認されたという。ベネディクトワ検事総長は「最悪の人的被害だ」と怒りをあらわにし、捜査を本格化。ウクライナ国防省はブチャで「戦争犯罪に直接関与した」とするロシア兵約1600人の名簿を公開した。ジュネーブ条約などの戦時国際法では民間人に対する攻撃、病院など生活に不可欠なインフラへの攻撃、拷問やジェノサイド(大量虐殺)などを禁じている。化学兵器や対人地雷の使用も違反だ。
プーチン・ロシアは交渉相手になりえない
民間人の虐殺でハッキリしたことは、たとえ停戦合意が結ばれたとしても、プーチン・ロシアは国際社会に復帰できないということだ。
ゼレンスキーはプーチンとの首脳会談を求めてはいるが、ブチャ視察では停戦交渉について「ロシアの行いを目の当たりにすると、話をするのは非常に難しい」とも口にしていた。そうでなくても両国の代表団による交渉は隔たりを埋められず、ズルズルと引き延ばされてきた。大量虐殺を裏付ける事実が次々に明るみに出れば、交渉は振り出しに戻ることになるだろう。
無辜の市民を虫けらのように扱うプーチン・ロシアは交渉相手にはなりえない。
この虐殺で世界は大きく変わるだろう。戦争犯罪を認めないロシアVS国際社会の対立激化は避けられない。政治的にも経済的にも追い詰められていく独裁者と核大国の行方、そして世界経済の未曽有の混乱。ロシア抜きの世界はどう変わっていくのか。専門家はこう見ている。
国際ジャーナリストの春名幹男氏は言う。
「米国を追い抜くことを目標とする中国はロシアに助け舟を出し続けるでしょう。韓国を下回る規模のロシア経済はガタガタでも、大量の核兵器を保有する軍事大国の地位は揺るぎません。米国に対抗し得るほどの核大国であり、資源も豊富。プーチン大統領と非常に良好な関係を維持している習近平国家主席にしてみれば、プーチン体制が崩壊し、西側寄りの新政権誕生は望ましくない。2014年のクリミア併合以降、西側陣営は対ロ制裁に動きましたが、中ロの貿易高はこの間に倍増し、中国は武器購入も増やしている。その一方で、NATO(北大西洋条約機構)などから軍事支援を受けるウクライナ側の士気は非常に高い。侵攻開始当初にもっと支援すべきだったとの声が米国内で上がっているほどで、南東部を奪還する可能性が見えてきた。ロシアにとっては下方修正した目標達成すら危ぶまれているわけで、破れかぶれで核使用のリスクが高まっているとも言えます」
中国がのみ込めば軍事経済大国
ロシア産原油を禁輸している米国は、今週中に新たな制裁を発表する見通しだ。すでにEUや日本などと協調し、ロシアの主要7銀行を国際決済網「SWIFT」から排除し、ロシア中央銀行が保有する資産の半分にあたる約3000億ドルを凍結。先端技術分野の輸出制限などに加え、「サプライチェーンを混乱させる措置を計画している」(アディエモ財務副長官)という。米商務省は今月からロシアの軍事関連企業への輸出規制に踏み込んだが、対象品目や企業を拡大させる可能性大。さらにロシアの原子力関連企業への制裁やSWIFT排除対象を増やす案も浮上しているという。
対ロ制裁の返り血は着実に世界経済をショクんでいる。地域大国のエジプトやアルゼンチンがIMF(国際通貨基金)に緊急支援を求めて駆け込んだ。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「対ロ制裁の痛みはロシアにとどまらず、取引関係にあったあらゆる国に及んでいます。パラジウムやニッケル、レアメタルなどをロシアに依存する日本は自動車や半導体産業が影響を受けますし、継続を決めたロシア極東の石油・天然ガス開発事業サハリン1と2も不透明さを増している。西側とロシア、どちらが痛みに耐えられるか。軍事力と経済力の戦いは軍事衝突とは次元が異なり、決着がつきにくい。一方で、支援要請に応えるかのような顔をした中国がロシアを事実上のみ込む展開も考えられる。中ロは相互補完関係にあり、ロシアと対峙していたはずが、軍事的にも経済的にも超大国となった中ロと対峙することになってしまう」
このままいくと、ロシア経済はソ連崩壊に匹敵するほどのダメージを食らうことになる。EBRD(欧州復興開発銀行)は2022年のGDP成長率がマイナス10%に陥ると予測。ソ連崩壊直後の92年が14.5%のマイナス成長だった。
戦争犯罪人のプーチンが延命する限り、ウクライナ戦争が仮に終結しても対ロ制裁が解除されることはない。カネの切れ目が縁の切れ目というが、ロシア国民がプーチンを見限らなければ、この世界に光明が差すことはない。
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