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※紙面抜粋
※2022年3月25日 日刊ゲンダイ2面
【「プーチン大誤算」報道の真相】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) March 25, 2022
この戦争 悲劇的結末か泥沼の長期化か
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/2xAsMtYZjj
※文字起こし
ロシア軍によるウクライナ侵攻開始から24日で1カ月経った。
ロシアのプーチン政権は当初、圧倒的に優位な軍事力を背景にウクライナを数日以内に制圧。ゼレンスキー政権を支配下に置く「短期圧勝シナリオ」を描いていたとされるが、そのシナリオはウクライナ軍の激しい抵抗によって確実に崩れつつある。
米国防総省によると、首都キエフまで20〜30キロに迫っていた東方のロシア軍部隊はウクライナ軍の反撃によって約55キロの地点まで押し返されたといい、キエフ北西ブチャの議会は、ロシア軍が占領していたブチャ、イルピン、ホストメリの3自治体をウクライナ軍が再び掌握したと明らかにした。
ウクライナ国防省もキエフの西約50キロのマカリウを奪還したと発表。AP通信によると、NATO(北大西洋条約機構)の高官は、すでにロシア軍の死傷者が推定3万〜4万人に達しており、うち、将官ら上級将校を含めて「7000〜1万5000人が戦死した」と語ったという。ロシア軍は侵攻前、最大19万人の部隊をウクライナ国境に展開しており、これらの情報が事実であれば、当初兵力の5分の1近くを失ったことになるわけだ。
米戦争研究所がまとめたロシア軍の支配・侵攻地域は22日時点でウクライナ全体の4分の1程度にとどまる一方で、これまでに同軍が失った戦車や装甲車は約800台でウクライナ軍の3.5倍に上り、対地・対空ミサイルの損失も約140で同6割多い、とされる。
想定外の苦戦を強いられているロシア軍は自軍の損失を抑えるため、遠隔地からウクライナ領内にミサイルを撃ち込む作戦に変更。クリミアと親ロシア派が実効支配する東部ドンバス地方と陸路つづきの南東部の要衝マリウポリへの無差別攻撃を激化させているという。
武器の技術革新を理解していなかったプーチン
こうした状況に対し、テレビ・新聞で強調され始めているのが「プーチン大誤算」との見方だ。
「ロシア国民は真の愛国者と裏切り者を見分けることができる」などと発言し、いら立ちを募らせるプーチンが「膠着状態の戦況に焦りを感じている」などと報道。プーチン政権で大統領特別代表を務めていたチュバイス氏が辞任したのを受け、「閣僚、側近のプーチン離れが始まる」とも伝えている。
弾丸や燃料などの戦費が兵士1人当たり1日1000ドルと仮定した場合、1日に1.5億〜2億ドルの支出が続くことから、長期化するほど戦費負担がかさんでプーチン政権は持たない──との分析もあるが、プーチンは本当に「誤算」で苦境に立たされているのか。そうであれば、手詰まり感を打開するための「奥の手」を使う時が来るのだろうか。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は「イスラエルの有力紙によると、この1カ月間でロシア軍が失った兵力や武器は、約10年間に及んだアフガン戦争の米軍の損失を上回るといいます。つまり、客観的に見て、この状況はプーチン大統領も予測できなかったと思います」と言いつつ、こう続ける。
「なぜ、こうなったのかと言えば、プーチン大統領は、近代のゲリラ戦における携帯式の対戦車、対地・対空ミサイルという武器の技術革新を理解していなかった。使い方や命中精度がかつての武器とは比べものにならないことが分かっていないのでしょう。これに対し米軍は、アフガンなどのゲリラ戦で激しく攻撃された経験から“場慣れ”していて、戦闘機や戦車に対してどう使えば効果的なのかを分かっている。ウクライナ軍によるドローン攻撃も始まったとされる中、ロシア軍はこれまで以上にダメージを受ける可能性が高い。今のままだと戦いの長期化は避けられないかもしれませんが、だからといって『奥の手』として安易に大量破壊兵器を使うのも今のところ考えにくいでしょう」
抜け穴だらけの経済制裁に効果はない
プーチン政権をじわじわ追い込んでいるとされる、もうひとつの「誤算」が経済制裁だ。
現在、日本を含む欧米各国がロシアに課している制裁は、@SWIFT(国際的な決済ネットワーク)からロシアの銀行を除外、ロシア中央銀行の資産凍結Aロシアに対する輸出入規制B最恵国待遇の取り消しCプーチン政権に近しい富豪(オリガルヒ)の資産凍結──が柱となっている。
「かつてないほど強力な経済制裁に驚いている」
一部報道では、プーチンが困惑していると報じているが、周知の通り、経済制裁は各国の複雑な思惑が絡んでいて決して一枚岩ではない。とりわけ顕著なのが原油などの資源をめぐる制裁だ。
資源自給率の高い米国はともかく、原油や天然ガスをロシアから調達しているEUの一部や日本は原油輸入禁止を見送っており、足並みはそろっていない。そのEU内でも制裁に対する姿勢はバラバラ。ポーランドやバルト3国がさらなる厳しい制裁を主張しているのに対し、化石燃料のロシア依存度が高いドイツやイタリアなどは制裁強化に消極的とされている。
ロシアにとって各国対応の乱れは“抜け道”であり、プーチンを追い込むほどの強い制裁措置になっているのかといえば甚だ疑わしいだろう。
24日にベルギーの首都ブリュッセルで開かれた先進7カ国(G7)と北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)の首脳会合でも、さらなる対ロ追加制裁が注目されていたが、これは裏を返せば、これまでの制裁が効いていないと認めているに等しいのではないか。プーチンが「誤算」とじだんだを踏むほど効果があれば、追加案の検討など必要ないからだ。
プーチンの「誤算」は反戦世論の高まり
果たして、報じられているようなプーチンの足元を揺るがす「大誤算」はあるのか。前出の孫崎享氏が指摘するのが、国内の反戦世論の高まりだ。
「これまでは一部のリベラル派だけにとどまっていた反戦運動が、戦争の長期化と戦死者の増加を受けて国内地方都市にも広がりつつある。これは今まで見られなかった光景で、まさにプーチン大統領にとって『誤算』と言っていいでしょう」
国営テレビの女性スタッフが番組中に公然と反戦のプラカードを掲げて抗議したのが象徴的だろう。ウクライナ侵攻の最中、プーチンがクリミア半島併合8年に合わせたイベントにあえて出席し、ロシア軍の戦いぶりを称賛しながら観衆を鼓舞するかのような演説をしたのも、国民に団結を促すためとみられている。
ただ、これまでも自分に歯向かう反体制派を徹底的に弾圧し、排除してきたプーチンが反戦世論にひるむのかといえば難しいと言わざるを得ない。数字が操作されている可能性があるものの、プーチン政権の支持率は今も7割をキープしていると報じられている。自身と同様に「大国ロシア復活」を望む熱狂的支持者の歪んだ世論を味方につけ、反戦ムードの広がりを一気に叩き潰しにいく可能性があるからだ。
福田赳夫元首相の秘書を務めた中原義正氏がこう言う。
「戦争は一度始めたら、そう簡単には終わらない。プーチンのメンツを考えながら条件交渉して停戦に持ち込む──などシナリオ通りには進まないのだ。チャウシェスク政権が倒れた時のように突然、大衆の革命が起きてプーチン政権が倒れるのか。何が起きるか分からないだろう」
悲劇的結末か、泥沼の長期化か。この戦争、ロシアが潰れるのは時間の問題として、楽観論は禁物だ。
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