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1990年代に米国が始めた戦争に沈黙していた人びとが今回は戦争に反対する
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202203220000/
2022.03.22 櫻井ジャーナル
戦争に反対し、戦争をなくすよう努力することは大切である。なくならない最大の理由は多くの人がそうしてこなかったからだ。
1967年4月4日、マーチン・ルーサー・キング牧師はニューヨークのリバーサイド教会で開かれた「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」主催の集会に参加、「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」という話をしている。
キング牧師はベトナム戦争を不当で、邪悪で、不必要だと表現、その悲惨な戦争の真実を聞くべき時が来ていると語った。大半の国民が自分自身を欺いているため、そうした真実は明らかにならないとも指摘している。その当時、多くの人びとはベトナム戦争反対の声を上げていない。
ロン・ポール元下院議員によると、キング牧師の顧問たちは牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。そうした発言はリンドン・ジョンソン大統領との関係を悪化させると判断したからだが、牧師はそうしたアドバイスを無視、「リベラル派」と対立することになる。そしてちょうど1年後、1968年4月4日に牧師はテネシー州メンフィスのロレイン・モーテルで暗殺された。
1991年12月にソ連が消滅した後、アメリカでは旧ソ連圏を破壊する動きが高まる。その旗振り役は言うまでもなく有力メディアだ。そうした圧力にビル・クリントン政権は抵抗していたが、国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代してから状況は大きく変化した。1997年1月のことだ。
そして1998年4月、アメリカ上院はNATO拡大を承認。それに対し、「封じ込め政策」で有名なジョージ・ケナンはNATOの拡大がロシアを新たな冷戦に向かわせると警告している。
ケナンは反コミュニストの外交官として有名で、1948年6月に破壊活動を目的とする機関の創設を提言、NSC10/2が作成され、極秘機関OPC(政策調整局)の創設につながった。1952年8月にはOPCが中核になってCIAの秘密工作部門「計画局」が創設される。要するにケナンは好戦的な人物なのだが、それでもNATOの拡大は危険だと考えていたのだ。
そして1999年3月にNATOはユーゴスラビアを先制攻撃、スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊しただけでなく、中国大使館も爆撃している。状況から考え、誤爆ではない。その後、アフガニスタンやイラクを先制攻撃、2011年にはリビアとシリアをジハード傭兵で攻撃している。
そして2014年2月、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権をネオ・ナチを使ったクーデターで倒した。その時にドンバス(ドネツクやルガンスク)で反クーデター軍が編成され、キエフのクーデター軍と戦争が続いている。
ジョー・バイデン政権になってからアメリカはウクライナ周辺で軍事的な恫喝を強め、戦争の準備を始める。クーデターはバラク・オバマ政権が実行したが、クリミアとドンバスの制圧に失敗したこともあり、2015年からCIAはアメリカ南部でキエフ軍の特殊部隊を訓練してきたという。
訓練を受けた特殊部隊員だけでなく、アメリカのCIAや特殊部隊のメンバー、そして傭兵もドンバス周辺に入っていたと言われている。そして2月17日からドンバスに対する攻撃が強まった。
そうした中、2月19日にウクライナの政治家、オレグ・ツァロフは緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、ボロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始するという情報をキエフから得たと明らかにした。
そのアピールによると、この地域を制圧してからキエフ体制に従わない住民を「浄化」するという作戦で、西側から承認を得ているともしていた。この作戦と並行してSBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。
ロシアのウラジミル・プーチン大統領は2月21日にドンバスの独立を承認、2月24日にロシア軍は巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始した。その作戦の中でロシア軍は重要な文書を回収している。ひとつはウクライナの生物兵器の研究開発に関するもの、もうひとつは3月に予定されていたドンバスに対する攻撃計画に関するものだ。
アメリカの対ロシア戦争は1990年代、つまりソ連が消滅した直後から始まった。1999年のユーゴスラビア攻撃は決定的だ。こうした行動が戦争につながると見通していた人は少なくないだろう。
今回のロシアによる攻撃を見て「ロシアが軍事行動に踏み切ったことは非難されねばならない」と言う前に、1990年代の有力メディアによる戦争を煽るプロパガンダ、1999年のユーゴスラビア攻撃、あるいは2014年のウクライナでのクーデターを非難するべきだ。
こうした戦争に対する反対の声は小さかった。その時に沈黙していた人が今回は「戦争反対」と叫んでいるのはなぜなのか。
今回、ウクライナからポーランドへ脱出した人は少なくないが、EUも日本も難民に対する態度がこれまでとは全く違う。西側メディアは「目が青く、ブロンドのキリスト教徒」、要するに北欧系の難民は助けなければならないと叫んでいた。
しかし、その一方でインドやアフリカ出身の人びとは国境で阻止され、棍棒などで殴打された人もいる。「目が青く、ブロンドのキリスト教徒」でないからなのだろう。
「目が青く、ブロンドのキリスト教徒」が巻き込まれる戦争には反対すると言うことだろうか?
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