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れいわ新選組代表 山本太郎さんインタビュー 「地獄」をつくったのは無関心な私 脱消費税を掲げ、旧体制と闘う
https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2019121900001.html
2019年12月24日 山本太郎 れいわ新選組代表 論座 朝日新聞
世界をみると、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんのような若者をふくめ、様々な人たちが社会運動や政治活動にとりくみ、思いを伝えよう、実現しようと活動しています。一方、日本ではそうした活動はあまり活発とはいえません。反原発運動から政界に入り、自身「デモから生まれた政治家」だと話す、れいわ新選組の山本太郎代表に、体験や政治参加の意義、課題などを聞きました。(聞き手 朝日新聞編集委員・松下秀雄/インタビュー写真 小林正明)
当事者の言葉のパンチ力
報道関係者に囲まれる「れいわ新選組」の(左から)舩後靖彦氏、山本太郎代表、木村英子氏=2019年8月1日、東京・永田町の参院議員会館
――重い障がいがある、れいわの木村英子、舩後靖彦両参院議員が国会で初の質問に臨みました。傍聴して私が感じたのが「この質問は私にはできない」ということでした。木村さんは車イス用トイレが多機能トイレになって障がいのある人には使いにくくなり、困った経験を紹介した。舩後さんは筋萎縮性側索硬化症(ALS)が進行して人工呼吸器をつけるか否か、つまり生きるか死ぬかの選択を迫られ、生きる意味を考えた経験を伝えました。初質疑の感想は?
山本 「感慨深い」の一言で片付けるのはもったいないくらいです。障がい者政策に光をあて、発言した議員は数々いたと思いますが、当事者が国会に入ることで大きく動くのを目の当たりにしました。
お二人の質問をみて、私も知らなかったことがありました。障がい者のみならずいろんな方々が多機能トイレを使うようになれば混雑し、使える確率が低くなるのはあたりまえですね。木村さんの訴えに対して国土交通大臣がしっかり受け止める姿勢を示されたのも印象的でした。私が参議院にいた時は、そんなに声を聞く姿勢ではない大臣が結構いましたから。やはり当事者がいうパンチの強さというか、影響力は大きいと思いました。
もう一つ、舩後さんという存在。いきなり電子音声で質疑が始まる。つくってきた原稿を秘書が読み上げ、その場で文字盤を使って再質問をつくる。舩後さんもちょっと焦ったと思うんですよ。意思表示をするのにはどうしても時間がかかるのに持ち時間は25分と決められているから。
最初は、再質問をつくる間も時計を止めないという話だったんです。それでは持ち時間が減るので「それはないだろ」と言っていたんですけれど、結局は止めてくれることになったらしい。国会も二人の存在に学びながら、いままさに変化しているということだと思います。
社会のあり方が弱者をつくる
――国会議員のほとんどは「健常者」といわれる人たちで、しかも比較的裕福な中高年男性が多い。国会がそういう構成だから、選択的夫婦別姓や同性婚が認められなかったり、障がいのある人が十分な介助を受けられなかったりするのではないでしょうか。議員の偏りについてどう思いますか。
山本太郎・れいわ新選組代表
山本 いまの選挙の制度では金持ちしか参戦できない。既得権益を守る仕組みだと思います。供託金は高額だし、政治そのものに金がかかる。ただでさえ人材不足といわれる政治の世界で、世の中を変えたい気持ちはあるけれど、お金がないため参戦できないのは悲劇です。やる気がある人を排除する制度は、将来的に変えていく必要があるでしょう。
私は、世の中のあり方が弱者をつくり出していると思っています。たとえば舩後さん、木村さんが質疑をする時には介助者が手伝い、「健常者」と同じように発言できる状況を周りがつくる。これが障がい者権利条約などに定められた「合理的配慮」ですけれど、一般社会でも合理的配慮がなされるなら弱者といわれる人はいなくなるでしょう。そういう意味でも、まず永田町に象徴的存在を誕生させられたのは良かったと思います。
お二人に「特定枠」で立候補してもらおうと思いついたのは、れいわ新選組を旗揚げしてからですが、その前から、障がいのある方に出ていただこうとアプローチしていたんです。でも、おそらく普通の選挙制度では国会議員になるのは難しい。クオータ(割り当て)制の導入を求める声もありますが、男女比を変えるだけでなく、障がいのある方とかいろんな当事者に入ってもらえる制度にしなきゃいけないと思います。もちろん男女比も重要です。永田町は完全なおっさん文化。だから女性にも「名誉おっさん」になろうと必死になる方がいますが、それは不健全です。時代はもう変わっているわけですから。
――参院選の比例代表に、優先的に当選できる特定枠を設けた自民党のねらいは、鳥取と島根、徳島と高知をそれぞれ一つの選挙区に合区したことに伴い、立候補できなくなる人の救済でした。この制度を障がいのある二人の議席確保に活用しようと思いついたきっかけは?
山本 本当にふと思い出したんです。この制度を導入する時、私は反対しました。合区したのは自民党で、合区の尻拭いをするための制度なんて「何をなめたこと言ってんだ」という気持ちだった。けれど、お二人と一緒に選挙をやったとしても当選の確率はかなり低い。そんな時、「特定枠があったよな」って。
選挙が始まる前の2月と6月の2回、5千サンプルくらいの電話世論調査をしたんです。山本太郎が旗揚げし、比例代表で出た場合にどうするかというような設問です。6月の段階では、200万票は固いと票読みできる結果が出ていた。選挙運動を盛り上げていけば票は伸びるはず。この200万票は特定枠を使ってお二人に差し上げようという考えに至った。その次は、票を稼げるのは私がトップだろうから、私までは入るだろう。そこからが勝負だなと思っていたんですけど、自分が落ちちゃった(笑)。
――議員にならなくても、たとえば審議会の場で意見を政策に反映させる方法もあります。ただ、そういう方法もうまく機能していない。大学入学共通テストで英語民間試験の活用が延期された問題でも高校生たちが、当事者である自分たちの意見を聞かないで決めるのはおかしいと訴えていました。やっぱり議会に当事者が必要ということですか。
山本 あらかじめ結論が決まっている審議会も多々あると思うし、都合悪けりゃ審議会が出した報告書もなかったことにされるわけですから(笑)。審議会の場で当事者の声を届けることも重要だけれど、健常者はどんな場にもいますよね。それと同じことが必要だと思うんです。
英語のテストのことで高校生が「どうして私たちの代表を入れてくれないのか」というのは、障がい者運動で「私たち抜きに私たちのことを決めないで」と訴えてきたのと同じです。なぜなかなか入れようとしないかというと、入れたらややこしいからです。結論ありきの話し合いではなくなるからですね。
「デモは怖い」という刷り込み
――国会にも審議会にも当事者が参加しにくく、声が伝わりにくいのなら、デモやストライキが活発になってもいいと思います。しかし世界価値観調査をみても、日本では請願書への署名はわりとしているけれど、デモやストライキのような抗議型の運動への参加は他の国に比べて低調です。
山本 なるほど。「お上にお願いしにいく」みたいな感覚なんですかね。でも請願といっても、国会への請願を委員会で話し合ったことはほとんどない。ほったらかしというスタンスだと思います。
それ以外の方法としてデモとか抗議活動があるわけですが、私の肌感覚でいうと、「怖い」という先入観があるのだと思います。私は2011年春に行われた高円寺の反原発デモに初めて参加しましたが、行く時はすごく怖かった。「火炎瓶が飛んだり、ジュラルミンの盾とか警棒でどつかれたり、下手したら逮捕されるかもしれんなあ」と思いながら参加したんですが、そんなことは一切ない。ものすごくピースフル。「原発なんていらん。嫌だ」と思っているのは自分一人かなって、世界に自分一人取り残されたような気分だったのが、大勢が参加していてすごく勇気づけられた。「思っていることを言っていいんだ」というのが初参加の感想でした。
恐怖感が湧いてきた理由は、おそらくテレビなんですよ。デモや抗議という時、必ず全共闘のあの場面が流れる。そうやってメディアを使いながら、萎縮させてきた部分は大きいと思いますね。一生懸命やられていた方々には申し訳ないけれど、抗議活動やデモを消極的にさせた理由として、追い詰められて先鋭化した当時の闘い方もあったんじゃないかと思いますね。あそこで日本の市民運動は大きく後退したと感じます。
デモに対して、「迷惑」という反応もみかけます。たぶん「何時に、どこに行かなきゃいけないのに」とか「車が混んでいて、うっとうしい」と考えちゃう。「おお頑張れ」って、クラクションを鳴らして応援するような空気感にならなきゃ、なかなか難しいのかなと思うんですけど。やっぱり長時間働いて、心の余裕がない中で政治のことを考えるのはハードルが高い。抗議活動にまで参加するのはかなりハードルが高い。
でも、自分たちの代弁者であるはずの議員の多くは既得権益側についているんだから。既得権益側が進めるのは企業側がよりもうかることだから、自分たち労働者の首が絞まる。声が届かないなら行動で示すのは自然なことだと思います。
減った仕事、聞いた悲鳴
――山本さんは反原発運動に参加し、その後、参院議員になるわけですが、議員にならなきゃと思ったのは?
山本 原発事故が起きて、私はやっと目が覚めるわけです。「これはもう議員にならなきゃしょうがないな」と思えたのは、市民運動だけではなかなか変えていけない。変えたいと思う人たちが政治に入り、連携しながらやっていかないと間に合わないと思ったことが一点。
もう一つは、原発や被曝(ひばく)のことを発言するようになったら、仕事が減るんですよ。仕事が薄くなっていく中で、全国で市民運動をしている方々が「うちの町に来て、自分の状況をしゃべってよ」って言ってくださった。「おかず代くらいならあげるから」って。ありがたいじゃないですか。そういうふうに1年半くらい全国を回ったんです。
そうしたら、私は原発、被曝という問題しか知らなかったんですけど、この国には貧困や労働問題があるとか、それぞれの当事者や支援者、弁護士から聞き、こんなに絶望的な状況になっていたのかとショックを受けたんです。私は16歳から芸能界に入って、経済的につまずいたことがない。「ホームレスの人は、そういう生き方を選んだ人たちなんだろう」と考えるような、まったくとんちんかんな状態だった。そうではないと気づいた時に怒りが湧いてきたんです。
1年半、全国を回る前までの怒りは、マスコミとか政府に向いていましたが、いろんな話を聞いたうえで怒りが向いたのは自分自身にだったんです。「こんな地獄が広がっていたとは知らなかった。自分はその中の一つに対しても声を上げたこともないし、行動したこともなかったな」って。無関心である自分がこの地獄みたいな世の中を作り上げたんだっていう結論に至った。
だって、無職に近い私に「なんとかしてください!」ってお願いされるんです。全国を回って、一カ所に一人はそういう方がいらっしゃる感じですね。悲鳴のような言葉を聞き続け、「これはもう直接、国会の中に言いにいくしかないだろ」ってところに行きつきました。
――仕事を失うリスクを冒して運動するのは、なかなか難しい。会社員でも、政治的な発言をすると仕事に差し障るんじゃないかと考えることが多いと思います。なぜ進んでいけたのでしょうか。
山本 私が社会的なことを発言しだした時、簡単に仕事を降ろされたんですよ。簡単に切られるんです。バチンバチンって(笑)。それで「じゃあもういいわ」と覚悟が決まったのかもしれないですね。大人はふつう、いろんなしがらみがあって生きているわけだから、自分ができる範囲で何ができるかを考えなきゃいけないけれど、私はこらえ性がなかった。
足が止まる「お金」の話
――貧困などに苦しんでいる人は「自分が努力しなかったからだろう」といわれたり、自身は考える余裕もなかったりして、「社会の仕組みがおかしい。この仕組みを正すため、政治に声を届けなきゃいけない」というところに行きつくのがなかなか難しいように思います。
山本 私は役者をやっていましたから、他人を演じるわけです。でも、まったく赤の他人を演じられるはずもなく、私の場合、まったく違う人を自分自身に引き寄せながら近づいていく作業だったんです。だから何でも自分ごととして引き寄せる癖があるのかもしれませんね。職業病というか(笑)。
一般的に考えるなら、自分がピンとこなけりゃ動けないということですね。私の場合は原発事故でした。事故前の基準よりも数値が引き上げられたことに怒りを覚えた。たとえば2011年4月、文部科学省が年間被曝量が20ミリシーベルトを超えないようにするという学校の利用基準を決めた。放射線管理区域に1年いたら5ミリちょっと。その4倍を子どもが浴びてもOKだというんです。「ただちに影響がない」なんて、のうのうという。これは晩発性の障害は否定していない。長期の低線量被曝の影響は否定していない。逆にいえば認めているという話ですね。
でも、私はいろんなことをしゃべってきましたが、一番足が止まるのはお金の話なんですよ。原発、被曝の話は興味ある人しか聞かないけれど、廃炉にいくらかかるとお金の話が出たとたんに人の足が止まる。それで「金やな」って(笑)。そこから経済を勉強しなきゃいけないと思い、その結論として、だれしも一日一回は払うであろう消費税を入り口にすれば、自分ごととして引き寄せてくれるだろうと考えました。
2013年に国会に入ってから、問題のある法案はいっぱいあったんです。特定秘密保護法とか。でも、「権力者が自分たちに不都合なことにベールをかける可能性がある」といっても、「ふーん」で終わる人が多い。安保法制について「自衛隊は米軍の二軍みたいになって、どこまでも付き合わされる可能性がある。一番危険な補給を担わされるなんてありえない」と話しても、「うーん」って感じです。自分ごととして引き寄せられない。けれども「消費税が10%になったら、1年間でどれくらい取られると思いますか。所得の低い人は1カ月分ですよ」といったら、「へーっ!」って。
長時間労働でたいした賃金ももらえないカツカツの生活の中で、政治にまで興味を持つのは非常にハードルが高い。その中でいかに分かりやすく問題点を伝え、そこを政治への入り口にしてもらえるか。「チャンスの作り方」が大切ですね。
――「生活保護で得をしているやつがいる」とか「在日コリアンには特権がある」とか、だれかを悪者に仕立てて憎しみをあおる人もいます。お金を入り口にするとしても、そういうやり方ではなく、問題の本質を考えてもらわないといけないと思うのですが。
山本 事実関係がまちがった情報が広められるのは絶対に避けた方がいい。たとえば「生活保護は不正受給者だらけ」とか。この空気感をつくったのはテレビメディアとか、自民党の片山さつきさんだと思います。自民党は生活保護費の削減を公約に掲げたこともある。彼らは「あんなにもうけているお笑い芸人の母親が生活保護を受けていてけしからん。息子が面倒みろよ」みたいな空気にするわけですよ。でも、お母さんは違法に受給していたわけじゃないし、そんなことが問題になること自体おかしい。
政治側の誘導によって、だれしも困った時には受けていいはずのものが受けづらくなった。それに対しては、たとえ面倒でも「不正受給はどれくらいだと思われますか。全体の2%程度ですよ。98%は適正受給です」と説明するしかない。面倒くさい話ですけれど。
何が面倒くさいかというと、いまの政権は「アベノミクスのエンジンをふかして」みたいな、ふんわりしたことをいうんです。あほちゃうかと思うけれど、考えてみたら野党側の話はまじめすぎて、長くて、聞いていてしんどい。伝え方って非常に重要です。でも、彼らが言っているうそをこちら側が整理して伝えようと思ったら、彼らが使う時間の4倍も5倍もかかる。それでも人の命にかかわるようなことは説明していかなきゃいけない。生活保護なら、何よりもそれがなくなったらどうなるか。「生活保護自体やめようかって話になった時、あなたは人生を勝ち続けられるんですか。あなたのためのセーフティーネットでもあるわけだから」と話していくしかないのかな。
生活苦はあなたのせいか
――山本さんは「リーチしたいのは投票を捨てた人たちだ」といっていますが、その方法は、いまのようなことですか。
山本 かなり多くの方々が生活困窮に陥っているか、陥りそうな状態にあるのがいまの日本です。厚生労働省の国民生活基礎調査をみても57.7%が生活が苦しい、シングルマザーは8割が苦しいといっている。これだけ多くの人が苦しんでいるのに、その人の努力が足りないせいにするのはむちゃくちゃな話。構造上の問題以外にありえない。
だから「あなたの生活が苦しいのを、あなたのせいにされていないですか」ってところが一番のポイントだと思っています。一人の人間が頑張ったってたかが知れているから、支えあいの社会をつくる。困窮に陥らないために政治や社会があるんだろって話です。「あなたの生活をよくしようと思ったら、消費税を下げる以外にないじゃないですか。消費税が上がる前には駆け込み需要で物を買う。上がったら買いづらくなるからでしょう。逆に下がったらどうなりますか。いままで我慢していたものを買いますよね。食べたかったものを食べようと思いますよね」とか、いまよりも生活が楽になるっていうのが一番重要なんですよ。
バブル経済がはじけて、人件費の削減や雇用の流動化が行われ、労働の対価を十分にもらえない制度がつくられてきた。加えて2018年には出入国管理法を改正し、より安い労働力として外国人を大量に長期間入れようということになった。それではみんなの賃金は上がらないどころか、実質賃金は下がり続けている。そこに消費税を何回も上げられ、強制的に物価を上げていったら、生活が苦しくなるのはあたりまえじゃないですか。「あなたの生活はまちがった経済政策で苦しくなっている」ってことなんです。
戦争や紛争をしていない140カ国以上のデータをもとに、2016年までの20年間の政府総支出の伸び率と、その間の名目GDP(国内総生産)の伸び率をみると、日本はそのどちらも堂々の世界最下位。投資が最低だからリターンも最低になるんです。国がしかるべきところに投資することで底上げされるはずなのに、それが行われてこなかったという現実をいかに手短に伝えるか。どういう方法で生活を楽にしていくかを伝えるかが、野党側が一番やらなきゃいけないことだと思います。
――日本でも昔は安保闘争などがあったけれど、なかなか路上に現れなくなりました。私たちは、政治に関心を持たないように仕向けられてきたんじゃないでしょうか。たとえば高校生の政治活動は長い間禁じられてきた。公職選挙法では運動方法が厳しく規制され、ネット選挙運動を除けば非常に参加しにくい。「政治に関心を持つな。選挙運動に関わるな。でも投票はしろ」と求められてきたんじゃないか。山本さんは、その中でも「こういう運動ならみんなもできるよ」と聴衆に呼びかけていたと思います。
山本 選挙中、私たちはテレビにほぼ取り上げられませんでした。はなっから、そうなるだろうと予測していたんです。であるならば、草の根で広げてもらう以外に方法がない。
私は市民運動とかかわってきましたが、みんな自分の伝えたいこと、得意なことをとにかくしゃべる。私が一番そうだったのかもしれません。たとえば10分の時間がある時、原発の危険性とか被曝をいかに避けなきゃいけないかとか、自分の知っていることを全部詰め込む。それって、そんな話を考えてみたこともなかった人にはちょっとした暴力、ハラスメントなんです。たぶん3分過ぎたあたりから目の前にいなくなっている。
なので、ストライクゾーンが広い消費税を入り口に話し、「山本太郎でもわかったんだから、中学生でもわかる。私が話している内容を採用できると思ったら、周りに伝えてほしい。スピーカーになってください」と求めてきました。草の根なので、一人ひとりにスピーカー、スポークスマンになっていただかないと広がりませんから。
ガス抜きするテレビメディア
――テレビに取り上げられなかったという話がありましたが、メディアや一人ひとりのジャーナリストへの注文は?
山本 私は昔、仕事をしていた場所がテレビだったので、テレビのあり方はよく分かっているつもりです。なので、企業側にこれほどインセンティブ(優遇措置)を与える政権に関して、踏み込んだ報道はなかなか難しいと思う。
一番わかりやすい例は、みんな日本の政治より韓国の政治に詳しいってことですね(笑)。「これだから韓国は!」っていっているんですけど、「いやいや、似たようなことは国内でも起きているんですけど」って話で。国内政治より韓国政治でガス抜きをしているのがテレビメディアだと思います。けれども、それは悪いことなのかといわれると「商売でやっているんだから、商売の邪魔になることをやるわけがないだろ」というのが私の感想です。広告主があってはじめて成り立つんだから、広告主に最大限インセンティブを与えてくれる政権をバッサリ切りにいくのは難しい。
――法人税の引き下げなどでうるおっている大企業がスポンサーなのだから、テレビメディアには政権批判は難しいという意味ですか。
山本 安倍さんは2013年2月の施政方針演説で「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します」といいましたが、その努力だけはされたんですよ。企業の利益を追求し、チャンスを与えるルール改正、立法を続けてきました。小泉政権とか、これまでの政権もそうだったのかもしれませんが。
そういった中でも、現場の方々が闘ってくださっているのはよくわかっています。たとえばテレビで使われるほんの数秒に意味合いを込めるとか。テレビ局でも、学校でも、どの現場でも何かを勝ち取ろうと闘うことを諦めてほしくない。でも、自分の立場も大事にしながらで結構です。むちゃしすぎると、いられなくなりますからね(笑)。
「5%」に乗れぬなら独自に
――これから野党で共闘しようという考えだと思いますが、どう合意形成を図り、足並みをそろえていくのでしょうか。
山本 ボールはこちらにはないと思います。こちらからは「野党が塊になって、消費税を5%に下げるという旗を揚げられるんだったら一緒にやります」という条件を出していますから。乗れないんだったら勝手にやるしかない。
――「8%は譲れない」という党とは合意は難しいということですか。
山本 彼らは、過去に自分たちが決めたことを撤回できないってことですね。それが難しいのならば「消費税を上げていくのはしかたがない」という旧体制側と、「消費税自体、取り方としてありえない。財源・税源は消費税だけじゃない」という者たちとの戦いです。それぞれの財源でつくられていく社会は完成図が全然違う。そう考えたら、これ以上もたもたしている暇はない。新勢力として党勢拡大をめざす以外ないなと思っています。
※本論考は朝日新聞の専門誌『Journalism』12月号から収録しています。同号の特集は「怒り」です。
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