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2019年12月20日 12時06分
政府は、東京五輪の観戦チケットに「総理枠」や「官邸枠」があるか尋ねる質問主意書に対し「お答えすることは困難」とする答弁書を閣議決定した。「ある」「ない」ではなく、「困難」。政府は「桜を見る会」でも、同種の枠について曖昧な答弁を繰り返している。一体どう考えたらいいのか。 (榊原崇仁)
◆組織委は丁寧に回答「枠はない」
質問主意書は立憲民主党の田島麻衣子参院議員が提出。「五輪チケットの販売総数は」「何%が公式スポンサー及び関係企業に渡るか」と尋ね、続けて「総理枠、官邸枠、議員枠として扱われているチケットはあるか」とただした。
しかし、十七日に閣議決定された答弁書はほぼ門前払い。販売枚数こそ「未定であると五輪の組織委員会から聞いている」と答えたが、「関係企業」「総理枠、官邸枠、議員枠」は「意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である」と記しただけだった。
消化不良なので五輪組織委に尋ねると、広報部の井戸愛係長が「質問主意書に記された枠は一切ありません。チケットは全面的に販売という形を取り、無料の割り当てがあるわけではない。首相や議員といった個人の要望を受けて販売することもない」と丁寧に答えてくれた。
◆「関係者販売」は2割が通例
ただ、自治体からチケット販売の要望は聞いており、それを国が集約することもあるという。「地元の盛り上げや子どもたちの観戦などに活用するためで、今春に始まった一般販売に先駆け、聴取を始めている。必要な枚数を聞いて販売するが、誰が来場するかまでは把握していない」
こうした行政を介した販売は、スポンサーやメディアなどの分と合わせて「関係者販売」と呼ばれる。井戸氏は「過去の大会では、関係者販売と海外で販売する分を合わせ、全体の約二割を占めている。東京五輪でもそれを上回ることはないと考えている」と語った。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は「五輪はスポンサーの力が絶大。良い席のチケットが多く渡る。その使い道はスポンサー次第。政治家が企業関係者を通じ、チケットを入手することはあり得るのでは」と解説する。
会計検査院によれば、昨年度までに国が東京五輪関連事業に支出した費用は一兆六百億円に上る。谷口氏は「他のスポーツイベントと比べても桁違いの国費が投入されている。政府は国民が抱く疑問に対して説明を尽くすべきだ」と話す。
◆“安倍政権らしい”説明放棄
いいかげんな政府答弁で思い出されるのが、首相主催で公費で開く「桜を見る会」だ。約一万八千人が参加した今年は、各省庁と自民党の推薦枠がそれぞれ約六千人あり、首相の推薦枠、つまり首相枠も約千人あった。私物化と非難される中、政府は首相枠の名簿は「廃棄済み」と釈明。マルチ商法の元経営者が首相枠で招かれていた疑惑が生じても「調査不要」と議論を避けた。
出席していたと指摘された反社会的勢力については、菅義偉官房長官が記者会見で「(定義が)一義的に定まっているわけではない」と回答。今月十日には、「統一的な定義は困難」と閣議決定し、説明を拒んでいる。
「困難」で片付ける政治姿勢について、駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「調べれば分かることはあるはずなのに説明を放棄し、議論を一方的に断っている。野党であっても国民の代表。彼らの質問に耳を貸さないというのは、民主主義を機能させる気がないということ。いかにも安倍政権らしい」と語る。
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