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神戸大大学院教授木村幹氏 日韓関係はICJ提訴で諮ればいい 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/265799
2019/12/09 日刊ゲンダイ
木村幹氏(C)日刊ゲンダイ
戦後最悪の日韓関係は改善に向かうのか、さらに泥沼化するのか。安倍政権が発動した対韓輸出規制に反発した文在寅政権は報復措置としてGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を通告したものの、土壇場で条件付き継続に舵を切った。すると今度はその経緯をめぐって小競り合い。韓国政治の専門家は日韓の展望をどう見ているのか。
◇ ◇ ◇
――GSOMIA継続の背景に「米国のプレッシャーがあるのは明確だ」と指摘されています。
文在寅政権がGSOMIA破棄に踏み込んだ目的は、米国を日韓問題に介入させ、関係を悪化させた日本の責任を問おうとの計算からでした。最悪でもケンカ両成敗に持っていけると考えていた。ところが、目算は外れ、米国は経済問題で安全保障を犠牲にするのはけしからんと怒り、韓国が叩かれるようになった。
――それで翻意を?
11月23日午前0時の失効期限直前、保守系の「朝鮮日報」(21日付)が特ダネを流しました。在韓米軍の駐留経費交渉に絡め、米国側が求める負担増を拒否した場合、1個旅団の撤収を検討しているとの内容で、情報源はワシントンの外交筋。朝鮮日報は国防総省と比較的近く、GSOMIA期限が迫る中で意図的なリークだと考えられた。米韓関係を悪化させるなら米軍は削減、嫌ならいい加減にしろとのメッセージです。韓国側が致命的ミスを犯して勝手にコケただけですので、日本側の首相が安倍さんでなくても同じ展開になったでしょう。「安倍外交の勝利」というより「文在寅外交の敗北」です。
――韓国側はGSOMIA継続とセットでWTO(世界貿易機関)への提訴手続きを中断。輸出管理をめぐる貿易当局の協議が再開されました。
日本側は3年間協議がなかったことを問題視して措置に踏み切った。それを韓国側が国際ルール違反だからWTOで白黒つけると言い出し、協議ができなかった。今回、韓国側が提訴をあきらめて議論すると言い出した以上、日本側は対話を拒めません。それを韓国側は日本が譲歩したと国内的に解釈し、説明しているのが実態です。
――安倍首相の「なにも譲っていない」などの発言が報道されて大統領府が反発し、日本側が謝罪したしないで大モメ、水掛け論になっています。
対話の停滞が予想されます。日本は韓国側が積極的に対応しない限り譲歩したくない、韓国は何もしなくても日本が譲歩したことにしたい。GSOMIA破棄を撤回した文在寅政権は顔を立ててほしかった。これで韓国の立場は硬化し、両国の不信感はさらに拡大するでしょう。忘れてはならないのは、日本側が本来求めていたのは元徴用工問題での善処だったということ。韓国側が誤って切ったGSOMIAカードで勝っても、元徴用工問題の解決には直接つながらない。韓国側がこの問題で何も提案していないのに、今月下旬の日中韓首脳会議で日韓首脳会談も調整されている。いつの間にか立場が変わっています。安倍首相は元徴用工問題で意味ある解決案が示されない限り、文在寅大統領とは会わないと言ってきたのに。
ライバルが炎上する横でガッツポーズ
――大阪G20首脳会議でも会談を拒否しました。
日本側がいつの間にか旗を降ろした形になっている。ただ、再び感情的な局面に入ったのに、安倍首相は首脳会談に臨めるのでしょうか? 今の状況を「ル・マン」に例えれば、スタート直後にライバルが壁に衝突し、炎上している横で自分ひとりがガッツポーズを決めているようなもの。ゴールはまだ先だし、23時間以上たっぷり残っている。
先月4日に11分の“対話”(韓国大統領府提供・聯合=共同)
元徴用工財団案は実現性なし |
――文喜相国会議長が元徴用工問題の「解決法案」をまとめました。日韓の政府と企業が創設する財団を通じ、元徴用工ら1500人に慰謝料約3000億ウオン(約277億円)を支給すると。
実現性はほとんどないと思います。文喜相議長は与党の「共に民主党」所属ですが、政府の意向をどこまで反映しているか分からないし、与党支持者の多くも反対している。日韓慰安婦合意に基づく財団を解散させた政権下で新たな財団をつくると言われても、信用はできない。何より、韓国政府も韓国社会も元徴用工問題を解決する準備が何もできていません。文喜相案は対象者を原告や訴訟予定者を念頭に1500人としているようですが、意味のない数字です。旧大蔵省の資料では大戦時に日本へ渡った労働者だけで74万人以上とされる。しかも、大法院判決で認定された「徴用工」の範囲は極めて広い。植民地支配を違法として個人的請求権を認め、日本企業に支払いを命じた慰謝料は遺族の継承が可能。となると、74万人の遺族はどれほど膨らむのか。
――際限がなさそうです。
大法院判決の直後、李洛淵首相を中心にタスクフォースチームが立ち上がりかけたのですが、頓挫した。理由は簡単です。政府が元徴用工に慰謝料を支払うと言った瞬間、新たに手を挙げる人が出てくる。訴訟は証拠集めや告訴状提出など、高齢者には難しい作業がある。それに、裁判所は事実認定をキッチリする。しかし、政府はそこまで厳しいハードルは設けないでしょう。日本では弁護士が手付金不要で過払い金請求を請け負ったりするじゃないですか。最高裁判決が確定し、過払いの証拠があれば勝てるので成功報酬だけでいいと宣伝している。元徴用工についても似たような状況が既に起きています。
――同じ理屈が通ります。
まして文喜相案は「2+2+α」で、支払いを拒む日本の政府と企業が含まれる。唯一可能性があるとしたら日本側をカッコに入れること。韓国の政府と企業が拠出して財団を走らせ、民間寄付でαを集めて既成事実化し、日本の出方を待つ。もっとも、韓国国民からなぜ税金を投じるのかと不満が出るでしょう。だから韓国の文脈だけから見ても現実味がない。一種のアドバルーンなのでしょう。
――日韓が納得する解決策はあるのでしょうか。
最大の問題は両国の最高司法機関の判断が分かれていることです。最高裁は1965年の日韓請求権協定で解決済みと判断し、大法院は慰謝料請求権は認められるとの見解。法律の解釈を調整しない限り、どこまで行っても裏交渉でしかない。請求権協定第3条でうたう仲裁委員会を設置するか、ICJ(国際司法裁判所)に提訴したらいいと思いますが、日本政府はそれを避けています。
――当初はICJ提訴が浮上していました。
最近はあまり言わなくなりましたよね。元徴用工問題は日韓基本条約の締結協議で具体的に議論されたので日本側が勝つ余地が大きいですが、大法院は植民地支配を違法としているので請求権協定全体の解釈を問う展開も想定される。となると、慰安婦問題なども入ってくるでしょう。国際社会での旗色は決して良くないので日本側は勝負したくないのかもしれません。もちろん、韓国側もイチかバチかの勝負には出にくい。
歴史の当事者しか植民地問題を解決できない
――関係改善の糸口をつかめません。
韓国政府が請求権協定の解釈を92年に変更してから日韓関係は度々こじれていますが、これまでとの明らかな違いは両国の政府よりも世論がこのままでいいと思っていること。世論調査で安倍政権の対韓姿勢について聞くと、政権不支持層でも過半数が評価する。文在寅政権の対日姿勢を「あれは左派だから」という人がいますが、右派が日本に融和的とも言えない。韓国の世論調査で文在寅政権の対日外交について尋ねると、「強硬」「よくやっている」「弱腰」がおよそ3分の1ずつ。政権支持者は「よくやっている」を選び、残りは右派で、その半数が政府は「弱腰」に過ぎると見ている。革新から保守に政権交代しても対日融和に傾くとは考えにくい。
――先が見えません。
非常に新しく、非常に深刻な状況です。日韓は互いに言いたい放題で、何を議論しているか分からなくなっている。植民地問題が火を噴き続けているのは、日本人が謝らないからでも、韓国人が執念深いからでもない。韓国独立の瞬間に植民地支配の清算をきちんとできなかったからです。先の大戦で日本が敗れ、朝鮮半島は米ソの占領下に入り、南北に分離独立した。そして、日本と韓国は植民地支配に関わる問題を曖昧にしたまま今に至っている。その時代を生きた当事者は真剣に植民地問題の解決を目指しますが、当時を知らない世代は、好き勝手に言いがち。今の日韓関係がまさにそう。だから僕はICJに諮ればいいと思う。議論が整理されるし、少なくとも今よりは世論も静かになる。判決まで至らなくていいんです。負けそうになった方が下りますから。裁判は使いよう、ですよ。
(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)
▽きむら・かん 1966年、大阪府生まれ。京大大学院法学研究科修士課程修了、博士(法学)。愛媛大法文学部助手や講師などを経て現職。「朝鮮/韓国ナショナリズムと『小国』意識」「韓国における『権威主義的』体制の成立」「日韓歴史認識問題とは何か」など著書多数。
【注目の人 直撃インタビュー】神戸大大学院教授木村幹氏 日韓関係はICJ提訴で諮ればいい https://t.co/L89NfGCjwu #日刊ゲンダイDIGITAL
— 日刊ゲンダイ (@nikkan_gendai) 2019年12月8日
注目の人直撃インタビュー
— KK (@Trapelus) 2019年12月5日
神戸大大学院教授 木村幹
【日韓関係】
世論が関係修復を求めず互いに言いたい放題
提訴して冷静になった方がいい
- ライバルが炎上する横でガッツポーズ
- 元微用工財団案は実現性なし
- 歴史の当事者しか植民地問題を解決できない
(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/QxTeTUjG0V
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