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天皇陛下が国内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」がきょう行われる。陛下と上皇さまから「費用は極力簡素に」との意向が示されたため政府は費用削減に取り組んだ。しかし費用総額は平成の代替わり時の前回と比べて3割増の163億円に上る見通しだ。
政府が前もってこの日を「国民の祝日」とし、国事行為として巨額の公費を投じて全国的な祝賀ムードを演出することの意味を冷静に考える必要がある。
この儀式で天皇陛下は天孫降臨神話に由来する玉座に立ち「お言葉」を述べる。首相ら三権の長は仰ぎ見る形で万歳を三唱する。新憲法下で初めて行われた前回、国民主権や政教分離の原則に反しており憲法違反―との指摘があった。しかし今回、十分な憲法論議がないまま前例を踏襲することとなった。
前回は、明治後半期に制定し戦後廃止された登(とう)極(きょく)令(れい)を基に催された。皇室典範では皇位継承時に「即位の礼を行う」とだけ規定されているためだ。
来月行われる大嘗祭(だいじょうさい)とともに即位儀式は、室町時代から江戸時代途中までの220年余りは、京都の混迷や天皇家の財政難のため滞った。しかし明治に入り、天皇を元首とする国家づくりのために国の一大イベントとなり、大規模化した。それを政府は前回同様、今回も踏襲することを早々と打ち出した。
大戦前の即位儀式は、天皇の権威を内外にアピールし、国民の崇拝意識を高め国威を発揚する狙いがあった。
沖縄は天皇の権威の犠牲になる歴史を歩んだ。琉球併合に至る過程で、明治政府は、中国皇帝が琉球国王を任命する冊封をまねて天皇も任命権があるかのように振る舞い、天皇の命令に従わない琉球を「処分」した。沖縄戦では皇民化教育の下で動員された多くの住民が犠牲になった。戦後は米国による軍事占領を望む「天皇メッセージ」が米側に伝えられ、米国統治下に置かれた。
こうした歴史を考慮してか、上皇さまは沖縄への思いが深いといわれる。
一方で、天皇個々の思いや行動とは別に、権威を高めることにより国民統合の仕組みとして機能する象徴天皇制の在り方を考える必要がある。権威の高まりは時の権力者に利用される危うい面もある。
豊見山和行琉球大教授は「象徴天皇制が持っている仕組みや機能が、一面では政治的問題や軍事基地の矛盾を見えなくしてはいないか」と本紙の識者座談会で述べた。沖縄の民意を無視して新基地建設を進める政府の圧政を埋め合わせているとの見方は説得力がある。
即位儀式が持つ政治的意味を、主権者である国民の目線と、天皇制から犠牲を強いられてきた沖縄の目線の、両方で冷静に捉える必要がある。象徴と言いながら過度に権威を高める手法は警戒すべきだ。
琉球新報社説 2019年10月22日
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1012326.html
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