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米国にすべてを奪われた日米FTA協定合意案
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2019年9月27日 植草一秀の『知られざる真実』
安倍首相とトランプ米大統領が9月25日午後(現地時間)、米国のニューヨークで開かれた首脳会談で、日米FTA協定についての共同声明に署名した。 合意文書の署名はできなかった。 合意文書の署名は10月上旬に先送りされる予定だ。 安倍内閣は10月4日招集の臨時国会に日米FTA協定案を提出予定。 臨時国会での承認を得る方針だ。 安倍首相は 「両国の消費者あるいは生産者、勤労者全ての国民に利益をもたらす、両国にとってウィンウィンの合意となった」 と話したが、「ウィンウィン」という言葉の意味を知らないようだ。 牛肉などの米国産農産物への関税はTPP水準に引き下げられる。 しかし、日本が米国に輸出する自動車などの関税撤廃は見送られた。 そもそも、安倍内閣はTPP交渉への参加を米国に認めてもらうために、法外な譲歩を示した。 TPP参加で日本が唯一得ることができるメリットが自動車輸出の関税撤廃だった。 現在、普通自動車には2.5%、売れ筋のSUV等の大型車には25%の関税がかけられている。 この関税を撤廃させることがなければ、日本は海外生産者に日本市場を開放するだけになる。 米国にとって自動車産業が重要なのと同様に、日本にとっては農林水産業が重要だ。 日本の主権者の利益を考える対外交渉をするなら、仮に農産物輸入の関税を引き下げるなら、自動車輸出の関税を引き下げることを要求するのが当然のことだ。 米国が自動車関税を「聖域」として温存するなら、日本は農産品重要5品目の関税を「聖域」として守って当然だ。 ところが、TPP交渉に参加することを認めてもらう際に、 普通自動車については14年間、SUVについては29年間、関税率を一切引き下げないことを日本政府が受け入れた。 TPP交渉が売国交渉であることは、この点を見れば一目瞭然だ。 「ハゲタカのハゲタカによるハゲタカのための条約」 がTPPの正体だった。 安倍内閣はハゲタカの利益を極大化するためにTPP交渉への参加を強行した。 2012年12月の総選挙の際に、 「ウソつかない!TPP断固反対!ブレない!日本を耕す自民党!!」 と大書きしたポスターを貼りめぐらせて選挙を戦った安倍自民党が主権者との約束を踏みにじって国益放棄の売国TPPに突き進んでいった。 それでも、このときの決定は、 普通自動車は25年目に、 SUV等は30年目に、 関税を撤廃することとされた。 また、TPP協議で、自動車部品については、8割以上の品目で即時に関税が撤廃されることになった。 売国協定ではあるが、遠い将来には日本から米国への自動車輸出に対する関税が撤廃されることが確定した。 その後、米国はTPPから離脱した。 安倍首相は、米国を含むTPPの最終合意を完全に確定するために早期批准が必要だと訴えて、2016年末に国会でのTPP批准を強行した。 米国でトランプ政権が発足すれば、米国がTPPから離脱する可能性が限りなく高かった。 「安倍首相はTPP最終合意の見直しは行わない。米国が離脱したら、米国をTPPに回帰させる。」 と国会で繰り返し明言した。 実際に、米国はTPPから離脱した。 すると、安倍内閣は米国のTPPへの回帰を求めず、TPP最終合意の改変に突き進んだ。 何もかもがこのありさまなのだ。 そのTPP改変を強引に推し進めたのが安倍内閣である。 牛肉のセーフガード発動の基準は、米国を含む数量で定められていたから、米国が離脱した以上、米国相当分を圧縮する必要があった。 各国が自国の損失を回避するために細目の変更を行ったなかで、日本だけが細目の見直しを行わずにTPP改変を強行した。 今回の日米FTAでは、自動車関税の撤廃が消えた。 安倍内閣は制裁関税発動の可能性が言葉の細工で限定されように見せかけられることをもってウィンウィンと強弁しているのかも知れないが、実態は “Winner-takes-all” でしかない。 その制裁関税についてすら、米国のライトハイザー通商代表は9月25日、「現時点では大統領も232条で日本に何かすることはまったく意図していない」と説明し、将来にわたり発動しないとは確約していないのだ。 日米FTAは1958年の日米修好通商条約以来の不平等条約である。 |
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