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安倍政治と不毛の7年
http://hunter-investigate.jp/news/2019/09/-201224122798.html
2019年9月13日 09:55 僭越ながら HUNTER(ハンター)
安倍晋三という政治家が首相として再登板を果たしたのが2012年(平成24年)12月。もうじき7年が経つ。第1次政権を含めての通算在職日数は、佐藤栄作の2,798日を超えて戦後最長となった。
この間に行われた6度の国政選挙はすべて負けなし。「一強」と言われる政治状況は盤石で、崩れる気配さえない。
そうした中での第4次安倍再改造内閣の発足。改めて「安倍政治」について考えた。
■色褪せた「アベノミクス」
アベノミクスとは何だったのか――。聞かれて即答できる国民が、どれほどいるだろう。最初は“大胆な金融緩和” “機動的な財政出動” “成長戦略”という「3本の矢」に過剰な期待が集まったが、成果が確認される前に「新3本の矢」が登場した。合計6本の矢について、的のどこに当たったのかを説明できる人は、永田町にも少ないのが現実だろう。そもそも、すべての矢が真っ直ぐ飛んだのかどうかさえ分からない。
例えば、一本目の矢である金融政策は早い時期に失速し、的に届いてもいない。黒田日銀総裁は「異次元の金融緩和」によって2年間で物価上昇率を2%にまで押し上げると明言していたが、この計画が破綻していることは周知の事実となっている。
安倍が描いた成長戦略も、間違いだったことは明らかだ。安倍は首相再登板直後、政府が打ち出す「国家戦略特区」などの政策によって『1人当たりの国民総所得を10年後に150万円以上増やす』と明言した。7年経ってどうなったのか――?残り3年で、この目標を達成することは100%不可能だろう。
アベノミクスの矢が実際に飛んだかどうかについては、給料が一向に上がらないなか、増税や物の値上げに苦しんできた国民が一番知っているはずだ。しかし善良なる日本人は、国政選挙の度に聞かされる「アベノミクスは成果をあげている。もうじき津々浦々に恩恵が行き渡る」という安倍の言葉に淡い期待を寄せ、自民党に票を投じては“一強”の継続に力を貸してきたのである。
■最低の外交で四面楚歌
一衣帯水の国である韓国と、溝が深まるばかりの日本――。ようやくテレビの嫌韓特集に国民の批判が向けられるようになったが、ここまで関係をこじらせた責任が政府にあるのは言うまでもない。
徴用工問題を巡る韓国の態度には確かに国際法上の疑義がある。しかし、最初に隣国の感情を逆なでしたのは、慰安婦問題などで国の責任を認めようとせず、自分たちの歴史認識を相手国にまで押し付けようする安倍首相やそのシンパの言動ではなかったのか。従軍慰安婦や南京大虐殺について反省の言葉を発した人を「自虐」と批判し、「左翼」と蔑んで攻撃する歪んだ愛国者が増え過ぎたことも、他国からみれば脅威なのである。
誰が言い出したのか分からないが、「外交の安倍」という言葉がある。とんでもない間違いだ。韓国との関係悪化については述べてきた通りだが、北朝鮮やロシア、さらには中国との外交もすべて失敗に終わっている。
安倍が「私の内閣で必ず解決する」と断言した拉致被害者の問題には何の進展もないまま、北朝鮮からは“飛翔体”がひっきりなしに日本に向けて飛んでくる。ロシアは、4島どころか1島も返すつもりがない。中国は、はなから日本を相手にしていない。
戦後、周辺諸国とこれほどまでに関係を悪化させた政権はなかった。安倍が外遊するたびに積み上げてきたのは、「信用」ではなく何兆円もの血税。バラマキで恩を売ったと考えていたようだが、トランプにすり寄る日本を、助けようとする国は出てこない。安倍政権の外交が、日本を四面楚歌の状況に追い込んでいることを自覚すべきだろう。
■復興の現実
来年はいよいよ東京五輪・パラリンピック。思い出すのは、五輪招致にあたった安倍が、最終プレゼンの際に全世界に向かって発信した言葉である。メルトダウンした福島第一原発の状況について、こう断言していた。
組閣直前の記者会見で、退任する原田義昭環境相兼原子力防災担当相が本音をもらした。「(福島第一原発から出た汚染水を)思い切って放出して、希釈する他に選択肢はない」――つまり、汚染水はコントロールされていないということだ。
福島第1原発の敷地内に設置されたタンクにたまり続けている汚染水は、処理されているとはいえ放射性物質トリチウムを含んでいる。汚染水を保管するタンクは、2022年には満杯になる予定だというが、解決策は示されていない。“コントロールできないから海に放出”――五輪の最終プレゼンから何年も経ったが、フクシマの、これが現状なのである。震災復興も道半ば。東京だけが開発ラッシュで賑わっている。
■不毛の7年
「安倍政権の7年間で日本はどう変わったか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろう。暮らしが良くなったと実感している日本人が、どれほどいることか――。外交で成果を上げている、とはとても言えまい。震災復興も不十分だ。「1億総活躍」だの「地方再生」だのと、目先を変えるためにキャッチコピーだけがコロコロ変わったが、よくよくみると「不毛の7年」こそが実態だろう。
一方で、嘘やでっち上げの政治がまかり通る世の中になり、「忖度」という言葉が市民権を得た。誇れる成果など何一つないはずなのに、安倍は自衛隊のための改憲に前のめりだ。こんな政権に、5割前後の支持率があることが不思議でならない。
(中願寺純隆)
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