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9月 11, 2019 日々雑感(My impressions daily)
<成算のない外交交渉など、みせられる国民のほうがつらい。北方領土問題がそれだろう。
先週、ロシアで行われた安倍首相とプーチン・ロシア大統領との会談、案の定、領土問題で何の進展も得られなかった。大統領は強硬姿勢を崩さぬばかりか、日本の神経を逆なでするような言動を弄した。日本側が、国後、択捉返還を事実上断念するという大きな譲歩をしているにもかかわらずだ。11月に再び首脳会談を行うというが、歯舞、色丹2島の返還すら困難な状況になってきた中で、日本側にどんな打開案があるというのだろう。従来の方針を放擲した昨年の「シンガポール合意」は取り返しのつかない事態をもたらしたというべきだろう。
首脳会談の朝、色丹の企業に祝辞
日ロ首脳会談は9月5日、東方経済フォーラムが開かれたロシア・極東のウラジオストクで行われた。
日本外務省の発表によると、両首脳は平和条約問題について、未来志向で作業をすることを確認。交渉責任者である両国の外相に対して「双方が受け入れられる解決策を見つけるための共同作業」を指示したという。
これだけでは領土問題に進展があったのか判然としないが、プーチン大統領は、会談後のフォーラム全体会議で、1956(昭和31)年の日ソ共同宣言をもとに平和条約締結をめざす従来の考えに言及した。その一方で、「この問題は2国間だけに関係するものではない。軍事、安全保障に関する問題もある。日本の米国を含む第3国に対する義務を考慮しなければならない」と述べ、領土問題解決には日米安保条約が障害になるという認識をあらためて強調した(9月6日付け読売新聞)。
大統領はこれに先立って9月5日未明、ロシア企業が色丹島に建設した大規模水産加工施設の稼働開始式典にビデオ中継で参加、「給料のよい雇用が極東で生まれることは重要だ」と祝辞を送った(同)。
これから首脳会談を行うというその朝に、自らが不法占拠を続け、返還要求をはねつけ続けている日本の北方領土での工場建設を祝うというのは、挑発、いやがらせといわれてもやむをえまい。
8月には同じ北方領土の択捉島をメドベージェフ首相が訪れ、開発事業を視察している。
こういうロシア側の態度を見る限り、あらためて先方には領土を返還する意思がみじんもないと判断せざるをえない。
首相はリップサービスにつとめたが
安倍首相は会談で、大統領がビデオ祝辞を送ったことに対して、「我が国の立場を伝達した」(外務省)というが、強く抗議したのか、日本の立場を言っておく程度だったのか明らかではない。抗議なら抗議と、外務省は説明するだろう。
首相は、フォーラムで「ゴールまで、2人の力で駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」(9月6日付け、毎日新聞)とプーチン大統領に呼びかけた。ずいぶんと甘い言葉だが、首相は、クリミア併合を契機にG8サミット(主要国首脳会議)を追放されたロシアの復帰に賛成する意向も表明した。これに対する大統領の言葉が、すでに触れた日米安保に関する大統領の発言だった。
こんな中で11月にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて再び会談するというが、河野外相はどんな準備作業をするのだろう。絶望的な状況であるにもかかわらず、日本側が交渉をずるずる続けるのはもはや、みていて痛々しいとすら感じる。
不法占拠されている島へ観光ツアー
首脳会談では、北方領土での共同経済活動について、「精力的に取り組んでいくことを確認した」という。領土問題が解決する見通しが立たない中で共同経済活動だけを続けるのは理解できないが、もっと驚いたのは、その一環として北方領土への「観光パイロットツアー」の10月実施で合意したことだ。
不法占拠されているところに物見雄山にでかけること自体、議論はあろうが、それは置くとして、日本の領土である北方4島を訪問するのに、なぜロシア側と協議する必要があるのか。「日本は北方4島を領土をロシア領と認めている」と思わせることにつながらないか。もちろん、「日本の法的立場を害するものではない」ということを先方に明確に伝えたうえでのことだろうが、相手はロシアだ。つけこまれるようなことは避けたほうがいい。このツアーを「悪い冗談」と評したメディアがあった(9月6日付け産経新聞「主張」)が、そのとおりだろう。
昨年のフォーラムが方針転換の原点
「東方経済フォーラム」は毎年開かれており、昨年はプーチン大統領が、「前提条件なしの平和条約締結」を提案、これが伏線となって、昨年11月のシンガポール合意につながった。
合意は、1956年の「日ソ共同宣言」を交渉の基礎として加速させるという内容で、「日ソ共同宣言」は、戦争状態の終結、歯舞、色丹両島の日本への引き渡しなどが盛り込まれている。
「国後」「択捉」両島の名前はないため、これを基礎の交渉することは、「2島返還」を意味すると受け取られた。実際、安倍首相も国会などで「私たちの主張をしていればいいということではない。それで(戦後)70年間まったく(状況は)変わらなかった)と述べ、「4島返還」要求を放棄して「2島返還」へと舵を切ったことを事実上認めた。日本政府の一貫した要求からの大転換であり、本来なら国会を解散して国民の信を問う必要があるくらいの大問題だった。
共同宣言には国後、択捉の名こそ入らなかったが、その交渉過程で交換された松本俊一全権(当時)とグロムイコ外務次官(同、のちのソ連外相)との書簡で、間接表現ながら両島の返還交渉に言及されている。時代を下って1993(平成5)年の細川護熙首相とエリツィン・ロシア大統領(いずれも当時)による「東京宣言」にも帰属を解決すべき問題として、4島が明記された。
シンガポール合意はこうした事実に故意に目をつぶっているといわざるをえない。
ロシアの強硬姿勢の背景に内政問題
安倍首相は、方針変更によってロシアが2島の返還に応じてくると楽観視していたようで、「私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つ」と大見えを切っていたが、事態は全く違った方向に進んだ。
2019年に入ってから、ロシアは返還どころか、態度をさらに硬化させた。
1月にモスクワで行われた外相会談でラブロフ外相は、北方領土について「第2次大戦の結果、ロシア領になった」などと歴史をねじ曲げる暴論を披歴。プーチン大統領も3月、ロシア紙のインタビューに対し「(領土交渉の)勢いは失われた」「日本は米国との(安保)条約から離脱しなければならない」などと見当違いの不当な要求を突きつけ、「2島返還」による解決が幻想であったことを日本側に思い知らせた。
ロシアがかたくなな姿勢に戻ったのは、国内経済の低迷などでプーチン政権への国民の不満が高まっていることがあると指摘されている。厳しい国内事情が領土という大きな問題での妥協を許さないということであり、今後もこうした姿勢を貫いてくると予想される。
奪われたものを取り返すのが唯一の解決
産経新聞は9月6日付け「主張」で、「どうして席に着いたのか」という見出しで、「安倍首相は原点に戻って日本固有の領土である北方4島すべての返還を目指してもらいたい」との見解を伝えたが、正鵠を得ているというべきだろう。「主権放棄」に等しい国後、択捉の断念から従来の正当な方針に立ち返るにはいい機会だろう。そのうえで、「プーチン後」をじっくりと待つという方法もあろう。
プーチンがなおしばらく権力の座にとどまるとみられる一方で、元島民が高齢化していることなどを考えれば、急ぐべきだという主張もあろうが、主権放棄、独立国の尊厳を失いかねない事態になってもいいのかとの反論もあるだろう。
北方4島は、かつて一度も外国領になったことのない日本固有の領土だ。第2次世界大戦で日本が降伏した直後のどさくさに乗じて、ロシアが武力で不法に占拠、今にいたっている。
今回、両首脳は「双方が受け入れられる解決策」で合意した。プーチン大統領は過去に、「引き分け」による解決に言及したことがある。笑止千万というべきだろう。
自分の家からものを強奪した盗っ人が「お互いにいいようにしよう」といっても誰が相手にするか。すぐに警察に引き渡すだろう。極端な例えかもしれないが構図はそう違わない。日本が奪われたものを取り戻すことこそ、唯一の公正な解決方法であり、ロシアに何かを与えることや、「引き分け」など、絶対にあってはならない>(以上「WEDGE infinity」より引用)
少々長いが、先の日ロ首脳会談に関する「マトモ」な論評にやっとお目にかかったので引用させて頂いた。是非とも精読して頂きたい。
そこで明確になるのは安倍外交の完全なる失敗だ。少なくとも対ロ外交は安倍氏により1956年の段階まで後退した。日ロ平和条約締結に近づいたのではなく、むしろ絶望的ともいえるほど遠ざかってしまった。その元凶は安倍氏だ。
安倍外交は素人外交も極まる。それ以前にも鈴木氏なる御仁が「ムネオハウス」まで進呈して北方領土返還を引き離してしまった。その上「二島返還論」などと言う世迷いごとまで口走ったのだから、彼は売国奴と批判するしかない。なぜ北海道民は北海道民の安全保障を棄損している売国奴を当選させるのだろうか。
プーチン氏は北方領土にミサイル基地を建設したではないか。それが日本国民の税金で「ムネオハウス」を建ててあげた見返りだ。ロシアに「太陽策」は通じない。ロシアには北風を吹き続けさせて北方領土維持にウンザリさせるしかない。
日本は毅然として「北方四島一括返還なくして日ロ平和条約締結はない」との基本姿勢を貫き、「平和条約が締結されていない国に経済援助などあり得ない毛」との正論を押し通すべきだ。
経済界の儲け第一主義の守銭奴たちに惑わされてはならない。彼らはロシアの天然ガスや石油を手に入れて金儲けしたいだけだ。金儲けのためなら国家の誇りや北方領土などどうでも良い連中だ。安倍氏は経済界の三下に成り下がって「商売外交」に専念しているようだが、政治家としてあるまじき売国行為だ。
最後に上記論評の最後の段を引用しておく。「自分の家からものを強奪した盗っ人が「お互いにいいようにしよう」といっても誰が相手にするか。すぐに警察に引き渡すだろう。極端な例えかもしれないが構図はそう違わない。日本が奪われたものを取り戻すことこそ、唯一の公正な解決方法であり、ロシアに何かを与えることや、「引き分け」など、絶対にあってはならない」。
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