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これでは県民の命や財産は守れない。実際に被害が出てからでは遅すぎる。
8月27日に窓の落下事故を起こした米軍普天間飛行場所属CH53E大型輸送ヘリコプターの同型機が7日、飛行を再開した。宜野湾市に対し沖縄防衛局から飛行の一報が入り、米海兵隊は「点検した」と報告したが原因は究明されず対策も不明だ。安全を確保したとは到底言えない。謝花喜一郎副知事が言うように、米軍はどのような点検をしたのか報告すべきである。
落下物を含む航空機の事故は一歩間違えば人命に関わる重大事故になる。原因を究明し再発防止策を徹底するまで同型機を飛行させないことは当然の対応である。このため県、宜野湾市をはじめ、県内与野党が飛行停止を求めている。県民の生命や財産を守るための妥当な要求を無視して飛行を強行したことは極めて重大な問題だ。
米側に飛行停止や自粛を求めなかった日本政府も米軍の片棒を担いでいる。判断の根拠は曖昧で、県民の命や財産よりも米軍の運用を優先しているとしか思えない。
岩屋毅防衛相は先月30日の会見で、自粛を求めない理由として被害が生じていないことを挙げたが、沖縄防衛局の田中利則局長は3日、社民党県連の抗議の場でそれを否定した。事案によって判断する点で両氏の説明は一致するが、被害の有無が根拠になるかどうかでは異なっている。
被害がないと飛行停止や自粛を求めないという対応は言語道断だ。犠牲を未然に防ぐことで国民の生命や財産を守るという政府の当然の責務を放棄しているからだ。「その都度判断する」と言うのも、今回の事故を軽視する認識を露骨に表すものであり、断じて容認できない。
県議会は「一歩間違えば人命、財産に関わる」と指摘する抗議決議と意見書を18日の本会議で全会一致で可決する見通しだ。
両案の審議の中で、米海兵隊が所有するCH53Eのうち飛行が可能な機体はわずか37%にとどまるという米保守系シンクタンクの報告書が紹介された。財源不足の中、機体の老朽化と開発の遅れが背景にあるという。議員からは「飛行禁止を直ちに求めるべきだ」との声が上がった。同型機の部品落下事故が相次いでいることを踏まえれば、当然の要求である。
謝花副知事は飛行自粛を求めない政府に対し、人身や財産だけでなく「不安も被害だ」と強調した。日米両政府が県民の命や財産、強い不安、県内自治体・政党の要求よりも米軍の運用を優先する状況を見ると、沖縄を植民地扱いしていると断じざるを得ない。県が抗議する際、米軍は呼び出しにも応じなかった。
日米両国はこのような扱いに終止符を打つべきだ。県民も「植民地主義」という差別に打ち勝つ方法の探求に本腰を入れる必要がある。
琉球新報社説 2019年9月10日
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-986662.html
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