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Last modified on 2019-08-24 19:00:09
堀切さとみ
開催からわずか三日で中止となった『表現の不自由展・その後』。脅迫電話やメールが あったとはいえ、なぜこんなに短期間で中止になったのか。何の相談もなく中止にされた ことを、出展したアーティストや実行委はどう考えているのか。
8月22日、中止事件を考える緊急シンポジウムが開催され、会場の文京区民センターは 多くの市民、報道陣であふれた。呼びかけたのは『創』編集長の篠田博之さん 。観ることができなくなった作品の一部をスクリーンに映しながら、出展者や関係者が次 々と発言した。
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表現の自由が脅かされる事件はこれまでにも多々あったが、それを打ち返してきたのも 事実だ。2015年練馬にあるギャラリー古藤で開催された「表現の不自由展」。2012年に東 京・ニコンサロンでの展示が中止になった安世鴻さんの作品を、この小さな会場で生き返 らせることができた。妨害や脅迫も予想されたが、実行委や市民がそれを阻んだ。さいた ま市では公民館だよりに「九条俳句」を掲載しなかったことに対して、四年にわたり裁判 を闘い勝訴した。そんな流れがあって、今回「あいちトリエンナーレ」での開催すること になったのだ。自らがオブジェになって表現するマネキンフラッシュモブも、今回の出展 団体の一つ。この活動に禁止条例を出した海老名市に、裁判で勝った(2017年3月) ことを「あいち」で報告するのを楽しみにしていたという。(写真下=マネキンモブの朝倉 優子さん)
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「状況は2012年より悪くなっている」と安世鴻さん(写真下)はいう。ニコンサロンが理由も告げ ず、慰安婦の写真展を中止にしたとき、安さんは提訴した。結果は完全勝利。判決文の中 身は「ニコンは一企業だが、公共の場として、表現の場を保障せねばならない」というも のだった。今回は、公共の会場であるにもかかわらず中止。公人による圧力に屈した、明 らかな後退だ。「今回の開催中止は、表現者だけでなく、見る人が感じとる権利をも剥奪 するものだ」と訴えた。
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版画や映像作品が「反天皇」「反日」と言って攻撃の対象にされた大浦信行さんも登壇 。「天皇が燃えているシーンだけがエキセントリックに取り上げられて辛い」という。「 私の映像には、靖国に行きたいという従軍看護婦や、<海ゆかば>が流れるシーンもある 。じっくり見れば単に天皇批判を目的に作られたのではないことはわかってもらえたはず 」。そして「表現というのは検閲されたら終わりというものではなく、作家の中では水面 下に脈々と流れるもの。それを表現するのが作家の覚悟というものだ」と語った。(写真下=大浦さんのコラージュ作品)
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総責任者の津田大介氏や、抗議声明を出さない芸術家協会があまりにも不甲斐ないとい う意見も出た。今回の中止は、実行委員さえも「記者会見ではじめて知った」という。「 開催された三日間は穏やかだった。会場では、右翼を自称する人とも対話が生まれていた 」という報告もあった。開催が続いていれば、このような光景はいくらでも生み出された かもしれない。
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*パネルディスカッションは、金平茂紀さん、鈴木邦男さん、香山リカさん、綿井健陽さんらが登壇
パネルディスカッションでの森達也さんの話が印象に残った。「人を傷つける表現はダ メだというなら『原爆の図』やムンクの『叫び』、ピカソの『ゲルニカ』はどうなのか? 松井大阪市長は『公共の場で我々の先祖が獣のように扱われるような表現をやるべきで はない』と言ったが、ゲルニカは国連安全保障理事会の会議場に置かれている。これをド イツが撤去しろと言ったらどうなるか、考えてみてほしい」。また「運営に携わる人が保 守化したのか。違うと思う。セキュリティー意識が強くなり、『万が一起きたらどうする んだ』に抗しきれなくなっている。『万が一ミサイルが飛んできたらどうする』と言って 仮想敵国を増やす。人々の不安と恐怖を利用するのは政権とメディアだ」と力をこめた。
この国をとりまく事態は、思った以上に深刻だと感じた。『不自由展』を再開する可能 性があるとすれば、主催者任せにするのでなく、私たち一人一人が思考することだと思う 。
http://www.labornetjp.org/news/2019/0822hokoku
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