http://www.asyura2.com/19/senkyo264/msg/448.html
Tweet |
「れいわ」「N国」の“はらはら感覚”に見える政治の希望と失望
https://diamond.jp/articles/-/211194
2019.8.13 5:35 仲正昌樹:金沢大学法学類教授 ダイヤモンド・オンライン
Photo:JIJI
参院選挙後、初の臨時国会で、重度の障害がある「れいわ新選組」(れいわ)の2議員のための議席改修工事が行われ、介護費用の負担の在り方が議論されるなど、これまで政治で関心が向けられなかった問題がさっそく動き出した。
参院選で自民・公明の与党は得票率を減らし野党にも勝利感がないなかで、唯一、“躍進”したのがれいわと、「NHKから国民を守る党」(N国)の2つの新党だ。
両党は政治的立場が対照的なように見える半面で似ているところも多い。
今後、日本の政治にどういう変化を生み出していくのか。政権を担い得る政党へと成長するには、どういう条件をクリアする必要があるのか。
躍進の武器になった
既成政党と違う感性
れいわとN国の最大の共通点は、これまでの政治の常識からすると、ふざけているとしか思えないネーミングセンスである。
NHKの受信料の強制徴収や報道姿勢に不満を持つ人は少なくないだろうが、その極めて限定的な目標を政党名にして本格的に国政選挙に打って出るとは、なかなか想像できないことだった。
また、自分たちが勇猛果敢であることを、有名な武将や武士の集団で例えるというのは、日本の政治家が好んでやることだが、それを党名にまではしない。ましてや幕府を守るために勤王の志士を弾圧した新選組を名乗るのは、大きな変革を目指す新党には不利とも考えられる。「れいわ」の党名も従来の発想からは出てこないものだ。
ただし、最近のアニメ番組とか、山本太郎代表がかつて原田左之助を演じたNHKの大河ドラマでは、新選組は正義の味方の役割だ。
現代のテレビ文化から生まれた逆張り的なセンスと、長州(山口県)を選挙区とする安倍首相が支配する現体制を退治するというような意味合いを込めて、「新選組」を名乗ったのだろう。
「しんせん(新鮮)」という響きも考慮に入れているかもしれない。
こうした両党のヘンなところにこだわったネーミングは、NHKの「日曜討論」のような場で、フォーマルな装いで礼儀正しく冷静な調子で、バランスの取れた政策を語ることで国民の信頼を得る、という姿勢を取ってきた既成政党の感性とは相容れない。
しかしツイッターや動画を軸とするネットを舞台にした選挙戦では、インパクトのある党名で視覚・聴覚的に印象に残りやすいメッセージを発信し続けた。
それに加えて、政治のプロとは思えない、変わった経歴の人たちを候補に立てるという戦術はかなり効果的だったようだ。
既成政党の場合、比例区などにはかなり知名度の高い人を候補者に並べるし、その応援に来る議員でも、街頭演説などでも党の方針に即してほぼ決まり切った内容を語るのが通例だ。よほどの個人的なファンでない限り、聴衆は退屈である。
それに対して「NHKをぶっ壊す!」とか「消費税をゼロにしろ!」といった過激なメッセージの下で、あまり見たことがないタイプの候補者がアピールする様子は、はらはらさせる感覚を与える。
注目を集めるための下準備ときっかけさえあれば、一定の期間注目を集め続けやすい。
組織が整っていない
自由度、素人くささを逆手に
党組織が整っていないことは、通常はデメリットだが、その分、自由度が高いともいえる。しがらみがない、従って忖度の必要もないことを、素人くささをあえて見せることでアピールすることもできる。
「N国」の候補者たちの語り方は、いわゆる政治家っぽい演説慣れした語りではないが、1つのことにオタク的に一生懸命取り組んでいるという印象を与えた。
野党側は、地方区で「反自民」の統一候補を擁立して戦ったが、共同戦線を重視するあまり、野党間の政策の違いなどを目立たせないように、お互いに忖度し合っている様子が報道されたこともあって、挑戦者としての「新鮮さ」を失った。
森友・加計学園問題で自民党と官僚の「忖度する体質」を批判してきた野党だったが、選挙戦では自らそれに重なるイメージを有権者に抱かせてしまった感がある。
これとは逆に、「れいわ」は山本代表が、反自民の合従連衡のフィクサーのようなイメージが染みついた小沢一郎氏と袂を分かったことは、「れいわ」のしがらみのなさをアピールするのに成功した一因だろう。
山本代表は街頭遊説で役者としての特性を生かし、路上ライブのようなパフォーマンスで聴衆の心をつかんだことが話題になったが、どぶ板選挙が基本と考える小沢氏のような古いタイプの大物と組んでいたら、相手を立てないといけないので、それほど自由にやれなかったかもしれない。
加えて、当選確実といわれた東京選挙区からの出馬を他候補に譲って自分は比例に回り、しかも重度の障害者である他の2人の候補を自分より上位に置いたことは、ある種の潔さを印象付けることになった。
N国が、NHKのスクランブル放送化を実現すれば解党すると宣言していることも、悪ふざけのようだが、潔さと取れなくもない。こうした潔さのイメージは既成政党にはないものだ。
国会の“共闘”では好対照
節操なく連携と野党と一線
しがらみのなさ、品のなさを売りにする点では似ている両党だが、それを目的実現のためにどう生かしていくかという点ではむしろ対照的だ。
選挙後、国会内の院内会派結成など、他党との共闘をめぐる動きは正反対だ。
N国は、NHKのリベラルな報道姿勢に不満を持つ保守層の支持を取り込んだが、問題発言や内紛が原因で所属政党を離れた保守系の議員に入党や連携を働きかけ、7月30日には渡辺喜美参議院議員と新会派「みんなの党」を結成した。
理念や政策は違っても、NHKのスクランブル放送化さえ賛成してくれれば、あとはどうでもいいという姿勢だ。これこそが永田町の現実だとばかりに開き直って、節操のなさなどは意に介さずやりたいことだけをする、アイロニカルな戦略だといえる。
それに対して、れいわは、左派としての立場ながら、野党勢力とは距離を置いた路線を進もうとしているように見える。
「消費税ゼロ」「奨学金チャラ」「最低賃金1500円の政府保証」「公務員増加」「デフレ脱却給付金の一律給付」「食料自給率100%を目指しての一次産業への個別所得補償」など、共産党でさえ言い出せないような大胆な再分配・積極財政政策を打ち出している。
平和憲法の下での社会主義体制の実現を最終目的に掲げ、あらゆる政策で自民党と対決してきた、「55年体制左翼」の硬直化したイメージとは一線を画し、福祉と積極財政による経済成長を両立させるというポジティブな左派として自らを演出しているようだ。
れいわに左派寄りの無党派層の票を奪われたとされる立憲民主党は、消費増税については凍結すべきとの主張だが、10%への増税の方針を決めたのが、前身の民主党政権時代であり、将来的にどうするかは示していない。
同じく旧民主党系の国民民主党も凍結の方針を示したうえで、不況時には減税も経済政策の選択肢の1つだとしているが、どういう状況になったとき、どれだけ減税して、どれくらいの効果が見込めるのか具体的なことは言っていない。
両党とも、持続可能な成長のための戦略を掲げながら、一方で税制の見直しによって財政健全化への道筋を付けることを基本政策に掲げている。そのため消費税を今後、どうするかを、簡単に答えることができず、政策の重点がはっきりしない。
共産党は消費税を3%まで下げることを可能としているが、その前提として、共産党の伝統的な主張である軍事費大幅削減と、大企業、高所得者への増税に加えて、公共事業の段階的半減を掲げている。
しかし、この政策は、「コンクリートも人も〜本当の国土強靭化、ニューデイールを〜」という標語のもと、公共事業拡大の方向を示唆する、れいわの政策とは対立する。
安全保障政策でも、れいわと野党との溝は深い。
れいわは、米軍基地の辺野古移転には明確に反対しているが、その一方で、これまでと同額の費用負担の継続を前提に、対等な同盟関係を目指して、移転先について再交渉するとしている。
経済的・社会的弱者に徹底的に寄りそう姿勢を見せながら、戦後日本の左派に共通だった日米安保と資本主義に敵対するトーンを緩め、イデオロギー的硬直性を感じさせにくくしている点では、野党の中でも共産党や社民党にとっても強力なライバルにもなり得る。
問われる政策の整合性
追い風は2つの潮流
ただ、れいわにしてもN国にしても、主張や政策があまりにもいいとこ取りなので、いつかは壁に直面する局面がくるはずだ。
今後も注目が集まり続け、例えば、政権政党の一翼を担う可能性や、山本代表を、かつての反自民連立政権の細川首相のような候補にしようとする声が大きくなれば、政策全体の整合性をきちんと検証しようとする試みがなされるようになり、ネットを中心としたイメージ戦略だけでは乗り切れなくなるだろう。
TPP協定、PFI法、水道法、カジノ法、入管法、特定秘密保護法、国家戦略特別区域法、派遣法、安全保障関連法、テロ等準備罪……を「トンデモ法」と呼んで、「一括見直し・廃止する」、と大ざっぱに言い切っているが、それに代わるどういうビジョンがあるのかは、語られていない。
選挙戦では、こうした個別問題に突っ込みすぎると、従来のリベラル・左派との違いが見えにくくなるという戦略的判断があったのかもしれないが、政治を担う主流になろうとすれば、避けられない課題だ。
きちんと理論武装できていなければ、勢いを失い、目玉である消費税廃止や財政政策に関して、結局は、立憲民主党などとの間での政策調整が図られ、輝きを失い、普通の野党にならざるを得ないかもしれない。
ただ、いまのところ、れいわに味方しそうな、国際的な政治・経済思想の潮流が2つある。
1つは、消費税増税反対のリフレ論者たちを中心に支持が広がっているアメリカのMMT(現代貨幣理論)と、れいわの政策の類似性だ。
MMTというのは、貨幣の本質は政府による信用創出であり、貨幣発行権限を独占する政府は、自国通貨建ての国債であれば、景気悪化やハイパーインフレを恐れることなく、原則無制限に発行できるはずなので、積極的な財政政策によって完全雇用を目指すべきとする理論だ。
たとえインフレ傾向が強まっても、増税や新たな債券発行で民間部門から余剰な貨幣を引き上げることで、制御できるという。
この主張を掲げる政治家では、民主的社会主義者を自称し、単一支払者制度による国民皆保険、公立大学の無償化、連邦政府による雇用保証などを掲げて、民主党の大統領選レースに名乗りを挙げているサンダース上院議員やその弟子ともいえるオカシオ=コルテス下院議員らが有名だ。
サンダース氏らは、MMT第一人者であるステファニー・ケルトンニューヨーク州立大学教授の助言を受けて、自らの政策構想に取り込んでいる。
インフレ目標2%に達するまでは、国債を発行し続けることができるとする、れいわの財政政策は、これに対応しているよう見える。
もう1つの潮流は、近年、スペイン語圏諸国やギリシアなどで台頭してきた、民意を背景として「反グローバリズム(+反米)・反緊縮」を推し進めようとする左派ポピュリズムと呼ばれる流れである。
自らの債務危機を逆手にとってEUと交渉したギリシアの急進左派連合、ベーシックインカムの導入やEU加盟国の主権を制限するリスボン条約の廃止、国民経済を侵食する自由貿易協定からの離脱などを掲げるスペインのポデモスなどがよく知られている。
サンダース上院議員も左派ポピュリストといわれ、アルゼンチンのクリスチーナ・キルチネル前大統領のように、民間の年金基金や石油会社の国営化、子ども手当、LGBTの権利拡大などの政策で成功を収めた例もある。
右派ポピュリズムに
対抗するには理論的裏付けを
こうした左派ポピュリズムを、トランプ大統領などによる排外主義的な右派ポピュリズムに対抗する、新たな政治の可能性として高く評価する論客も出てきている。
ラディカル・デモクラシーの理論家、エルネスト・ラクラウやシャンタル・ムフ氏らがそうだ。
民主主義国で構造的に生じる文化的少数派の排除の問題を解決するには、多数派に対する文化的闘争を仕掛け、人民のアイデンティティを絶えず再編することが必要だと主張し、左派ポピュリズムを、人々の政治的想像力を活性化し、社会的公正さに目覚めさせる運動として哲学的に意義付けている。
日本でも、ムフ氏の『左派ポピュリズムのために』とラクラウ氏の『ポピュリズムの理性』の邦訳が昨年末から今年にかけて刊行されている。
MMTや左派ポピュリズム論が日本で市民権を得れば、「れいわ」は、両者を代表する政党としての地位を確立し、知識人たちから幅広く支持されるようになるかもしれない。
もちろん、れいわ自身がMMTと左派ポピュリズムについてしっかり研究し、専門家との議論を積み重ね、単に左派にとって口当たりのいい思いつきを並べているだけではないことを証明しなければならない。
単なる「ポピュリスト」と開き直って、難しい議論を回避すれば、民族感情に直接、訴える右派ポピュリズムに勝つことはできないだろう。
(金沢大学教授 仲正昌樹)
「NHKをぶっ壊す!」とか「消費税をゼロにしろ!」といった過激なメッセージの下で、あまり見たことがないタイプの候補者がアピールする様子は一定の期間、注目を集め続けやすい。仲正昌樹さんのコラム。https://t.co/XBvTYVUL08 野党側は共同戦線を重視するあまり、互いに忖度し合っていた。
— 石川一敏 (@ik108) 2019年8月12日
そもそも「政治のプロ」なんて
— gray-head (@Nslash6008) 2019年8月13日
いるのですかねぇ😎いたのなら
国民のためには全く役立たずな
存在でしょ⁉️
右とか左とか…今どき古臭く
ないですか⁉️#れいわ #N国 の“はらはら感覚”に
見える政治の希望と失望 https://t.co/qubOQRL0YY #スマートニュース
確かに長期政権の影響なのか、自由でしがらみもなく、何をやらかすかわからない左派に注目をしてしまう気持ちもわかる。https://t.co/JDTD2tRmWk
— アリア (@ARIA_Ver1) 2019年8月12日
これもありですね。外交外交で外ばかり見て、中を見る人がいないと言うか見れない政府に失望している方は沢山います。こちらのお二人は 外交は無理だと思いますが、中は見ています。どうせ変わらないなら 面白おかしくして欲しいものです。 #NewsPicks https://t.co/7OBScfUvO8
— m.tada (@QNcyRzArCpG9jgC) 2019年8月12日
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK264掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK264掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。