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もはや野党は打つ手なし もう止まらない「憎悪の世論」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/259881
2019/08/06 日刊ゲンダイ
目も合わさない安倍首相(右・中央)と韓国の文在寅大統領(左)/(C)ロイター=共同
外交に経済を絡ませた禁じ手制裁に世論は「よくやった」と鼓舞する――。3、4日実施のJNN世論調査によると、安倍政権が輸出手続きを優遇する「ホワイト国」から韓国を除外したことについて、「妥当だと思う」人が64%に上った。
同日に実施したFNNの世論調査でも、ホワイト国からの韓国除外を「支持する」と答えた人は67.6%。驚いたのはJNN調査の内閣支持率だ。「支持できる」という人は、先月の調査結果より1.4ポイント増えて60.1%に達した。
同じ調査で安倍政権に優先して取り組んで欲しい政策について聞くと、トップは「年金や医療などの社会保障」で62%、次が「景気や雇用」で44%である。世論の多くは老後不安の解消や豊かな経済を求めているのに、どうして安倍政権の支持率が上がるのか。
年金支給開始年齢の70歳への引き上げをもくろみ、老後の暮らしを破綻させる年金詐欺や、景気に冷や水を浴びせ、庶民の息の根を止める消費増税など、安倍政権は庶民の願いとは逆方向へとまっしぐらだ。それらに対する怒りが安倍政権の「韓国叩き」で吹っ飛び、世論の熱狂が支持率アップの理由なら、この国は極めて危うい。
安倍政権は過去に日本が手をつけなかった「報復」という手荒な手段を選んだ。強硬姿勢の背景にあるのは、韓国への露骨な「敵視」だ。
慰安婦基金の解約、自衛隊機へのレーダー照射、天皇への謝罪要求、元徴用工訴訟と、度重なる韓国の「無礼」(河野外相)にブチ切れ、後先も考えず感情任せに拳を振り上げ、ヒートアップしているに過ぎない。つまり子供じみている。
自然と出る上から目線と小バカにした態度
韓国の態度を硬化させる重大な決断をしたにもかかわらず、“嫌韓”政権は表向きは元徴用工訴訟などへの「報復」とは言わず、「安全保障上の問題」を装う。それでも韓国「蔑視」のホンネは、あらゆる場面で垣間見える。
例えば安倍首相は「1965年に請求権協定でお互いに請求権を放棄した。約束を守らないなかでは、今までの優遇措置は取れない」と話し、世耕経産相も「信頼関係が損なわれた」と今回の制裁措置の背景に徴用工問題などがあることを雄弁に語っている。
韓国の駐日大使を呼び付けた河野は、大使が日韓の企業が賠償金を出し合う折衷案を示した際、話をさえぎり「極めて無礼だ」と一喝。日本企業に元徴用工への賠償を命じる最高裁判決が下った際、安倍は「あり得ない判断」と一蹴したこともある。
「あり得ない」「無礼」といった上から目線の言葉が自然に出てくるのも、韓国を小バカにしている証拠だ。こうした相手をナメ切った態度も、戦後の日韓関係史上では見られなかった。
大体「ホワイト国」外しのきっかけである徴用工問題をこじれさせたのも、安倍たちのせいだ。元徴用工訴訟はあくまで民事訴訟であり、被告は日本企業である。まず判決について、被告企業の対応が問われるべきなのに、頭越しに日本政府が飛び出してきたことで事態は混乱し、いきなり国と国との争いになってしまったのだ。
安倍政権がネトウヨやヘイトスピーチ派が中心の嫌韓ムードに便乗し、率先して「韓国憎し」の世論をあおっているのは明白だ。不純な扇動にあおられ、「韓国叩き」で支持率上昇の世論は、やはり危険だ。
韓国大使(右)を呼びつけ「無礼者」扱い(河野外相=左)/(C)共同通信社
過去と向き合わず感情を逆なでする嫌韓政権 |
実際、元徴用工問題と同じ強制連行・強制労働問題を抱える中国との態度は大きく異なる。
1972年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、2000年に花岡(鹿島建設)、09年に西松建設、安倍政権下の16年には三菱マテリアルが、それぞれ被害者救済のため原告との和解に応じた。
その際、政府は民間同士のこととして、一切口を挟まなかった。何かと言えば「日韓請求権協定」を持ち出し、「解決済み」一点張りの韓国への対応とは、かくも異なる。その背景にあるのも格下とみなす韓国への憎悪だろう。戦前生まれで筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)はこう言った。
「日本にはかつて韓国を侵略し、植民地支配した拭えない歴史があります。戦後の保守政治家はその反省の上に立ち、その思いが『河野談話』や『村山談話』に結実しました。その歴史の教訓をかなぐり捨てたのが、安倍首相です。靖国神社に参拝し、『侵略の定義が定まっていない』と繰り返し、韓国側の感情を逆なでし続ける。慰安婦や徴用工など重い歴史の現実に向き合わず、反省や謝罪の気持ちはみじんも見せない。あまつさえ、改憲を急ぎ、戦前回帰を目指そうとする。韓国側が安倍首相を歴史修正主義者とみなすのも当然で、その上、韓国を『無礼者』扱いすれば怒りの火に油を注ぐようなものです。隣国の韓国経済に致命的な打撃を与えれば、日本経済への悪影響も懸念される中、『景気や雇用』を重視する国民がなぜ、かような政権を支持するのか。複雑怪奇としか言いようがありません」
日本からの「報復」を受け、韓国が態度を硬化させるニュースが次々と届くが、嫌韓政権にすればシメたもの。韓国が対立反目するほど日本国民の「憎悪」が高まり、支持率も上昇すると考えているに違いない。
負の感情で人心をまとめる悪魔的政治
安倍のやり口は「アメリカ・ファースト」を唱え、貿易戦争の強硬路線で中国を敵視、エリート支配への反発をたき付けるトランプ米大統領や、移民・難民の排除を掲げ、台頭する欧州の極右政党と同じ。憎悪で人心をあおり、支持を集める手口である。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)が指摘する。
「自らつくった敵に国民の怒りを向けさせ、憎悪をあおる。その最たる例が反ユダヤ主義を掲げたナチス・ドイツです。世論が憎悪に支配されると、『気分はもう戦争』で国内政策は『そんな悠長なことを言っている場合か』と二の次となり、失政をゴマカせる。いくら野党が政策で勝負しても反撃の隙を失うのは、既存政党がアッという間に選挙でナチスに駆逐された戦前のドイツの例を見れば、よく分かります。外交は政府の専権事項とみなす今の世論なら、なおさら野党は打つ手なし。むしろ政権を批判すれば『非国民』扱いされるようになりかねないムードすら醸成されつつある。慰安婦を題材にした少女像を展示しただけで『反日プロパガンダ』とみなされ、『表現の不自由展』が中止に追い込まれましたが、政権側は展示内容を補助金交付の条件にするような態度で騒動に拍車をかけました。この態度は事実上の検閲に等しく、都合の悪い作品を『退廃芸術』とみなして弾圧したヒトラーを彷彿させます」
事態はここまで進んでいるのに、自民党内から異論は出ず、メディアは政権に迎合。一部では「歴史戦」と称して韓国への憎悪心をあおっているのだから、暗澹たる気持ちになってくる。
「悲しいかな、人間は憎悪の感情でまとまってしまう動物です。憎悪を駆り立てられた世論が開戦を後押しした反省から、特に外交は理性で感情を抑えることを求められるようになったのです。そうした戦後の教訓が令和になって、フッと消えてしまった印象です。歴史に学ばない国の末路は必ず『いつか来た道』をたどる。それだけに、この国の行く末が心配です」(小林弥六氏=前出)
「韓国叩き」で負の感情をあおり、人心を操る安倍はヒトラーと同じ悪魔的政治家なのか。もう止められない「憎悪の世論」の国で、1年後に五輪を迎えるのも、また怖い。今の安倍なら、ベルリン五輪を「民族の祭典」に仕立て上げたヒトラーの再来を夢想しかねない。
もはや野党は打つ手なし もう止まらない「憎悪の世論」 https://t.co/NloZQM5b85 #日刊ゲンダイDIGITAL
— エロ仙人(雉トラ猫侍) (@ero1002n) 2019年8月6日
【野党はもはや打つ手なしだろう】もう止められない「憎悪の世論」 庶民の息の根を止める消費増税や老後の暮らしを破綻させる年金詐欺に対する怒りよりも「韓国叩き」で安倍政権に熱狂する危ない世論 欧州の極右政党、戦前のナチスと同じだが、歴史に学ばない国の末路もまた同じ(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/9xcI3m5cV2
— KK (@Trapelus) 2019年8月6日
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