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安倍政権「有志連合」参加なら…揺らぎかねないイラン国民の親日感情 トランプ騒乱の時代と中東、日本
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/259297
2019/07/28 日刊ゲンダイ
日米、有志連合協議か ボルトン米大統領補佐官(左)と握手を交わす岩屋防衛相=22日午後、防衛省(C)共同通信社
イランでは、日本の人気アニメ『アルスラーン戦記』25話すべてがペルシア語字幕付きで動画サイトなどにアップロードされ、若者たちの間で反響を呼んでいる。
ペルシア語に訳された『アルスラーン戦記』は舞台設定も古代イランということになっている。その動画のコメント欄には「日本人よ、イランの歴史を描いてくれてありがとう」「自国の歴史と文化に誇りを持てた」などの肯定的な評価を得ているという。
■ペルシア語に訳された『アルスラーン戦記』
現代の日本とイランの外交関係が確立されたのは1926年で、パフラヴィー朝時代のことであった。パフラヴィー朝初代国王のレザー・シャーは親ナチス・ドイツの姿勢をとったが、ドイツとの同盟関係にあった日本との貿易関係も1940年頃には、その15年前の2倍となり、ドイツに次ぐ貿易額となった。日本からの最大の輸出品は綿織物で、イランへの全輸出の90%を占め、ソ連やイギリスをしのいだ。他法で、イランから日本への輸出の90%は未加工綿だった。
レザー・シャーは、ドイツと防共協定を結んだ日本に接近し、1939年10月18日に、日本・イラン友好条約を結んだ。しかし、ドイツが1941年にソ連に侵攻すると、イラン国内でのドイツの情報機関員たちの活動や、ドイツがイランの北にあるソ連のバクー油田を獲得することを恐れたソ連とイギリスの連合軍はイランに進駐して、レザー・シャーを退位させた。
パフラヴィー朝の第2代国王モハンマド・レザー・パフラヴィーは1958年5月に日本を訪問し、羽田空港で昭和天皇の出迎えを受けたが、彼の帝国は日本をモデルにした近代化を目指した。豊かな石油収入を背景に、石油が枯渇した時のことを考えて、それまでに産業立国とすることを考えたが、彼の「夢」は1979年の革命で潰えた。イラン革命のイデオローグだったアリー・シャリアティも伝統的なアイデンティティを保持しながら近代化を遂げた日本をイランも見習うべきだと訴えた。
■「七人の侍」と「弱きを助け、強きをくじく」
「七人の侍」は映画の製作が盛んなイランでも人気がある。イランのサッカーの伝説的な名選手にアリ・ダエイがいるが、彼は国際Aマッチ歴代最多得点者で、109得点は2位のフェレンツ・プスカシュ(ハンガリー)の84を大きく引き離している。ダエイ選手は、『七人の侍』をとても気に入っていて、それは「弱きを助け、強きをくじく」ストーリーに魅かれるからだろうということだ。
翻訳家で、イラン映画のコーディネーターのショーレ・ゴルパリアンさんは、「日本人は礼儀正しいし、心優しい人が多い。日本でいう『謙遜』とか『建前』『義理』といった概念はイラン人にもあるんです。相手を持ち上げて自分は遠慮するとか。年寄りに対する尊敬の念とか。だから日本の人たちはイラン映画をよく理解してくれますし、イランでも小津安二郎や黒澤明の映画や、『おしん』とか『はね駒』といったテレビドラマの人気が高いんです」と語っている。
他方で、ゴルパリアンさんは「今まで何かを造りにきてくれた日本が、(イラクに)自衛隊を派遣したことで、今度は何かを壊しにくると思ってしまいます。それは私たちの日本人に対するイメージとあまりにもかけ離れていたから信じられないんですよ。私がイランに帰ったとき、みんな私に聞くんです。何で戦車のボディーに日本の国旗がついているんですか、って。確かに似合わない。すごく」とも話す。
カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを「桜桃の味」(1997年)で受賞したイランの映画監督アッバス・キアロスタミ氏(1940〜2016年)もまた日本の小津安二郎監督を敬愛してやまなかった。キアロスタミ監督は日本の小津安二郎監督の映画に影響され、小津監督生誕100年である2003年に『5 five 〜小津安二郎に捧
げる〜』を制作したが、小津作品について次のように語っている。
「ロングショット、静かなリズム、慎ましやかな時間の流れ、自然な人物たち。そしてカメラは飽くまでじっと固定された謙遜の姿。小津の世界は私たちに思い出させます。私は<自然>であり、自然はまた<私>であるとまさに『禅』の世界であるこの考えは私に勇気を与えてくれます」(「NHKアジア映画フェスティバル」のページより)
■日本の禅とイスラム神秘主義との共通性
禅という沈黙の中から寓意を読み取る点で、禅とイランのイスラム神秘主義では共通性があるとイランのハタミ元大統領も2000年に来日した際に語っていたが、映画を通じて、日本とイラン、またアジアの世界が普遍的な精神性でつながっていることをキアロスタミ監督は教えてくれた。キアロスタミ監督と同様に、日本映画を称賛する声は他のイラン人映画監督たちからも聞かれる。
2015年8月、赤坂でイラン大使館主催の「平和と友好の映画祭」で上映された「霧と風」のモハマッド・アリタレビ監督は映画を制作する上で大事なことは「記憶」を遺すことだと語った。監督は日本の黒沢明、溝口健二、小津安二郎などの巨匠たちの作風に大きな影響を受けたと語り、小津監督の墓参りに行き、そこに書かれてある「無」という文字を確認したいとも話した。日本の現在の街を歩くと、スマホを操作する人が大勢いて、小津監督時代の情感が希薄になっているのではないかという指摘も監督からされた。作品の中でもっとも描きたいのは、家族間の愛情、人間愛などだという。イラン映画の佳作に描かれる家族愛、人生の無常観をあらためて確認する機会ともなった。
8年間に及ぶイラン・イラク戦争を戦い、イラクは1983年からマスタードガスを使用し、さらに1985年からは神経ガスのタブンを使用した。化学兵器によってイランでは5万人の兵士たちが犠牲になったという見積もりもあり、その後遺症に苦しむ人々は少なくない。広島や長崎に原爆が投下された8月という時期にイランの映画界の人々が訪問するのが近年恒例となっているが、「大量破壊兵器」の犠牲になった日本人に共感するものがあるからだろう。イランに行くと、「米国は日本に原爆を落した。米国は本当にひどいことをする。」などと言って話しかけてくる人もいる。
■イランで愛好される日本文学
現代イランの代表的詩人アフマド・シャームルー(1925〜2000年)は、情熱的な愛の詩などで知られるが、1982年に日本の俳句1000句を選び、『ハイク』というペルシア語訳の句集を著した。この翻訳には、イランで法華経を翻訳した仏教学者パーシャーイーとの共同作業で行われた。
『ハイク』の序文で、詩人シャームルーは、次のように述べている。
「俳句の目的とするところは美ではない。(中略)我々が当たり前だと思っていた何かを、それを知っていることに気づかずにいた何かを、我々に示してくれる。そして、このことは我々が生きてある限り、詩人なのだという真実に気付かせてくれる。」
イラン人は俳句のように詩が好きだが、イランの女性の日本文学研究者のアスィエ・サベルモガッダムさんは「雨ニモマケズ」など31編を収録した宮沢賢治の訳詩集を出版した。「宮沢作品は仏教観を反映したものが多いのですが、どれも生活や自然を描き、純粋で美しい。宗教の違いを超えてイラン人の心に響く」と語った。(『読売新聞』中西賢司記者の2016年4月15日付)
■火を崇める宗教と正義を重んずる国民性
荘厳の炎が登場する古都奈良の修二会(お水取り)」は752年に初めて伝えられ、その法要は、「天下泰平」「五穀豊穣」「万民快楽」などを願って祈りを捧げ、人々に代わって懺悔(さんげ)の行を勤めるものだ。火を用いる行事は松本清張の『火の路』によれば、火を聖なるものとして崇めるイランのゾロアスター教の影響を受けたとされる。
懺悔の行の倫理的色彩も、宇宙は正義で生命の神であるアフラ・マズダー(叡智の主)によって創造されたたと説き、人は神によって裁かれ、義者は天国に行くとし、また社会正義の促進を説き、善思、善行、善語を奨励するゾロアスターの教義に由来するのかもしれない。アフラ・マズダーは、不滅と至福を約束する「正義」の王国の中心に存在する。
「我、よいこと思う。ゆえによい我あり。」(『 アヴェスター』(ゾロアスター教の経典)より)
松本清張は、飛鳥時代に日本にゾロアスター教が伝わり、斉明天皇(第37代天皇。在位655〜661年)はその信者で、マギ(古代ペルシアの司祭)の秘術を用いたために、『日本書紀』の中で神秘的な人物として描かれていると説いた。
イランの郵便局で、本を送る段ボール箱がなくなり、「盗まれたかもしれない」と言うと周囲の人々が必死になって探してくれたことを思い出す。イランからは、アラブ諸国などとは異なり、本はほぼなくなることがなく届く。そんなところにも正義を重んずるイラン人の国民性を垣間見ることができる。正義感の強いイラン人たちは、理不尽にもイラン核合意から離脱したトランプ政権の呼びかけで日本が有志連合に参加するようなことがあれば、ゴルパリアンさんのように対日感情が揺らぐことになるかもしれない。
宮田律 現代イスラム研究センター理事長
1955年、山梨県甲府市生まれ。83年、慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。「イラン〜世界の火薬庫」(光文社新書)、「物語 イランの歴史」(中公新書)、「イラン革命防衛隊」(武田ランダムハウスジャパン)などの著書がある。
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— ie1230 (@ie1230) 2019年7月27日
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