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竹下 郁子 Business Insider Japan記者
2019年7月17日
参議院議員の山本太郎代表率いる政治団体「れいわ新選組」への寄付が3億円を超えた。街中での街宣活動はまるでフェスのような盛り上がりだ。
その輪の中に、自民党議員の家庭に育った25歳の女性がいた。チラシ100枚のポスティング、ポスター貼り、公選ハガキの送付、SNSでの拡散……。これまで「ノンポリ」だったという彼女が、なぜここまで「れいわ新選組」の選挙活動を支援するのか。
■初めての寄付は250円
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7月13日、東京・新宿で演説する「れいわ新選組」の山本太郎代表。
250円。
東京都内に住むAさん(25)が初めて「れいわ新選組」に寄付した金額だ。政治団体への個人献金も初めて。5月、山本太郎代表が街宣活動をしているところに偶然通りかかったのがきっかけだったという。
山本氏は演説が終わった後、自身との写真撮影の時間を設けている。マスコミでの露出が少ないため、参加者にSNSにアップして拡散してもらう戦略だ。参加者にとっても「日々の困りごと」を訴えたり、ねぎらいの言葉をかける貴重なコミュニケーションの時間になっている。
Aさんも写真撮影の列に並んだ。どうしても言いたいことがあった。
■名門海外大学院でも手取り月12万円
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「あまりにもひどい政治の中で、自分自身が参加しても何も変わるはずがないと思い込まされてる」と山本氏は参加者に問う。
Aさんは慶應義塾大学を卒業し、現在は海外で理系の大学院に留学中だ。専攻している学科は世界でトップ5に入る名門校。4月に帰国し、日本の研究機関で1年間のインターンシップをしている。華やかな経歴に見えるが、生活は厳しい。
インターン先からもらう給与は、手取りで月12万円。パートナーの男性と2人で住む賃貸住宅の家賃は月8万5000円。雇用保険はインターン先で加入しているが、住民税や国民年金は自分で納付しなければならない。年金は支払えないため、免除申請をしている。
女性は現在、修士課程。将来の夢は研究者になることだ。
「大学生やポスドク(博士号を取得した後の任期付きの研究員)が困窮していることは社会問題として知られてきたけど、実は博士号を取るまでもすごく大変で。海外ではもっと給与があるのが一般的です。
でも大学の教授たちに『おかしいですよ、制度を整えるよう声を上げましょう』と言っても全く取り合ってもらえなかった。怒りが爆発してたので、とにかく誰かに聞いて欲しかったんです」(Aさん)
■「政治屋」と嘲笑された私の話を聞いてくれた
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演説中もその後も、「カンパ箱」の前には行列ができる。ある参加者は「頑張ってじゃなくありがとうと声をかけたい」と話した。
山本氏はAさんの言葉にじっと耳を傾けた。特に山本氏の目の色が変わったのが、Aさんがパートナーの「治験」(薬などの安全性を人でテストすること)の話をしたときだ。
パートナーの男性も大学院生で博士課程在学中。研究の助成金で月約20万円の所得があるが、そこから社会保険料、奨学金の返済、学費などを引くと自由に使えるお金は月4万5000円しかない。学費や生活費を稼ぐため、学部生・修士課程時代は報酬の良い治験のアルバイトをしていたという。
この話を聞いた山本氏は、「後日詳しく話を聞かせて欲しい」と反応した。
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寄付の受付用紙に記入する人たち。100円玉数枚から数千円までその金額はさまざまだ。
「教授たちに(生活が苦しいことを)話しても『まるで政治屋だね』『学会の理事長にでもなって頑張ってください』と揶揄されるだけで、恵まれていない人間は排除しても問題ないという考えが透けて見えました。でも山本さんは違った。一緒に怒ってくれて、改めて話す時間も作ってくれた。
それまでは『反原発の人』で、何となく“色物”扱いされているイメージだったんですけど、これはちゃんと彼の政策を知らなくちゃと思いました」(Aさん)
Aさんはそのまま寄付受付の列に並び、250円を寄付した。同じ金額の野菜を買うのに、普段どれだけ悩んでいることか。
■「生産性でなんか人間の価値はかれるかよ」
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れいわ新選組は重度障害者、難病ALSの当事者を比例代表の候補に立て、優先的に当選できる「特定枠」に据えている。この日スタッフは、杖をつく参加者に飲み物が入ったクーラーBOXを椅子代わりに差し出していた。
以降、Aさんはれいわ新選組のホームページやYouTubeで山本氏の演説を見続けた。「正論」、しかも「面白い」。不可能に思える政策にも財源を示していて、Aさんが抱いていた山本氏のイメージが覆るのに、そう時間はかからなかった。何よりうれしかったのが、「社会的弱者の存在を認めていたこと」だと言う。
特に共感したのが「生産性」に関する考え方だ。「死にたくなる社会から生きていたい社会に転換させる」と呼びかけた政見放送が話題になったが、山本氏は街宣活動でも繰り返し同じメッセージを伝えてきた。
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演説には子どもを連れた参加者も多い。小学生くらいの子どもたちがじっと聞き入っている様子も見かけた。
「あなたには生きている価値があるのか、あなたは何かの役に立っているかみたいな社会的空気の中、生きていくのを諦めてしまいそうになる。諦めてしまって、今やもう年間で2万1000人以上が自殺し、50万人以上が自殺未遂している。この数字にも表れない人たちも、たくさん苦しんでいる。その苦しさの原因は何か。生産性で人間をはかるっていうこと。生産性でなんか人間の価値はかれるかよって。じゃあ何ではかるんだって。存在ですよ。存在しているだけでも、『ありがとう』っていうような世の中作ろうじゃないかってことですよ。存在してるだけで価値があるっていう社会を作れるのが政治。そのために税金払ってるっていうような政治を作っていきましょうよ。生産性で人間の価値がはかられる世の中。その先には何が待っているか。人の命を選別するという世の中だ」(7月13日、東京・渋谷の街頭演説で)
■聞くだけで救われる演説
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若者の奨学金負担のことを話しながら涙ぐんだこともある山本氏。「わかっててやってるよもう。もうすでにみんな食われてるんですよ」と悔しさをにじませた。
Aさんと共に研究者を目指していた友人が、急に起業すると言い出しマルチ商法を勧めてくるようになったことがある。実家の家賃やきょうだいの学費を稼ぐため、常に複数のアルバイトに追われていたという。そんな友人の変節を、大手企業に就職した他の友人たちは嘲笑した。笑った友人のうち1人の手取りは月16万円だ。
「周りを見ていてもうつ病やうつ病予備軍って本当に多いんです。原因は何でも自己責任を求める空気と貧困だと私は思っています。友人を笑った友人だって、手取りはたった16万円ですよ。私たち世代って全員弱者ですよね。
『死にたくなる社会』は、山本さんの演説を聞くまで私の中で透明でした。国に原因があるのかもしれないとぼんやり思ってはいたけど、具体的にどこに問題があるのかまで分からなかった。
山本太郎やれいわ新選組を支持しなくても良い。でも演説を聞くだけで救われると思って、友人たちに動画を勧めるようになりました」(Aさん)
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「政権を取りに行く」という山本氏の言葉に、拍手と歓声が起きた。
れいわ新選組は消費税の廃止、安い家賃で住める公的住宅の拡充、奨学金を借りている人たちの全額をチャラにするなどの政策を掲げている。特に演説で盛り上がるのは、消費税廃止についての説明だ。そのために必要な財源は、所得税の累進性を強化して分離課税を止め、法人税にも累進性を導入することで担保すると山本氏は言う。そしてこう問いかける。「財源は確保できました。他に心配することは何ですか? 足りないのは、皆さんが『そうなって欲しい』という気持ちじゃないですか」(7月13日、東京・新宿の街頭演説にて)。
Aさんは政策を一通りチェックした後、団体のホームページから2000円を寄付した。「自分に力が無いと思い込まされていたけど、変わるべきは社会じゃないかと思うになりました」(Aさん)。
■ノンポリがノンポリを呼ぶ
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「有権者の4割が選挙に行かない状態で、ここの人たち(参加者)とそれ以外の人たちがゆるく繋がれる何かがあれば、社会なんて変えていける」と山本氏。
Aさんは修士論文の提出を控えた多忙な時期にもかかわらず、毎日のように選挙運動に走り回っている。
チラシ100枚のポスティング、ポスター貼り、公選ハガキの送付、SNSでの情報の拡散。インターン先の共有スペースには大阪の若者たちが作成した各政党の政策比較表「#政党のアレコレ比べてみました」を貼り、選挙のことを積極的に話題に出す。
周囲はAさん曰く皆「ノンポリ」。心がけているのは、「投票先決めた? この動画見てみて」とライトに話しかけることだ。「ももクロファンが『まずはライブに行って』と勧める感覚です(笑)。太郎さんは演説が何より魅力なので」(Aさん)。
動画を見た友人たちのほとんどが好意的な反応だそう。公選ハガキを頼んだ友人16人も、1人以外は皆、快諾だった。断ってきた友人は以前「うちの企業は自民党におんぶに抱っこだから」と話していたという。
Aさんは山本太郎氏やれいわ新選組に共感が集まっているのは、「ノンポリがノンポリを呼ぶ」からだと分析している。
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「あなたを幸せにしたい」というキャッチコピーの入ったスタッフTシャツ。ボランティアも若者が目立つ。
「私はずっとノンポリでした。だから会社のしがらみとか、多数派に投票しておけば責任を問われなくてラク、みたいな気持ちも分かるんです。
一方でノンポリは『もっと選挙にかかわらなきゃ』という罪悪感を常に持ってる。でも報道やマニフェストを読んでもよく分からないし胡散臭く感じてたところに、理路整然とした政策と、これまで言葉にできなかった怒りとか悲しみを代弁してくれる人が現れてハマったという感じ。
れいわ新選組は野党共闘を乱していると批判する人もいるけど、私たち山本太郎に“発掘された”ノンポリは、太郎さんきっかけで政治、他の野党にも興味を持つようになってます。むしろこれまで若者を政治から締め出してこなかったか、考えて欲しいですね」(Aさん)
■私に未来は無くても、未来への責任はある
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参議院議員の任期は6年。選挙権のない子どもたちの未来も私たちの選択に託されている。
Aさんは父親が医者、母親は専業主婦の家庭で育った。祖父は高齢で引退するまで自民党所属の地方議員だった。生活に不自由したことはなく、奨学金も利用していない。留学して自身の収入だけでは生活が苦しくなって初めて、政治や公的サービスの大切さを痛感したという。
「私には財産も未来も無い。でももっとかわいそうなのは下の世代の若い子たち。経済など状況が悪くなることは分かってるはずなのに、自分たちが困らないからと無責任な態度でいる上の世代にすごくイライラします。私は絶対にああはなりたく無い。だからせめて自分の1票に責任を持ちたいし、周囲にもそういう人が増えて欲しくて活動してます。
これまで国会なんて見たことなかったんですけど、今は次の国会が楽しみで仕方ないんです」(Aさん)
元自民党議員の祖父にも公選ハガキを送った。母親には「あまりのめり込まないで」と釘を刺されたそうだが、自民党員の親戚には「シングルマザーの候補者などもいて、すごく共感する」と好感触だ。
■異端扱いして得するのは誰ですか
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「テレビ中継は入っていますが放送されるか分かりません。今見て行ってください」と通行人に声をかけるスタッフたち。
山本氏に「熱狂」する支持者を嘲笑するような空気が一部にあるが、Aさんは「太郎さんはカリスマじゃない。常に私たちと同じ目線だから支持してます。そうやって候補者や支持者を“異端”扱いするのは強者の思うツボですよ」と一蹴する。
山本氏がマイクを握るれいわ新選組の街宣活動には、親子連れ、タピオカを手にした若いカップル、ヘルプマークをつけて杖をつく老人、車椅子に乗る障害者など多様な人が参加しているのが印象的だ。
演説中もその後も、寄付の受付には長蛇の列ができる。若い人も多く、Aさんのように100円玉と10円玉数枚を寄付していく人もいる。
3億円という異例の個人献金を支える彼らの姿に、声に、社会は向き合ってきたか。選挙が終わった後も続く彼らの日常を、私たち1人1人が想像してみる番だろう。
(文・写真、竹下郁子)
https://www.businessinsider.jp/post-194809
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