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安倍首相は完全に「蚊帳の外」だった板門店の米朝首脳会談 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/257564
2019/07/05 日刊ゲンダイ 金正恩委員長、トランプ大統領、文在寅大統領が並ぶ場面も(C)ロイター 安倍外交のちぐはぐさが顕著である。イランを訪問し、安倍首相は最高指導者ハメネイ師との会談後「平和への信念を伺うことができた」と述べたが、直後にイランによる米国無人機の撃墜事件が起きた。そして今度は、北朝鮮で日本政府の想定以上のスピードで米朝関係が動いた。6月30日に朝鮮半島の南北軍事境界線の板門店で行われた、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の会談である。トランプ大統領は現職の米大統領として初めて北朝鮮側に越境した。 会談は、トランプ大統領が「韓国にいる間、北朝鮮の金委員長がこのツイートを見るなら、私は非武装地帯で握手してハローという用意がある」と投稿したツイートに対し、金委員長が応じて急きょ、開催になったといわれている。しかし、韓国東亜日報はそれ以前に板門店での首脳会談開催が協議されてきていたと報じている。 問題は、安倍首相がこの米朝会談について、完全に「蚊帳の外」に置かれていたことだ。 安倍首相は大阪で開かれたG20期間中、韓国の文在寅大統領との会談をかたくなに断っていたが、おそらく、文大統領は板門店の米朝首脳会談の可能性を把握していたはずだ。 板門店の会談では、トランプ大統領、金委員長、文大統領の3人が一緒に並ぶ場面もあった。安倍首相が文大統領と会談しなかったことは、いかに日本政府、安倍首相の外交感覚が鈍いものだったか、を示している。 3度目の米朝首脳会談とはいえ、単に写真撮影をしただけで意味がなかったという批判的な見方も存在する中、今後、米朝関係がどうなるか。 トランプ陣営に具体的な方針があると報じたニューヨーク・タイムズ紙によると、@北朝鮮に核開発の凍結を求めるAそのため、寧辺、さらに他の核開発施設の破壊を求めるB米国は見返りとして経済制裁を緩める――という。ただ、これらの方針については、これまでボルトン大統領補佐官やポンペオ国務長官のほか、ティラーソン前国務長官が反対してきた。にもかかわらず、トランプ大統領が固執する理由は明確だ。「北朝鮮に緊張緩和をもたらした大統領」として、2020年の大統領選挙で再選を図ることだ。 イラン問題、北朝鮮問題と安倍外交は見当違いの方向を走っている。それは安倍首相の周辺に的確な情勢判断をできる人の不在を意味している。 孫崎享 外交評論家 1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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