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F35墜落事故は本当にパイロットが原因なのか
105機の追加購入に1兆2000億円。トランプとロッキードへの遠慮が見え隠れ
佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長
論座 2019年06月28日
https://image.chess443.net/S2010/upload/2019062100001_2.jpg
三沢沖に墜落したのと同型の航空自衛隊F35A=航空自衛隊HPから
■墜落したF35、捜索は2か月で打ち切り
安倍首相は憲法9条を変えたくてうずうずしている。うずうずしているどころかその願望を堂々と公言さえしている。このこと自体、憲法99条の憲法尊重擁護義務違反に当たる可能性が大きいが、安倍首相の憲法軽視の姿勢は今に始まったことではないのでさしたる驚きはない。
首相の憲法違反の言動、政治的行動に格別の驚きを感じないというのは極めて異常な政治状態であることを示しているわけだが、そんな状態の中でもやはり驚くことはある。
航空自衛隊三沢基地(青森県)のステルス戦闘機F35が青森県沖の太平洋上に墜落した。約2か月という短期間の捜索、原因究明の結果、死亡したベテラン・パイロットが空間識失調という平衡感覚を失う状態に陥り、墜落の原因をつくったという推定の結論を出して、捜索、原因究明の努力を放棄した。
安倍首相は憲法9条を変える理由として、自衛官を父親に持つ子どものことを考え、自衛隊の存在を憲法に堂々と書き込む必要があると何度も繰り返してきた。しかし、そこまで自衛官のことを思うのならば、わずか2か月で捜索打ち切り、原因究明中止というのはあまりに諦めが早いのではないか。
安倍首相の言動と実際の行政行動とのギャップに驚く。
F35は安倍首相が1兆2000億円という巨額支出をして105機の追加購入を決めた次期主力戦闘機だ。
ベテラン・パイロットの墜落事故についてはもっと時間をかけて慎重に原因を追究すべきだろう。米国ロッキード・マーチン社が開発製造した機体には何も原因がなく、推定だけで自衛隊のパイロットに原因があったと結論を出すのはあまりに非論理的だ。まるでトランプ大統領やロッキード社に遠慮しているようではないか。
■本当に「空間識失調」なのか
事故はどのようにして起こったのか。航空自衛隊の発表に基づいて再現してみよう。(「航跡概要図」参照)
https://image.chess443.net/S2010/upload/2019062100001_1.jpg
航空自衛隊の発表資料より
発表によれば、4月9日午後6時59分ころ、三沢基地所属のF35A戦闘機の4機編隊が同基地を離陸。1番機に搭乗していた細見彰里(ほそみ・あきのり)3等空佐(41)は同7時25分ころ、戦闘訓練の対抗機2機を訓練の上で撃墜したことを地上の管制機関に報告した。
その1分後、近づいていた米軍機との距離を取るため管制機関から降下の指示を受け、細見3等空佐は「はい。了解」と送信し、左降下旋回を始めた。
この時、近づいてきた米軍機の高度は約1万1300メートル。細見3等空佐のF35Aは約9600メートルだったが、細見3等空佐は約4900メートルまで約20秒で降下、時速約900キロ以上という急降下だった。
さらに午後7時26分15秒前後、管制機関は左旋回を指示、細見3等空佐は左旋回した後「はい、ノック・イット・オフ(訓練中止)」という落ち着いた送信の声を最後に約4700メートル下の海面に時速約1100キロ以上の速さで激突したとみられる。
航空自衛隊の発表では、緊急脱出の形跡は確認されず、機体は激しく損壊し、部品や破片などが海底に散乱していたという。
では、事故原因についてはどうか。航空自衛隊はまず、酸欠やG―LOC(重力に起因する意識喪失)、機体の不具合などの可能性は極めて低いとしており、その上で次のように結論づけている。
有効な回復操作が可能な最低高度に至っても回復操作が見
られないことから、操縦者が「空間識失調」(平衡感覚を失っ
た状態)に陥っており、そのことを本人が意識していなかっ
た可能性が高いと推定
しかし、この「推定」は本当に合理的なのだろうか。
航跡概要図を見てまず驚くのは、細見3等空佐が約9600メートルの高さから約4900メートルの高さまで時速約900キロの速さで左旋回しながら降下し、さらに左旋回しながらスピードを緩めるどころか速めて海面に激突していることだ。この間、本当に細見3等空佐は「空間識失調」の錯覚の中で操縦桿を握っていたのだろうか。
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航跡概要図(イメージ) 航空自衛隊の発表資料より
■飛行時間3200時間のベテラン・パイロット
「空間識失調」とは何か。バーティゴともいい、地上が下にあるのか上にあるのか、あるいは機体が上昇しているのか下降しているのかさえわからなくなる状態のことで、夜間飛行や濃霧の中などで地平線や水平線が見えない飛行中に陥りやすいという。
ここで合理的な疑問は、細見3等空佐は総飛行時間3200時間、F35での飛行時間は60時間という経験を持つかなり熟練したパイロットであるという点だ。これほどのベテラン・パイロットが空間識失調に陥り、海面に激突するまで気がつかなかったということがありえるだろうか。
疑問の第2点は、空間識失調は周りが見えない夜間などに起こりやすいとはいえ、F35のパイロットは夜間でも昼間のように見えるゴーグルがついたヘルメットを着用している点だ。F35自体1機100億円を超え、維持費を含めると300億円は超えると言われるが、ヘルメットひとつ取っても4400万円という代物だ。
F35は、このヘルメット・ゴーグルと風防ガラスのセットで、明るすぎる時は暗めに、夜間は昼間のように外が見える「総合視認システム」を採用している。つまり、どんな強烈な太陽光線の下にいても、真っ暗な夜中にいても、操縦桿を握ってさえいれば快適なジェットの空が楽しめるシステムになっているのだ。
したがって細見3等空佐も最後まで水平線をにらんでいたことは確実だろう。横に見える水平線の状態をにらみながら、飛行時間3200時間のベテラン・パイロットが水平飛行の錯覚の中に居続けたということが果たしてありえるだろうか。それともこの「総合視認システム」が壊れていたとでも言うのだろうか。
実は、墜落原因については、パイロットの空間識失調などではなく、機体の方に問題があったのではないだろうか、とする見方が根強い。
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F35A=2019年4月10日、航空自衛隊三沢基地
■「ある特定の操作法」
2018年6月、米国会計検査院(GAO)はF35に966件もの未解決の欠陥があり、そのうち111件が「安全性や他の重要な性能を危険にさらしうる欠陥」と位置づけている。
これだけ多くの欠陥がGAOによって指摘されていることも驚きだが、さらにこの6月12日、米国のオンライン軍事専門誌ディフェンス・ニュースが内部文書を入手し、「13の最も重大な欠陥」があると報じた。超音速飛行は短時間だけ可能、制限時間を超えるとステルス機能を失い、機体の損傷などもあることなどが指摘されているが、その6番目に掲げられた項目は今回の自衛隊事故を考える上で座視できない欠陥だろう。直訳するとこうなる。
ある特定の操縦法の後、F35BやF35Cのパイロットは常に
完全に機体の上下左右のコントロールをできるわけではない
ここでなぜF35Aが含まれていないのかは不明だが、主語のパイロット以下の原文を示すとこうだ。
Pilots are not always able to completely control the aircraft’s
pitch,roll and yaw.
pitch,roll and yaw というのは簡単に言えば上下左右のこと。飛行機に即して言えば、進行方向に対してまっすぐな直線がX軸としてのroll、水平方向がY軸としてのpitch、垂直方向がZ軸としてのyawだ。
つまり、ある特定の操縦法の後ではパイロットは、進行方向、水平方向、垂直方向すべての機体のコントロールに支障が生じてしまうと言っているのだ。パイロットにとってこれほど大変なことはないだろう。
「ある特定の操縦法」とは何だろうか。
一般的には戦闘機同士の対決、俗に言うドッグファイトのことを指すようだが、細見3等空佐が直前に訓練していたのは、まさに2機対2機に分かれての「対戦闘機戦闘訓練」(航空自衛隊発表)だった。しかも、その直後に左旋回して急降下している。
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空自のF35Aを捜索する米海軍機と海自の護衛艦=2019年4月10日、青森県三沢市沖の太平洋上
■電子化された「高技術」だが…
実は私は、このディフェンス・ニュースの記事が出る前に、専門家から、自衛隊機事故の真の原因は機体の上下左右の傾きを測るジャイロセンサーの問題なのではないか、と聞いていた。
かつてはアナログ式だったジャイロセンサーはコマの原理を応用しており、傾いた姿勢から真っ直ぐになろうとするコマの原理を応用して傾きを測る方式を採っていた。アナログ式ではあるが、かなり完成度の高い技術だった。
ところが、近年これを電子化したのはいいが、地磁気や飛行機自体の磁気の影響を受けやすいという。したがって、電子化したこのジャイロセンサーをジェット戦闘機に組み込んだ場合、どのような影響を受けるのかよくわかっていない、と専門家は指摘していた。
この電子化ジャイロセンサーが原因となって、民間航空機であるボーイング737MAXが2018年10月にインドネシアで、今年3月にはエチオピアで相次いで墜落している。
機首の上下の向きをコントロールする水平尾翼はパイロットが手動で操作しているが、737MAXでは、この操作を補助するためにMCAS(エムキャス)と呼ばれる装置を初めて設置した。機体の前方につけたセンサーで機首の角度を検知、そのデータを基にMCASが自動的に機首を下げる。
このことを取材して報道したNHKの「ニュースウオッチ9」によれば、インドネシア事故の調査報告書に驚くべきデータが記されていた。
事故の前にパイロットが20回以上も機首を上げようと操作を繰り返し、そのたびにMCASが機首を下げようとしていた。つまり、どういう不具合が生じたのか電子化されたジャイロセンサーが機首を下げよう下げようとしているのに反し、パイロットがそれに抗して機首を上げよう上げようと悪戦苦闘しているうちに地上に激突してしまったという状況だ。
もちろん、簡単に推論の糸がつながるような話ではないが、事故を起こした自衛隊機についても、その観点から十分調査すべきポイントではないか。
戦闘機の歴史は教訓に満ちている。
太平洋戦争の初期、日本の零戦はなぜ強かったのか。簡単に言えば操縦士の安全性を極限までそぎ落とした設計だったために、軽く、戦闘性に秀でていたためだ。安全性を追求すれば鉄板の厚さなども分厚くなり機体は重くなる。戦闘機の場合、この「割り切り」が問題になる。
F35の場合、ステルス性と重厚なコンピューター装備が特徴だ。特にコンピューター装備では機体の周りに張り巡らせた配線のケーブルが相当に重くなる。私も専門家に100メートルのケーブルを持たせてもらったが、かなり重い印象を持った。このケーブルが1機につき何千メートルも張り巡らされているのがF35だ。
そして、F35はこのコンピューターシステムを盛り込みすぎているのではないか、と専門家は指摘した。この盛り込みすぎのシステムがジャイロセンサーにどのような影響を与えたか。
戦闘機コンピューターのもうひとつの問題は、エンジニアの問題だ。マイクロソフトやアップルなど民間のシニアクラスのエンジニアは、年収数千万円。ところが、軍需産業に関わるエンジニアの場合、いたるところで守秘義務に縛られる上に違反すれば重罪、しかも年収はせいぜい1000万円クラス。優秀なエンジニアが民間と軍需のどちらに向かうかはおのずと明らかだろう。
今回のF35墜落事故の原因を考える上でもうひとつ大きく膨らむ疑問は、フライト・データ・レコーダーが見つかっていないという点だ。通称ブラックボックスと呼ばれるこのレコーダーは、端的に言って墜落事故を前提にして製造、搭載されている。海底に破片が散乱している状況まで確認していながら、肝心のブラックボックスが未発見という事態が果たしてありえるだろうか。
このブラックボックスのデータを見ればすべて明らかになるだろうが、なぜかその捜索さえも打ち切られている。事故の真相が明らかになることがそんなにまずいことなのか。あるいは、そんなに早く捜索を打ち切る理由があるのか。どう考えても首をひねらざるをえない。
細見3等空佐が最期にどのような闘いを遂行していたのか、何としても明らかにする義務が、残された者、あるいは政府にはあるのではないだろうか。今後も、F35は日本の上空を飛び続ける。「空間識失調」などという推定の結論ではなく、事実に基づいた原因究明は航空自衛官のためにも、ジェット音の下にいる国民のためにも必要だろう。
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トランプ米大統領(右)との首脳会談で、握手を交わす安倍晋三首相=2019年4月26日、ワシントンのホワイトハウス
■ロッキードからの高い買い物
F35は民主党の野田政権時代に42機購入することを決定したが、安倍政権はさらに105機を買い増し、合計147機を導入することにしている。この閣議了解が2018年12月。これにより航空自衛隊の現有F15戦闘機のうち99機をF35と入れ替える。
ところが、今年3月、米国防総省は2020年度から24年度までの間に、日本の航空自衛隊が退役を決めたF15を80機購入すると発表した。日本にはF35を売り込んでおきながら自らは以前のF15購入を決めるというとんでもない動きだ。
F35は米空軍、海軍、海兵隊合わせて2000機以上配備する予定なので、F15の80機購入は問題にするほどの数ではないと見る見方もあるが、専門家は「予定は単なる予定。これからF15に切り替えていく動きが出てくるのではないか。日本への売り込みは、ロッキードの製造ラインを動かしていくための方便ではないか」と皮肉に見ている。
F35については米国でも評判は芳しくないようだ。F16戦闘機を設計したピエール・スプレイ氏は、F35に関するインタビューを受けて「生まれつきどうしようもない飛行機だ、構想そのものがバカなんだ」と取り付く島もない。
――なら、なぜこんなもの作ったんですか?
金じゃよ。金をつかうこと、それがこの飛行機のミッションだ。
米議会からロッキードに金を送る。それがこの飛行機の真の
ミッションなのさ。
ロッキードと言えば、日本ではすぐに1976年のロッキード事件が思い出される。表向きは民間航空機L1011トライスターが問題になったが、実は軍需用の対潜哨戒機P3Cが、日本に対するロッキードの売り込みの本命だった。P3CからF35へ、ロッキードからの高い買い物は相変わらず続いている。
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019062100001.html
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