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どうみる安倍改憲と「令和新時代」論
一橋大学名誉教授(憲法学) 渡辺治氏に聞く
しんぶん赤旗 2019年6月25日【1面】
安倍晋三首相は、改憲を参院選の争点とし、「令和」・改元ブームに乗せて強引に進める構えです。首相の狙いと改憲阻止のたたかいについて、渡辺治一橋大学名誉教授(憲法学)に聞きました。
(中祖寅一)
自民党の参院選公約パンフレットの最初のページには、安倍晋三首相が「令和」の額の横で話す写真が登場し、冒頭文章は、「新しい時代が幕を開けました。」で始まり「国民の皆様とともに、新しい令和の時代を切り拓(ひら)く覚悟です。」で締めくくっています。おまけに、6本柱の重点政策のすべての頭に「令和新時代」をつける仰々しさ、極めつきが6番目の柱に憲法の「早期改正」がうたわれたことです。
安倍政権が進めメディアが手放しでもてはやす「令和新時代」の議論は何を狙っているのでしょうか。一つは参院選を前に、加計だの森友だの、安倍政権がこの間積み重ねてきたうそと悪政の数々を「新しい時代だ」といって消し去ることです。もっとも、年金問題やイージス・アショアの問題など、消し去るそばからさらに大きな炎が上がり、とても思惑どおりにはいきそうもありません。
もう一つは、「新時代」を口実に、いままで行き詰まっていた課題を再浮上し加速させるねらいです。その本命が「令和改憲」論です。右派雑誌『WiLL』の論考で、安倍首相が「令和の時代にふさわしい憲法づくりへ、機運を盛り上げていきたい」と述べるなど、何の関係もない「新しい時代」と新しい憲法をくっつけて、改憲への機運を再起動する狙いがはっきり表れています。
その背景には、安倍改憲が、3000万人署名を掲げた市民アクションの運動、市民と野党の共闘、野党の頑張りで、17年の首相の改憲提言以来2年にわたり、改憲発議はおろか改憲案の提示すらできていないという行き詰まりに陥ったことへの焦りと、その打開の新戦術があります。強行路線が頓挫したため、再び参院選で3分の2を維持できなければ改憲が挫折しかねなくなったからです。
新戦術とは、3000万人署名に対抗し草の根から改憲世論の醸成をはかることです。世論を変えられなかったことが、改憲行き詰まりをうんだという「反省」からです。
不利を承知で
そのため、参院選でも改憲を重要な争点としてうちだそうとしています。大きな方針転換です。なぜなら、安倍自民党は、改憲だけでなく特定秘密保護法も戦争法も、国民に警戒感をもたらす争点を隠すことで5回の選挙に勝ってきたからです。改憲を隠していくら選挙で勝っても、国民世論が変わらなければ改憲を強行できない、そこで、今回は不利を承知で改憲を前面に掲げてきたのです。
「令和改憲」論は、国民の間に改憲の雰囲気をつくるには何でも利用したいという苦肉の策にほかなりません。
日本共産党の志位和夫委員長が、最近の論考「天皇の制度と日本共産党の立場」で、9条改憲に「令和」・改元を利用することは「最も危険な天皇の政治利用だ」と警鐘を鳴らしていますが、全くその通りだと思います。
(1面のつづき)
志位論考にふれて
憲法の生きる社会を求め
私の師の奥平康弘は、「憲法9条は未完のプロジェクトだ」と繰り返し唱えていました。9条の理念は依然として実現途上の課題だからです。ところが、安倍改憲は9条の実現を目指すどころか、全く逆に破壊しようという企てであり、ひいては日本国憲法が目指す社会の根本的な改変に他なりません。ですから、安倍改憲を許すか許さないかのたたかいは、文字通り、憲法を生かす日本をつくるか、壊すかの正念場になっています。
天皇像を探求
こうした憲法の正念場の時期に発表された志位論考は、憲法を生かす日本をつくる、という展望の中で、憲法が目指す象徴天皇像を改めて探求したものだと、私は読みました。
戦前の侵略と植民地支配の歴史が政治の全権力を握った専制的天皇制の下で遂行されたという反省に立って、二度と軍国主義の復活を許さぬため、日本国憲法は、9条の平和主義とともに、天皇制についても根本的な転換を図りました。国民主権を明記し、「国政に関する権能を有しない」として天皇から一切の政治権限を剥奪したのです。その結果、憲法の規定を守る限り、天皇という制度は戦前のような社会進歩の障害とはなりえないと志位論考は語っています。
ところが、戦後の自民党政治は憲法が求める象徴の順守どころか政治利用を繰り返し、憲法の規定と精神からの逸脱を強めてきました。その頂点が安倍政権にほかなりません。
こうした認識に立って、志位論考は、天皇問題の中心課題を、憲法の「制限規定の厳格な実施」と「憲法の条項と精神からの逸脱の是正」に設定し、この見地から、「公的行為」の逐一の検討や、明治憲法時代を踏襲するような儀式の批判、男系男子にしか皇位継承権を認めない制度の検討など、憲法の求める象徴天皇の制度はどうあるべきかを構想しています。
分岐点に提起
志位論考が、安倍首相の「令和改憲」論を天皇の最悪の政治利用だと批判したのは、それが9条破壊の試みであると同時に、憲法が求める象徴天皇像からの背反でもあるという点で憲法からの二重の逸脱だからだと思います。
そういう意味で、志位論考は、安倍改憲をめぐり日本国憲法の生きる社会へ前進するのかそれを壊す攻撃を許すのか、という分岐点に立つ現代の状況とかみ合った問題提起となっていると思います。
憲法の心臓に当たる9条の改憲を市民の力で阻むことを通じて、憲法が生きる日本への一歩を踏み出すことが求められます。
参院選のたたかい
改憲の息の根止める好機
参院選を前に、安倍改憲とのたたかいは正念場を迎えています。
改憲派に3分の2の議席を許しながら、私たちがこれを2年間食い止めたことで、安倍首相の野望を打ち砕いて、勝負を参院選に持ち込むことができたのです。立憲野党が圧倒的に勝利すれば安倍改憲の息の根を止めるチャンスを私たち自身がつかむことを確認する必要があります。
安倍政権の支持率は「堅調」に見えますが、消費税、改憲、原発、沖縄の基地問題など主要政策の全てで反対が多数であることをみれば安倍政治を支持していないことは明らかです。にもかかわらず安倍政権支持が続いているのは、国民に安倍政治に代わる選択肢が見えない中で「仕方のない支持」にすぎません。
共通政策重要
これを打ち破るカギは、国民に安倍政治に代わる政治の姿が示され、同時に、現実にこうすれば変わるという展望を示すことです。
この点で、今年5月29日、市民連合が提示して5野党・会派が合意した共通政策は、安倍政治に代わる構想を国民に示す大きな意味があると思います。
共通政策では、第1に、安倍政治と野党の対決点のほぼすべてに対案が示されました。
17年の総選挙前につくられた7項目合意と比較すると、前進は明らかです。共通政策では安倍9条改憲への反対表明だけでなく改憲発議の阻止をうたい、7項目合意には入らなかった辺野古新基地建設中止と普天間基地撤去も明記されました。また7項目にはなかった消費税増税の中止も入りました。
また、第2に、共通政策では、安倍政権が掲げる二つの悪政、改憲・軍事大国化と新自由主義改革の再起動の双方に対し、それに代わる政治の構想がうち出されました。
軍事大国化に代わる政治という点では、安倍改憲に反対するだけでなく、事実上の憲法破壊―「いずも」の改修や陸上イージスの配備など「防衛予算、防衛装備」拡充―にも反対し「国民生活の安全という観点から他の政策の財源に振り向ける」ことが合意されています。
この間の米朝会談の進展を踏まえ、東アジアと朝鮮半島の平和的解決を打ち出したことも見逃せません。
安倍政権の悪政のもう一つの柱である新自由主義改革に対しても、消費税増税の中止だけでなく、最低賃金1500円を目指すとし、8時間働けば暮らせる賃金を実現し、貧困・格差の解消をうたった。まさにこれはアベノミクスへの対案として注目される内容です。
これらは、安倍改憲に反対する市民と野党の共闘が多くの試練を乗りこえて持続する中で、政党も変化した結果だと思います。
本気問われる
大事なのは、共通政策を「一片の紙切れ」にしないこと。共通政策を中心に据え、市民が政治を変える大きな運動を展開できるかどうかが、参院選の勝利にとっても重要なポイントです。同時に、全国の共通政策は市民と野党の共闘の経験を踏まえた、いわば「最低ライン」であり、これを各県や小選挙区ごとにつくられた市民連合でより具体化し、レベルの高い地域の共通政策をつくっていくことがどうしても必要です。
安倍政治を変える旗印を掲げながら、安倍改憲に反対して市民アクションに結集して3000万人署名に取り組んできた諸勢力が、参院選での立憲野党の躍進のために本気で立ちあがることができるかどうか、これが参院選の勝敗を決します。16年、17年の時を上回る形で市民が本気で立ち上がれるかどうかが問われます。
(3面)
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