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日本はどうしたのか 正気とは思えないトランプ“狂騒”<中>
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2019/05/27 日刊ゲンダイ 文字起こし トランプ米大統領(左)とラウンドする安倍首相は、自身のツイッターに写真を投稿/(C)共同通信社
今回のトランプの国賓来日。日本の過剰なほどのもてなしぶりの一方で、「米国では『トランプの息抜き』程度にしか受け止められていない」(国際ジャーナリスト・堀田佳男氏)という。 日本への出発直前に、トランプはホワイトハウスで報道陣の囲み取材に答えたが、やりとりはロシア疑惑やイラン問題が中心で、日本が言及されることはなかった。 それでもトランプが訪日したのには2つの打算がある。 1つは来年の大統領選に向け、支持者にアピールすること。トランプにとって目下の最大の関心事は、来年11月の大統領選での再選だ。トランプは26日、ゴルフ場で昼食を取った後、こうツイートした。 <日本との貿易交渉で大きな進展があった。農産品と牛肉は大変な影響がある。7月の(参院)選挙の後、大きな数字を期待している> 支持者の農家や畜産業者へ、いち早く“成果”を発信したわけだ。日米関係が対等ではなく隷属だと分かっているトランプは、このツイートに日本から決して反論が出ないことも計算済みだろう。 もう1つの目的は、独メルケル首相などトランプを危険視する世界のリーダーらに対する当てこすり。 「欧州の首脳らがトランプ大統領と距離を置く中で、『同盟国の日本の安倍首相は彼らとは違う。私のことをこんなに歓待してくれているんだ』と言いたいのでしょう。安倍首相との蜜月を内外に示すことで、自らの正当性をアピールする狙いもあると思います」(堀田佳男氏=前出) 23日付の米紙「ワシントン・ポスト」は、<安倍首相ほどトランプ大統領に媚びへつらうことに心血を注いできた指導者はおそらく世界中を探してもいないだろう>と書いていた。 世界中が米中貿易戦争や米国の対イランでの一触即発の現状に懸念を強める中、この国はトランプにいいように利用され、世界から嘲笑されている。 日米交渉は「参院選後」(ライトハイザー米通商代表との会談に臨む茂木経済再生相=右)/(C)共同通信社
4月下旬に行われた日米首脳会談時には、トランプは「私の訪日前に合意」と“日米貿易交渉”について5月決着に期待を示していた。それがいったん、矛を収めたのは、「参院選への悪影響を避けたい」という日本側の要望を受け入れたからだった。一部メディアが具体的には「参院選後」という日米の“密約”を報じていたが、26日トランプ自身が、<日本との貿易交渉で大きな進展があった。7月の(参院)選挙の後、大きな数字を期待している>とツイートしているのだから間違いない。 この密約は恐ろしい。安倍は選挙に勝つために国益を売り渡したも同然。そしてトランプのことだ。「待ってやったんだから、分かっているな」と倍返しを求めてくるのは明らかだ。 「『TPP水準は譲らない』など空々しい安倍政権の主張も、全て選挙まで、ということです。それを隠して国民をごまかすつもりだったのが、トランプ大統領に白日の下にさらされてしまった。こんなバカな話がありますか。国民はもっと怒らなきゃいけません」(東大教授・鈴木宣弘氏=農政) 日本がTPPと欧州EPA(経済連携協定)を発効させたことに米国の農家は不満タラタラだ。協定に参加していないため、関税引き下げの恩恵を受けられず、競争条件が悪化。トランプはそうした農家から、より強力な日米FTA(自由貿易協定)をせかされている。 「参院選後、米国の要求がエスカレートするのは目に見えています。農業をいけにえにすれば自動車は守れるとの見通しがありますが甘い。牛肉の関税をゼロにしたとしても、米国の自動車業界にとっては何のメリットもありません。当然、自動車業界も成果を求めるので、結局、日本はどんどん譲歩させられ、全て失うことになるでしょう」(鈴木宣弘氏=前出) 選挙の勝利と政権維持という党利党略、私利私欲のため、安倍はトンデモない約束をしてくれたものだ。 驚くほどの破格の待遇(相撲観戦をするトランプ米大統領夫妻と安倍首相夫妻)/(C)共同通信社
25日付の朝日新聞のオピニオン面に掲載された元米国務次官補(2013〜17年)、ダニエル・ラッセル氏の見解には愕然とした。安倍がトランプに「取り入る」ことは賢い決断としながらも、「トランプ政権の2年目からはそれが機能しなくなった」と言うのである。 <私がよく聞くのは、安倍氏がトランプ氏にどんなに話しても、本人の頭になかなか刺さらないようなのです。本人は「わかった」といいながら、実際には違ったふるまいをしています> これが事実だとすると、今回の前代未聞のおもてなしも、トランプにはたいして効果がないということだ。 「大相撲観戦では例外的に土俵際に椅子まで置いた。驚くほどの破格の待遇でした。日米はいつまでたっても対等ではなく、二歩下がって付いていく子分なのだと改めて認識させられました。安倍―トランプが本当の友人関係なのであれば、安倍さんにはもっと意地を見せて欲しいのですが……」(堀田佳男氏=前出) 27日に日米首脳会談が開かれるが、共同声明は作らない。いや作れないのだろう。 国際ジャーナリストの春名幹男氏はこう言う。 「首脳会談はわずか1時間です。通訳が入るので事実上30分間。ひと通り話しておしまい。何の交渉もしないということです。トランプ大統領との蜜月関係は安倍内閣の支持率にとってプラスでしょうが、米国内のトランプ支持は5割以下。半数の米国人には安倍首相の媚びた対応は奇異に映っている。それは日本人にとって決していいことではありません。来年の大統領選だってトランプが再選するとは限らない。もし民主党政権になったらどうするのか。あまりハシャギ過ぎるのは得策ではないと思います」 トランプを“後ろ盾”にしても、拉致問題も北方領土問題も1ミリも動いていない。安倍という男は一体、何をしているのか。
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