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増税延期なら安倍退陣が筋 ドサクサW選という狂った論法
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252503
2019/04/23 日刊ゲンダイ 文字起こし 新しい政府専用機でゴキゲン外遊へ(C)共同通信社 統一地方選が終わり、永田町には解散風が吹き始めた。最大の誘因は、大阪12区と沖縄3区の衆院補選で自民党が「ダブル敗北」を喫したことだ。夏の参院選でも議席を大幅に減らすのではないかと、与党内では警戒感が高まっている。 日本維新の会が根強い支持を得ている大阪と、基地問題で安倍政権に痛めつけられてきた沖縄は事情が「特殊」だから、「参院選への影響は限定的」という見方もあるが、第2次安倍政権の発足後、衆参の補選で負けたのは初めてだ。痛手には違いない。 統一地方選前半戦の7日に投開票された41道府県議選での各党の得票率をもとに、産経新聞が夏の参院選(改選124)での獲得議席を試算したところ、自民党は過半数を割り、憲法改正の国会発議に必要な3分の2には、自公と維新の3党を合わせても届かなかったという衝撃的なデータも出てきた。で、急浮上しているのが衆参ダブル選である。 参院選単独では負ける可能性があるが、衆参ダブル選なら政権選択選挙になる。野党がバラバラで共闘体制が整わないうちに、解散に打って出れば圧勝できるという姑息な戦略だ。 安倍首相が10月に予定されている消費税増税の延期を決め、例によって「国民に信を問う」という口実で衆院を解散するという臆測が一気に広がっているのだが、倒錯しているとしか言いようがない。 「総理がやると言えばやる」 増税断念は、アベノミクスの失敗を認めることと一体だ。本来なら、自らの政策失敗を謝罪して、内閣総辞職が筋である。 それなのに、「ダブル選にすれば勝てそうだから、消費税を解散のネタにしてしまおう」なんて、よくもまあ、そんな恥知らずなことを考えられるものだ。 「日本の経済状況を考えれば増税凍結は当然ですが、『アベノミクスで景気が良くなったから増税する』などと威勢のいいことを言っておいて、増税断念に追い込まれれば、普通は責任を取って退陣し、次の政権に経済政策を委ねますよ。自分の失敗を棚に上げて、英雄気取りで『信を問う』なんて、普通ではあり得ない厚顔ぶりですが、安倍首相は自分が生き延びるためなら何でもやる。前言撤回も嘘も平気だから、増税延期でイケシャーシャーと衆院解散に打って出る可能性は十分あります。だからこそ、側近の萩生田幹事長代行を使って、観測気球を揚げさせたのです」(政治評論家・本澤二郎氏) 18日にネット番組「真相深入り!虎ノ門ニュース」に出演した萩生田幹事長代行は、日銀短観で景気が落ちていることを踏まえ、こう発言していた。 「この先、(景気が)危ないぞってところが見えてきたら、崖に向かって皆を連れて行くわけにはいかないので、また違う展開はあると思います。(増税を)やめるとなれば、国民の皆さんの了解を得なければならないから、『信を問う』ということになりますよね」 まったく、崖っぷちまで連れてきたのは誰なのかと言いたくなるが、衆参ダブル選の可能性について、22日の会見で聞かれた菅官房長官も「衆院解散は総理の専権事項なので、総理がやると言えばやるし、やらないと言えばやらない」と含みを持たせた。問題は、こうしたヨコシマな政府や与党幹部の言動を無批判で垂れ流すメディアの側にもある。 つい本音が(黒田日銀総裁)/(C)日刊ゲンダイ
そもそも、3月末に成立した今年度予算は、消費税増税を前提にしたものだ。だから、増税に反対の野党は予算案にも反対した。 与党側の賛成多数で可決した予算案には、増税対策も盛り込まれている。いわゆるバラマキもある。この予算を掲げて、与党は統一地方選を戦ったのだ。 それが地方選が終わった途端、「やっぱり増税は延期」なんて話が出てくるのは、道理が通るのか。「増税できる経済状況ではない」と予算案に反対した野党の方が正しかったのではないか。 野党と国民に頭を下げ、退陣するならまだ分かるが、増税延期で選挙をやろうなどという狂った論理を許していいはずがない。税制と選挙の私物化ではないか。解散権を弄ぶ首相の態度は不謹慎極まりなく、厳しく糾弾すべきものだ。「増税延期↓衆院解散」という姑息な思惑に乗っかり、政局報道で騒いでいるだけの大メディアはいよいよイカれていると言わざるを得ない。 「増税延期はもちろん歓迎すべきことです。法人税減税の穴埋めとして、国民の富を大企業に付け替える消費税は、凍結どころか廃止した方がいい。しかし、アベノミクスに経済を上向かせる効果がなかったことは、きちんと統括する必要がある。異次元緩和で円安にして株価を上げ、内閣支持率が上がればいいという安易な発想でズルズル続けているうちに、日本経済はすっかりおかしくなってしまいました。円安も加工業や家計にとってはマイナスの効果が大きくなり、安倍政権は統計をゴマカさなければならないところまで追い詰められています。増税延期ならアベノミクスの失敗を潔く認め、選挙より先にすべきことは日銀の黒田総裁の更迭です」(経済アナリスト・菊池英博氏) 日銀は約470兆円もの国債買い入れに加え、マイナス金利まで導入。それでも当初掲げた物価上昇目標は、いつまで経っても達成できそうにない。国際社会からは、その政策効果を疑う声も出ている。 元米財務長官でハーバード大教授のローレンス・サマーズ氏とノルウェー中銀のエコノミストらは今年1月、マイナス金利は銀行の貸し渋りを招き、経済を冷やすと主張する論文を発表した。 金融政策も株式市場も私物化 6年経ってもアベノミクスは『道半ば』なんて通用しないと思いますが、金融政策も安倍政権に都合のいいように使われてきた面があります。マイナス金利で金融機関は青息吐息ですが、政府は国債の利払いから逃れ、赤字を日銀に付け替えることができる。マイナス金利は結果として、欠陥軍用機の爆買いなど、安倍政権の放漫財政を助けています。安倍政権は黒田日銀と結託して市場も私物化し、異次元緩和で株価を吊り上げ、好景気を装ってきた。そうやって海外のファンドを儲けさせているだけです。その分、国民は実質賃金低下などのツケを払わされているのです」(菊池英博氏=前出) 日銀は国債だけでなく、日本株のETFも年間約6兆円購入している。時価ベースの保有残高は3月末時点で28兆円超に上る。日経新聞が、日銀が公表する買い入れ基準などをもとに実質保有額を試算したところ、日東電工やファナック、オムロンなど23社で筆頭株主になったとみられるという。上位10位以内の「大株主」基準では、3月末時点で上場企業の49・7%で日銀が大株主となった。上場企業の半分だ。日本はいつの間に社会主義国家になっていたのかと驚くばかりである。 黒田総裁は16日の衆院財務金融委員会で、ETF購入は「株価安定のために実施している」と口を滑らせた。直後に「物価目標の実現のため」と訂正したが、思わずホンネが出てしまったのではないか。 安倍は14年11月に消費税増税の延期で「信を問う」と衆院解散に踏み切って圧勝。16年6月にも「新しい判断」で増税を再延期し、直後の参院選で勝利を収めた。その結果、アベノミクス失敗の責任はウヤムヤになり、好景気が偽装され、金融緩和も出口も見えないまま続いている。 二度あることは三度というが、この国はまた同じ過ちを繰り返そうとしているのか。増税延期なら、今度こそ安倍の責任を問う必要がある。黒田辞任と安倍内閣総辞職。この国を崖っぷちまで追いつめた落とし前をキッチリつけさせる。それが大メディアの役目ではないのか。
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