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塚田「忖度」副大臣がバラした、「安倍・麻生道路」復活の実態
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2019.04.12 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース 麻生太郎副総理が推す福岡県知事選候補の激励会で、安倍政権のタブーともいわれる「忖度」という言葉を二度も口にし、責任を取る形で国交省副大臣の職を辞した自民党の塚田一郎参院議員。その影響もあってか知事選は麻生氏が敵視する対立候補の圧勝となりましたが、そもそも小川元副大臣が「忖度した」という「下関北九州道路」はどのような経緯をたどり現状に至っているのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で元全国紙社会部記者の新 恭さんが詳しく解説するとともに、塚田氏に対して「よくぞ政策決定の実態を白状してくれた」と大いなる皮肉を込めた賛辞を送っています。 塚田副大臣が手柄自慢で白状した安倍・麻生道路復活の真相 さすがの麻生太郎氏も、福岡県知事選の散々な開票結果が出た夜は、人並みに神妙な面持ちだった。 「残念ながら当選させられず誠にふがいなく、われわれの力不足だった。あらためて心からおわび申し上げる」 森友疑惑の公文書改ざん事件では、佐川元理財局長に責任をなすりつけて財務省から放り出し、他人事のように涼しい顔をしていたが、ことが選挙となると、福岡県連の最高顧問として、普通に責任を感じるらしい。 つまるところ、この選挙、候補者でもない麻生氏が独り相撲でぼろ負けした印象だ。前回選挙で支援した現職の小川洋氏によほどムカつくことがあったのか、新人の対抗馬を立てたのだが、ものの見事にコケてしまった。 自民党の調査で小川氏の優位は明らかだった。それでも、山崎拓、古賀誠氏らかつての自民党実力者が引退し九州政界で「一強」とおだてられる麻生氏は自分の力を過信して、知事のすげ替えに動いた。 1月14日、地元での国政報告会で、3選をめざす小川知事を、高島宗一郎福岡市長と比較して「何もやっていない。県内で伸びているのは福岡市だけだろうが」と、激しい口調で批判し、その後、安倍首相に直談判して元厚生労働官僚、武内和久氏の推薦をとりつけた。 二階幹事長の頭越しに話を進める傲慢さに、麻生シンパが多いとされる県連の内部でさえ反発が強まる。山崎、古賀といったOBも小川陣営についた。自民党は分裂選挙に突入し、武内氏の人気は一向に盛り上がらない。そんななかで、事件は起きた。 4月1日、「自民党推薦候補 激励集会」に現れた国交副大臣、塚田一郎氏はおそらく滑らかな弁舌がウリなのだろう。話がとても分かりやすい。 「麻生太郎命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です」 「かわいい弟分の大家敏志参院議員(麻生派)の要請があり、おやじ(麻生氏)の顔が浮かんで足を運びました」 まるで任侠映画のセリフのように応援演説は始まった。集まっているのは麻生氏の支持者が大半だ。「おやじ」と慕えば、反応がいいに決まってる。聴衆を喜ばせたい一心で、塚田氏の気分は高揚した。 麻生氏のために、どんな手柄を立てたか。その証明にもってこいの話があった。福岡政財界が悲願とする「下関北九州道路」建設の件だ。昨年12月20日のこと。 「大家敏志さんがですね 私のもう一人逆らえない吉田博美さんという参議院の幹事長と一緒に 私の副大臣室にアポをとって来られました。『地元の要望がある』。これが下関北九州道路です」 大家議員は福岡選出の参院議員、吉田氏は自民党参院の幹事長をつとめる実力者だ。 「コンクリートから人っていうとんでもない内閣があったでしょ。民主党の悪政権ができて、こういう事業は全部フリーズしちゃったんです。下関と北九州ですよ、みなさんよく考えてください。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理ですよ。麻生副総理の地元でもある北九州への道路の事業が止まっているわけですよ」 何でも民主党政権のせいにする安倍首相の脳回路をコピーしたかのようだが、「下関北九州道路」の凍結は、自民党福田政権が2008年に決めたものだ。 テンポの良い塚田節はクライマックスへ。 「吉田幹事長が私の顔を見て『塚田、わかってる?これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ』と。『俺がなんで来たと思うか』と言うんですね。私すごく物わかりが良いんです。すぐ忖度します。『わかりました』と。そりゃ総理とか副総理がそんなこと言えません」 なるほどこうやって実力者のために気を利かせる者たちが出世するのか。逆らえない人物に頼まれたら、国民全体の奉仕者たる立場を捨て、個別の政治的利益に手を貸す。それを恥と思わないどころか、得意満面に披露する。 それにしても、なぜわざわざ「忖度」という、安倍・麻生両氏にとって忌まわしい言葉を二度も使ったのだろうか。一度目は「私すごく物わかりが良いんです。すぐ忖度します」。 二度目はこれだ。「森友とかいろいろ言われていますけど、でも私は忖度します」 単なるウケ狙いとも思えない。「私は忖度します」は、麻生氏に忖度しない誰かへのあてつけではないか。だとすれば、敵対する県知事候補、小川洋氏を意識しているに違いない。 麻生氏が前回知事選で支援した小川氏を毛嫌いし始めたきっかけは2016年の衆院福岡6区補欠選挙からだとされる。 鳩山邦夫元総務相の次男、鳩山二郎氏と、党県連会長の長男、蔵内謙氏の自民党系2人が立候補し、分裂選挙に突入した。鳩山氏は菅義偉官房長官らの派閥横断グループ「きさらぎ会」が支援、蔵内氏には麻生太郎氏がついた。副総理と官房長官が敵味方に分かれる“代理戦争”の様相を呈した。 この選挙で、小川知事が、蔵内氏への応援要請を断ったことから、蔵内陣営の選対本部長をつとめていた麻生氏の逆鱗に触れたという。 それだけではない。何かにつけ、麻生氏の言うことをやすやすと聞かないのが気に召さなかったらしい。要するに麻生氏は度を越したわがまま者なのだ。 塚田氏は、そんな麻生氏の扱い方を心得ている。言われる前に、麻生氏の意向を察して動くこと。2000年にさくら銀行を退職したあと、麻生氏の秘書をつとめた経験から会得したものだろう。 下関北九州道路を熱望する九州財界と麻生太郎氏は切っても切れない関係にある。麻生グループを率いる実弟、麻生泰氏は九州経済連合会会長であり、昨年12月16日に開かれた「下関北九州道路整備促進の会」で「安倍総理が安定した力を持っている時に、この橋の計画を決定したい」と意気込みを語った。 それから4日後のことである。塚田国交副大臣のもとを大家、吉田両議員が訪れたのは。 塚田氏は4月1日の「自民党推薦候補 激励集会」で、両議員の要請についての国交省の対応をこう語った。 「この事業を再スタートするためには、いったん国で調査を引き取らせていただくことになりまして、これを今回の新年度の予算に国で直轄の調査計画に引き上げました」 4,000万円の調査費計上によって、福田政権下の2008年に凍結された下関北九州道路建設計画は息を吹き返した。 塚田氏はよくぞ政策決定の実態を白状してくれたものだ。タテマエとウソだらけの政治家発言より、リアリティがあって、よほど面白い。 塚田氏はつまるところ究極の愚か者であり、正直者でもあった。その会場には支持者だけでなくマスコミの記者が混じっていることを知らないわけでもなかっただろう。 弁舌自慢の政治家はしばしばこの落とし穴にはまる。「日本の国、まさに天皇を中心としている神の国」と神道政治連盟国会議員懇談会で発言し内閣支持率を下げた森喜朗元首相もその一人だ。 塚田氏の場合は、統一地方選のさなかだっただけに、「忖度」発言が麻生氏の推す武内候補に与えた悪影響は少なくなかっただろう。 麻生氏の忠臣として手柄を立てたつもりが、国交副大臣辞任に追い込まれ、奈落の底へ。主従ともにお粗末な一幕を演じたものである。 image by: つかだ一郎 − Home | Facebook 新恭(あらたきょう) この著者の記事一覧 記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。
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