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2019年3月25日 週刊ダイヤモンド編集部 ,池冨 仁 :記者
政府の障害者雇用促進法「改正案」が民間企業で悪評ふんぷんの理由
近年、障害者雇用の世界は“売り手市場”で、相対的に軽度の障害者は引く手あまたとなっている。昨年夏に発覚した「障害者雇用の水増し問題」で、中央省庁などの公的機関が大規模採用に乗り出したことにより、障害者雇用の“大移動”が起こる可能性を孕んでいる(写真と本文は関係ありません) Photo by Hitoshi Iketomi
昨年から今年にかけて、世間を騒がせてきた「障害者雇用の水増し問題」は、収束に向かうどころか、さらに混迷の度を深めている。
政府は3月19日、「障害者雇用促進法」の改正案を閣議決定し、国会に提出した。公的機関には、お粗末だったチェック機能を強化させる。また、中央省庁が法定雇用率を下回った場合は、民間企業に義務付けている納付金(事実上の罰金)と同様に、不足が1人に付き年60万円のペナルティを科す。企業には、これまで認めなかった週10〜20時間しか働けない精神障害者(発達障害を含む)向けの給付金の新設にも踏み切る。
だが、こうした政府の動きに対して、民間企業の人事関係者からは、恨み節ばかりが聞こえてくる。「場当たり的で、ナンセンスだ。霞が関のお役人は、現場の実情を理解していない」(大手メーカー)、「確かに、罰金の額は民間企業と同じだが、本質的な問題が解決するとは思えない」(大手金融機関)などと、はなはだ評判が悪い。
現在、障害者雇用納付金制度は、組織の形態を問わず、100人以上の常用雇用者(1年以上の勤続者)を抱える企業は、全て対象となる。2018年4月より、民間企業に科せられた法定雇用率は、2.0%から2.2%に引き上げられた(数年後には、3.0%の水準に近付けられる)。
この2.2%を達成できなかった企業は、制度の運営主体である独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」から、1人に付き月額5万円(年額60万円)の納付金を徴収される。一方で、達成できた企業は、同じく月額2万7000円の調整金(事実上の報奨金。年額32万4000円)が支給される。
高齢・障害・求職者雇用支援機構は、厚生労働省の有力外郭団体の1つだ。地味な存在を装ってはいるが、常用雇用者100人以上の企業に対し、労働基準監督署並みに厳しい“抜き打ち検査”も行う。
その対象は、建前上は常用雇用者100人以上の全企業が対象だが、厚労省は全ての組織に対して強権を発動するのではなく、重点ターゲットを定めていると言われる。
あるIT関連企業の人事担当者は、こう打ち明ける。「障害者雇用の不足人数が2桁(10人。年間600万円)を越えると、厚労省の直接的な介入が始まる」。その後、改善がなければ、厚労省のホームページで企業名を公表される。実質的な脅しであり、見せしめである。
厚労省は、自らは非難の矢面に立つことなく、外郭団体を通じて制度を運用している。この制度は、企業における障害者雇用を進めるために、未達成企業から吸い上げた納付金を達成企業への調整金に回すという前提で設計されており、実質的に税金には依存しない「金のなる木」として機能してきた。
予算の減額といっても
本質は税金の付け替え
これまで、障害者雇用促進法(旧身体障害者雇用促進法)の規定に則り、企業に対して障害者雇用を押し付けてきた格好の国(厚労省を含む)だったが、今では産業界における求心力を失いつつある。
18年8月に発覚した障害者雇用の水増し問題では、国の28の行政機関で約3900人、地方自治体などでは約3800人、合計で約7700人の水増しがあった事実が判明した(17年6月時点)。これまで、数字ありきで企業に厳しく科してきた法定雇用率は、国・地方自治体などは民間企業より高い2.5%だったが、再調査で実際は半分以下の1.17%だったことが露呈する。
企業は、障害者雇用率の達成を実現するために、人員やコストをかけて本業には直結しない仕事を捻出するなどして、“数字合わせ”にあくせくしてきた。その裏では、世間に模範を示すべき立場の中央省庁が、前提となるデータの数値を操作するなどしていたのだ。
実は、法定雇用率の算出の根拠については、ざっくりした算定式が公開されている。だが、詳細な内訳は明かされず、今もブラックボックスのままだ。加えて、法令の無視は、旧法が定められた60年(59年前!)に遡る疑いが濃厚となってきた。もはや、何を言っても、国民の信頼は取り戻せまい。
現在、国は前例なき約4000人というスケールで国家公務員の採用を進めている。その大半は、すでに民間企業で働いている障害者の中途採用で補填する。国は、自らの不始末に対し、過去には本腰を入れてこなかった障害者雇用を急拡大させたことにより、民間企業の採用計画に影響を及ぼすという矛盾を引き起こしているのだ。
企業で働いた経験のある障害者にとっては、今回の大規模採用は唐突な話だが、より安定した国家公務員という立場に魅力を感じて転職を考えても、不思議ではない。向こう2年間で、約8000人を新規採用する以上、しばらく雇用市場の混乱は避けられそうにない。
冒頭で触れたように、国は中央省庁などにも、民間企業と同様の罰則を科すことにした。法定雇用率を達成できない場合には、1人に付き60万円というペナルティを設ける。だが、予算の執行には影響しない「庁費」の枠から、翌年度の雑費を削ることで代替する。
このペナルティの原資は、あろうことか税金なのである。仮に、ある省庁で、「障害者の採用人数が10人足りない」という場合には、600万円の罰則(予算の減額)となる。だが、その省庁へ渡る税金の額が減っても、削減分は国庫に収まるというスキームなのだ。
本質的には、行政機関内部での“付け替え”に過ぎず、当該省庁の懐が痛むこともない。こうした急ごしらえの弥縫策で、納税者の理解が得られるものだろうか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
https://diamond.jp/articles/-/197730
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