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内閣法制局長官が越権行為、「法の番人」が「安倍内閣の番犬」に変節した理由
https://biz-journal.jp/2019/03/post_27050.html
2019.03.12 文=編集部 Business Journal
参院予算委で答弁する、横畠裕介内閣法制局長官(写真:日刊現代/アフロ)
横畠裕介内閣法制局長官が参院予算委員会で吐いた「暴言」は、野党の辞任要求に発展、予算委員長が厳重注意する事態となったが、安倍政権下における霞が関劣化の象徴といえる。
問題となったのは、3月6日の予算委員会での答弁。立憲民主党会派に所属する無所属の小西洋之参院議員が、安倍晋三首相に対し「質問に答えず時間稼ぎをするような総理は戦後ひとりもいなかった。国民と国会に対する冒とくですよ。聞かれたことだけ堂々と答えなさい」と厳しく声を張り上げた。
この発言を与党が問題視すると、小西氏は横畠長官にこう質問。
「国会議員の質問は、国会の内閣に対する監督機能の表れだとする内閣の答弁書があることを確認してほしい」
小西氏は、内閣の法解釈をつかさどる法制局長官に、「自らの発言は内閣に対する監督機能であり、与党が問題視するのはおかしい」という“お墨付き”をもらおうとしたのだが、あろうことか横畠長官は、次のように法制局長官の立場を逸脱するような答弁を繰り出したのだった。
「国権の最高機関、立法機関としての作用というのはもちろんでございます。ただ、このような場で声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えておりません」
「声を荒らげて発言」とは、法解釈でもなんでもない個人的な見解である。そのうえ、横畠氏は、薄ら笑いを浮かべながらこの答弁を行ったため、野党はすぐさま「法制局長官が政治的な発言をするとは何事か」と反発。横畠氏は陳謝に追い込まれ、発言を撤回したが、さすがに自民党内からも「大問題だ。少し思い上がっているのではないか」(伊吹文明元衆院議長)と批判の声があがった。
森友学園問題での財務省の公文書改ざんに代表されるように、安倍政権下では首相に対する官僚の「忖度」の度合いがどんどん強まっている。それは、財務省に限らず霞が関全体に蔓延しつつあり、加計学園問題での文部科学省、統計不正問題での厚生労働省など枚挙に暇がない。だが、内閣法制局長官が「忖度」するのは、他の官僚とはわけが違うと、官僚OBはこう言う。
「内閣法制局長官というのは、官僚のなかでも別格です。誰よりも一番、公正中立を求められる役職で、官僚にとっては大臣に準じるような重要な存在であり、官僚の頂点に位置するまさに官僚のなかの官僚。あの暴言は、そんな立場の人が公正中立を逸脱してしまうほど、官僚機構が病んでしまったということを意味している」
■人事を使った奇策
官僚が安倍政権に忖度するのは、内閣人事局などを通じて人事を握られていることが大きいが、横畠氏の“変節”も同様に人事が背景にある。
横畠氏は東大法学部卒業後に検事となり、地方検察庁と法務省刑事局とを行き来した後に、1993年、内閣法制局参事官に異動。一旦、法務省に戻るも、99年からは本格的に法制局で足場を固め、順調に昇進、2011年にはナンバー2の内閣法制次長に就いた。内閣法制局長官は内部で長年経験を積んだ者が上り詰めるのが慣例。横畠氏もいずれは長官とみられていたが、13年8月、安倍政権は霞が関が驚愕するサプライズ人事に踏み切る。
内閣法制局に一度も在籍したことのない外務省OBの小松一郎駐フランス大使を長官に抜擢したのだ。当時、集団的自衛権の行使容認を実現したい安倍首相が、行使容認積極派の小松氏を起用して、これまで法制局が違憲としてきた憲法解釈を見直させるための奇策だった。
その思惑通り、小松氏は集団的自衛権の行使容認への道筋をつけたものの、14年5月に末期がんのため長官を退任。後任人事が注目されたが、再びの外部起用はなく、慣例に戻って、横畠氏が次長から長官に昇格した。つまり、この時点で横畠氏は安倍首相の軍門に降ったといっていい。
横畠氏は小松氏の“意思”を継いで、解釈改憲により集団的自衛権の行使を容認した。「法の番人」から「内閣の番犬」となり、あらゆる内閣の方針にお墨付きを与え続けている。内閣法制局長官就任からまもなく5年。身体の隅々まで安倍首相の意向が染み渡っていることは疑いようもない。そうしなければ、いつでも簡単にクビが飛ぶだろうことを意識しているのだろう。
(文=編集部)
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