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混迷の北方領土問題 木村汎氏が警戒する「1島マイナスα」 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/247995
2019/02/25 日刊ゲンダイ
北大名誉教授の木村汎氏(C)日刊ゲンダイ
安倍首相が「戦後外交の総決算」と意気込む北方領土問題は混迷を極めている。2016年5月に「新たなアプローチ」と称してロシアのプーチン大統領に経済協力を提案するも、状況は進展せず、昨年9月に「前提条件なしで平和条約締結」を押し込まれた。その結果、日ロ交渉の基礎は1956年の日ソ共同宣言まで後退。4島返還を目指してきた従来の政府方針の大転換を招いた。着地点は「2島プラスα」なのか、「2島ポッキリ」なのか。あるいはロシア研究の第一人者が警戒する「1島マイナスα」なのか。
――17日に日ロ外相会談が行われました。昨年12月の首脳会談で外相を平和条約締結の交渉責任者としてから2回目ですが、協議は平行線。ラブロフ外相は北方領土のロシア主権を含む第2次世界大戦の結果を認めるよう求める主張を曲げませんでした。
平和条約締結交渉の年内進展はないでしょう。安倍首相は6月に大阪で開催されるG20首脳会議のタイミングで条約締結の大筋合意を狙っているようですが、じらし作戦を取るロシアは乗ってこない。そもそも、昨年11月のシンガポールでの首脳会談で56年宣言を基礎とする交渉に合意したのが大ポカだった。許されない大ポカです。
――4島返還を目指す政府方針から一転、歯舞群島と色丹島の2島引き渡しに議論は引き戻された。
プーチン大統領が「前提条件なしで平和条約締結」と言いだした時に、安倍首相は「冗談が過ぎる、話にならない」とバーンと反論すべきでした。ところが、安倍首相は「平和条約締結」という言葉尻を利用し、日本側としては交渉を前進させたかのように56年宣言まで譲歩した。2島引き渡しでよしとするのであれば、60年前の鳩山一郎政権時代に平和条約は締結できたのです。当時の日本はソ連に対して非常に弱い立場だった。シベリアに約60万人が抑留され、常任理事国のソ連の反対で国連に加盟できず、日ソの経済力は雲泥の差でした。日本が一番苦しかった時代にさえのまなかった条件に立ち返るべきではないのです。
■「戦後1ミリも動かなかった」は嘘
――現在とは状況が違う。
安倍首相は歴代首相が絶壁に爪を立てるような思いで積み重ねてきた苦労を一挙に台無しにしてしまった。ロシアは北方4島の帰属問題解決が日ロ交渉のテーマだと認めていた。細川護煕首相とエリツィン大統領による93年の東京宣言、森喜朗首相とプーチン大統領による01年のイルクーツク声明でハッキリしています。安倍首相は「北方領土問題は戦後1ミリも動かなかった」と言いますが、事実に反します。
――なぜ安倍首相は日本の主張を反映した東京宣言とイルクーツク声明に目をつぶるのでしょう?
「国際法で通用するのは両国議会が批准した56年宣言だけ」と主張するプーチン大統領の詭弁に反論せず、それをうのみにしたからです。現代の国際法の通説とは異なります。批准の有無は以前ほど重要視されていません。グローバル化が進んで世界の首脳は国内外で毎日のようにトップ会談に臨み、さまざまな文書に署名している。すべてを議会で批准するのは現実的に難しくなったためです。日本の例でいえば、沖縄返還につながった69年の佐藤=ニクソン共同声明も、中国との国交を正常化させた72年の日中共同声明も批准されていません。ロシアもソ連時代の75年に欧米諸国34カ国と調印したヘルシンキ宣言を批准していない。欧州諸国と国境不可侵で合意した非常に重要な協定にもかかわらず、です。安倍首相の国際法不勉強がプーチン大統領の詭弁を認める結果を招いた。
――安倍首相は「交渉の経過はつまびらかにできない」と逃げ、方針転換について説明しません。
交渉中に細かな過程までオープンにするべきではありませんが、根本原則の変更を主権者である国民に何ら説明しないのは道理が通りません。安倍首相はシンガポール会談以降、「北方4島の帰属の問題」を「領土問題」とぼやかし、「固有の領土」を「主権を有する島々」と言い換えている。今月7日の北方領土返還要求全国大会でのスピーチでも、昨年まで「4島の帰属の問題」としていたのを「領土問題」とごまかした。
――時事通信の世論調査(8〜11日実施)では、日ロ交渉の主導権を握るのは「ロシア」との回答が70.0%を占めました。世論の懸念に耳を貸さず、なぜ安倍首相は突き進むのでしょうか。
自己顕示欲でしょう。それに、間違った使命感。安倍首相は「私とプーチン大統領の手で必ず終止符を打つ」と述べますが、思い上がりでしょう。北方領土問題は日本が戦後70年以上、一貫して追求し続けてきた問題です。安倍首相の任期は残り2年半で、プーチン大統領は5年。持ち時間が短い方が交渉期限を区切るのは戦術的にも実に拙いやり方。相手によって当然、足元を見られます。
■禁じ手の「テタテ」で60年前にも河野農相が大失敗
――安倍首相はプーチン大統領との「個人的な信頼関係」をテコに交渉を加速させると前のめりで、通訳のみを同席させる一対一の会談(テタテ)を繰り返しています。
国際法上の交渉研究ではテタテは禁じ手、タブーといわれています。60年前にも日本はテタテで大失敗した。鳩山政権時代の河野一郎農相がモスクワに乗り込み、通訳を連れずにブルガーニン首相とサシで会談したのですが、ロシア側の通訳のみを介した結果、平和条約交渉と漁業権交渉をリンクさせられてしまった。安倍首相が参勤交代のようにロシアに通うのもマイナス。相手の陣地の赴く「アウェー」交渉は「ホーム」に比べて不利になる。
――それでも官邸周辺からは「2島プラスα」という楽観論が聞こえてきます。
論理的にあり得ません。このままいけば、「2島ポッキリ」か「2島マイナスα」です。56年宣言を基礎とすれば、平和条約締結後に2島が日本に引き渡される。その後のロシアは果たして「国後島と択捉島は協議次第で返しましょう」と言うでしょうか? 「α」は何を指すのでしょうか? 国後、択捉両島の共同経済開発です。資金や技術を提供するのは日本です。つまり、ロシア主権下で日本の持ち出し。「マイナスα」なのは明らかです。極論を言えば、「1島マイナスα」すらあり得るでしょう。
――1島ですか? 引き渡されるのは住民のいない歯舞群島だけだと?
56年宣言は2島の引き渡し期限も明記していないとプーチン大統領は主張するでしょう。引き渡しは50年後かもしれないし、99年後かもしれない。移住促進策の成果もあり、色丹島には約3000人の住民が暮らし、返還反対運動を展開している。一方、岩礁の歯舞群島には国境警備隊が配備されているだけですから。
プーチン大統領から平和条約を持ち出され。安倍首相はニタニタ応じた(代表撮影・共同)
大幅譲歩は欧米や中韓との関係悪化を招く |
――現時点で日本は平和条約を締結する必要性はどれほどあるのでしょうか。
まったくありません。戦争状態を終結させ、外交関係を回復した56年宣言は、領土問題を除くと平和条約と遜色ない。平和条約をのどから手が出るほど欲しているのはロシアの方です。背景には大国化する中国へのコンプレックスや牽制、クリミア併合に端を発した国際社会による経済制裁を突破したいとの狙いがあります。
――日本にはマイナス作用に?
領土問題で譲歩した平和条約締結は、尖閣諸島や竹島を巡る中国や韓国とのさらなる摩擦を誘因するでしょう。対米関係にも影を落としかねない。プーチン大統領が返還後の北方領土に在日米軍が展開する懸念を指摘すると、安倍首相は「在日米軍はロシアにとって敵対的なものではない」などと述べ、日米安保条約の適用外を示唆した。安保条約の適用範囲を勝手に伸び縮みさせる行動を米国が許すでしょうか。尖閣を狙う中国にも付け入られてしまう。欧州にも呆れられる。彼らはロシアの資源エネルギーに依存せねばならない苦しい状況ですら、国際正義の旗の下、制裁を実施している。翻ってロシアは中国を牽制し、日米関係にくさびを打ち込み、欧州を出し抜く好機と見なしている。
――ロシアにしかメリットがない。
日本はロシアを突き放すべきです。安倍首相が「次期首相に後を継ぐ」とキッパリ伝えて時間軸を広げない限り、日本側には展望がない。誰が後継になるにせよ、ポスト安倍政権は苦労します。ここまで日本の要求水準を下げてしまったら、もう一度引き上げるのは至難の業でしょう。
(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)
▽きむら・ひろし 1936年生まれ。京大法学部卒、米コロンビア大Ph.D.取得。北大スラブ研究センター、国際日本文化研究センター、拓大教授を経て現職。近著に3部作の完結編「プーチン 外交的考察」。「プーチンとロシア人」など著書多数。
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— 日刊ゲンダイ (@nikkan_gendai) 2019年2月24日
混迷の北方領土問題 木村汎氏が警戒する「1島マイナスα」
— uresy ( I'm not ABE) (@uresy1st) 2019年2月24日
プーチン大統領が「前提条件なしで平和条約締結」と言いだした時に、安倍首相は「冗談が過ぎる、話にならない」とバーンと反論すべきでした。https://t.co/dSRJfJDPVY #日刊ゲンダイDIGITAL
「なぜ安倍首相は突き進むのでしょうか。」
— 北野慶 (@keikitano) 2019年2月25日
「自己顕示欲でしょう。それに、間違った使命感。」
改憲はじめすべてこれ! こんな危険人物に、いつまで権力握らせておくんでしょうか? 日本は今、喩えていえば高速道を走るチンパンジーが運転するバスのようなもの。助けて〜‼️
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注目の人直撃インタビュー
— KK (@Trapelus) 2019年2月21日
北大名誉教授 木村 汎
【日ロ平和条約締結交渉】
このままでは「1島マイナスα」もあり得る
- 「戦後1ミリも動かなかった」は嘘
- 禁じ手の「テタテ」で60年前にも河野農相が大失敗
- 大幅譲渡は欧米や中韓との関係悪化を招く
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