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侵略戦争を正当化する妄想を含むボルトンの回顧録が出版される意味
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202006220000/
2020.06.23 櫻井ジャーナル
ジョン・ボルトンの回顧録が6月23日に売り出される。ドナルド・トランプ大統領は国家安全保障にとって問題だとして出版を止めようとしたが、裁判所はその主張を認めなかったようだ。
嘘を平然とつける性格なのか、あるいは妄想と現実の区別がつかないのかは不明だが、ボルトンは事実に反することを主張してきた。出版が予定されている本の中でもイエローケーキ(ウラン精鉱)をイスラエルの情報機関員が2018年にイランで発見したと主張しているようだ。
要するに、ボルトンが書いた新著は信憑性がないのだが、それでも出版が容認された意味はある。権力犯罪を告発する道が広がるからだ。ボルトンだけが許されるなら、それは司法システムを揺るがす問題になる。
内部告発としてはダニエル・エルズバーグが1971年にベトナム戦争に関する国防総省の秘密報告書を有力メディアへ流した出来事は有名だ。住民皆殺し作戦(フェニックス・プログラム)については伏せられていたという問題はあるが、それでも彼は犯罪者として処罰されそうになった。
1970年代の半ばにはアメリカの議会で情報機関の違法行為が調査されている。上院では1975年1月、情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会が設置され、同年2月には下院で情報特別委員会が設置された。上院の委員会はフランク・チャーチ議員が、下院の委員会はルシエン・ネジ議員がそれぞれ委員長に就任する。ただ下院の委員会はすぐにオーティス・パイク議員へ委員長が交代になった。
こうした委員会の調査によって法律を無視した国民監視作戦、要人暗殺計画、フェニックス・プログラム、マインド・コントロールを目的としたMKウルトラ、あるいはメディアをコントロールする目的のモッキンバード、破壊工作を目的とした極秘機関OPCが存在した事実などが明らかにされた。
1975年8月17日にNBCのミート・ザ・プレスという番組に出演したチャーチ議員は情報機関が国民を監視することに関し、そうしたことが行われると人々の隠れる場所は存在しなくなると警告していた。
それに対し、アメリカの支配階級は内部告発を封印するための規制を強化し、メディアの統制を強めていった。この頃から規制緩和で有力メディアの所有者が集中、気骨あるジャーナリストは有力メディアから排除されていく。日本でも同じこと行われた。そしてジャーナリストのむのたけじが1991年に講演会で発言したように、「ジャーナリズムはとうにくたばった」(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)という状態になったのだ。
それでもアメリカでは内部告発はあった。例えば電子情報機関NSAの不正行為を明らかにしたエドワード・スノーデン、イランへ核兵器に関する資料を渡して開発させ、イラン侵略の口実を作るというCIAの危険な作戦を組織内部で警告したジェフリー・スターリング、そしてCIAなどによる拷問を告発したジャニス・カルピンスキーやジョン・キリアク、そして内部告発を支援する活動を続けてきたウィキリークスを創設したひとりのジュリアン・アッサンジ、ウィキリークスへ情報を提供したブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵などだが、いずれも支配階級から厳しい報復があった。
勿論、ボルトンとこうした内部告発者は違う。イエローケーキはイラクを先制攻撃する際にも使われた嘘だ。ジョージ・W・ブッシュ政権には侵略戦争を正当化するための偽情報を流すネオコンの機関も国防総省内に設置されていた。OSPだ。その責任者になったエイブラム・シュルスキーはポール・ウォルフォウィッツと同じようにシカゴ大学で政治科学の博士号をレオ・ストラウス教授の下で取得した人物で、ボルトンと同じ親イスラエル派だ。
こうしたネオコンの嘘はイギリスでも内部告発で暴かれている。アメリカ政府は侵略戦争を正当化するため、国連で秘密工作を実行したが、その工作に関する電子メールをGCHQ(イギリスの電子情報機関でアメリカのNSAと緊密な関係にある)の翻訳官だったキャサリン・ガンが告発した。その出来事に基づく映画「オフィシャル・シークレッツ」が昨年、公開されている。(日本では今年5月に公開が予定されていたが、新型コロナウイルス対策ということで、延期された。)
アメリカ政府の要請を受け、イギリスのトニー・ブレア政権は侵略を正当化するために捏造文書を作成したが、その事実は2003年5月に明かされる。BBCの記者だったアンドリュー・ギリガンがラジオ番組でその問題を取り上げ、サンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が偽情報を流したことを明らかにしたのだ。
ギリガンの情報源はイギリス国防省で生物兵器防衛部門の責任者を務めていたデイビッド・ケリーだが、7月17日に変死している。公式発表では手首の傷からの大量出血や鎮痛剤の注入が原因で、自殺だとされているが、手首の傷は小さく、死に至るほど出血したとは考えにくい。しかも彼は古傷のため、右手でブリーフケースを持ったりドアを開けたりすることができず、1991年に落馬して骨折、右肘に障害が残っていた。
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