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アメリカン・スタンダードの正体
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2020年6月 2日 植草一秀の『知られざる真実』
「私は暴動や破壊、略奪といった暴力行為を非難する。だが、そうした抑えきれないほどの強い感情がこみ上げてくる気持ちはわかる」 米紙「ワシントン・ポスト」の黒人コラムニスト、ユージーン・ロビンソンはこう書いている。 「一体あと何人の黒人が殺されれば、アメリカは変わるのか」 https://bit.ly/3eKcUgv ロビンソン氏はこう指摘する。 「ミネアポリスで起きているような暴動を防ぎたいなら、警官や差別主義の自警団による黒人の殺害を止めるべきだ。 アフリカ系アメリカ人をゴミ扱いするのはもうやめろ。」 公民権運動の活動家マーティン・ルーサー・キング牧師の子息で人権活動家のマーティン・ルーサー・キング3世は次のようにツイートした。 「闇があるところには、犯罪が起こる。 罪は、罪を犯した者だけにあるのではなく、闇を生み出した制度にもある。 暴力は容赦しないが、この事件は、何世代にも渡って燻り続けてきた炎を燃え立たせた。」 「ミネアポリス暴動、全米に拡大 キング牧師の息子が訴える「アメリカの闇」と父の思い」 https://bit.ly/3gN8Hds 黒人男性ジョージ・フロイド氏は5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで偽造紙幣を使った容疑で逮捕された。 その後に起きたことは、現場に居合わせた市民が撮影し、ソーシャルメディアで公開した動画によって瞬く間に全世界に拡散した。 パトカーの脇で、白人警官デレク・ショービンが、フロイド氏を地面にうつ伏せにして押さえつけ、彼の首を膝で8分以上も圧迫し続けた。 フロイド氏は手錠をかけられ無抵抗だった。 検死の結果、フロイド氏が窒息で死亡したことが明らかにされた。 抗議デモは暴動に発展した。 抗議活動拡大について米国のトランプ大統領はデモ隊を「ごろつき」と呼び、「州兵を送り込む」と書き、さらに「略奪が始まれば、発砲が始まる」とツイートした。 このツイートに対してツイッター社は「暴力を賛美する」内容だと判断して警告した。 BBCは、 「トランプ大統領の「略奪が始まれば、発砲が始まる」という言葉は、1967年12月にフロリダ州マイアミ市警のウォルター・ヘッドリー本部長がアフリカ系市民を厳しく取り締まる際に使用したもの。 ヘッドリー本部長は当時、公民権運動のデモをくいとめるため、黒人地区で警官が銃や警察犬をことさらに誇示することを奨励していた。 この表現はその強硬策の一部だった。」 https://www.bbc.com/japanese/52858130 と伝えている。 ヘッドリー本部長は、黒人の権利向上を主張する公民権運動を利用した「若い黒人のちんぴらによる犯罪が横行している」との見方を示し、黒人社会と激しく対立した。 トランプ大統領はヘッドリー本部長と同じスタンスを示し、理由を問わず暴動、略奪行為に対して強権を発動する姿勢を示している。 香港での民主化運動が暴動に発展した。 中国政府は暴徒化した民衆を取り締まる姿勢を示している。 暴動を引き起こす民衆に対して軍の出動を示唆するトランプ大統領が、暴徒化する民衆を取り締まろうとする中国政府の行動を強く非難している。 これをアメリカン・スタンダードと呼ぶ。 別名ダブル・スタンダードだ。 冒頭の二人の発言をよく考える必要がある。 「暴動や破壊、略奪といった暴力行為を非難するが、そうした抑えきれないほどの強い感情がこみ上げてくる気持ちはわかる」 「罪は、罪を犯した者だけにあるのではなく、闇を生み出した制度にもある」 同じことを述べている。 「闇があるところに犯罪が起こる」ところに光を当てなければ問題の解決には至らない。 トランプ大統領は中国の人権問題を批判するがサウジアラビアの人権問題、インドの人権問題を批判しない。 国内の人種差別を批判するどころか、トランプ大統領自身が人種差別を助長する言動を示す。 北朝鮮の核開発を非難するがイスラエルの核保有を容認している。 メディアは事実を公正に伝えない。 私たちはメディアの情報操作に惑わされるべきでない。 米国は米国の歴史に真摯に向き合うべきだ。 日本も同様だ。 闇が生み出す結果だけを取り締まっても問題は解決しない。 11月の大統領選ではトランプ大統領の生きざまが問われることになる。 |
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