好きにすればいいが、結局は、以前の中国同様、自滅への道を歩むだけのことそして食料に困るとしても、ロシアのみに依存する愚かな国の自業自得に過ぎない http://www.asyura2.com/20/hasan134/msg/468.html?c1#c1 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/19739 リビア内戦、重大な転換点、トルコ勝利、ロシア敗北の代理戦争 2020/05/26 佐々木伸 (星槎大学大学院教授) リビアの内戦はトルコが支援する暫定政府軍が首都トリポリに肉迫していたハフタル将軍(76)率いる反政府軍事組織「リビア国民軍」(LNA)に反撃、同市近郊のLNAの拠点を奪回する軍事的勝利を収めた。内戦の重大な転換点だ。LNAに加勢していたロシア人傭兵軍団は空路脱出した。この敗北後、ロシアが戦闘機を派遣したと報じられるなど代理戦争拡大の懸念が高まっている。 18日、勝利を喜ぶリビア暫定政府軍の兵士(REUTERS/AFLO) 傭兵部隊、辛くも脱出 リビア東部のトブルクに拠点を置くハフタル将軍が攻勢に出始めたのは昨年4月。そこから内戦が一気に激化した。LNAは西方に向けて地中海沿岸を制圧し、今年1月には戦略的な要衝シルトを制圧、トリポリに迫った。こうした中、ロシアとトルコが主導していったんは停戦に合意、ベルリンで国際和平会議が開催された。
しかし、和平会議では外国勢力の介入抑制で一致したものの、当事者のハフタル将軍が和平交渉から事実上離脱し、春になって再びトリポリ攻撃が激化した。多い時では1日100発を超えるミサイルが市街地に撃ち込まれ、トルコ大使館やイタリア大使公邸近くにも着弾するまでにエスカレートした。 国連などによると、4月以降のLNAの攻撃で民間人ら約200人が犠牲になった。これに対し、シラージュ暫定政府軍はトルコの支援強化を受けて反転攻勢、LNAが制圧していたトリポリ周辺の7都市を奪回。5月に入って首都南方約150キロにある空軍基地アルワティヤを奪還した。同空軍基地はLNAが2014年以来拠点にしていた要所だ。 暫定政府軍の勝利に導いたのはトルコの力だ。トルコはドローン攻撃機、ミサイル、装甲車、レーダー妨害装置など大量の兵器を供与し、トルコ軍やトルコの配下にあるシリア人民兵を多数送り込んだ。LNA側はシリア人民兵の規模は7000人にも上るとしているが、民兵の人数や、彼らが実際に戦闘に参加したかは明らかではない。 とりわけ今回はトルコのドローン攻撃がLNA側に壊滅的な打撃を与えた。ドローンはアルワティヤ空軍基地の3つの格納庫を爆撃、ロシア製の近距離対空システム「パーンツィリー」2基のうち1基を破壊し、もう1基は暫定政府軍兵士らが勝利を誇示するため、トリポリ市内のパレードに登場した。この兵器は性能などを調査するためトルコに運ばれつつあると伝えられている。 同基地に駐屯していた民間警備会社「ワグネル」所属のロシア人傭兵軍団は辛くも空路脱出したという。国連の報告書によると、リビアにいる傭兵は1200人にも上るとされる。同社は事実上ロシア軍の別部隊と呼ばれており、代表のエフゲニー・プリゴジン氏はプーチン大統領と近い。アサド政権支援でシリアにも派遣されていることが分かっている。 東地中海の資源覇権争い リビアでは2011年、カダフィ大佐の独裁政権が「アラブの春」の混乱の中、北大西洋条約機構(NATO)軍に支援された反政府勢力に打倒されて内戦がぼっ発。シラージュ暫定政府、LNAなど4派が入り乱れる紛争に発展し、以来10年近くも戦火が絶えない。 現在は暫定政府がトリポリ一帯を、その他の地域をハフタル将軍のLNAが支配。世界10位の埋蔵量を誇る石油資源地帯や石油施設は将軍のコントロール下にある。内戦と言っても、これほど外国勢力が介入している紛争もない。内戦に名を借りた各国の代理戦争の感がある。 国連の主導で発足したシラージュ暫定政府には地域大国のトルコとペルシャ湾のカタール、ドイツ、イタリアの欧州勢が支持しているが、実際には軍事力をトルコが、財政援助をカタールが担っている。一方のLNAには、ロシアとアラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、サウジアラビア、イスラエルなどの中東諸国の他、フランス、ギリシャなどが支持している。 LNAには、軍事面ではロシアが傭兵部隊を送り込み、UAEがドローン部隊を派遣、財政面ではUAEとサウジアラビアが支えている。隣国のエジプトはハフタル将軍が将来、同国のシシ政権のような軍事独裁政権を目指していることもあり、軍事訓練や施設などを提供、イスラエルは兵器を供与している。 各国はそれぞれ、将来的にリビアのエネルギー資源の利権に影響力を行使したいとの思惑があるが、とりわけトルコには東地中海の天然ガス開発をめぐる覇権争いが大きく関わっている。同海域には巨大なガス田の埋蔵が確認されており、イスラエル、エジプト、ギリシャ、キプロスが開発に協調体制を組んでいる。こうした中で、トルコだけが外された格好になっている。 このためトルコのエルドアン大統領は昨年11月、この4カ国連合に楔を打ち込むべく、リビアの暫定政府と2つの協定を結んだ。1つは海洋水域画定協定だ。これによってトルコは自国の水域を拡大することになり、4カ国のガス開発とパイプライン敷設を「水域の侵害」と主張できるようになった。2つ目は双方が水域画定協定を結ぶことと引き換えに、トルコが暫定政府に軍事的な援助を行うという安保協定だ。 どう出るロシアと米国 今回のLNAの敗北は「ハフタル将軍をこの6年間で最悪の危機に追い込んだ」(ベイルート筋)のは事実だろう。ハフタル将軍はイスラム教徒のラマダン(断食月)を口実に停戦を発表したが、最近の一連の敗北を糊塗するためとの見方が強い。 だが、実際にLNAが軍事的に建て直せるかどうかはロシアが支援を拡大するかに大きく依存している。暫定政府の内相によると、ロシア人傭兵軍団が撤収したのを受け、シリア内戦に投入されていたミグ29戦闘機6機とスホイ24戦闘機2機がリビアに急きょ、派遣されたという。専門家はもし、派遣が事実なら、トルコへの警告であり、代理戦争がエスカレートする恐れがあると指摘している。 ロシアは一方で、ハフタル将軍が好戦的であることなどから、将軍に代わる政治指導者を物色中とも伝えられており、プーチン大統領が今後、将軍を見限るケースも考えられよう。だが、もう1つ、忘れてはならないのはトランプ政権の動向だ。 米国は元々、暫定政府を支持してきたが、トランプ大統領がハフタル将軍に電話するなどしたため、内戦でどちらを支持しているかあいまいな立場になっていた。その背景には、将軍が中央情報局(CIA)と関係が深く、一時米国に滞在していた事実も反映しているかもしれない。 しかし、米高官は5月初め、「将軍を支持しない」と言明、別の高官もロシアが「将軍を支援し、内戦をエスカレートさせ、人道的状況を悪化させている」と非難した。エルドアン大統領は数日前、トランプ大統領と電話で会談し、リビア情勢を話し合っており、米国の出方が気になるところだ。
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