中国での「戦時統制命令」の発動を伝える2月13日の報道より
・zaobao.com.sg
2月12日のアメリカ海兵隊ウェブサイト。パンデミックに対しての活動準備を発表
・marines.mil
人民戦争の中で
昨日、中国の英字報道で、
「戦時統制命令が発令」
というものがありました。
英語では「ウォータイム・コントロール・オーダー / wartime control order」と呼ぶらしいですが、要するに、戦時に発令される住民の統制システムを発令したということになります。
この戦時統制命令が中国で発令されたのは、これが初めてのことだそうです。
現在、発令されているのは湖北省の十堰市(じゅうえん-し)という場所のひとつの地区です。
以下は、中国政府の新型コロナウイルス防疫指導部から該当地区に出された通達所で、「戦時統制命令を緊急通告」という文字が見えます。
・finance.sina.com.cn
報道には、以下のように書かれてあります。
湖北省でウイルス対策を強化するために戦時統制命令を発令
ecns.cn 2020/02/13
湖北省十堰市の張湾地区に対して、2日12日の夜より、新型コロナウイルス肺炎の発生をより良く制御するために、中国国内初の戦時統制命令を発令したと同地区の予防および統制命令当局は述べた。
2月13日からの 14日間は、地区の居住者は、完全に厳密な管理下にある建物に出入りすることはできない。しかし、司令部が掲示した通知によると、伝染病対策作業に従事する医療従事者、医薬品の供給業者、食品配達業者など、人々の生計に責任を負う者は例外だ。
伝染病対策に使用される車両以外は、地区へ出入りすることはできず、すべての生活必需品は地区の委員会によって配布および配達される。住民が緊急に薬を必要とする場合、委員会がそれを提供すると述べている。
地区内の各コミュニティ、村、および郊外には 24時間の管理シフトがあり、その建物に設置された警戒施設または警備施設に侵入した者は拘束されるという。
張湾地区は、41万5000人の人口を有する。この地区に発令された命令は、中国の他の地域で取られている措置よりも厳格であり、住民たちは厳しい入場制限で閉鎖されている。
地区の副局長は、この措置は、病気の感染の潜在的な原因を排除し、確認されたすべての症例、患者と密接に接触した人々をさらに発見し、検疫を受けて医療を受けるのを助けることを通知していると説明した。
戦時管理命令が予定より早く終了するかどうかは、該当地区の疫病管理の状況に依存するという通知が追加された。
ここまでです。
この例がうまくいけば、「戦時統制命令」は他の地域にも発令されていくことになり、あるいは逆に、「うまくいかなくても」この方法しかないと判断すれば、戦時統制の方法で封じ込めていくのかもしれません。
これが妥当なのか、やり過ぎなのかは、判断がつかないですが、もう少し状況が変化していけば「戒厳令」的な雰囲気も出てくる可能性はあるのですかね。
そして、冒頭にも載せましたが、アメリカ軍も新型コロナウイルスに対しての準備を始めています。
冒頭のアメリカ海兵隊のウェブサイトには、
「パンデミックに対応」
という表現が明記されています。
もちろん、米軍がパンデミックが起きることを予測をしているというのではなく、あくまで想定されるさまざまな出来事への対処訓練ということです。
冒頭のアメリカ海兵隊の「 2019年新型コロナウイルスに対しての米国海兵隊の疾病収容準備計画ガイダンス」という長いページを眺めていますと、その中には、なかなか物騒な表現が出ています。
「COVID-19アウトブレイクに応じてパンデミックプランを実行するための地域的戦闘命令をサポートするよう指示」
とか、
「生物学的脅威の計画と管理に関する追加のガイダンスを提供する化学、生物学、放射線、核および高爆発の準備の投入」
とか物々しい表現が続きます。
「核?」と思いますが、そういえば、昨日久しぶりに『アンドロメダ…』という、1971年のアメリカ映画を DVD で見ていたんですね。
これは、マイケル・クライトン原作の『アンドロメダ病原体』という小説が原作となっている面白い映画なんですけれど、未知の病原体が地上で発見され、これは「瞬時に人を殺す」のです。このウイルスを解明するために 4人の科学者がアメリカ中から集められ、今でいうバイオセーフティレベル 4以上ともいえる厳重な管理体制のもとで、病原体の分析が続けられるのですけれど、この作業のルールに、
「ウイルスが外部に漏洩しそうになった場合は施設ごと核爆発で消滅させる」
というものがあります。決して病原体を外に出してはいけない。
そのことを思い出して「核ってそういうことに使うためのものなのかな」とも思いましたが、現実のほうのそれはよくわかりません。
なお、この映画のおもしろいところは、未知の病原体が「最強かつ不死身」であるところです。
真空だろうが、放射能だろうが死滅しない。
むしろ「放射能を栄養源にして育ち続ける」ことがわかり、要するに、核爆発など起きたら、一気に加速度的に病原体が増殖してしまうということがわかったりしていきます。
まあ、この映画のことはどうでもいいのですが、どうして昨日こんな映画を見ていたかといいますと、4人の科学者の中で病原体を直接研究するのはレヴィット博士という役名のアメリカの微生物学の最高権威として登場する人なのですが、この人が「女性科学者」なのです。非常に優秀な細菌とウイルスの専門家として登場します。
それで、ふと昨日の記事の、チェン・ウェイ少将を思いだした次第で、この映画を久しぶりに見たのでした。
話が逸れました。
なお、先ほどのアメリカ海兵隊のガイダンスの基本は、中国で行われていることと同じ目的で、「隔離、移動の制限」などの封じ込めを基本としているようです。
アメリカ軍の対応について、軍事専門メディアのミリタリータイムズの記事の概要をご紹介します。
US military prepping for coronavirus pandemic
Military Times 2020/02/13
コロナウイルスのパンデミックに対するアメリカ軍の準備
今週発行された海軍と海兵隊の文書によると、アメリカ北方軍司令部は、現在 COVID-19 と呼ばれている新型コロナウイルスの潜在的なパンデミックに備える計画を実行している。
アメリカ統合参謀本部が発行し、マーク・エスパー国防長官によって承認された大統領令は、アメリカ北方軍司令官と戦闘司令官にパンデミック計画を開始するよう指示した。
この文書は、インフルエンザやこれまで知られていなかった疾患の広範囲にわたる流行に対する計画および準備のためのペンタゴンの青写真として機能する。
アメリカ北方軍は、インフルエンザと他の疾患のパンデミックの部門の計画を同期する彼らの割り当てられた役割において「慎重な計画」を始めるように指示されたと述べた。
しかし、マイク・ハットフィールド海軍中将は「この準備計画は、そのようなパンデミック事象が発生する可能性が高いことを示すものではありません。軍の専門家として、さまざまな不測の事態に対する計画を立てるのが通例です」と述べた。
海兵隊のメッセージ MARADMIN 082/20 によれば、司令官は彼らの疾病封じ込め計画を閲覧し、「準備および予防措置」を講じて、隊員、施設、船を保護する。
これには、計画に「対応、隔離、検疫、移動の制限、およびコミュニティに基づく介入」の手順が含まれていることを確認することと、暴露される可能性のある人を収容および治療するための手段の開発が含まれる。
ここまでです。
この他に、陸軍や海軍など、他の部署の対応も掲載されています。
いずれにしましても、仮に1ヶ月後あるいは数カ月後に、新型コロナウイルスの感染拡大が終息していない場合、それぞれの国で軍などの主導による「戦時下」の状態も拡大していくのかもしれません。
これは、新型コロナウイルスの毒性が強いとか弱いとかとは関係のないことですので、つまり、実質的な「経済の停止」というような期間が同時に長引く可能性もあり、そうなりますと、世界はいよいよ混沌としてくる可能性があります。
現時点でも、ここまでご紹介しましたように、中国とアメリカではそのような方向に進んでいる動きが現れていまして、同時に、少なくとも現在の中国の経済は限りなく停止に近い状態のはずです。