★イスラエルが対立構造から解放される日 http://tanakanews.com/200111israel.htm 全文1月3日のスレイマニ殺害以降、米国とイランの対立激化から、米軍のイラク撤 退など米中東覇権の崩壊へと、事態が劇的に展開している。トランプ政権がわざ と下手くそな説明をしたので米議会上院の共和党議員が激怒し、民主党が提出し ているトランプの戦争権限を制限する法案に賛成することになった。下院はすで に法案を可決した。米議会は上下院が一致して、大統領が911以来議会から奪 って保持してきた戦争権限を再び議会に戻していく法律を可決する。トランプの 策略の結果、米国は戦争しにくい国になっていく。 http://www.theamericanconservative.com/state-of-the-union/lee-paul-we-were-given-insulting-demeaning-worst-briefing-on-iran/ Lee, Paul: We Were Given ‘Insulting,’ ‘Demeaning,’ ‘Worst Briefing’ on Iran http://tanakanews.com/200109iran.php イランを健闘させたトランプ 事態は毎日大きく変わっている。読み切れない量の情報が入ってくる。しかし天 邪鬼な私は、今回の大量情報の中に全く書いていないテーマがとても気になって いる。それは、米国(やイスラエル)がなぜイランを敵視してきたかという、今 の事態の根本的な出発点についてだ。「イランが79年にイスラム革命をやって 米イスラエルを敵視する国になったからに決まってるじゃん」と生半可な知識人 は言うだろう。しかし、米イスラエルを敵視するホメイニ師が79年に亡命先の フランスからイランに帰国することを米イスラエルが許さなければ、イランは米 イスラエルを敵視する国にならなかった。米イスラエルは、イランが米イスラエ ルを敵視する国になることを望んでいた。ホメイニは米イスラエルの「敵役の駒 」にすぎない。私の疑問は、なぜ米イスラエルがイランを恒久的な敵に仕立て続 けてきたのか、ということだ。 http://www.tanakanews.com/080731iran.htm イラン革命を起こしたアメリカ http://tanakanews.com/990921iran.htm イスラム共和国の表と裏:乗っ取られた革命 生半可な知識人は「イランは核兵器を開発しようとしているよ。敵視すべきじゃ ん?」とも言うだろう。しかし実のところ、イランは原子力の平和利用(医療用 アイソトープの製造など)をしているだけで、核兵器を開発していない。核兵器 開発は、米イスラエルが捏造している濡れ衣だ。79年以来、米イスラエルは延 々と、脅威でないイランを不必要に敵視し続けている。イラン敵視に関して米国 は一枚岩でない。クリントンやオバマは、イランと和解しようとして道半ばで終 わった。トランプも、オバマの策を壊しつつ、イランとの和解をちらつかせる。 米イスラエルには、イランとの恒久対立を画策する勢力と、その画策をやめさせ て敵対を解いていこうとする勢力がいて、長い暗闘を続けている。トランプは独 自の策(ネオコン策の発展形。敵対策を稚拙に過激にやって敵対構造自体を壊す 策。北朝鮮に対しても試みた)によって、イランとの恒久対立の構造を壊しかけ ている。 http://tanakanews.com/090927iran.php 歪曲続くイラン核問題 http://tanakanews.com/180508iran.php トランプがイラン核協定を離脱する意味 大きな歴史を見ると、イスラエルはシーア派のイランだけでなく、スンニ派のア ラブ諸国とも恒久対立させられている。「西岸やガザを不法占領するイスラエル が悪いんだ。自業自得だ」と生半可な知識人は言う。そうではない。イスラエル の上層部はもともと、中東戦争による領土拡張の後、アラブ側と和解して事態を 安定させて発展を得ようとした労働党のエリート勢力が強かったのに、70年代 以降、その策を妨害するため米国から右派のユダヤ人活動家が大挙して移住(イ スラエル流に言うと「帰国」)して西岸やガザに入植地を作り、入植運動を広げ つつリクードの主軸となって政府を牛耳り、パレスチナ人との恒久対立の構造を 作り上げた。リクード系の戦略は、イスラエルとアラブ・イラン側を、相互に破 滅しない程度に恒久的に対立させ続けることだ。恒久対立策が続く限り、アラブ やイラン側との和解(中東和平)は進まず、和平を推進してイスラエルを安定さ せようとする旧来の労働党系のエリート層は「非現実的」とみなされて有権者の 支持を得られず、万年野党になっている。労働党系のエリートを「最終的な安定 を好む、もともとのイスラエル」、リクード系の活動家を「恒久的な対立・不安 定を好む米国からの殴り込み組」と考えると、不法占領などパレスチナ問題の恒 久化はイスラエルでなく米国の仕業である。 http://tanakanews.com/130109israel.htm 悪者にされるイスラエル http://tanakanews.com/f0705israel.htm 世界を揺るがすイスラエル入植者 ここで出てくる新たな疑問は、なぜ米国に、イスラエルとアラブ・イラン側の恒 久対立を望む勢力がいるのかということだ。この勢力が、西岸の入植問題だけで なく、イランがイスラム革命で米イスラエルの仇敵になるように誘導したり、ア ルカイダを育てつつ911事件を起こして米イスラエルがイスラム世界と恒久対 立するテロ戦争の構造を作り上げたと考えられる。彼らは諜報界の勢力で、軍産 複合体の一部であり、マスコミやCFRなどにも巣食っている。 http://tanakanews.com/d1107israel.htm イスラエル右派を訪ねて http://tanakanews.com/d1219neocon.htm ネオコンの表と裏 彼らはもともと米国の勢力だが、イスラエルに移住して牛耳った上で、イスラエ ルが米国を牛耳って中東の対立構造に引きずり込むという入れ子の構造を作って いる。どっちがどっちを牛耳っているのか見分けられない相互乗り入れの構造は、 米英同盟なども同様で、諜報界など覇権運営の世界にはよくあることだ。生半可 な陰謀論者は「彼らは軍事産業を儲けさせるために恒久対立をやってるんだよ」 と言うだろうが間違いだ。この話は、覇権運営とかユダヤネットワークの主導権 争いとか、そういった大きな規模のものであり、軍事産業に限定される小さな話 ではない。 http://tanakanews.com/150109mideast.php 覇権転換とパレスチナ問題 疑問を解くには、もしイスラエルがアラブ・イラン側と70年代に和解していた らどうなったかを考えるのが良い。イスラエルは、世界のユダヤ人の知恵を集め て、友好国となったアラブ諸国やイランの中に入り込んで中東全域の安定と発展 を実現できる。そうなると、イスラエルを含めた中東地域は対米従属が必要なく なり、米英覇権体制を早々と崩壊させていたはずだ。この200年間(近現代全 体)の英国と米国の覇権体制に不可欠な諜報界や中央銀行群などの基底には、情 報や決済などの世界的なユダヤネットワークがある。ユダヤネットワークは本来 ユダヤ人の所有物であるはずなのに、英米(アングロサクソン)はそれを拝借し て世界支配の覇権体制の土台として使っている。 http://tanakanews.com/080829hegemon.htm 覇権の起源:ユダヤ・ネットワーク http://tanakanews.com/b0201jew.htm 金融の元祖ユダヤ人 英米はユダヤ人を大事にしてきたので、拝借はかまわないことなのかもしれない が、その一方で言えるのは、イスラエルというユダヤ人の国家が作られた以上、 ユダヤネットワークを所有するのは英米でなくイスラエルであるべきでないか、 ということだ。これは推論にすぎないが、イスラエルの労働党系のエリートたち が建国以来の長期計画としてひそかに狙っていたことは、イスラエルが領土を獲 得した後にアラブ・イラン側と和解して自国周辺を安定発展させ、中東を米英覇 権から自立させた上でユダヤネットワークの所有権を英米からイスラエルに移し、 イスラエルが隠然と主導する中東地域を世界の覇権地域(の一つ)にすることだ ったのでないか。この仮説に立脚すると、70年代以降、アラブ・イラン側と 和解してイスラエルを安定させ、中東を対米自立させてユダヤネットワークを米 英から奪還しようとするイスラエルのエリートたちの戦略を妨害するため、米国 から敵対を扇動する右派活動家が多数送り込まれてリクードが台頭したことが見 えてくる。これに対抗して、労働党のエリート側は米国の別の筋(レーガンら) に働きかけてオスロ合意を進めてアラブ側と和解しようとしたが、ラビン暗殺や 911事件後のテロ戦争の勃発といった妨害・対抗策をやられてしまい、恒久対 立が解けないままになっている。 http://tanakanews.com/080909israel.htm イスラエルの戦争と和平 http://tanakanews.com/110912book3.php 世界のデザインをめぐる200年の暗闘 イスラエルは大英帝国から独立したが、英国は当初、1917年のバルフォア宣 言でパレスチナ全体でのイスラエル(ユダヤ人国家)の建国を認めていたのに、 その後、パレスチナを2分してイスラエルとパレスチナが恒久対立する構想に転 換し、米国が作った国連でパレスチナ分割を決議させて正式化した。英国は「イ スラエルとパレスチナの和解」を標榜していたが、これが真っ赤なウソであるこ とは、英国が同時期にインド独立の際、独立後のインドを弱体化するためにイン ド植民地をインドとパキスタンに2分して恒久対立させたことを見ればわかる。 英国は、ユダヤ人を厚遇していたのに、途中からイスラエル建国を歓迎しなくな った。その理由は何か。イスラエルが建国後に発展して英国(英米)から覇権の 一部を奪って自立していくことが予測されたからでないか。 http://tanakanews.com/f0622israel.htm イスラエルとロスチャイルドの百年戦争 http://tanakanews.com/g0906mideast.htm イランとイスラエルを戦争させる 建国以来、イスラエルのエリートは左翼の労働党でソ連と親しかった。ソ連はも ともと欧米のユダヤ人たちの入れ知恵で作られ、当時の英国の世界覇権を、国際 共産主義運動によって乗っ取って解体するのが目標の一つだった。これは、ユダ ヤネットワーク(=覇権運営権)の中心(もしくは一部)をソ連側に移管させる 策略だった。その後、ソ連上層部のユダヤ人たちは英国の(うっかり)傀儡であ るスターリンによって粛清された。イスラエル建国運動(シオニズム)は、ソ連 を作ったユダヤ人の政治運動から分派した。 http://tanakanews.com/080903russia.htm 覇権の起源:ロシアと英米 911事件によって作られた「米イスラエルvsイスラム世界」のテロ戦争の構図 は、リクード的な対立戦略の恒久的な成功につながるかのように見えたが、結局 そうならなかった。ネオコンやチェイニーからトランプまで、ゴリゴリの親イス ラエルに見える米国の勢力が、中東の対立戦略を稚拙に過激にやって失敗させて 米国内の厭戦機運を盛り上げ、米軍中東撤退への流れを作り、イスラエルが米国 抜きの孤立状態でアラブ・イラン側と対立しなければならないように仕向けた。 その総仕上げの始まりが、今回のトランプのスレイマニ殺害によるイラン強化、 米軍イラク撤兵への流れである。イスラエルの上層部は、トランプがイラクとシ リアから米軍を撤退させ、中東全域で覇権を放棄していくと予測している。 http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2020/01/israel-us-iran-iraq-syria-qasem-soleimani-letter-withdrawal.html US withdrawal from Iraq; Israel’s worse-case scenario http://tanakanews.com/070911terror.htm テロ戦争の意図と現実 米政界では民主党がトランプ以上にイスラエルに批判的なので、イスラエルはト ランプに頼るしかないが、トランプは中東撤退を進めている。イスラエルは米国 に頼れなくなり、代わりにプーチンのロシアに頼ってイラン系やアサドなどとの 対立激化を防がねばならなくなっている。プーチンは非常に重要な存在になって いる。プーチンは安上がりな中東覇権を望んでいるので、イスラエルとイラン・ アラブ側を和解させ、中東の恒久対立の構造を崩していきたい。米国の影響力が 下がるほど、リクードの入植者たちは弱くなる。彼らはもともとイスラエル側で なく米英側の傀儡なので、最後っ屁的にイスラエルを自滅させる中東大戦争を起 こすべく、プーチンを暗殺するかもしれない。逆に、プーチンが暗殺されず、 3月の再々やり直し選挙でリクード系が敗北し、イスラエルに中東和平を進めら れる政権ができれば、イスラエルとアラブ・イラン側の和解がようやく始まるか もしれない。 http://tanakanews.com/180218israel.htm 米国に頼れずロシアと組むイスラエル ユダヤネットワークを土台に作られた米英覇権システムの一部である諜報界や中 央銀行のネットワークは、今や崩壊寸前だ。諜報界は、ロシアゲートなどトラン プとの果し合いに負けている。中央銀行群は自滅策であるQEを何年も続け、バ ブルの大崩壊やドルの基軸性の喪失が不可避になっている。イスラエルがこのネ ットワークを取り戻すところには、折よく米英覇権は自滅し、ネットワークは中 露など多極型の覇権構造の土台として再生されることになる。世界が多極化して も、ユダヤ人は覇権の黒幕であり続ける。習近平やプーチンはユダヤネットワー クに支援されている。 http://tanakanews.com/171101china.htm 世界資本家とコラボする習近平の中国 この記事はウェブサイトにも載せました。 http://tanakanews.com/200111israel.htm ●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円) ◆イランを健闘させたトランプ http://tanakanews.com/200109iran.php 【2020年1月9日】イラン上層部が勇気を出してやってみた米軍への報復攻撃は、 トランプに黙認され、大成功に終わった。イラン政府は事前にイラク政府経由 で、米政府にどこを攻撃するか伝えてきていたので、米軍はイランから飛んで くるミサイルを迎撃できたはずだ。しかし迎撃も行われていない。トランプが 迎撃を命じなかったため、イランのミサイルは米軍基地の格納庫などの標的に うまく命中し、イランの強さを中東全域に知らしめることになった。「力こそ 正義」と思われる傾向がある中東において、このイランの成功は非常に重要だ。 トランプがイランの健闘を引き起こし、イランに力をもたせた。 ◆異常なバブル膨張、でもまだ崩壊しない http://tanakanews.com/200102bubble.php 【2020年1月2日】米国中心の金融システムの不健全なバブル膨張がひどくなり、 再び健全な状態に戻る可能性が減り、逆に、株や債券の再起不能な大幅下落な ど、史上最大のバブル崩壊によって金融システムが破綻する可能性の方が高ま っている。しかし今後、米日欧の中銀群が思惑通りのQEを続けられる限り、 株価の高値が続き、債券の金利も上がらない。ときおり相場が崩れても、QE の資金注入によって短期間に元に戻る。構造的には異常なバブル膨張なので、 オルトメディアに「間もなく金融が大崩壊する」と予測する記事がたくさん出 ているが、その「間もなく」は来月や再来月でなく、来年や再来年だ。 ◆トランプ式の核廃絶 http://tanakanews.com/191231nuclear.php 【2019年12月31日】トランプは、核廃絶や軍縮の枠組みを米国中心でなく、 露中やEUが米国抜きで軍縮を進める多極型の新体制に移行させようとしている。 米国(米英・軍産)は、永久に解決しない対立を各地に残置して世界を分割支 配してきたが、露中など今後の多極体制を動かす諸大国は、米国に比べて国力 が小さいのでストレートに問題を本当に解決し、世界を安定化して安上がりに 運営したい。トランプは露中などに対米自立的な軍縮体制を作らせようとして いるが、それは対米自立的な軍縮体制の方が、既存の米国覇権型の軍縮体制よ りも、長期的にみて実現の可能性が高いからだ。
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