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オバマ政権が始めたシリアに対する侵略戦争は失敗に終わった
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201910230000/
2019.10.24 櫻井ジャーナル
バラク・オバマ政権が始めたシリア侵略は失敗に終わったと言えそうだ。10月22日にロシアのソチで行われたウラジミル・プーチン露大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の会談が行われ、トルコとの国境から30キロメートルの幅でシリア領に緩衝地帯を設け、クルド軍は150時間以内にそこから撤退することが決まったのだ。 その撤退をロシア軍とシリア政府軍が監視、その後はロシア軍とトルコ軍が合同で国境から10キロメートルの幅の地域をパトロールするのだという。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相によると、非武装のクルド系住民は撤退する必要はなく、安全は保証される。 アメリカがリビアに続いてシリアへの侵略戦争を始めたのは2011年3月のこと。イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランス、カタール、そしてトルコが侵略に参加、その手先として使われたのがサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を中心とするジハード傭兵。オバマ政権はムスリム同胞団を侵略の核に据えていた。 リビアが狙われた理由は、同国の最高権力者だったムアンマル・アル・カダフィがアフリカを経済的に独立させるためにアフリカ独自の通貨として金貨ディナールを導入しようとしたため。アフリカの富を盗めなくなれば、イギリスやフランスをはじめとする欧米の国は大きなダメージを受ける。 シリアは1980年代から親イスラエル派のネオコンに狙われていた。中東全域を支配するため、従属度の足りないイラン、イラク、シリアが狙われたのだ。 ネオコンの計画は、まずイラクのサダム・フセイン体制を倒し、親イスラエル派を据えてシリアとイランを分断、その上でシリア、そしてイランを破壊、中東全域を支配しようというものだった。これはエネルギー資源をイスラエルが支配することを意味する。 この計画はフセイン体制をペルシャ湾岸産油国の防波堤と位置づけるジョージ・H・W・ブッシュやジェームズ・ベイカーたちの反発を招き、ロナルド・レーガン政権で内紛を誘発することになった。イラン・コントラ事件やイラクゲートが浮上した一因はここにある。この権力バランスが大きく変化、ネオコンが圧倒的な力を持つ切っ掛けが2001年9月11日の出来事だった。 ジョージ・H・W・ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュはネオコンに操られていた人物で、イラクを先制攻撃してフセイン体制を破壊するのだが、親イスラエル派政権の樹立には失敗し、イラクとイランの接近を招く。 オバマ政権は侵略に自国軍ではなくジハード傭兵を使う。その中心はムスリム同胞団だった。そして「アラブの春」が引き起こされ、リビアとシリアで戦争が始まる。両国に対する侵略戦争を「内戦」と呼ぶのは正しくない。 傭兵には雇い主がいる。最大の雇い主はアメリカ。サウジアラビアは傭兵の最大の供給元であり資金源でもあるが、そのほかイギリス、フランス、カタール、そしてトルコも傭兵を雇っている。イスラエルも将兵を戦闘に参加させ、医療部隊としての役割も果たした。 その構図を揺るがしたのがロシア軍。2015年9月30日にシリア政府の要請で軍事介入、ジハード傭兵を敗走させた。そこでアメリカが新たな手先にしたのがクルド。イラクでは1960年代後半からイスラエルがクルドを手先に利用していた。 ロシア軍の介入はトルコの離反を招き、アメリカ軍は離反したエルドアン政権をクーデターで倒そう目論むのだが、失敗に終わる。ロシアから事前に情報が伝えられていたと言われているのだが、その結果としてトルコとロシアは接近していく。 クルドはネオコンの侵略に協力することで自分たちの国を持てると妄想したのだろうが、トルコとアメリカとの対立でその妄想は悪夢となった。その悪夢からクルドを救い出したのがロシアだ。 21世紀に入ってからネオコンが行ってきた戦略はアメリカの利益に反するのだが、ネオコンの背後には西側の巨大資本が存在している。その巨大資本とは別の権力集団に担がれたドナルド・トランプは昨年12月にアメリカ軍をシリアから撤退させる方針を示した。 しかし、トランプ政権のマイク・ペンス副大統領やマイク・ポンペオ国務長官はキリスト教系カルトで、国家安全保障補佐官になったジョン・ボルトンはシオニスト。国防長官を務めたジェームズ・マティスも好戦派だ。 マティスは撤退への抗議で辞任、ボルトンは解任された。ペンスやポンペオは抵抗してきたが、NATO加盟国であるトルコの軍事侵攻でトランプ大統領の方針は実現することになった。現在、誰がトランプの後ろ盾になっているかは司法長官にウィリアム・バーが座ったことから推測できるだろう。 シリアでの敗北を受け、アメリカの好戦派は今年に入ってイラクに軍事拠点を増設、ジハード傭兵を集めている。シリア東部、ユーフラテス川沿いにある油断地帯の支配を続ける一方、再びシリアとイランを攻撃するチャンスを待つつもりなのかもしれない。が、そうした行為がイラクとの関係を悪化させている。 |
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