http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/584.html
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この記事は「米軍シリア撤退は米露トルコの国際政治プロレス」の続きです。
http://tanakanews.com/191017syria.php
トランプ米大統領による米軍のシリア撤退は、米国からロシアへの中東覇権の大
規模な移譲を引き起こしている。このこと自体は前回の記事に書いた。そのあと
私が驚いているのは、覇権移譲の速度が意外と速くしかも広範囲であること、英
米のマスコミでこの覇権移譲を指摘するところが意外と多いことだ。覇権移譲が
意外と速いのは、もしかすると米議会でのトランプ弾劾の動きと関連しているか
もしれない。
http://tomluongo.me/2019/10/19/new-middle-east-thank-putin/
A New Middle East Thanks To Putin
http://buchanan.org/blog/is-putin-the-new-king-of-the-middle-east-137628
Is Putin the New King of the Middle East?
私自身は、容疑の薄さ(7月25日にウクライナ大統領に不正に圧力をかけたと
いう完全な濡れ衣のみ)を理由に、トランプ弾劾は失敗確実と思っているが、元
トランプ側近のスティーブ・バノンは対照的に「トランプは6週間以内に弾劾さ
れる」と予言している。来年の大統領選挙で勝てないと自覚している民主党は弾
劾でトランプを倒すしかないので真剣で、高をくくっているトランプ側はやられ
てしまいそうだとバノンは分析している。来秋の選挙が近づくほど弾劾の危険が
増すとバノンは考えている。弾劾される危険があるなら、トランプやプーチンら
「(隠れ)多極側」は急いで覇権移譲を進める必要があり、それが意外に速い展
開につながっているのかもしれない(私自身は依然としてトランプ弾劾の可能性
を低いと考えている)。トランプは、アフガニスタン撤兵も全速力で進めようと
している。
http://tanakanews.com/191010trump.htm
自分の弾劾騒動を起こして軍産を潰すトランプ
http://www.hideoutnow.com/2019/10/steve-bannon-says-trump-will-be.html
Steve Bannon says Trump will be impeached in six weeks
http://news.antiwar.com/2019/10/21/pentagon-draws-up-plans-to-withdraw-from-afghanistan/
Pentagon Draws Up Plans to Withdraw From Afghanistan
米国からロシアへの覇権移譲の動きがどんどん速くなっているので、これまで多
極化を無視する傾向が強かった「軍産傀儡」のマスコミも、無視できなくなって
いる。ちょうどロシアのプーチン大統領が米傀儡諸国のはずのサウジやUAEを
訪問して「中東全体を支配する王様のように」大歓迎されたこともある。「ロシ
アは米国に代わり、イスラエルを含む中東全体の調停役になった」とWSJが
10月17日に書いている。同時期に英国のテレグラフやFTも似たような記事
を出した。
http://www.wsj.com/articles/putin-is-the-new-king-of-syria-11571264222
Putin Is the New King of Syria
http://www.ft.com/content/c1ee673a-ef5a-11e9-ad1e-4367d8281195
Putin seizes on US retreat to cement Middle East role
http://www.telegraph.co.uk/news/2019/10/15/russia-assumes-mantle-supreme-power-broker-middle-east-us-retreats/
Russia assumes mantle of supreme power broker in Middle East as US retreats from Syria
「イスラエルもロシア覇権下に入る」というのは私が5年前から書いてきたこと
なので読者は別に驚かないかもしれないが、今までさんざん空想家扱いされてき
た私自身にとっては大きなことだ。(「陰謀論」が「常識」になった時点で私の
存在意義は終わりそうだが)
http://tanakanews.com/141121israel.php
イスラエルがロシアに頼る?
http://tanakanews.com/180218israel.htm
米国に頼れずロシアと組むイスラエル
http://tanakanews.com/180825israel.htm
ロシアの中東覇権を好むイスラエル
今回のシリアの事態は、歴史的にかなり大きな意味を持ちそうだ。ロシアに情報
源を持つぺぺ・エスコバルは「シリアは、ベトナム戦争以来のCIAの大敗北の
ようだ」と題する記事を出した。これが意味するところは、私にいわせると以下
のようなものだ。CIA=軍産複合体は、朝鮮戦争を誘発してアジアに冷戦体制
を作ったが、その後ベトナム戦争の敗北で多極側にニクソン訪中・米中和解をや
られ、レーガンの冷戦終結・軍産支配の終わりとなった。さらにその後、911
事件で軍産支配が復活したが、ネオコンのイラク侵攻など隠れ多極主義的な過激
な自滅作戦で事態が崩壊していき、最後の仕上げとして今回のトランプのシリア
撤兵となり、中東覇権が米国からロシアに移譲され、軍産支配が再び終わりつつ
ある。
http://consortiumnews.com/2019/10/18/pepe-escobar-the-road-to-damascus-how-the-syria-war-was-won/
Escobar: Syria May Be The Biggest Defeat For The CIA Since Vietnam
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2019/10/russia-turkey-syria-iran-us-deal.html
Why Russia isn't bothered by US-Turkey agreement on Syria
以下、地域ごとに分析していく。まずシリア。シリアではアサド政権と、侵攻し
たトルコとの対立をロシアが仲裁して和解させる流れが始まっている。内戦中に
北シリアの町を統治してトルコの脅威となっていたクルド人(米イスラエルの傀
儡勢力)は東部へと移動させられ、アサド政権の傘下に押し戻された。これは前
回の記事で予測していなかったことだ。私は、マンビジ、コバニなどトルコ国境
沿いのいくつかの町を支配しているクルド人(民兵団のYPGなど)はそのまま
動かず、ロシア軍とシリア政府軍がトルコとクルドの間に入って兵力の引き離し
をやるだけだと思っていたが、そうではなかった。
http://www.timesofisrael.com/syrian-kurdish-military-official-calls-on-israel-to-take-action-against-turkey/
'Israel must work to put an end to this war'
http://uk.reuters.com/article/uk-syria-security-turkey-minister/turkey-russia-to-discuss-removal-of-kurdish-militia-from-syrias-manbij-kobani-idUKKBN1WZ06N
Turkey, Russia to discuss removal of Kurdish militia from Syria's Manbij, Kobani
クルド人(YPG)はシリア内戦初期、ISISとの戦いで余裕がなくなったシ
リア政府軍からマンビジなどトルコ国境沿いの町の支配(自治)を認められた。
内戦が終わった今、シリア政府はクルド人から自治を剥奪して国境沿いから引き
離す強制移住を行うことにした。トルコはこれを大歓迎した。シリアとトルコを
和解させたいロシアも、このやり方に賛成だ。覇権放棄屋トランプの米国は、シ
リア撤兵できれば事後のことはどうでも良い。そもそも、トルコ軍が侵攻したの
はクルド人をビビらせてシリア政府に自治権を返還させるための策略(芝居。国
際政治プロレス)だったわけだ。シリアとトルコは1998年に、クルド人を両
国の国境沿いから強制移住させる「アダナ合意」を結んでおり、今回の動きはこ
の合意の復活だ。前回の記事を書く前に、すでに「プーチンはアダナ合意の復活
でシリアとトルコを和解させたいのだ」と指摘するドンピシャな記事が出ており、
私はその記事も読んでいたのだが、理解が浅かった。
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2019/10/russia-turkey-operation-syria-us-kurds.html
Russia has 3 messages for Turkey over operation in Syria
http://www.zerohedge.com/geopolitical/winners-and-losers-turkish-attack-kurds-syria
Winners & Losers In The Failed American Project For A 'New Middle East'
http://tanakanews.com/151221syria.htm
シリアをロシアに任せる米国
米国の覇権は「理想主義(のふりをした軍国主義)」だったが、ロシアの覇権は
「現実主義」だ。ロシアは、以前の米国のような余力がないので現実主義になら
ざるを得ない。米国(や英イスラエル)は理想主義の建て前に沿って、シリア、
イラン、03年までのイラクで、クルド人の独立心をあおってきた。それらの動
きは今回、完全に終わる。ロシアは、中東を不安定にするクルドの独立を望んで
いない。むしろ逆に、クルド人が住むシリア、イラン、イラク、トルコの4カ国
が、クルド人の同化策を成功させて自国を安定させることを望んでいる。人類全
体の平和と安定を考えるなら、クルド人の独立を支援する市民運動は「うっかり
軍産傀儡」であり、間違っている。
http://www.unz.com/jcook/tulsi-gabbard-is-right-and-nancy-pelosi-wrong-it-was-us-democrats-who-helped-cultivate-the-barbarism-of-isis/
Tulsi Gabbard Is Right, and Nancy Pelosi Wrong. It Was US Democrats Who Helped Cultivate the Barbarism
http://tanakanews.com/160316syria.php
中東を多極化するロシア
シリア東部のユーフラテス流域の支配にとって重要なラッカ郊外のタブカ空軍基
地は内戦中、2度にわたる争奪戦により、シリア政府軍、ISIS、クルド軍
(米軍)と駐屯者が変わり、最近はクルド軍の上位に立つ米軍が駐屯していた。
今回の米シリア撤兵により、タブカ基地にいた米軍も撤退したが、その後すぐに
ロシア軍が入ってきてタブカ基地で駐屯を開始した。米軍から露軍への駐屯者の
交代はとてもスムーズで、米露の事前の打ち合わせがあったに違いないと、イス
ラエルの諜報機関モサド系のデブカファイルは分析している。タブカ基地は、
大型の軍用貨物機が離着陸できる長い滑走路を持ち、これで露軍はシリア北部か
ら東部にかけての広大な地域をうまく統治できる。トランプが米軍を勝手に撤兵
し、基地が空っぽなのをロシアが見つけて入ってきたのでなく、トランプはあら
かじめロシアと打ち合わせてシリアの軍事支配権を移譲した。これも私は前回の
記事に書いたのでマンネリかもしれないが、シリア撤兵がトランプの中東覇権放
棄策であることが具体的に確認できる事象として重要だ。
http://www.debka.com/russian-forces-take-over-americas-n-syria-bases-e-syrian-airspace-and-concern-for-kurds/
Russian forces take over America’s N. Syria bases, E. Syrian airspace, and concern for Kurds
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2019/10/turkey-syria-is-kurds-dream-of-autonomy-came-to-end.html
Is the Kurdish dream of autonomy coming to an end?
プーチンは、これまで米国の傀儡だったサウジやUAEを歴訪して大歓迎されて
いる。サウジは今夏、イエメン戦争の終結への仲裁を米国に頼んだのにやっても
らえず困窮していた。プーチンはサウジに対し、イエメンのフーシ派の背後にい
るイランとの和解を仲裁すると約束したようだ。イラン外相は早速、サウジが平
和を望むならリヤドに行く用意があると表明した。
http://www.presstv.com/Detail/2019/10/21/609208/Zarif-Iran-Saudi-Arabia-alMasirah-Yemen-travel
Iran FM: I’m ready to visit Saudi Arabia to settle differences
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2019/10/russia-uae-putin-visit.html
Putin's visit draws UAE, Russia closer
シリアとトルコ、サウジとイランの仲裁は、プーチンのロシアによる中東和解策
の「序の口」だ。もっと難しい部分は、イスラエルと、他の中東諸国との和解を
仲裁する部分であり、さらに難しい部分は、イスラエルとパレスチナを和解させ
る中東和平だ。イランやシリアは、ロシアがイスラエルの国家安全を保障してや
る代わりに、イスラエルはイランやシリア、レバノン、イラクなどイラン系の諸
国を攻撃しないとロシアに約束するという、中東の「パックス・ルッソ」の新体
制を望んでいる。イランやシリアは、イスラエルと戦争するのでなく、ロシアの
仲裁(覇権下)での共存を望んでいる。
http://www.debka.com/despite-erdogans-bravado-his-syrian-offensive-is-squeezed-in-a-us-russian-hug/
Despite Erdogan’s bravado, his Syrian offensive is squeezed in a US-Russian hug
イスラエルで、この共存に向けた隠然指導役をやっている政治家が、ロシア系イ
スラエル人などをまとめた右翼政党「イスラエル我が家」党首のリーベルマン元
国防相だ。イスラエルでは、右翼政党リクードのネタニヤフによる連立組閣が失
敗し、リベラル系の青白連合のガンツ党首による連立組閣の試みが始まっている。
リーベルマンは、自分の政党が右翼だが、ガンツによる連立組閣の黒幕として
機能している。ガンツはすでに、閣内にアラブ(パレスチナ)系イスラエル人の
政党を入れることを決めており、政権を作ったらアラブ諸国と和解したいと表明
もしている。世界的に近年、リベラル派は「(うっかり)軍産傀儡」であること
が多いので、私は従来、青白やガンツも中東和平を進めるふりをして阻止する軍
産系だろうと思っていたが、プーチンと連携しているリーベルマンがガンツを支
持しているので、どうもそうではないようだ。
http://www.timesofisrael.com/on-disputed-border-land-gantz-calls-for-improved-ties-with-arab-countries/
At Jordan border enclave, Gantz calls for improved ties with Arab countries
http://www.debka.com/gantz-in-line-to-form-a-government-after-netanyahu-returns-the-premiership-mandate-to-the-president/
Gantz in line to form a government after Netanyahu returns the premiership mandate to the president
http://www.timesofisrael.com/netanyahu-gantz-planning-government-with-backing-of-dangerous-arab-parties/
Netanyahu: Gantz planning government with backing of ‘dangerous’ Arab parties
ガンツの連立政権は議会(クネセト)の少数派として成立し、それを閣外からリ
ーベルマンの党などが支持して議会の多数を維持し、アラブやパレスチナとの和
平に猛反対するリクードなど極右を権力から外しつつ、2国式に近い形で和平を
進めようとしている。その際の仲裁役は、トランプの米国でなく、プーチンを主
導役としたロシアや中国やEUである。米英イスラエルの覇権低下により、パレ
スチナ自治政府(PA)、ヨルダン、エジプトという傀儡3勢力の政権がムスリ
ム同胞団・ハマスに奪われていく流れになりそうだ。イスラエルの和平交渉の相
手はたぶんハマスになる。ハマスはカタール・トルコ・イランに支援されており、
イスラエルはこれらの諸国との和解がまず必要になる。
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2019/10/israel-benjamin-netanyahu-benny-gantz-minority-coalition.html
Why Israel’s Gantz should propose a minority government
http://tanakanews.com/190924iran.php
トランプ中東覇権放棄の大詰め
ヨルダン国王は焦っている。9月からのエジプトの反政府運動は延々と続き、シ
シ政権の転覆まで行くかもしれない。2006年から選挙をやらずアッバース議
長の独裁体制が続いているパレスチナ自治政府は、国際社会の圧力を受けて選挙
をすることになったが、不正のない選挙をやると西岸でもハマスが勝つ(ハマス
は「ムスリム同胞団パレスチナ支部」)。ヨルダン、エジプト、PAのすべてが
ハマス・ムスリム同胞団の政権になると、ヨルダンと西岸(PA)、エジプトと
ガザを別々の国にしておく2国式をやる必要がなくなる。西岸の一部住民をヨル
ダンに、ガザの一部住民をエジプトに補償金を払って移ってもらえるので、従来
の2国式よりも「ハマス化」後の交渉の方が、西岸ユダヤ入植地の撤去や、ガザ
の人口過密の問題が少なくてやりやすい。ヨルダン国王には良い亡命先を考えて
あげれば良い(もしくは今の王政のまま西岸を再併合する)。現実主義のプーチ
ンは、そう考えているのでないか。
http://www.xinhuanet.com/english/2019-10/20/c_138486343.htm
Jordan king reiterates two-state solution as sole way to resolve Palestinian-Israeli conflict
http://original.antiwar.com/ramzy-baroud/2019/10/17/the-last-lifeline-the-real-reason-behind-abbas-call-for-elections/
The Last Lifeline: The Real Reason Behind Abbas’ Call for Elections
トランプの中東和平策は、米政府の担当者だったグリーンブラットが11月始め
に米政府を去ることになり、中身を公表しないまま雲散霧消していきそうだ。私
もだまされていたが、トランプの「世紀の中東和平案」は最初から、中身を発表
しないまま仲裁役をロシアにバトンタッチして終わるつもりだったのだろう。さ
すがトランプだ。
http://tanakanews.com/170513palestin.htm
よみがえる中東和平
http://www.jpost.com/American-Politics/With-peace-plan-launch-delayed-Greenblatt-announces-final-departure-date-605147
With peace plan launch delayed, Greenblatt announces final departure date
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