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英国とEU、ブレグジットは終わりなき旅 どの選択肢にも多数の支持がない袋小路
マーティン・ウルフ
2019.10.16(水)
Financial Times ヨーロッパ?政治?経済 (英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月9日付)
英国のボリス・ジョンソン首相
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1933年、ナチス・ドイツの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは次のように語った。
「ドイツ国家の近代的な構造は、より高度な形態の民主主義である。ここにおいては国民の負託によって統治が権威をもって行われ、国民の意思の遂行を妨げたり不首尾に終わらせたりする議会の干渉が行われる可能性は存在しない」
ボリス・ジョンソン首相の発言がこのような感じにしばしば聞こえることを考えると、英国がいかに落ちぶれてしまったかが分かる。
ジョンソン氏は、重要な時期に議会を5週間閉会することでブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)の交渉に対する「議会の干渉」を防ごうとした。
また、議会閉会は違法だったとする最高裁判所の全会一致での判決に異議を唱えた。
EUとの合意に達しない場合にはリスボン条約50条による離脱期限の延期を首相が要請しなければならないと定めた法律(通称「ベン法」)もできたが、ジョンソン氏はこれを無視できると述べ、ベン法を「降伏法」だと非難している。
そして最悪なことに、次の総選挙を「国民vs議会」の戦いに仕立て上げようと企んでいる。
英国は一体どうして、首相が議会を無視すべき障害物だと見なす状況に至ってしまったのか。
シンプルに答えるなら、それは激しい論争を引き起こすテーマについての著しく思慮のない国民投票を議会制度に持ち込むことを決めたからだ。
この決断のために正統性の源泉が複数生まれ…
この決断のために正統性の源泉が複数生まれ、互いに対立するようになったのだ。
さらに悪いことに、この投票で僅差で多数を獲得した選択肢の意味は明確ではなかった。
「ブレグジットとは、ブレグジットのことだ」というフレーズは恐らく、歴代の英国首相の発言のうち最もばかげたものだろう。しかし、あの時はそうとしか言いようがなかったのも事実だ。
離脱派の主張とは違い、議会の関与は不当な介入ではない。どんな国民投票でも法律の制定は必要になるし、今回は交渉と合意も必要だった。
だが残念なことに、EUとの離脱協定案はいずれも過半数の支持を得られていない。この点については、残留派と同じくらい離脱派にも非がある。
その結果、「合意なき離脱」が緊急時の代替策として浮上した。しかし離脱派は国民投票の際、合意なき離脱については事実上何も語っていなかった。
事情に通じた人であれば(公務員も含めて)誰もが分かっているように、合意なき離脱は混乱を招くうえに高くつく。そんな施策を行う権限など、誰も付与していない。
おまけに、合意なき離脱は交渉の終わりなどではなく、始まりにしかならないだろう。
しかしその交渉は、これまでよりも悪い状況下で行われることにる。国中が経済の不確実性に覆われる。まさにばかげた選択だ。
政府は国を助けるために存在する。わざと痛…
政府は国を助けるために存在する。わざと痛めつけるために存在するのではない。
この結果をもたらす最も重要な理由の一つに、EUを理解しようとする努力の拒絶(特に離脱派の拒絶)を挙げることができる。
EU加盟国にとってEUは単なる通商協定ではなく存在に関わるプロジェクトであることを、離脱派は理解する必要があった。
欧州司法裁判所のもとで欧州の法律が適用されることは、このプロジェクトの中心的な部分だ。また、英国以外の27カ国で構成されるEUが柔軟性に乏しい交渉相手になることも確実だった。
では、これからどうなるのか。
英国政府が新たに提示したプランは、北アイルランドが財についてはEUの規制体系下にとどまるものの関税同盟からは離脱するという内容で、外見は複雑で大げさだが中身は単純なヒース・ロビンソン風のプランだ。
これは穴があちこちに開いているうえに法執行が困難で、アイルランドにおける国境のない交易とも相容れないとしてEU側から拒否されるだろう。
おまけに、このプランは英国が2017年にアイルランドの国境について行った約束を反故にすることにもなる。これによって英国の信頼性の評価がさらに悪化したことは確実だ。
さらに、EUには長い陸上の国境があることを忘れてはならない。意図的に穴を多く開けた国境を設ける前例など、決して許容しないだろう。
このプランはEUに受け入れられるはずだと…このプランはEUに受け入れられるはずだと思っている人もいる。
それはない。もし北アイルランドがEUの関税同盟にも残るのであれば、うまくいくかもしれない。
しかし、英国内のほかの地域が独自の貿易・規制政策を取ることになれば、グレートブリテン島とアイルランド島を隔てるアイリッシュ海が英国・EU間の通関・規制の境界になる。
そんなことは、保守党にとっても民主統一党(DUP)にとっても受け入れられない。北アイルランドでの暴力に再び火がつく事態になるかもしれない。
では、10月31日までに合意が成立しない場合にはどうなるのか。
一つの疑問は、英国政府が望んでいないことが明らかな離脱期限の再延長にEUが同意するかどうか、だ。
仮に同意するとしても、それには条件がつくに違いない。では、どんな条件がつく可能性があるのだろうか。
一つの可能性として考えられるのは、テリーザ・メイ前首相の離脱協定案の批准を試みることだ。
それができれば英国とEUは、新たな関係の交渉に進むことができる。英国内の離脱派と残留派が妥協することにもなり、それ自体かなり望ましいことだ。
しかし、実際には不可能に思える。残留派に…
しかし、実際には不可能に思える。残留派にとっては不十分な成果に、そして離脱派にとっては過大な譲歩になるからだ。
残留派はEUにとどまることを望んでいる。そして離脱派は、英国をEUの関税同盟にとどめて英国の貿易政策に無期限に制限を加えることになる、アイルランドのバックストップ(安全策)を拒否している。
2つ目の可能性は、国民投票を再度行うことだ。
おそらく、「合意なき離脱」か「EU残留」のどちらかを選ぶものになるだろう。
合意の有無は最初の国民投票ではほとんど問われなかったため、この2択は妥当なはずだ。ただ、国民投票を実施するには、暫定政権を立ち上げる必要が生じる。これはかなりの難題だ。
また、設問をどうするかで合意したうえで投票を実施するという作業を、大規模な暴力を招くことなく行うのは不可能かもしれない。筆者にとっては、再度の国民投票は最もましな選択肢だ。だが、これは大きなリスクを生む。
そして最後に、総選挙を前倒しで行う可能性も考えられる。
総選挙の欠点は、ブレグジット以外にも多くの問題がかかわってくることと、再びハングパーラメント(宙ぶらりん議会の意、単独過半数を取る政党がない状態のこと)になる恐れがあることだ。
ジョンソン首相が反議会の選挙運動を展開することから、短期的にも長期的にも悲惨な結果をもたらしかねない。ただ、ブレグジットの問題は、一時的には解決されるかもしれない。
ただ、今や問題はブレグジットだけではない…
ただ、今や問題はブレグジットだけではない。それよりもはるかに深刻な問題がある。
英国の保守党はイングランドのナショナリスト政党に成り下がってしまい、ポピュリスト的な怒りをたきつけるのに忙しい。
片や労働党は極左勢力に乗っ取られてしまっている。過激な政治の呪いはまさに始まったばかりだ。
敵対勢力を想像上の「国民」に対する「裏切り者」だと国民が見なすようになれば、憎悪の悪魔が野に放たれる。
ブレグジットはそうした悪魔を目覚めさせてしまった。
ジョンソン氏は、ナイジェル・ファラージ氏と同氏の率いるブレグジット党から支援を得ながら、悪魔を解き放つことで選挙に勝とうとするだろう。
悪魔たちが大きな被害を、非常に長い間この国にもたらすことは間違いない。
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2019年10月16日 6:23 JST 更新日時 2019年10月16日 13:03 JST
EUは英国を除く27カ国の大使級会合を16日午後2時に招集
DUPの支持得る確信ない限り首相はゴーサイン出さないと当局者
英国の欧州連合(EU)離脱の条件を巡り、英とEUとの協議が土壇場の合意に近づきつつあるが、英保守党政権を閣外協力でを支えてきた北アイルランドのプロテスタント強硬派、民主統一党(DUP)が反対すれば、議会の承認が得られない危険がある。
英、EU当局は過去48時間の協議を通じて、隔たりの大部分を解決した。深夜まで折衝が続けられる一方、英国を除くEU27カ国の大使級会合が16日午後2時(日本時間同9時)に招集された。英国との離脱交渉を担当するEUのバルニエ首席交渉官はその場で合意について説明を行いたい考えだ。
EUとの新たな離脱合意の取り決めは、今月末の離脱を目指すジョンソン英首相にとって最初のハードルにすぎず、北アイルランドのDUPと与党保守党内の離脱強硬派を説得する必要がある。メイ前首相がEUとまとめた離脱協定案は3度にわたり議会で否決された。
State Opening of Parliament
ジョンソン英首相
ジョンソン首相は今回、DUPの支持を得る確信がない限り、ゴーサインを出すことはないだろうと複数のEU当局者が語った。ジョンソン氏はDUPのフォスター党首と15日夜に約1時間半にわたり首相官邸で会談した。DUPは「隔たりが残っており、さらに作業が必要だと言って差し支えないだろう」とその後声明でコメントを発表した。
事情に詳しい関係者1人からの情報を引用し、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じたところでは、EUとの離脱協議で合意が具体化しつつある中で、ジョンソン首相はDUPからの協力確保に向け、英領北アイルランドへの多額の資金拠出についてフォスター党首とぎりぎりの交渉を行った。
関係者が同紙に語ったところでは、DUPは「数百万でなく数十億」単位の資金を北アイルランドに拠出するよう要求し、支出を増やすことが合意を支持する条件だとジョンソン首相に伝えたという。
複数のEU当局者によれば、過去数日のうちに英国側は幾つかの大きな譲歩を行った。英領北アイルランドと英国本土との間で税関検査の実施を受け入れることもその中に含まれるが、これにはDUPが強く反対している。
原題:Brexit Deal Inches Nearer as Key Johnson Ally Threatens Hold-Out
DUP Asks for ‘Billions’ of Cash Payment to Back Brexit: FT(抜粋)
Gaps Remain and More Work Required on Brexit Deal, Says DUP(抜粋)
(DUPの要求に関するFT紙の報道を追加して更新します.)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZFQ326JTSE801
ポンド全面高、英EUが離脱合意に近づく−円は安い
Susanne Barton
2019年10月16日 4:58 JST 更新日時 2019年10月16日 5:44 JST
15日のニューヨーク外国為替市場では、ポンドが主要10通貨すべてに対して上昇。英国と欧州連合(EU)の交渉担当者らが離脱合意の草案とりまとめに近づいており、15日中に事態が打開されるとの期待が高まった。円は下落率トップ。逃避需要が減退した。
合意がまとまった場合、ジョンソン英首相は19日に議会に提出する。そうなれば、今月末に予定されている離脱期限の再延期要請を回避する可能性が生じる
ポンドのボラティリティーは今後数週間に拡大し、2016年7月以来の最大になる可能性があるとの見方がオプション市場に織り込まれている
ハンス・レデカー氏らモルガン・スタンレーのストラテジスト:
「英EU離脱を巡る明るいニュースは、経済のテールリスクを幾分か低減させる。過小評価されているポンドを押し上げるはずだ」
ニューヨーク時間午後4時26分現在、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%下落
米セントルイス連銀のブラード総裁はインフレ率が低過ぎるとし、米経済には著しい減速のリスクがあると述べた
ポンドは対ドルで1.3%高の1ポンド=1.2777ドル
ドルは対ユーロで0.1%安の1ユーロ=1.1033ドル。対円では0.4%上げて1ドル=108円85銭
欧州時間の取引
ドルは対主要通貨で高安まちまち。貿易戦争面での展開や、米金融当局者らの発言を待つ姿勢が広がった。英EU離脱を巡る楽観が戻り、ポンドを支えた。
原題:Pound Tops Peers as Brexit Deal Appears in Reach: Inside G-10(抜粋)
Dollar Steadies Before Fed Speakers, Pound Advances: Inside G-10
(相場を更新し、欧州時間の取引を追加します)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-15/PZFII2DWLU6J01
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